士業コラム
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月給の社員が欠勤したら給与はどう計算する?欠勤控除の確認ポイント
「月給の社員が病気で数日休んだ。給与から何日分を差し引けばよいのだろう」「基本給以外の手当も計算に含めるのだろうか」 毎月一定額を支払っている場合でも、欠勤した月の給与計算に迷うことがあります。 欠勤控除を考えるときは、まず休みの種類と賃金の定めを確認し、対象となる日数や時間、計算の基礎となる賃金を整理します。この記事では、中小企業の経営者が給与計算の前に確認したい点と、計算後の説明の進め方を解説します。 まず「欠勤」として扱う日を確認します 給与を計算する前に、勤務予定表、勤怠記録、本人からの連絡を照らし合わせ、その日がもともと働く予定の日だったかを確認しましょう。所定休日と、所定労働日に休んだ日を同じように数えることはできません。打刻がない日も、入力漏れや勤務場所の変更が原因の場合があります。 病気による欠勤として連絡を受けていても、年次有給休暇の申請があったか、会社独自の有給の病気休暇が適用されるかなどを確認します。年次有給休暇として適法に取得した日について、欠勤として給与を差し引かないようにしましょう。有給休暇中に支払う賃金は、法律上の定めと会社が採用する計算方法を確認します。 また、会社の都合で仕事を休ませた日や、業務上の病気・けがで休んだ日は、本人都合の欠勤と同じ扱いにできるとは限りません。休業手当や労災保険の給付など、別の制度を確認する必要があります。休んだ理由だけで直ちに給与処理を決めず、実際の事情と適用される制度を整理しましょう。 月給の定めと欠勤控除の規定を確認します 月給制という呼び方だけでは、欠勤した場合に給与がどうなるかは分かりません。欠勤分を差し引く定めのある月給制もあれば、欠勤によって減額しない定めもあります。労働条件通知書や雇用契約書、就業規則、賃金規程を確認し、その社員に適用される条件を把握しましょう。 働かなかった時間に対応する賃金を支払わないことを、一般に「ノーワーク・ノーペイ」といいます。ただし、実際に控除するかどうかは、法令のほか、契約や規則の内容を踏まえて判断します。休んだ理由や会社の制度によって賃金の支払いが必要な場合もあります。 東京労働局は、欠勤などによる不就労時間分の控除は契約や就業規則に基づいて行うことができる一方、その計算方法自体は労働基準法に定めがないと説明しています。規定が曖昧な場合に、給与計算の担当者がその月だけ独自の方法を決めると、契約や従来の取扱いと食い違うおそれがあります。 控除額は対象賃金と日数・時間を整理して計算します 計算方法として、月の平均所定労働日数や月の暦日数などを基礎にする考え方があります。どの方法を採用しているかは会社の定めを確認します。計算の基礎に含める手当、半日欠勤や時間単位の不就労の扱い、端数処理も確認が必要です。基本給だけを使うと決めつけず、手当の性質と規定を照らし合わせましょう。 例えば、仮に賃金規程で「基本給を月平均所定労働日数で割った額に欠勤日数を掛ける」と定め、対象社員の基本給が月24万円、月平均所定労働日数が20日、対象となる欠勤が2日であったとします。この例の控除額は、24万円÷20日×2日で2万4,000円です。実際の支給額は、ほかの賃金項目や法定控除なども含めて別途計算します。 規定の対象賃金や手当の取扱いに疑問がある場合は、過去の運用も含めて確認してから計算しましょう。月ごとの所定労働日数や暦日数を使う定めであれば、同じ欠勤日数でも結果は異なります。年間カレンダーを作成して、毎年月ごとの所定労働日数を決定したり、他にも方法があるため、就業規則や賃金規程を確認しましょう。 欠勤控除と制裁としての減給は区別します 働かなかった分を定めに従って計算することと、無断欠勤などへの罰として賃金を減らすことは別の問題です。例えば、1日の欠勤に対して、働かなかった分に加えて一律の罰金を差し引くことを、その場の判断で行うべきではありません。 制裁としての減給を設ける場合には就業規則上の定めが必要で、労働基準法には減給額の上限があります。さらに、規定があればどのような処分でも認められるわけではなく、事実関係や処分の相当性を慎重に検討する必要があります。勤怠上の問題への指導と給与計算を混同しないことが大切です。 仕事に穴が空いたことを理由に、会社が被った損害を給与から一方的に差し引くことも原則としてできません。賃金は原則として全額を支払う必要があるため、損害の有無や対応に迷うときは、給与支払前に専門家へ確認しましょう。 計算後は内訳を確認し、分かる形で説明します 控除額を確定する前に、欠勤日数、対象賃金、使用した日数・時間の分母、端数処理を再確認します。給与明細には内容が分かるように記載し、社員から質問があったときに根拠となる規定と計算過程を説明できるようにしておきましょう。 計算後に休暇の申請や打刻漏れが判明した場合は、事実を確認し、誤りがあれば速やかに訂正します。支払うべき賃金が不足していた場合は、差額の支払いを含めて対応を検討してください。翌月から計算方法を変えたい場合も、一方的に決めず、既存の労働条件や変更の手続きを確認することが必要です。 規定が明確で、欠勤の事実と計算条件を確認できる場合は、会社で計算を進めることもできます。一方、規定に計算式がない、手当の取扱いが不明、これまでの処理が社員ごとに違うといった場合は、過去の給与明細や勤怠記録、契約書、賃金規程をそろえて相談すると、問題点を整理しやすくなります。 当事務所では、人事・労務全般の相談のほか、給与・賞与計算や就業規則の作成・変更を取り扱い、労務相談のみの契約にも対応しています。欠勤が生じた月の対応とあわせて、今後も説明しやすい給与計算のルールを整える機会にしてはいかがでしょうか。
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36協定を届け出ずに残業させていたら?会社が確認したい初動と届出の進め方
「従業員に残業をお願いしてきたが、36協定を届け出た記憶がない」「以前は届出をしたものの、更新を忘れていたかもしれない」このような状況に気付いたときは、まず現在の残業を止め、協定と労働時間の実態を確認することが大切です。 36協定の届出は、将来の法定時間外労働などを行うための手続きです。後から届け出れば過去の問題がなくなるわけではありません。この記事では、届出漏れに気付いたときの初動から、今後の手続きと再発防止までを整理します。 36協定が必要になる残業とは 労働基準法の原則では、労働時間は休憩を除き1日8時間、1週40時間までです。また、原則として毎週少なくとも1日の休日、または4週間を通じて4日以上の休日を与える必要があります。変形労働時間制など、適用する制度によって判断は異なります。 法定労働時間を超えて働かせる場合や、法定休日に働かせる場合は、原則として、あらかじめ事業場の労働者側と時間外・休日労働に関する協定を結び、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。これが36協定です。従業員が1人の事業場でも必要となります。 一方、会社が定めた所定労働時間を超えただけでは、直ちに法定時間外労働になるとは限りません。例えば通常の労働時間制で、所定労働時間が1日7時間の人が8時間働いた場合、1日単位では法定時間を超えていません。ただし、週単位の合計や適用される勤務制度も確認が必要です。 届出漏れに気付いたら、まず確認すること 最初に、法定時間外労働や法定休日労働を新たに行わせないよう、業務の割り振りや納期を調整します。残業を続けながら書類を整えるのではなく、法定労働時間と法定休日を守れる勤務に切り替えましょう。 次に、事業場ごとに協定書と届出控えを探し、協定の有効期間、対象業務、延長できる時間、所轄署への届出状況を確認します。控えが見つからないだけで未届出と決めつけず、提出方法や社内の保管先も調べます。提出の有無が不明な場合は、所轄の労働基準監督署に確認方法を相談してください。 協定が存在しても、期限切れや対象業務の相違、定めた時間の超過があれば別の問題が生じます。勤怠記録、シフト表、給与明細、休日の定めを照合し、いつ、誰に、どのような労働があったかを整理しましょう。記録を後から削除したり、実際より短く書き換えたりしてはいけません。 例えば、昨年の協定は届出済みだったものの、今年の期限更新を失念していた場合、期限後の勤務については有効な協定の有無を確認する必要があります。新しい協定の開始日を過去に合わせて書き直すのではなく、実際の締結日と届出の経緯を正しく扱いましょう。 過去の残業代と届出は別々に対応します 届出をしていなかった期間でも、実際に働いた時間に対する賃金は確認が必要です。法定時間外や法定休日、深夜の労働には、条件に応じた割増賃金が必要になります。届出がなかったことを理由に、残業代を支払わなくてよいわけではありません。 タイムカードや勤怠システムの記録と、業務指示、日報、パソコンの使用記録などを照らし合わせ、実態を確認します。未払いが見つかった場合は、対象期間や計算方法を整理し、速やかに適切な精算を検討します。過去の勤怠資料や賃金台帳は、法令に従って保存してください。 後から協定を締結・届出しても、それ以前の法定時間外労働などが遡って適法になるものではありません。事情によっては法令違反への対応が必要です。判断に迷う場合は、事実関係を整理したうえで労働基準監督署や専門家に相談しましょう。 今後のための協定締結と届出の進め方 今後、法定時間外労働や法定休日労働が必要であれば、事業場ごとに、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその組合、ない場合は労働者の過半数を代表する人と協定を結びます。代表者の選出にはパートなども含め、その目的を明らかにして投票や挙手などの民主的な方法で選びます。会社が一方的に指名する方法は適切ではありません。 協定には、対象業務や労働者の範囲、延長することができる時間、対象期間などを定め、所轄の労働基準監督署へ届け出ます。従業員が内容を確認できるよう、協定の周知も必要です。届出前に、協定で定める予定の時間を使って残業を開始しないようにしましょう。 時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情があり、特別条項を設ける場合にも、年720時間以内など複数の上限があり、月45時間を超えられるのは年6か月までです。時間外労働と休日労働の合計についても月100時間未満、複数月平均80時間以内などの制限があります。業種や勤務制度により例外があるため、自社への適用を確認してください。 協定は、定めればその時間まで自由に残業させられるというものではありません。定めた範囲や法令上の上限を守り、個々の従業員に残業を命じる根拠となる就業規則や労働契約も確認します。健康への配慮や業務量の見直しも欠かせません。 更新管理と日々の勤怠管理をつなげましょう 再発防止には、届出控えと協定の内容を事業場ごとに保管し、有効期間の終了前に準備できるよう、担当者と確認時期を決めておくことが有効です。有効期間の終了前に労働基準監督署に提出できるようにしましょう。担当者が変わる場合も、保管場所と更新手順を引き継ぎます。 残業の実績は、給与計算のためだけでなく、協定で定めた時間や法令の上限に近づいていないかを確認するためにも使います。月末にまとめて気付くのではなく、途中の段階で確認し、必要に応じて仕事の配分を変えましょう。 当事務所では、残業手当の管理方法を含む人事・労務全般の相談を取り扱い、労務相談のみの契約も可能です。協定の期限が分からない、勤怠と給与の記録が一致しない、複数の事業場で扱いが異なるといった場合は、協定書や届出控え、勤怠記録、就業規則を用意すると相談しやすくなります。 必要な資料と手順が明確であれば、自社で協定の締結や届出を進めることもできます。一方、過去の状況が複雑なときは、事実を隠さず整理し、専門家や所轄の労働基準監督署に相談しながら、過去の精算と今後の勤務管理をそれぞれ進めましょう。
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従業員が10人になったら就業規則は必要?人数の数え方と作成・届出の進め方
「正社員は少ないけれど、パートを含めると従業員が10人になった」「就業規則を作っていないが、何から始めればよいのだろう」。事業の拡大に伴い、このような疑問を持つ経営者の方もいるでしょう。 就業規則の作成・届出義務は、会社全体ではなく、原則として事業場ごとの人数で判断します。この記事では、人数の数え方、規則に盛り込む内容、届出と周知までの進め方を解説します。 就業規則が必要になる「常時10人以上」の考え方 常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署へ届け出なければなりません。作成した後に変更した場合も、届出が必要です。 人数には、正社員だけでなく、パートやアルバイト、有期契約の従業員も含めます。勤務日や勤務時間が短い人を、勤務時間に応じて0.5人と数えるのではありません。その日に出勤している人数だけで判断することにも注意が必要です。 「常時」は、一時的に10人に達したかではなく、通常の状態として何人を使用しているかという観点で考えます。繁忙期だけ人を増やした場合や、採用・退職が続いて人数が変動する場合は、勤務の実態や雇用の継続状況を整理して判断しましょう。 例えば、正社員6人とパート4人を継続して雇用している店舗では、普段の出勤者が同時に10人未満でも、常時10人以上に当たる可能性があります。雇用形態ごとの人数を確認し、判断に迷うときは所轄の労働基準監督署や専門家に相談してください。 人数は会社全体ではなく事業場ごとに確認します 本店と支店、複数の店舗がある場合は、原則として、それぞれの事業場を単位に人数を数えます。例えば、独立した事業場として扱われる本店に7人、支店に5人がいる場合、会社全体で12人でも、それだけで両事業場に作成・届出義務が生じるわけではありません。 ただし、名称が「支店」や「営業所」であるだけで、必ず独立した事業場になるわけではありません。場所や業務の実態、組織としての独立性などを踏まえて判断する必要があります。小規模な拠点が本店と一体として扱われるか迷うときは、実態を示せる資料を用意して確認しましょう。 常時10人未満の事業場でも、労働基準法などのルールは適用されます。作成・届出義務がないことと、労務管理が不要であることは別です。人数が増える前から、勤務時間や休暇、給与の取扱いを整理しておくと、採用後の説明にも役立ちます。 おすすめとしては、一人でも雇用したら、就業規則を作成しておくと、後のトラブルになりにくい傾向にあります。 作成前に、今の働き方と契約内容を整理します 就業規則を作る際は、まず雇用契約書や労働条件通知書、給与明細、勤怠記録、社内で使っている休暇の申請方法などを確認します。文書に書かれている条件と、実際の運用が異なる場合は、どの従業員に何を適用しているかを整理しましょう。 例えば、契約書には始業時刻が午前9時とある一方、実際には全員が午前8時45分から指示を受けて業務を始めている場合、その実態を確認する必要があります。規則の文言だけを整えても、労働時間の管理にずれが残るおそれがあります。 就業規則には、始業・終業時刻、休憩、休日、休暇、賃金の決定・計算・支払方法、退職に関する事項など、必ず記載する事項があります。退職手当や賞与、休職、表彰・制裁などは、それぞれの制度を設ける場合に記載が必要です。休職制度や退職金制度をすべての会社で必ず設けなければならないという意味ではありません。 パートと正社員で勤務時間や賃金の仕組みが異なる場合は、適用対象が分かるように定めます。別の規則を作る方法もありますが、契約や実際の運用との整合性を確認し、雇用形態による待遇差には別途、法令上の確認が必要です。 意見聴取・届出・周知まで進めます 規則案ができたら、その事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその組合、ない場合は労働者の過半数を代表する人の意見を聴きます。正社員だけで代表を決めるのではなく、パートなどを含む事業場の労働者全体を対象にします。 過半数代表者は、管理監督者でなく、就業規則の意見を述べる代表者を選ぶ目的を明らかにしたうえで、投票や挙手などの民主的な方法で選びます。会社が一方的に指名する方法は適切ではありません。意見聴取は同意を得る手続きとは異なりますが、寄せられた意見の内容を確認し、説明や検討に生かしましょう。 常時10人以上の事業場では、就業規則に代表者等の意見書を添えて、所轄の労働基準監督署へ届け出ます。意見書には反対意見も記載できます。届出を済ませただけで終わりにせず、従業員がいつでも確認できる方法で周知します。 周知の方法には、書面の交付や、職場の見やすい場所への掲示・備付けなどがあります。電子データを利用する場合も、対象者が内容を常時確認できる環境を整える必要があります。パートを含め、適用される従業員が自分に関係する規則を確認できるか点検してください。 既存の条件を変えるときは、作成と分けて検討します 就業規則を初めて作る機会に、これまでの手当をなくしたり、休日を減らしたりすることを考える場合があります。しかし、新しい規則に書き、意見を聴いて届け出たことだけで、従業員に不利益な変更が当然に認められるわけではありません。 労働条件の変更は、原則として労使の合意によります。就業規則の変更により不利益に変更する場合には、原則として本人の合意が必要で、例外として変更内容の合理性と周知などの要件を満たす場合に効力が認められることがあります。必要性や不利益の程度、説明・協議の状況などを踏まえた慎重な検討が必要です。 初めて規則を作る場合も、既に成立している個別の労働条件との関係を確認し、規則を作っただけで不利益に変更できると考えないことが大切です。特に賃金や休日を見直すときは、導入前に専門家へ相談しましょう。 10人に達したら、現状確認から着手しましょう 従業員の人数と事業場の区分が明確で、現在の条件を整理できていれば、厚生労働省のモデル就業規則などを参考に自社で作成を進めることもできます。ただし、ひな形をそのまま使うと、自社にはない制度が記載されたり、実際の勤務形態と合わなかったりすることがあります。 自社用にカスタマイズしながら作成すると良いでしょう。本来就業規則に記載すべき事項を削除してしまった場合でも、就業規則に記載がないからルールがなくなったということではない点に注意しましょう。 パートの適用範囲が分からない、契約書と実際の運用が異なる、賃金や休日を見直したいといった場合は、規則案を固める前に相談すると、確認事項を整理しやすくなります。従業員数、勤務形態、契約書、給与や勤怠の資料、現在の運用が分かるものを用意しましょう。 当事務所では、就業規則の作成・変更・提出代行のほか、人事・労務全般の相談を取り扱っており、労務相談のみの契約も可能です。規則の準備に加え、運用とのずれや今後の管理の仕方についても相談可能です。従業員が増えた節目に、会社と従業員の双方が確認しやすいルールを整えていきましょう。
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社員から突然退職を申し出られたら?中小企業が確認したい退職日と引継ぎの進め方
「社員から急に退職したいと言われたけれど、担当業務の引継ぎが終わらない」「就業規則では1か月前の申出と定めているのに、2週間後に辞めたいと言われた」少人数の会社では、一人の退職が日々の業務に大きく影響します。 まず大切なのは、本人の意思と希望する日程を落ち着いて確認し、退職日、最終出勤日、引継ぎに使える時間を分けて整理することです。この記事では、退職の申出を受けた直後から、会社が進めたい確認と実務を解説します。 まずは本人の意思と希望する退職日を確認します 退職についての言葉には、「退職を考えている」という相談と、「退職する意思を決めた」という申出があります。まず、本人が何を希望しているのか、いつを退職日と考えているのかを確かめましょう。口頭の申出でも、日時や発言内容、会社側の対応を記録しておくと、後の認識違いを防ぎやすくなります。 退職日と最終出勤日は同じとは限りません。例えば、月末を退職日とし、その前に残っている年次有給休暇を取得する場合、最後に出勤する日は月末より早くなります。退職日だけを聞いて引継ぎの時間を見積もると、実際には予定より短いことがあります。 本人と話し合う際は、退職理由を尋ねることもできますが、話したくない事情まで無理に聞き出す必要はありません。残りの期間に何ができるかを確認し、決まった事項を本人と会社の双方が分かる形で共有しましょう。 就業規則だけで退職日を決めず、契約を確認します 期間の定めのない雇用契約では、退職の申入れから原則として2週間が経過すると、会社が承諾しなくても退職の効力が生じます。一方、本人と会社が話し合って退職日に合意することもできます。申出が合意を求めるものか、一方的に辞職する意思表示かは、言葉や経緯を含めて確認が必要です。 就業規則に「1か月前までに申し出る」とある場合も、その定めだけを理由に一律に退職を認めないとは判断できません。民法の規定と就業規則の関係には見解の違いがあり、個別の事情を踏まえた確認が必要です。本人との話合いで日程を調整しつつ、争いがある場合は専門家に相談しましょう。 有期契約では、期間満了前の退職について、期間の定めのない契約とは異なる規定が適用されます。契約期間や申出の理由、雇い入れからの期間などによって扱いが変わるため、同じ「2週間」という説明をそのまま当てはめないでください。 就業規則の提出期限に間に合わなかったとしても、「後任が見つかるまで退職は認めない」と伝えたり、退職届を受け取らずに手続きを止めたりすることは、問題を長引かせるおそれがあります。退職の意思と、業務上の調整を分けて考えることが大切です。 引継ぎは残りの勤務日から逆算して進めます 引継ぎをお願いする際は、まず残りの勤務予定日を確認し、本人が担当している業務を洗い出します。顧客との約束、支払いや請求の期限、進行中の案件、社内システムの管理など、止まると影響が大きいものから優先順位をつけましょう。業務の種類によって、かなり優先順位が異なりますので、気を付けましょう。 例えば、月末退職予定の社員が有給休暇を取得するため、残りの出勤日が5日しかないケースを考えます。会社は、すべての業務を従来どおり引き継ぐことにこだわらず、取引先への連絡が必要な案件と、期限の近い請求業務を先に確認します。そのうえで、後任が自分で確認できる資料の場所や、未処理の仕事を一覧にします。 引継ぎの方法も、長いマニュアルの作成だけではありません。短時間の打合せ、案件一覧への追記、担当者を交えた説明など、残りの日数に応じて選べます。本人に依頼する内容と期限を具体的に示し、会社側も受け手を決めておきましょう。 有給休暇を請求されている場合は、残日数と取得希望日を確認し、勤務予定を調整します。引継ぎが不十分という理由だけで、退職前の請求を一律に拒否できるわけではありません。休暇中の作業を当然の前提とせず、出勤日にできる内容を整理してください。 退職の手続きと最終給与を並行して整理します 退職日が決まったら、加入している社会保険・雇用保険の資格喪失手続き、離職票の要否、最終給与の計算などを確認します。健康保険・厚生年金保険に加入している場合は、原則として退職日の翌日が資格喪失日です。届出の期限や必要書類は、加入状況と個別の事情に応じて確かめましょう。 雇用保険については、原則として被保険者でなくなった日の翌日から10日以内に資格喪失届を提出します。離職票が必要かどうかは本人の希望などを確認し、必要な場合は離職証明書の準備も進めます。離職理由に認識の違いがある場合は、実際の経緯を記録し、手続きの際に確認してください。 最終給与は、勤務実績、欠勤や休暇の扱い、社会保険料などを確認したうえで計算します。貸与品の返却や引継ぎが終わっていないことを理由に、当然に給与の支払いを保留したり、損害額を一方的に差し引いたりすることはできません。通常の支払日や退職時の請求に応じた支払いについて、適用されるルールを確認しましょう。 また、パソコン、鍵、社員証などの返却方法を本人と調整し、社内アカウントの停止時期も決めます。顧客への案内や担当変更は、本人任せにせず、会社側で責任者を定めると進めやすくなります。 判断に迷う場合は、経緯と資料を整理して相談しましょう 本人の意思と退職日が明確で、勤務予定や手続きを双方で確認できる場合は、社内で対応を進められます。一方、退職日の認識が食い違う、有期契約の途中で退職を申し出られた、休暇と引継ぎの調整が難しい場合には、早めに相談することが有用です。 相談の際は、雇用契約書、就業規則、本人の申出内容と日時、勤務予定、有給休暇の残日数が分かる資料を用意します。すべての資料がそろわなくても、退職について何を言われ、会社がどう返答したかを整理すると、確認すべき点が見えやすくなります。 当事務所では、人事・労務全般の相談のほか、就業規則の作成・変更、社会保険・労働保険の届出代行、給与計算の代行を取り扱っています。突発的な退職への対応のみならず、退職手続きの流れや日常的な情報共有のあり方を見直すきっかけとして、ぜひ現在の運用についてお聞かせください。 豊島区の中小企業で社員から退職を申し出られたら、まず意思と日程を確認し、残りの勤務日に何を引き継ぐかを具体化しましょう。本人の権利と会社の業務の両方を踏まえ、手続きを一つずつ進めることが大切です。
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特殊車両通行許可と制限外積載許可の違いは?運行前に確認したい手続き
「特車の許可は取ったので、長い荷物を積んで走っても問題ないはず」。大型の機械や長尺物を運ぶとき、このように考えていないでしょうか。 特殊車両通行許可と制限外積載許可は、根拠となる法律も、確認する内容も異なる手続きです。運行の内容によっては両方が必要になり、片方の許可がもう片方の代わりになるわけではありません。 出発直前に手続きの不足が分かると、車両や納品日の調整が必要になることもあります。運送業や建設業の方々のために、これら二つの許可の違い、相談前に整理しておきたい情報をについて解説します。 二つの許可は、何を確認する制度なのかが異なる 特殊車両通行許可は、道路法に基づく道路管理者の許可です。道路や橋を守り、交通の危険を防ぐため、車両の大きさ・重さと通行経路などを確認します。荷物を積んで走る場合は、車両単体の寸法だけで判断せず、積載状態を踏まえて検討することが大切です。 道路法上の一般的制限値には、幅2.5メートル、長さ12メートル、高さ3.8メートル、総重量20トンなどがあります。ただし、指定道路や車両の種類による特例があり、軸重など別の基準もあります。この数字だけを見て、許可の要否を決めることはできません。また、条件を満たす車両・経路では、特殊車両通行確認制度を利用できる場合もあります。 一方、制限外積載許可は、道路交通法に基づく警察署長の許可です。分割できない貨物を運ぶなど、やむを得ず積載物の大きさや積載方法の制限を超えて運行する場合に求められます。車体からどれだけはみ出すかといった、荷物の載せ方がとても重要になってきます。 荷物のはみ出しが問題となる場合は、特車の許可とは別に警察への確認が必要となります。「大型車だから両方の許可が必要だ」とか、「特車の許可があるから警察の許可は必要ない」と決めつけず、状況に応じてどの許可が本当に必要となるのか確認することが重要です。 判断の出発点は、荷物を積んだ状態を具体的に想定すること まず第一に考慮したいのは、実際に走る車両と荷物の組合せです。車検証だけでは、輸送における全体の寸法や、荷物が突き出す位置までは分かりません。 車両については、トラクタとトレーラーの組合せ、車体の寸法、重量などを確認します。貨物については、品名、長さ・幅・高さ、重量、分割できるかどうかを整理してください。さらに、どの位置にどの向きで載せるのかを決め、積載状態での全長・全幅・全高や前後左右へのはみ出しを図で示します。 福岡県警察の案内では、普通自動車以上の自動車について、積載物の長さ・幅や、車体の前後左右からのはみ出しに関する制限が示されています。「荷台から少し出るだけだから大丈夫」という見た目の判断ではなく、車体寸法と積載物の寸法を照らし合わせる必要があります。 また、積載物の寸法に余裕があっても、重量や各車軸への荷重の確認は別に必要です。二つの許可を取得すれば、車検証上の最大積載量を超えて自由に運べるわけではありません。重量の問題とはみ出しの問題は根本的に別の問題であり、はみ出しに関する許可をもって重量に関する問題が解決するわけではない、という視点が求められます。 積載方法が未定なら、申請書だけ先に完成させようとせず、荷主や配車担当者と運送条件について話を詰めるようにしましょう。その結果、荷物を回転させる、別の車両に替えるといった変更が、必要な手続きの判断に影響する場合もあるからです。 特車の許可証と実際の輸送計画を照合しましょう すでに特殊車両通行許可を取得している場合も、今回の運行をその許可で扱えるか確認してください。許可証が手元にあったとしても、今回の車両・積載状態・経路が許可の範囲に収まるとは限らないからです。 使用車両、通行経路、有効期間、許可された寸法・重量、付された条件を、実際の計画と照合します。以前と同じ納品先でも、車両の組合せや積む機械が変われば、確認する内容も変わります。車両番号だけ一致していることを理由に判断しないようにしましょう。 仮に、同じトレーラーを用いて、以前よりも長い一体型の設備を運ぶ場合、配送先は同じでも、積載状態の全長や後方へのはみ出しが増える可能性があります。この場合は、既存の特車の許可の範囲を確認するとともに、制限外積載許可の要否も視野に入れて検討します。 また、現場の搬入口が変われば、最後に通る道路が変わることもあります。地図アプリが示した迂回路を、そのまま許可済みの経路として使えるわけではありません。荷主から伝えられた搬入口まで、本当に経路がつながっているか確認するようにしましょう。 当事務所では、特殊車両通行許可に関する書類作成・申請代行に加え、複雑な通行経路の選定や電子申請の支援をご案内しています。既存の許可証と変更点を一緒に相談いただくと、今回の輸送計画で確認すべき事項を整理しやすくなります。 申請先と準備資料を分け、およその日程を組み立てる 特殊車両通行許可は道路管理者への手続き、制限外積載許可は警察への手続きです。同じ輸送に関する申請でも、窓口は一つではありません。 福岡県警察は、制限外積載許可の申請先として、出発地を管轄する警察署の交通課などを案内しています。事業所の所在地で申請先を決めるのではなく、『実際の輸送の出発地』を確認します。交番で扱える範囲は積載物の長さに関する許可に限られるため、内容に応じて警察署へ確認することが大切です。 相談に向けては、車検証や車両諸元が分かる資料、貨物の寸法・重量の資料、積載状態の図、出発地から目的地までの経路、運行予定日、現在の許可証をそろえると話が進みやすくなります。これらは相談のための基礎資料です。正式な添付書類や提出方法は、それぞれの申請先の案内に従って確認してください。 図面では、貨物そのものの長さと、積載後の全長を混同しないようにします。資料によって寸法が違う、車両の組合せが古いままといった状態では、申請内容の修正を余儀なくされます。荷主、運行管理者、申請担当者が同じ資料を使えるよう、作成日や変更点を共有しておくことがポイントです。 必要な許可が複数ある場合は、それぞれの審査・受領まで見込んで日程を組みます。申請しただけで運行できるとは考えず、必要な手続きが完了し、実際の計画に合う条件が確認できてから出発を判断してください。 手続きの切り分けに迷うときは、配車を確定する前に相談を 自社で必要な制度を判断でき、申請先との確認や資料作成も行える場合は、自社で手続きを進めることも可能です。一方、長尺物を初めて運ぶ、既存の特車の許可が使えるか分からない、車両や搬入口を変更する場合は、配車を確定する前の相談が役立ちます。 相談の際は、「特車の申請をお願いしたい」と伝えるだけでなく、①何を、②どの車両で、③どこからどこへ、④いつ運ぶのか、を伝えましょう。積載条件と経路を併せて確認することで、書類を作る前に整理すべき点が見えてきます。 特殊車両通行許可と制限外積載許可は、どちらか一方を取得すればすべて解決する関係ではありません。車両、貨物、積載方法、経路を具体化し、それぞれに必要な手続きを確かめることが、無理のない運行準備につながります。
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労働条件通知書を渡していないときは?中小企業の確認と整備の進め方
「採用時は口頭で説明しただけ」「以前から働くパートには、労働条件通知書を渡していない」。従業員から書面を求められ、何から確認すればよいか迷う経営者の方もいるのではないでしょうか。 労働条件のうち法律で定められた事項は、契約を結ぶ際に、原則として書面を交付して明示する必要があります。交付漏れに気付いたら、書類の日付だけを整えるのではなく、採用時の約束と現在の働き方を確かめ、速やかに整備することが大切です。 口頭で合意していても、必要な条件の明示は省略できません 雇用契約は、働くことと賃金を支払うことについて合意があれば、書面がなくても成立する場合があります。しかし、契約が成立していることと、会社が労働条件を適切に明示していることは別の問題です。 労働基準法第15条に基づき、会社は労働契約を結ぶ際に労働条件を明示しなければなりません。契約期間、就業場所と業務、始業・終業時刻や休日、賃金の計算・支払方法、退職に関する事項などは、原則として書面の交付が必要です。正社員だけでなく、パートやアルバイトも対象になります。 書面の名称が必ず「労働条件通知書」でなければならないわけではありません。必要事項を記載した雇用契約書を本人に交付していれば、通知書の役割を兼ねられます。一方、会社が署名済みの契約書を保管しているだけで、本人に控えを渡していない場合は、交付状況を確認する必要があります。 求人票を見せた、就業規則を事務所に置いたという事情だけで、個々の従業員への明示がすべて済んだと判断しないようにしましょう。その人に適用する条件が分かる書面になっているかが重要です。 最初に、交付漏れと労働条件の食い違いを分けて確認します 交付漏れに気付いたら、対象者、入社日、契約期間、最後に契約を更新した日、書面の有無を整理します。会社に書面があるのか、本人へ渡したのか、内容が現在も有効なのかを分けて確認してください。 次に、求人票、採用時のメール、面接時の記録、過去の契約書、就業規則、給与明細、勤怠記録を照合します。契約書のひな形に数字を入れる前に、何を約束し、どのように勤務してきたかを把握するためです。 特に、賃金、週の勤務日数、勤務時間、勤務地、担当業務、契約期間は、本人と認識が一致しているかを確かめます。「会社では週4日のつもりだったが、本人は週3日の契約と考えている」といった食い違いがあれば、通知書を一方的に渡すだけでは解決しません。 例えば、入社から半年のパート社員に通知書を渡していなかった場合、毎月のシフトだけで契約上の勤務日数を決めつけず、採用時の説明や本人とのやり取りを確認します。シフト上の実績と、約束した勤務条件は、必ずしも同じではありません。 今から整える書面に、未確認の条件を入れないようにします 確認した条件を基に、厚生労働省のモデル様式などを参考にして書面を作成します。作成・交付の日と、条件が適用される期間を区別し、実際には渡していない過去の日付を交付日として記録することは避けてください。 現在の書面を交付しても、過去の明示義務違反がなかったことになるわけではありません。いつ漏れに気付き、何を確認し、いつ交付したかという経緯も残します。過去からの条件が不明な場合は、事実を確認せずに入社時までさかのぼる内容を断定しないことが大切です。 また、交付漏れの是正と労働条件の変更は区別します。例えば、これまで支払っていた手当をなくす、勤務日数を減らすといった変更を、通知書の整備に紛れ込ませてはいけません。条件を変更したいときは、合意や就業規則との関係などを別に検討する必要があります。 労働条件通知書は会社が条件を知らせる書面であり、本人の署名がないことだけで直ちに明示が無効になるものではありません。ただし、受領の確認と、条件変更への同意は意味が異なります。受取欄への署名だけで、すべての変更に同意したと扱わないようにしましょう。 本人が内容に異議を述べた場合は、どの項目が違うのかを聞き、確認資料と照合します。署名を急がせず、会社と本人の説明が分かれる点を記録して、対応を相談してください。 古いひな形では、現在必要な明示事項が不足することがあります 2024年4月から、労働条件明示のルールが変わっています。労働契約の締結と有期労働契約の更新の際には、雇入れ直後の就業場所・業務だけでなく、その「変更の範囲」の明示も必要です。 例えば、採用時は本店勤務であっても、契約期間中に別の店舗への異動を予定するなら、その範囲を検討します。勤務地や業務を限定して合意している場合は、その内容を踏まえます。「会社の定める場所・業務」と書けば、過去の約束にかかわらず自由に変更できるわけではありません。 有期契約では、更新の有無や判断基準に加え、通算契約期間または更新回数の上限の有無と、上限がある場合の内容も確認します。初回契約の後に更新上限を新設・短縮する場合は、その理由をあらかじめ説明する必要があります。通知書の空欄を埋めるために、突然上限を設けることは避けましょう。 無期転換申込権が発生する契約の更新時には、申込機会と無期転換後の労働条件の明示も必要です。また、パート・有期雇用労働者には、昇給、退職手当、賞与の有無と、雇用管理に関する相談窓口についても、書面の交付等による明示が求められます。 さらに、2026年10月1日からは、パート・有期雇用労働者の雇入れ時に、通常の労働者との待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨も、書面の交付等で明示する必要があります。2024年の改正に対応した書式でも、この項目が入っているか確認してください。 なお、2024年4月以前から続く無期契約について、今回の改正だけを理由に全員への再交付が一律に義務付けられたわけではありません。以前からの交付漏れなのか、改正後に締結・更新した契約の記載不足なのかを区別して確認しましょう。 交付方法と、次の採用・更新で漏れない仕組みを決めます 原則は書面の交付ですが、本人が希望した場合には、電子メール等による明示も認められています。その際は、本人が受け取った記録を出力して書面にできる必要があります。会社の都合だけで電子化せず、希望を確認した記録と送信内容を残しましょう。 例えば、本人の希望を確認して通知書のPDFをメールに添付する場合は、宛先、添付ファイル、送信日を確認し、受信して内容を確認できるかも確かめます。社内画面を一時的に見せただけで、交付を済ませたことにしないようにしてください。 再発防止には、採用を決める人、条件を確認する人、交付する人を明確にします。採用時のチェック項目に通知書の交付を入れ、有期契約では満了日から逆算して更新条件を検討する仕組みを整えましょう。ひな形の更新日や、誰が修正を承認するかも決めておくと、古い書式の使い回しを防げます。 当事務所では、人事・労務全般の相談と、就業規則の作成・変更を取り扱っています。通知書に書く条件と就業規則、実際の運用が合っているか迷う場合は、関連資料をそろえてご相談ください。会社設立・開業支援では雇用契約書の作成も取り扱っており、初めて従業員を採用する際の書類整備についても相談できます。 約束した条件が曖昧なときは、交付前に相談しましょう 条件が明確で、会社と本人の認識が一致している場合は、公的なモデル様式を参考に社内で整備を進められることもあります。一方、口頭の約束と給与が違う、契約期間が分からない、更新を繰り返している、書面の整備と同時に条件を変更したい場合は、交付前の確認が大切です。 相談時には、対象者ごとの採用・更新の経緯、求人票、残っている契約書、就業規則、給与明細、勤怠記録を用意します。不足資料があっても、分かっている事実と未確認の点を分けて伝えると、次に確かめる事項を整理しやすくなります。 当事務所は、労務相談のみの契約にも対応しています。保険手続きや給与計算を社内で続けながら、採用・更新時の判断について相談することも可能です。必要な支援範囲と費用は、個別にご相談ください。 豊島区の中小企業で労働条件通知書の交付漏れに気付いたら、まず、誰に何を約束したかを確かめましょう。実態に合う書面を本人へ交付し、次の採用・更新まで見据えて管理方法を整えることが、認識の食い違いを減らす一歩になります。
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役員貸付金が増えたらどうする?会社と社長のお金を整理する確認ポイント
「決算書を見ると、社長への貸付金が年々増えている」「会社の口座から生活費を出していたが、どう整理すればよいのか」。会社と経営者のお金が混在すると、帳簿上の残高と、本人が認識している借入額が食い違うことがあります。 役員貸付金を整理するときは、残高を消す方法から考えるのではなく、何に使ったお金なのかを確かめることが出発点です。中小企業の経営者に向けて、取引の確認、利息の扱い、返済を進める際の注意点を解説します。 役員貸付金は、会社が役員に貸しているお金です 役員貸付金とは、会社が社長などの役員に貸し付けているお金です。会社の決算書では、返済を受ける権利として資産に計上されます。反対に、社長が個人のお金を会社へ貸した場合は、会社にとって「役員借入金」という負債になります。誰が誰に貸しているのかを、最初に確認しましょう。 社長が株式をすべて持っている会社でも、会社と個人の財産は別です。会社の口座から個人の生活費を出したからといって、その支出が会社の経費になるわけではありません。会社のカードで私的な買い物をした場合も、事業の支払いと分けて処理する必要があります。 ただし、役員貸付金として記帳されている金額が、すべて実際の貸付けとは限りません。会社の仕事に使った支出について資料が届かず、処理が保留されたものや、経費精算の行き違いが含まれている可能性もあります。科目名だけで判断せず、取引の内容と証拠資料を照合することが大切です。 残高を整理する前に、お金の使い道を確認します まず、役員貸付金の総勘定元帳を確認します。総勘定元帳は、勘定科目ごとに取引の内容や金額、残高の動きを記録した帳簿です。前期から繰り越した金額と、今期に増えた金額、返済として減った金額を分けると、確認すべき取引が見えてきます。 例えば、会社口座から引き出した30万円について、20万円は個人の生活費、10万円は会社の備品購入だったとします。この場合、30万円を一括して扱うのではなく、それぞれの使い道を確認します。備品購入分も、領収書等があれば何でも当期の経費になるということではなく、購入時期や物品の内容に応じた処理が必要です。 上記のような支出が毎月ある場合には、手取りで20万円の役員報酬を支給する必要があることを示しています。もし「役員借入金」が多額にあるときには、役員報酬が仮に0円であっても、役員借入金の返済として会社から個人にお金を引き出すことができます。 出金の記録に、領収書、カード明細、振込先の情報などを対応させます。会社の支出なら、何の業務で使ったかも説明できるようにしましょう。「会社のために使ったはず」という記憶だけでは、適切な処理を判断しにくくなります。 法人税では、カード明細しかない場合でも支払先、支払内容が明確であれば、損金(経費)になります。その一方、消費税で仕入税額控除をするには、領収書等に記載のあるインボイス登録番号の確認が必要です。必ず領収書等もセットで保管ください。 過年度から残っている金額は、当時の帳簿や申告への影響も確認します。資料が見つかったからといって、過去の支出をまとめて今期の経費に振り替えられるとは限りません。いつの取引なのか、既にどのように申告しているのかを税理士に伝えてください。 会計処理をするにあたり、支出不明な支払いを「役員貸付金」で処理され、そのまま残ってしまうことがあります。税理士事務所としっかり連携を取りつつ、会社側でも経費の計上漏れがないかを試算表から大まかに確認することも大切です。 もし過去の大きな経費の支出が「役員貸付金」で処理され、経費が計上漏れになっていた場合には、「更正の請求」という方法で税金を還付してもらうことができます。更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。 当事務所では、日々の会計・税務の疑問にお応えし、帳簿から会社の業績や改善点を一緒に検討しています。役員貸付金についても、残高の数字だけでなく、その内訳と増えた経緯を共有することが、確認すべき点を整理する手がかりになります。 無利息のままにせず、貸付条件と税務を確認します 実際に会社が社長へお金を貸している場合は、貸付額、貸付日、利率、返済期限、返済方法を確認します。契約書等の記録と、実際の送金・返済の動きが一致しているかも重要です。書面を用意しただけで、その取引が税務上問題なく扱われるわけではありません。 会社が役員へ無利息や低い利息で貸し付けると、原則として、税務上計算される利息と実際に支払う利息との差額が、役員への給与として課税される問題があります。元本を後で返す予定であっても、利息の確認は別に必要です。 国税庁の案内では、会社が外部から借りた資金を貸し付けた場合は、その借入金の利率を用います。それ以外については貸付年に応じた利率が示され、令和8年中の貸付けは年1.3%とされています。すべての残高に、毎年その年の利率を一律に当てはめるという意味ではありません。 一方、合理的と認められる平均調達金利等を基にした貸付けや、一定の要件を満たす災害・病気の際の貸付けなど、給与として課税しなくてもよい扱いもあります。単に「少額だから大丈夫」とせず、適用できる条件を確認しましょう。 利息について給与課税が生じる場合は、源泉所得税への対応に加え、会社側で役員給与を損金に算入できるかも検討が必要です。損金とは法人税の計算で差し引ける費用等で、帳簿上の費用と必ずしも一致しません。個人側と会社側の扱いを分けて確かめることが大切です。 返済は、会社と個人の資金の両方を見て計画します 実際の貸付残高が確認できたら、社長個人の収入と生活費、既存の支払いを踏まえ、返済可能な金額と時期を考えます。返済のために会社から新たな借入れを繰り返す計画では、残高の改善につながりません。 例えば、説明用の架空例として、貸付残高が240万円あり、社長個人が毎月5万円を元本返済に充てられるとします。新たな貸付けがなければ、元本の返済には48か月かかります。利息の支払いは別に見込み、途中で収入や支出が変わった際の見直しも考えておきます。 返済額を決めた後は、個人口座から会社口座への振込みなど、履歴を確認できる方法で管理します。元本返済と利息の支払いを区別し、帳簿の残高とも照合しましょう。年に一度だけでなく、月ごとに残高を確認すると、新たな私的支出にも気づきやすくなります。 「役員報酬を増やして返せばよい」という方法にも注意が必要です。報酬の増額には、法人税上の損金算入要件があり、個人の所得税や社会保険料にも影響します。会社から出すお金が増えるため、会社の資金繰りも含めて検討しなければなりません。 また、会社が返済を免除すれば、単なる帳簿整理では済みません。免除による利益が役員給与に当たり、会社側でも損金算入が問題になる場合があります。実際の返済や根拠の確認なしに、残高を経費へ振り替えたり、消したりする処理は避けてください。 残高が増える仕組みを見直し、早めに相談しましょう 再発を防ぐには、会社用と個人用の口座・カードを分けることが基本です。会社の現金を引き出した場合は、使途の記録と精算の期限を決めます。業務上の立替えも、金額や内容をその都度整理すると、未精算のまま残ることを減らせます。 社内で取引の内容を確認でき、精算や返済の記録も整っているなら、経理担当者が通常の処理を進め、判断が必要な部分を税理士に確認する方法もあります。一方、数年分の残高がある、資料がない、利息を計算していない、返済の見通しが立たない場合は、決算直前まで待たず相談することが望まれます。 相談時は、直近の決算書、役員貸付金の元帳、会社と個人の関連する入出金記録、貸付契約書、返済履歴などを用意します。すべてそろわなくても、「いつから増えているか」「何に使ったか」「資料がないのはどの取引か」を分けて伝えると、次の確認を進めやすくなります。 当事務所は、中小企業の税務申告、会計代行、資金繰りの相談を取り扱っています。会社の帳簿と今後の支払予定を共有いただくことで、税務処理と資金面の課題を併せて考えられます。相談は予約制で無料とご案内していますので、まずは現在の状況をお聞かせください。依頼する業務の範囲や費用は、相談時に確認しましょう。 役員貸付金の整理では、取引の実態を確かめ、利息や税金を確認し、無理のない返済と日々の管理につなげる順序が大切です。会社と個人のお金の動きを説明できる状態に整えることから始めてみてください。
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有給休暇を年5日取らない社員には?中小企業の時季指定と期限前の対応
「有給休暇を取るよう伝えているのに、休まない社員がいる」「取得期限が近いのに、まだ2日しか休んでいない」。少人数で仕事を回す会社では、本人の希望を待つうちに、年5日の取得が難しくなることがあります。 対象となる従業員には、会社が年5日の年次有給休暇を実際に取得させる必要があります。「本人が希望しなかった」という説明だけで済ませず、期限と不足日数を確かめ、業務の調整と取得日の指定を進めることが大切です。この記事では、在職中の従業員の取得が進まない場合を中心に、会社の対応を解説します。 最初に、誰の取得期限がいつなのかを確かめます 年5日の取得を確保する義務は、法定の年次有給休暇が年10日以上付与される従業員が対象です。会社の規模を問わず適用され、条件を満たすパートや、労働基準法上の管理監督者も含まれます。「正社員だけ」「管理職以外」といった区分だけで管理しないようにしましょう。 原則として、年次有給休暇を付与した日である「基準日」から1年以内に、5日を取得させます。例えば、2026年4月1日が基準日であれば、通常は2027年3月31日までが確認する期間です。会社の決算月や給与計算の締日と一致するとは限りません。 入社日ごとに付与している会社では、従業員ごとに期限が異なります。全員の状況を年末にまとめて確認するだけでは、その前に期限が来る人を見落とすおそれがあります。まず、氏名、基準日、取得期限、取得済み日数を一覧にしてみましょう。 一方、入社時の前倒し付与や、全社員の基準日をそろえる制度では、管理期間が重なり、特別な計算が必要になる場合があります。付与日を変更した年は、通常の1年間の管理をそのまま当てはめず、制度と記録を確認してください。 残日数と、年5日に数える取得日数を分けて確認します 有給休暇の残高が分かっていても、それだけでは年5日の取得状況は分かりません。前年からの繰越しや今年の付与、時効による消滅が残高に影響するためです。取得日を管理期間に当てはめ、実際に休んだ日数を確認します。 本人が申し出て取得した年休と、労使協定に基づく計画的付与で取得した年休は、年5日に数えます。既に5日以上取得している人に、この義務を理由として会社がさらに取得日を指定する必要はなく、指定することもできません。 半日単位の年休は、1回につき0.5日として数えます。一方、時間単位の年休は、取得時間を合計して1日分になっても、年5日の取得日数には算入できません。年休残高の計算と、取得義務の達成確認では、集計方法が異なる点に注意が必要です。 また、もともとの休日は年休の取得日にはなりません。夏季休暇や慶弔休暇なども、法定年休とは別の会社独自の特別休暇であれば、通常、年5日には数えません。名称だけで判断せず、就業規則上の位置付けと、実際の勤怠区分を確かめましょう。 例えば、1日単位の年休を3日、半日年休を2回取得していれば、算入できる日数は4日です。これに時間単位年休を8時間取得していても、年5日の取得確保のためには、なお1日分が必要です。時間休を管理するシステムでは、この二つを区別して表示できるかも確認してください。 不足分は、本人の意見を聴いて取得日を指定します 取得が進んでいない場合は、まず、休みたい時期と休めない理由を本人に確認します。「担当業務を任せる人がいない」「申請すると上司に嫌な顔をされる」といった事情があれば、単に取得を促すだけでは進みません。業務分担や職場の運用も見直す必要があります。 本人からの申請などで5日に達しないときは、不足分について、会社が取得日を指定する「時季指定」を行います。その際は、あらかじめ本人の意見を聴き、できる限り希望に沿うよう努めなければなりません。会社の都合だけで日程を通知して終わりにしないことが大切です。 希望を確認した日、候補日、指定した日を記録し、本人と上司、勤怠担当者に共有します。年5日を取得させるための会社による時季指定は、本人が請求した取得日を別の日へ変更する「時季変更権」とは異なる仕組みです。どちらの対応を行っているか、説明をそろえましょう。 会社が時季指定を行う場合は、対象者や指定方法などを就業規則に定める必要があります。規定が見当たらない、古い申請書しかないという場合は、実際の運用と併せて確認してください。当事務所では、有給休暇の管理方法に関する相談と、就業規則の作成・変更を取り扱っています。既存の規定で対応できるか迷う段階から、相談事項を整理していただけます。 取得予定を決めたら、実際に休めるよう業務を調整します 時季指定をしただけでは、取得義務を果たしたことになりません。指定日に本人が出勤し、会社が仕事をさせれば、その日を年休取得済みとして扱うことはできません。管理簿に日付を入れることと、実際に休ませることを結び付ける必要があります。 例えば、従業員12人の会社で、ある社員の取得期限まで2か月あり、取得済み日数が2日だったとします。会社は残り3日について本人の希望を確認し、月末の請求業務を避けた日程を検討します。 そのうえで、請求処理の手順を別の担当者に共有し、休暇中の問い合わせ窓口を上司へ変更します。本人に「休みの日もメールだけ確認して」と頼むと、年休中にも業務が発生するため、連絡先と仕事の受け手を先に決めることが大切です。 指定後に、本人が別の日の年休を取得したり、予定日に勤務が必要になったりした場合は、取得済み日数と今後の指定日を改めて確認します。変更の必要があるときは本人の意見を聴いて調整し、期限内の取得が不足しないよう、勤務表と管理簿を更新しましょう。 本人が「休みたくない」と言う場合も、その理由を聞き、制度を説明して、休める業務体制を検討します。本人の一筆をもらって取得義務を免れることはできません。話合いをしても取得につながらないときは、期限の直前まで待たず、具体的なやり取りを添えて相談してください。 取得が不足している対象者の確認をしていると、例年、おおよそきちんと取得している人、取得できていない人の傾向がわかるようになります。傾向がつかめれば、期限間際よりも前に対象者に声掛けが可能になりますので、きちんと確認しましょう。 期限を過ぎた不足は、記録を変えずに対応を相談します 既に取得期限を過ぎている場合、翌年に余分に休ませても、過去の期間の不足がさかのぼって解消するわけではありません。実際には働いた日を後から年休に書き換えることも避けてください。 まず、対象者、管理期間、実際の取得日数、不足した経緯を整理します。取得記録の反映漏れなのか、日数の数え方を誤ったのか、実際に休めなかったのかで、確認すべき内容が異なります。休職や育児休業などがある場合も、期間と勤務の実態を伝え、個別に扱いを確認しましょう。 同時に、今後の取得予定を立て、同じことを繰り返さない管理へ改めます。例えば、毎月の勤怠確認の際に、期限まで3か月以内で取得が5日に届いていない人を抽出する方法があります。この3か月は法律上の一律の期限ではなく、会社の管理上の目安です。繁忙期が長い会社では、さらに早い確認をしましょう。これも対象者の傾向をつかめば解消されやすいです。 年次有給休暇管理簿には、従業員ごとの取得時季、日数、基準日を記録します。現在の取扱いでは、該当する期間中と、その期間の満了後3年間の保存が必要です。勤務表や給与計算の記録と照合できるよう、変更前後の経緯も残しておきましょう。 期限と不足日数が分かる資料をそろえて相談しましょう 対象者と管理期間が明確で、本人の希望を踏まえて取得日を決め、業務も調整できる場合は、社内で対応を進められます。一方、期限が迫っている、時間休を年5日に含めていた、本人が指定日に出勤してしまう、前倒し付与で期限が分からない場合は、早めの確認が必要です。 相談時には、年次有給休暇管理簿、就業規則、入社日と付与日の分かる資料、勤務表、勤怠記録、本人との連絡履歴を用意します。「有給休暇が取れていない」という説明に加え、誰の期限がいつで、何日不足しているかを示すと、対応を具体化しやすくなります。 当事務所は、労務相談のみの契約にも対応しています。給与計算を自社で続けながら、取得日の指定や規程の運用について相談することも可能です。給与・賞与計算の代行も取り扱っているため、休暇の記録と給与処理の連携に課題がある場合は、ご希望の依頼範囲をお伝えください。 豊島区の中小企業で年休の取得管理に悩む経営者の方は、まず、従業員ごとの期限と不足日数を確認してみましょう。本人への声掛けに加えて、休む日と仕事を引き受ける人まで決めることが、無理なく取得を進めるための具体的な一歩になります。
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退職者が貸与品を返さないとき給与は保留できる?中小企業の対応と精算の注意点
「退職した社員からパソコンが返ってこない」「制服や鍵を返すまで、最後の給与を払わなくてもよいのか」。退職時の貸与品の回収は、担当者が少ない中小企業では経営者自身が対応することもある問題です。 会社の物を返してもらう必要があっても、それを理由に、既に働いた分の給与を一方的に保留することはできません。貸与品の返却と給与の支払いをそれぞれ進めることが、問題を広げないための基本です。この記事では、退職日が確定している場合を中心に、返却依頼の進め方と最後の給与を精算する際の注意点を解説します。 貸与品が戻らなくても、給与の支払義務は残ります 労働基準法第24条は、賃金を原則として全額支払うことを定めています。会社が貸したパソコン、携帯電話、制服、鍵などが未返却でも、既に発生している賃金の支払いを、返却のための条件にすることは避けなければなりません。 例えば、最後の給与が20万円で、未返却のパソコンを会社が10万円と評価した場合でも、その10万円を当然に差し引けるわけではありません。「返却しないなら給与から引く」と通知しただけで、控除が認められるものでもありません。 税金や社会保険料など、法令に基づく控除は別に確認します。一方、未返却品の代金や損害額を会社が一方的に決めて控除することは、これらの通常の控除とは異なります。就業規則や貸与時の誓約書に記載があることだけを理由に、自由に相殺できると考えないようにしましょう。 本人が「給与から引いてよい」と述べた場合も、金額と根拠に争いがないか、本人の自由な意思に基づくものかなど、慎重な確認が必要です。署名をもらえば必ず有効になるという扱いはせず、判断に迷う場合は控除前に相談してください。 最初の連絡では、返す物と返し方を具体的に伝えます 返却を求める前に、会社の貸与記録と、既に返された物を照合します。パソコン本体だけでなく、充電器、社員証、入館カード、鍵、書類などを確認し、誰が受け取ったかも調べましょう。別の上司に返却済みなのに、未返却として請求してしまうことを防ぎます。 返却依頼は、「貸した物を全部返してください」だけで終えず、品名、管理番号、付属品、返却先、担当者、期限を明示します。退職者が遠方にいる、療養中で来社が難しいなどの事情があれば、郵送や配送も含め、実行できる方法を相談します。 送料をどちらが負担するか、精密機器をどう梱包するかも先に決めると、返却が止まる理由を減らせます。返送伝票を同封する方法や、追跡できる配送方法の利用も検討できます。送料等の負担を会社が当然に本人へ転嫁できるとは限らないため、貸与時の取り決めも確認します。 例えば、「ノートパソコン1台と充電器を、○月○日までに総務担当宛てに返送してください。返送が難しい場合は、○日までにご事情と返却可能日をご連絡ください」と伝える方法があります。期限は、配送に要する日数や本人の事情を踏まえて設定します。 連絡日時、送った内容、本人の回答、配送状況を記録します。窓口を一人にまとめると、経営者と担当者が異なる説明をすることも防げます。返却後は受領日と品物の状態を確認し、未返却の一覧を更新しましょう。 最後の給与は、通常の支払日だけで判断しません 退職者から賃金の支払いを請求された場合、労働基準法第23条により、原則として請求から7日以内に支払う必要があります。「会社は月末締め・翌月25日払いだから」と、通常の給与日まで当然に待ってもらえるわけではありません。 一方、退職したら請求の有無を問わず、すべての給与を必ず7日以内に支払うという意味でもありません。請求がない場合も、通常の支払日を守って精算します。請求が届いたら、受けた日、請求内容、回答した内容を記録し、担当者と支払期限を共有してください。 賃金額に争いがある場合も、異議のない部分は、この7日以内に支払う必要があります。例えば、基本給部分に争いはなく、残業時間の一部だけ確認が必要なら、その確認を理由に給与全体の支払いを止めないようにします。 ここでいう争いは、賃金等そのものに関するものです。パソコンが返ってこないことを理由に、「会社と本人で争いがあるので給与は払わない」と広く捉えることはできません。 給与担当者は、最終出勤日と退職日、勤怠、有給休暇、手当、法定控除を確認します。有給休暇を取得してから退職する場合、最終出勤日より後も雇用が続いていることがあります。貸与品を最後に使った日だけで、給与や保険の処理に用いる退職日を決めないようにしましょう。 当事務所では、給与・賞与計算の代行と、退職に伴う社会保険・労働保険の届出を取り扱っています。返却のやり取りとは別に、給与の確認や各種届出の手続きをご希望の場合は、退職日や支払請求の状況を添えて、ご依頼の範囲についてお気軽にご相談ください。 紛失や破損が判明しても、購入代金をそのまま請求できるとは限りません 本人から「なくした」「壊れている」と連絡があった場合は、いつ、どこで、どのような状況で起きたのかを確認します。貸与時の状態、使用期間、管理方法、本人の説明、会社の指示などを整理し、未返却なのか、紛失・破損なのかを区別します。 業務で使う物が破損したからといって、その購入代金の全額を当然に従業員へ負担させられるわけではありません。本人の責任の有無や程度、会社側の管理状況、実際の損害など、個別の事情を踏まえた判断が必要です。古い機器なのに、新品の購入価格をそのまま損害額とすることにも注意が必要です。 また、労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金を定めたり、損害賠償額を予定したりする契約を禁止しています。「退職時に制服を返さなければ一律5万円」などの定めは、名目だけで判断せず、内容を確認しなければなりません。 この規定は、実際に生じた損害について、適法な範囲で請求することまで一律に禁止するものではありません。ただし、損害賠償を請求できるかという問題と、それを給与から控除できるかという問題は別です。本人が責任や金額を争っている場合は、給与計算の中で解決しようとせず、弁護士への相談を検討しましょう。 返却を待つ間も、情報と鍵の管理を進めましょう パソコンや携帯電話の未返却では、物品の回収に加えて、会社の情報を守る対応も必要です。退職日と業務上の必要性を踏まえ、会社が管理するアカウントや入館権限を確認し、利用停止や権限変更を進めます。退職前で業務が残っている場合は、引継ぎに支障が出ない時期も考慮します。 ただし、会社の機器だからといって、本人の私的なアカウントやデータを無制限に閲覧・削除してよいわけではありません。遠隔操作や初期化は、会社の規程、管理権限、データ保全への影響を確認し、必要に応じてシステム管理者や専門家へ相談してください。 鍵の未返却では、返却を待つだけで足りるか、施設の管理者と検討します。顧客情報や個人情報の持出しが疑われる場合も、単なる貸与品の回収として処理せず、社内の責任者へ速やかに共有します。返却の連絡と並行して、会社側で行える管理を進めることが大切です。 給与を止める前に、返却記録と社内ルールを確認しましょう 返却対象が明確で、本人と連絡が取れ、返送の予定も決まっている場合は、社内で回収と給与精算を進められることもあります。一方、返却と給与支払いを交換条件にしたい、弁償額を控除したい、本人と責任や金額が食い違う場合は、処理を決める前に相談しましょう。 相談時には、貸与品の一覧と受領書、就業規則・賃金規程、雇用契約書、退職日が分かる資料、勤怠記録、本人との連絡履歴を用意します。給与の支払請求を受けている場合は、その日付も伝えてください。資料がそろわないときも、分かっていることと不明な点を分けて共有できます。 当事務所は、人事・労務全般の相談と、就業規則の作成・変更に対応し、労務相談のみの契約も可能です。給与計算は社内で行いながら、退職時の説明や規程の運用を相談したい場合も、必要な支援をご提供できます。具体的な支援範囲と費用は、ご相談ください。 豊島区の中小企業で貸与品の未返却に困っている経営者の方は、まず、返してもらう物と給与の支払期限を別々に整理してみましょう。今回の回収を進めるとともに、貸与時の記録、退職時の返却案内、給与担当者との連絡方法を整えることが、次の退職時の行き違いを減らすことにつながります。
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残業時間の15分未満切り捨てはできる?中小企業の勤怠集計と見直しの進め方
「残業は15分単位で計算している」「給与ソフトの設定を以前から変えていない」日々の勤怠集計で、このような運用を続けている会社は、実際に働いた時間が給与へ反映されているかを確認する必要があります。 1日ごとに15分未満の労働時間を一律に切り捨て、その分の賃金を支払わない扱いは認められません。一方、月の合計時間については、限定された端数処理の取扱いがあります。この記事では、両者の違いと、中小企業が勤怠記録から給与計算までを点検する方法を解説します。 毎日の切り捨ては、短い時間でも賃金の不足につながります 例えば、午後6時が終業時刻の社員について、会社の指示で午後6時12分まで仕事をしたのに、給与計算では午後6時退勤として扱っていないでしょうか。この12分が労働時間に当たるなら、「15分に満たない」という理由で除外することはできません。 問題となるのは、紙のタイムカードだけではありません。勤怠システムの「丸め」「端数処理」などの機能で、退勤時刻を15分単位で切り下げたり、始業時刻を切り上げたりすることで、実際に働いた時間が短く集計される場合もあります。 「残業申請は30分以上から」というルールも注意が必要です。申請できる単位を理由に、実際の労働時間を記録・申告できない状態にしてはいけません。短い作業が発生しているなら、その内容と時間を把握し、賃金計算に反映する必要があります。 この考え方は、時給制のパートだけでなく、月給制の社員にも関係します。毎月の給与が定額でも、追加の労働に対する賃金や割増賃金の確認を省けるわけではありません。固定残業代を支給している場合も、切り捨てる前の実際の労働時間を把握し、不足額の有無を確かめます。 月の合計に認められる取扱いを、日々の集計へ広げないようにします 行政上、1か月の時間外労働、休日労働、深夜業のそれぞれの合計時間に1時間未満の端数がある場合、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる取扱いは、賃金不払いの法違反として扱わないとされています。 ここで重要なのは、日々の時間を正しく把握して合計した後の、限定された取扱いであることです。毎日の残業を15分ずつ丸めてから月の合計を出す方法や、月合計でも端数を常に切り捨てる方法まで認めるものではありません。 例えば、1か月の法定時間外労働の合計が20時間20分だった場合を考えます。20時間40分なら21時間、20時間30分でも21時間に切り上げます。切り捨てだけを採用することはできません。 また、時間外労働・休日労働・深夜業を一括して丸めるのではなく、それぞれの合計について扱います。通常の勤務時間を含む月の総労働時間を、同じ方法で自由に切り捨ててよいという意味でもありません。 上記は一つの方法で、この取扱いを必ず採用する必要はありません。日々の労働時間を分単位で集計し、そのまま賃金計算に反映する運用もできます。既に実時間で支払っている会社が端数処理を導入する場合は、従来の労働条件や規程との関係も確認し、一方的に支給額を減らす変更を進めないようにしましょう。 打刻時刻と労働時間の違いを、具体的な作業から確認します 端数処理をやめる際も、「打刻されている時間のすべてが労働時間」と機械的に決めるわけではありません。労働時間は、会社の指揮命令下に置かれている時間かどうかで判断します。本人の都合で早く出社し、自由に過ごしている時間などは、直ちに労働時間になるとは限りません。 一方、会社が始業前の朝礼や清掃を義務付けている場合や、職場で所定の服装への着替えを求め、業務に必要な準備をさせている場合は、その時間も確認が必要です。会社が定めた始業時刻より前だからという理由で、当然に除外することはできません。 終業後についても、指示された片付けや業務報告を、打刻後に行わせていないかを確かめます。会社の明確な指示がなくても、仕事量や納期、上司の認識などから黙示の指示があったと評価される場合があります。 記録に差があるときは、本人と上司に作業内容を確認し、必要に応じてパソコンの使用記録や業務連絡と照合します。私用の滞在時間を区別することと、業務時間を切り捨てることは異なります。判断の理由と修正内容を残すことで、翌月以降も同じ基準で確認しやすくなります。 当事務所では、残業手当の管理方法を含む人事・労務全般の相談に対応しています。日々の記録をどこまで労働時間として扱うか迷う場合は、システムの設定だけで結論を出さず、実際に求めている作業を相談事項として整理してください。 元の記録から給与明細まで、数字が変わる箇所をたどります 点検するときは、元の打刻記録、勤怠システムの集計結果、給与ソフトへ渡すデータ、給与明細を順に照合します。打刻は分単位でも、途中の表計算や給与ソフトで15分単位に変更されていることがあります。 例えば、通常の労働時間制で、1日8時間勤務を終えた後に、会社の指示で12分ずつ、月10日残業したとします。ほかに残業がなく、すべて法定時間外労働に当たるなら、合計は120分、つまり2時間です。毎日15分未満を切り捨てると、給与計算上はゼロになってしまいます。 割増賃金の計算の基礎となる時間単価を1,600円、割増率を25%とすると、この2時間に対する賃金は4,000円です。これは、深夜労働などがなく、固定残業代の支払いもない例であり、実際の計算では各社の賃金条件を確認してください。 この例のように、日々の端数を月末に合計すれば、まとまった時間になることがあります。「1回では数分だから」という感覚ではなく、切り捨て前後の数字を比べることが必要です。 また、集計した時間を小数へ換算する場合も確認してください。2時間30分は2.5時間であり、2.30時間ではありません。勤怠側が「時・分」、給与側が「小数時間」で受け取る仕組みなら、受渡しの形式が合っているかを確かめます。 当事務所では、給与・賞与計算の代行も取り扱っています。集計と給与計算の担当者が異なる会社では、どの資料を誰が確認するか、修正した時間をどのように給与へ反映するかも、依頼範囲を検討する際の確認点になります。 設定変更と過去の不足分の確認を、並行して進めましょう 問題に気づいたら、まず元の打刻記録、集計表、設定内容、給与明細などを保存します。設定を変更して以前の処理が分からなくなる前に、いつから、誰に、どの単位で端数処理をしていたかを整理してください。 そのうえで、今後の集計方法を見直すとともに、過去に賃金の不足が生じていないかを確認します。「来月から直す」と決めても、既に発生した不足分がなくなるわけではありません。対象期間や再計算の方法、追加支払いについて、記録と個別事情に即した検討が必要です。 従業員には、今後の記録方法、申請の手順、修正が必要な場合の窓口を説明します。過去分の確認が続いている段階では、確認済みのことと調査中のことを分けて伝え、根拠がないまま「未払いはない」と断定しないことが大切です。 勤務実態が明確で、元の記録と賃金条件を基に再計算できる場合は、社内で点検を進められることもあります。一方、長期間同じ設定を使っていた、元データが残っていない、従業員から請求を受けた、就業規則と実際の処理が異なる場合は、回答や精算方法を決める前に相談しましょう。請求をめぐって紛争がある場合は、内容に応じて弁護士への相談も検討します。 相談時には、就業規則・賃金規程、雇用契約書、元の勤怠記録、端数処理の設定画面、集計表、給与明細を用意します。記録が不足している場合も、不明な範囲をそのまま共有してください。 当事務所は、労務相談のみの契約や、就業規則の作成・変更に対応しています。給与計算を自社で続けながら、集計方法や規程の扱いを相談することもできます。必要な支援と費用については、依頼内容に応じてご相談ください。 残業時間の端数処理を見直す出発点は、元の記録が給与へ正しく届いているかを確かめることです。豊島区で労務管理に悩む経営者の方も、直近の給与1か月分を取り出し、日々の集計と月末の処理を分けて確認してみましょう。
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