士業コラム
残業時間の15分未満切り捨てはできる?中小企業の勤怠集計と見直しの進め方

残業時間の15分未満切り捨てはできる?中小企業の勤怠集計と見直しの進め方

「残業は15分単位で計算している」「給与ソフトの設定を以前から変えていない」日々の勤怠集計で、このような運用を続けている会社は、実際に働いた時間が給与へ反映されているかを確認する必要があります。

1日ごとに15分未満の労働時間を一律に切り捨て、その分の賃金を支払わない扱いは認められません。一方、月の合計時間については、限定された端数処理の取扱いがあります。この記事では、両者の違いと、中小企業が勤怠記録から給与計算までを点検する方法を解説します。

毎日の切り捨ては、短い時間でも賃金の不足につながります

例えば、午後6時が終業時刻の社員について、会社の指示で午後6時12分まで仕事をしたのに、給与計算では午後6時退勤として扱っていないでしょうか。この12分が労働時間に当たるなら、「15分に満たない」という理由で除外することはできません。

問題となるのは、紙のタイムカードだけではありません。勤怠システムの「丸め」「端数処理」などの機能で、退勤時刻を15分単位で切り下げたり、始業時刻を切り上げたりすることで、実際に働いた時間が短く集計される場合もあります。

「残業申請は30分以上から」というルールも注意が必要です。申請できる単位を理由に、実際の労働時間を記録・申告できない状態にしてはいけません。短い作業が発生しているなら、その内容と時間を把握し、賃金計算に反映する必要があります。

この考え方は、時給制のパートだけでなく、月給制の社員にも関係します。毎月の給与が定額でも、追加の労働に対する賃金や割増賃金の確認を省けるわけではありません。固定残業代を支給している場合も、切り捨てる前の実際の労働時間を把握し、不足額の有無を確かめます。

月の合計に認められる取扱いを、日々の集計へ広げないようにします

行政上、1か月の時間外労働、休日労働、深夜業のそれぞれの合計時間に1時間未満の端数がある場合、30分未満を切り捨て、30分以上を1時間に切り上げる取扱いは、賃金不払いの法違反として扱わないとされています。

ここで重要なのは、日々の時間を正しく把握して合計した後の、限定された取扱いであることです。毎日の残業を15分ずつ丸めてから月の合計を出す方法や、月合計でも端数を常に切り捨てる方法まで認めるものではありません。

例えば、1か月の法定時間外労働の合計が20時間20分だった場合を考えます。20時間40分なら21時間、20時間30分でも21時間に切り上げます。切り捨てだけを採用することはできません。

また、時間外労働・休日労働・深夜業を一括して丸めるのではなく、それぞれの合計について扱います。通常の勤務時間を含む月の総労働時間を、同じ方法で自由に切り捨ててよいという意味でもありません。

上記は一つの方法で、この取扱いを必ず採用する必要はありません。日々の労働時間を分単位で集計し、そのまま賃金計算に反映する運用もできます。既に実時間で支払っている会社が端数処理を導入する場合は、従来の労働条件や規程との関係も確認し、一方的に支給額を減らす変更を進めないようにしましょう。

打刻時刻と労働時間の違いを、具体的な作業から確認します

端数処理をやめる際も、「打刻されている時間のすべてが労働時間」と機械的に決めるわけではありません。労働時間は、会社の指揮命令下に置かれている時間かどうかで判断します。本人の都合で早く出社し、自由に過ごしている時間などは、直ちに労働時間になるとは限りません。

一方、会社が始業前の朝礼や清掃を義務付けている場合や、職場で所定の服装への着替えを求め、業務に必要な準備をさせている場合は、その時間も確認が必要です。会社が定めた始業時刻より前だからという理由で、当然に除外することはできません。

終業後についても、指示された片付けや業務報告を、打刻後に行わせていないかを確かめます。会社の明確な指示がなくても、仕事量や納期、上司の認識などから黙示の指示があったと評価される場合があります。

記録に差があるときは、本人と上司に作業内容を確認し、必要に応じてパソコンの使用記録や業務連絡と照合します。私用の滞在時間を区別することと、業務時間を切り捨てることは異なります。判断の理由と修正内容を残すことで、翌月以降も同じ基準で確認しやすくなります。

当事務所では、残業手当の管理方法を含む人事・労務全般の相談に対応しています。日々の記録をどこまで労働時間として扱うか迷う場合は、システムの設定だけで結論を出さず、実際に求めている作業を相談事項として整理してください。

元の記録から給与明細まで、数字が変わる箇所をたどります

点検するときは、元の打刻記録、勤怠システムの集計結果、給与ソフトへ渡すデータ、給与明細を順に照合します。打刻は分単位でも、途中の表計算や給与ソフトで15分単位に変更されていることがあります。

例えば、通常の労働時間制で、1日8時間勤務を終えた後に、会社の指示で12分ずつ、月10日残業したとします。ほかに残業がなく、すべて法定時間外労働に当たるなら、合計は120分、つまり2時間です。毎日15分未満を切り捨てると、給与計算上はゼロになってしまいます。

割増賃金の計算の基礎となる時間単価を1,600円、割増率を25%とすると、この2時間に対する賃金は4,000円です。これは、深夜労働などがなく、固定残業代の支払いもない例であり、実際の計算では各社の賃金条件を確認してください。

この例のように、日々の端数を月末に合計すれば、まとまった時間になることがあります。「1回では数分だから」という感覚ではなく、切り捨て前後の数字を比べることが必要です。

また、集計した時間を小数へ換算する場合も確認してください。2時間30分は2.5時間であり、2.30時間ではありません。勤怠側が「時・分」、給与側が「小数時間」で受け取る仕組みなら、受渡しの形式が合っているかを確かめます。

当事務所では、給与・賞与計算の代行も取り扱っています。集計と給与計算の担当者が異なる会社では、どの資料を誰が確認するか、修正した時間をどのように給与へ反映するかも、依頼範囲を検討する際の確認点になります。

設定変更と過去の不足分の確認を、並行して進めましょう

問題に気づいたら、まず元の打刻記録、集計表、設定内容、給与明細などを保存します。設定を変更して以前の処理が分からなくなる前に、いつから、誰に、どの単位で端数処理をしていたかを整理してください。

そのうえで、今後の集計方法を見直すとともに、過去に賃金の不足が生じていないかを確認します。「来月から直す」と決めても、既に発生した不足分がなくなるわけではありません。対象期間や再計算の方法、追加支払いについて、記録と個別事情に即した検討が必要です。

従業員には、今後の記録方法、申請の手順、修正が必要な場合の窓口を説明します。過去分の確認が続いている段階では、確認済みのことと調査中のことを分けて伝え、根拠がないまま「未払いはない」と断定しないことが大切です。

勤務実態が明確で、元の記録と賃金条件を基に再計算できる場合は、社内で点検を進められることもあります。一方、長期間同じ設定を使っていた、元データが残っていない、従業員から請求を受けた、就業規則と実際の処理が異なる場合は、回答や精算方法を決める前に相談しましょう。請求をめぐって紛争がある場合は、内容に応じて弁護士への相談も検討します。

相談時には、就業規則・賃金規程、雇用契約書、元の勤怠記録、端数処理の設定画面、集計表、給与明細を用意します。記録が不足している場合も、不明な範囲をそのまま共有してください。

当事務所は、労務相談のみの契約や、就業規則の作成・変更に対応しています。給与計算を自社で続けながら、集計方法や規程の扱いを相談することもできます。必要な支援と費用については、依頼内容に応じてご相談ください。

残業時間の端数処理を見直す出発点は、元の記録が給与へ正しく届いているかを確かめることです。豊島区で労務管理に悩む経営者の方も、直近の給与1か月分を取り出し、日々の集計と月末の処理を分けて確認してみましょう。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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