労働条件通知書を渡していないときは?中小企業の確認と整備の進め方

「採用時は口頭で説明しただけ」「以前から働くパートには、労働条件通知書を渡していない」。従業員から書面を求められ、何から確認すればよいか迷う経営者の方もいるのではないでしょうか。
労働条件のうち法律で定められた事項は、契約を結ぶ際に、原則として書面を交付して明示する必要があります。交付漏れに気付いたら、書類の日付だけを整えるのではなく、採用時の約束と現在の働き方を確かめ、速やかに整備することが大切です。
口頭で合意していても、必要な条件の明示は省略できません
雇用契約は、働くことと賃金を支払うことについて合意があれば、書面がなくても成立する場合があります。しかし、契約が成立していることと、会社が労働条件を適切に明示していることは別の問題です。
労働基準法第15条に基づき、会社は労働契約を結ぶ際に労働条件を明示しなければなりません。契約期間、就業場所と業務、始業・終業時刻や休日、賃金の計算・支払方法、退職に関する事項などは、原則として書面の交付が必要です。正社員だけでなく、パートやアルバイトも対象になります。
書面の名称が必ず「労働条件通知書」でなければならないわけではありません。必要事項を記載した雇用契約書を本人に交付していれば、通知書の役割を兼ねられます。一方、会社が署名済みの契約書を保管しているだけで、本人に控えを渡していない場合は、交付状況を確認する必要があります。
求人票を見せた、就業規則を事務所に置いたという事情だけで、個々の従業員への明示がすべて済んだと判断しないようにしましょう。その人に適用する条件が分かる書面になっているかが重要です。
最初に、交付漏れと労働条件の食い違いを分けて確認します
交付漏れに気付いたら、対象者、入社日、契約期間、最後に契約を更新した日、書面の有無を整理します。会社に書面があるのか、本人へ渡したのか、内容が現在も有効なのかを分けて確認してください。
次に、求人票、採用時のメール、面接時の記録、過去の契約書、就業規則、給与明細、勤怠記録を照合します。契約書のひな形に数字を入れる前に、何を約束し、どのように勤務してきたかを把握するためです。
特に、賃金、週の勤務日数、勤務時間、勤務地、担当業務、契約期間は、本人と認識が一致しているかを確かめます。「会社では週4日のつもりだったが、本人は週3日の契約と考えている」といった食い違いがあれば、通知書を一方的に渡すだけでは解決しません。
例えば、入社から半年のパート社員に通知書を渡していなかった場合、毎月のシフトだけで契約上の勤務日数を決めつけず、採用時の説明や本人とのやり取りを確認します。シフト上の実績と、約束した勤務条件は、必ずしも同じではありません。
今から整える書面に、未確認の条件を入れないようにします
確認した条件を基に、厚生労働省のモデル様式などを参考にして書面を作成します。作成・交付の日と、条件が適用される期間を区別し、実際には渡していない過去の日付を交付日として記録することは避けてください。
現在の書面を交付しても、過去の明示義務違反がなかったことになるわけではありません。いつ漏れに気付き、何を確認し、いつ交付したかという経緯も残します。過去からの条件が不明な場合は、事実を確認せずに入社時までさかのぼる内容を断定しないことが大切です。
また、交付漏れの是正と労働条件の変更は区別します。例えば、これまで支払っていた手当をなくす、勤務日数を減らすといった変更を、通知書の整備に紛れ込ませてはいけません。条件を変更したいときは、合意や就業規則との関係などを別に検討する必要があります。
労働条件通知書は会社が条件を知らせる書面であり、本人の署名がないことだけで直ちに明示が無効になるものではありません。ただし、受領の確認と、条件変更への同意は意味が異なります。受取欄への署名だけで、すべての変更に同意したと扱わないようにしましょう。
本人が内容に異議を述べた場合は、どの項目が違うのかを聞き、確認資料と照合します。署名を急がせず、会社と本人の説明が分かれる点を記録して、対応を相談してください。
古いひな形では、現在必要な明示事項が不足することがあります
2024年4月から、労働条件明示のルールが変わっています。労働契約の締結と有期労働契約の更新の際には、雇入れ直後の就業場所・業務だけでなく、その「変更の範囲」の明示も必要です。
例えば、採用時は本店勤務であっても、契約期間中に別の店舗への異動を予定するなら、その範囲を検討します。勤務地や業務を限定して合意している場合は、その内容を踏まえます。「会社の定める場所・業務」と書けば、過去の約束にかかわらず自由に変更できるわけではありません。
有期契約では、更新の有無や判断基準に加え、通算契約期間または更新回数の上限の有無と、上限がある場合の内容も確認します。初回契約の後に更新上限を新設・短縮する場合は、その理由をあらかじめ説明する必要があります。通知書の空欄を埋めるために、突然上限を設けることは避けましょう。
無期転換申込権が発生する契約の更新時には、申込機会と無期転換後の労働条件の明示も必要です。また、パート・有期雇用労働者には、昇給、退職手当、賞与の有無と、雇用管理に関する相談窓口についても、書面の交付等による明示が求められます。
さらに、2026年10月1日からは、パート・有期雇用労働者の雇入れ時に、通常の労働者との待遇の相違の内容・理由等について説明を求めることができる旨も、書面の交付等で明示する必要があります。2024年の改正に対応した書式でも、この項目が入っているか確認してください。
なお、2024年4月以前から続く無期契約について、今回の改正だけを理由に全員への再交付が一律に義務付けられたわけではありません。以前からの交付漏れなのか、改正後に締結・更新した契約の記載不足なのかを区別して確認しましょう。
交付方法と、次の採用・更新で漏れない仕組みを決めます
原則は書面の交付ですが、本人が希望した場合には、電子メール等による明示も認められています。その際は、本人が受け取った記録を出力して書面にできる必要があります。会社の都合だけで電子化せず、希望を確認した記録と送信内容を残しましょう。
例えば、本人の希望を確認して通知書のPDFをメールに添付する場合は、宛先、添付ファイル、送信日を確認し、受信して内容を確認できるかも確かめます。社内画面を一時的に見せただけで、交付を済ませたことにしないようにしてください。
再発防止には、採用を決める人、条件を確認する人、交付する人を明確にします。採用時のチェック項目に通知書の交付を入れ、有期契約では満了日から逆算して更新条件を検討する仕組みを整えましょう。ひな形の更新日や、誰が修正を承認するかも決めておくと、古い書式の使い回しを防げます。
当事務所では、人事・労務全般の相談と、就業規則の作成・変更を取り扱っています。通知書に書く条件と就業規則、実際の運用が合っているか迷う場合は、関連資料をそろえてご相談ください。会社設立・開業支援では雇用契約書の作成も取り扱っており、初めて従業員を採用する際の書類整備についても相談できます。
約束した条件が曖昧なときは、交付前に相談しましょう
条件が明確で、会社と本人の認識が一致している場合は、公的なモデル様式を参考に社内で整備を進められることもあります。一方、口頭の約束と給与が違う、契約期間が分からない、更新を繰り返している、書面の整備と同時に条件を変更したい場合は、交付前の確認が大切です。
相談時には、対象者ごとの採用・更新の経緯、求人票、残っている契約書、就業規則、給与明細、勤怠記録を用意します。不足資料があっても、分かっている事実と未確認の点を分けて伝えると、次に確かめる事項を整理しやすくなります。
当事務所は、労務相談のみの契約にも対応しています。保険手続きや給与計算を社内で続けながら、採用・更新時の判断について相談することも可能です。必要な支援範囲と費用は、個別にご相談ください。
豊島区の中小企業で労働条件通知書の交付漏れに気付いたら、まず、誰に何を約束したかを確かめましょう。実態に合う書面を本人へ交付し、次の採用・更新まで見据えて管理方法を整えることが、認識の食い違いを減らす一歩になります。
本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。
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36協定を届け出ずに残業させていたら?会社が確認したい初動と届出の進め方
「従業員に残業をお願いしてきたが、36協定を届け出た記憶がない」「以前は届出をしたものの、更新を忘れていたかもしれない」このような状況に気付いたときは、まず現在の残業を止め、協定と労働時間の実態を確認することが大切です。 36協定の届出は、将来の法定時間外労働などを行うための手続きです。後から届け出れば過去の問題がなくなるわけではありません。この記事では、届出漏れに気付いたときの初動から、今後の手続きと再発防止までを整理します。 36協定が必要になる残業とは 労働基準法の原則では、労働時間は休憩を除き1日8時間、1週40時間までです。また、原則として毎週少なくとも1日の休日、または4週間を通じて4日以上の休日を与える必要があります。変形労働時間制など、適用する制度によって判断は異なります。 法定労働時間を超えて働かせる場合や、法定休日に働かせる場合は、原則として、あらかじめ事業場の労働者側と時間外・休日労働に関する協定を結び、所轄の労働基準監督署へ届け出る必要があります。これが36協定です。従業員が1人の事業場でも必要となります。 一方、会社が定めた所定労働時間を超えただけでは、直ちに法定時間外労働になるとは限りません。例えば通常の労働時間制で、所定労働時間が1日7時間の人が8時間働いた場合、1日単位では法定時間を超えていません。ただし、週単位の合計や適用される勤務制度も確認が必要です。 届出漏れに気付いたら、まず確認すること 最初に、法定時間外労働や法定休日労働を新たに行わせないよう、業務の割り振りや納期を調整します。残業を続けながら書類を整えるのではなく、法定労働時間と法定休日を守れる勤務に切り替えましょう。 次に、事業場ごとに協定書と届出控えを探し、協定の有効期間、対象業務、延長できる時間、所轄署への届出状況を確認します。控えが見つからないだけで未届出と決めつけず、提出方法や社内の保管先も調べます。提出の有無が不明な場合は、所轄の労働基準監督署に確認方法を相談してください。 協定が存在しても、期限切れや対象業務の相違、定めた時間の超過があれば別の問題が生じます。勤怠記録、シフト表、給与明細、休日の定めを照合し、いつ、誰に、どのような労働があったかを整理しましょう。記録を後から削除したり、実際より短く書き換えたりしてはいけません。 例えば、昨年の協定は届出済みだったものの、今年の期限更新を失念していた場合、期限後の勤務については有効な協定の有無を確認する必要があります。新しい協定の開始日を過去に合わせて書き直すのではなく、実際の締結日と届出の経緯を正しく扱いましょう。 過去の残業代と届出は別々に対応します 届出をしていなかった期間でも、実際に働いた時間に対する賃金は確認が必要です。法定時間外や法定休日、深夜の労働には、条件に応じた割増賃金が必要になります。届出がなかったことを理由に、残業代を支払わなくてよいわけではありません。 タイムカードや勤怠システムの記録と、業務指示、日報、パソコンの使用記録などを照らし合わせ、実態を確認します。未払いが見つかった場合は、対象期間や計算方法を整理し、速やかに適切な精算を検討します。過去の勤怠資料や賃金台帳は、法令に従って保存してください。 後から協定を締結・届出しても、それ以前の法定時間外労働などが遡って適法になるものではありません。事情によっては法令違反への対応が必要です。判断に迷う場合は、事実関係を整理したうえで労働基準監督署や専門家に相談しましょう。 今後のための協定締結と届出の進め方 今後、法定時間外労働や法定休日労働が必要であれば、事業場ごとに、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその組合、ない場合は労働者の過半数を代表する人と協定を結びます。代表者の選出にはパートなども含め、その目的を明らかにして投票や挙手などの民主的な方法で選びます。会社が一方的に指名する方法は適切ではありません。 協定には、対象業務や労働者の範囲、延長することができる時間、対象期間などを定め、所轄の労働基準監督署へ届け出ます。従業員が内容を確認できるよう、協定の周知も必要です。届出前に、協定で定める予定の時間を使って残業を開始しないようにしましょう。 時間外労働の上限は原則として月45時間・年360時間です。臨時的な特別の事情があり、特別条項を設ける場合にも、年720時間以内など複数の上限があり、月45時間を超えられるのは年6か月までです。時間外労働と休日労働の合計についても月100時間未満、複数月平均80時間以内などの制限があります。業種や勤務制度により例外があるため、自社への適用を確認してください。 協定は、定めればその時間まで自由に残業させられるというものではありません。定めた範囲や法令上の上限を守り、個々の従業員に残業を命じる根拠となる就業規則や労働契約も確認します。健康への配慮や業務量の見直しも欠かせません。 更新管理と日々の勤怠管理をつなげましょう 再発防止には、届出控えと協定の内容を事業場ごとに保管し、有効期間の終了前に準備できるよう、担当者と確認時期を決めておくことが有効です。有効期間の終了前に労働基準監督署に提出できるようにしましょう。担当者が変わる場合も、保管場所と更新手順を引き継ぎます。 残業の実績は、給与計算のためだけでなく、協定で定めた時間や法令の上限に近づいていないかを確認するためにも使います。月末にまとめて気付くのではなく、途中の段階で確認し、必要に応じて仕事の配分を変えましょう。 当事務所では、残業手当の管理方法を含む人事・労務全般の相談を取り扱い、労務相談のみの契約も可能です。協定の期限が分からない、勤怠と給与の記録が一致しない、複数の事業場で扱いが異なるといった場合は、協定書や届出控え、勤怠記録、就業規則を用意すると相談しやすくなります。 必要な資料と手順が明確であれば、自社で協定の締結や届出を進めることもできます。一方、過去の状況が複雑なときは、事実を隠さず整理し、専門家や所轄の労働基準監督署に相談しながら、過去の精算と今後の勤務管理をそれぞれ進めましょう。
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従業員が10人になったら就業規則は必要?人数の数え方と作成・届出の進め方
「正社員は少ないけれど、パートを含めると従業員が10人になった」「就業規則を作っていないが、何から始めればよいのだろう」。事業の拡大に伴い、このような疑問を持つ経営者の方もいるでしょう。 就業規則の作成・届出義務は、会社全体ではなく、原則として事業場ごとの人数で判断します。この記事では、人数の数え方、規則に盛り込む内容、届出と周知までの進め方を解説します。 就業規則が必要になる「常時10人以上」の考え方 常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署へ届け出なければなりません。作成した後に変更した場合も、届出が必要です。 人数には、正社員だけでなく、パートやアルバイト、有期契約の従業員も含めます。勤務日や勤務時間が短い人を、勤務時間に応じて0.5人と数えるのではありません。その日に出勤している人数だけで判断することにも注意が必要です。 「常時」は、一時的に10人に達したかではなく、通常の状態として何人を使用しているかという観点で考えます。繁忙期だけ人を増やした場合や、採用・退職が続いて人数が変動する場合は、勤務の実態や雇用の継続状況を整理して判断しましょう。 例えば、正社員6人とパート4人を継続して雇用している店舗では、普段の出勤者が同時に10人未満でも、常時10人以上に当たる可能性があります。雇用形態ごとの人数を確認し、判断に迷うときは所轄の労働基準監督署や専門家に相談してください。 人数は会社全体ではなく事業場ごとに確認します 本店と支店、複数の店舗がある場合は、原則として、それぞれの事業場を単位に人数を数えます。例えば、独立した事業場として扱われる本店に7人、支店に5人がいる場合、会社全体で12人でも、それだけで両事業場に作成・届出義務が生じるわけではありません。 ただし、名称が「支店」や「営業所」であるだけで、必ず独立した事業場になるわけではありません。場所や業務の実態、組織としての独立性などを踏まえて判断する必要があります。小規模な拠点が本店と一体として扱われるか迷うときは、実態を示せる資料を用意して確認しましょう。 常時10人未満の事業場でも、労働基準法などのルールは適用されます。作成・届出義務がないことと、労務管理が不要であることは別です。人数が増える前から、勤務時間や休暇、給与の取扱いを整理しておくと、採用後の説明にも役立ちます。 おすすめとしては、一人でも雇用したら、就業規則を作成しておくと、後のトラブルになりにくい傾向にあります。 作成前に、今の働き方と契約内容を整理します 就業規則を作る際は、まず雇用契約書や労働条件通知書、給与明細、勤怠記録、社内で使っている休暇の申請方法などを確認します。文書に書かれている条件と、実際の運用が異なる場合は、どの従業員に何を適用しているかを整理しましょう。 例えば、契約書には始業時刻が午前9時とある一方、実際には全員が午前8時45分から指示を受けて業務を始めている場合、その実態を確認する必要があります。規則の文言だけを整えても、労働時間の管理にずれが残るおそれがあります。 就業規則には、始業・終業時刻、休憩、休日、休暇、賃金の決定・計算・支払方法、退職に関する事項など、必ず記載する事項があります。退職手当や賞与、休職、表彰・制裁などは、それぞれの制度を設ける場合に記載が必要です。休職制度や退職金制度をすべての会社で必ず設けなければならないという意味ではありません。 パートと正社員で勤務時間や賃金の仕組みが異なる場合は、適用対象が分かるように定めます。別の規則を作る方法もありますが、契約や実際の運用との整合性を確認し、雇用形態による待遇差には別途、法令上の確認が必要です。 意見聴取・届出・周知まで進めます 規則案ができたら、その事業場の労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその組合、ない場合は労働者の過半数を代表する人の意見を聴きます。正社員だけで代表を決めるのではなく、パートなどを含む事業場の労働者全体を対象にします。 過半数代表者は、管理監督者でなく、就業規則の意見を述べる代表者を選ぶ目的を明らかにしたうえで、投票や挙手などの民主的な方法で選びます。会社が一方的に指名する方法は適切ではありません。意見聴取は同意を得る手続きとは異なりますが、寄せられた意見の内容を確認し、説明や検討に生かしましょう。 常時10人以上の事業場では、就業規則に代表者等の意見書を添えて、所轄の労働基準監督署へ届け出ます。意見書には反対意見も記載できます。届出を済ませただけで終わりにせず、従業員がいつでも確認できる方法で周知します。 周知の方法には、書面の交付や、職場の見やすい場所への掲示・備付けなどがあります。電子データを利用する場合も、対象者が内容を常時確認できる環境を整える必要があります。パートを含め、適用される従業員が自分に関係する規則を確認できるか点検してください。 既存の条件を変えるときは、作成と分けて検討します 就業規則を初めて作る機会に、これまでの手当をなくしたり、休日を減らしたりすることを考える場合があります。しかし、新しい規則に書き、意見を聴いて届け出たことだけで、従業員に不利益な変更が当然に認められるわけではありません。 労働条件の変更は、原則として労使の合意によります。就業規則の変更により不利益に変更する場合には、原則として本人の合意が必要で、例外として変更内容の合理性と周知などの要件を満たす場合に効力が認められることがあります。必要性や不利益の程度、説明・協議の状況などを踏まえた慎重な検討が必要です。 初めて規則を作る場合も、既に成立している個別の労働条件との関係を確認し、規則を作っただけで不利益に変更できると考えないことが大切です。特に賃金や休日を見直すときは、導入前に専門家へ相談しましょう。 10人に達したら、現状確認から着手しましょう 従業員の人数と事業場の区分が明確で、現在の条件を整理できていれば、厚生労働省のモデル就業規則などを参考に自社で作成を進めることもできます。ただし、ひな形をそのまま使うと、自社にはない制度が記載されたり、実際の勤務形態と合わなかったりすることがあります。 自社用にカスタマイズしながら作成すると良いでしょう。本来就業規則に記載すべき事項を削除してしまった場合でも、就業規則に記載がないからルールがなくなったということではない点に注意しましょう。 パートの適用範囲が分からない、契約書と実際の運用が異なる、賃金や休日を見直したいといった場合は、規則案を固める前に相談すると、確認事項を整理しやすくなります。従業員数、勤務形態、契約書、給与や勤怠の資料、現在の運用が分かるものを用意しましょう。 当事務所では、就業規則の作成・変更・提出代行のほか、人事・労務全般の相談を取り扱っており、労務相談のみの契約も可能です。規則の準備に加え、運用とのずれや今後の管理の仕方についても相談可能です。従業員が増えた節目に、会社と従業員の双方が確認しやすいルールを整えていきましょう。
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社員から突然退職を申し出られたら?中小企業が確認したい退職日と引継ぎの進め方
「社員から急に退職したいと言われたけれど、担当業務の引継ぎが終わらない」「就業規則では1か月前の申出と定めているのに、2週間後に辞めたいと言われた」少人数の会社では、一人の退職が日々の業務に大きく影響します。 まず大切なのは、本人の意思と希望する日程を落ち着いて確認し、退職日、最終出勤日、引継ぎに使える時間を分けて整理することです。この記事では、退職の申出を受けた直後から、会社が進めたい確認と実務を解説します。 まずは本人の意思と希望する退職日を確認します 退職についての言葉には、「退職を考えている」という相談と、「退職する意思を決めた」という申出があります。まず、本人が何を希望しているのか、いつを退職日と考えているのかを確かめましょう。口頭の申出でも、日時や発言内容、会社側の対応を記録しておくと、後の認識違いを防ぎやすくなります。 退職日と最終出勤日は同じとは限りません。例えば、月末を退職日とし、その前に残っている年次有給休暇を取得する場合、最後に出勤する日は月末より早くなります。退職日だけを聞いて引継ぎの時間を見積もると、実際には予定より短いことがあります。 本人と話し合う際は、退職理由を尋ねることもできますが、話したくない事情まで無理に聞き出す必要はありません。残りの期間に何ができるかを確認し、決まった事項を本人と会社の双方が分かる形で共有しましょう。 就業規則だけで退職日を決めず、契約を確認します 期間の定めのない雇用契約では、退職の申入れから原則として2週間が経過すると、会社が承諾しなくても退職の効力が生じます。一方、本人と会社が話し合って退職日に合意することもできます。申出が合意を求めるものか、一方的に辞職する意思表示かは、言葉や経緯を含めて確認が必要です。 就業規則に「1か月前までに申し出る」とある場合も、その定めだけを理由に一律に退職を認めないとは判断できません。民法の規定と就業規則の関係には見解の違いがあり、個別の事情を踏まえた確認が必要です。本人との話合いで日程を調整しつつ、争いがある場合は専門家に相談しましょう。 有期契約では、期間満了前の退職について、期間の定めのない契約とは異なる規定が適用されます。契約期間や申出の理由、雇い入れからの期間などによって扱いが変わるため、同じ「2週間」という説明をそのまま当てはめないでください。 就業規則の提出期限に間に合わなかったとしても、「後任が見つかるまで退職は認めない」と伝えたり、退職届を受け取らずに手続きを止めたりすることは、問題を長引かせるおそれがあります。退職の意思と、業務上の調整を分けて考えることが大切です。 引継ぎは残りの勤務日から逆算して進めます 引継ぎをお願いする際は、まず残りの勤務予定日を確認し、本人が担当している業務を洗い出します。顧客との約束、支払いや請求の期限、進行中の案件、社内システムの管理など、止まると影響が大きいものから優先順位をつけましょう。業務の種類によって、かなり優先順位が異なりますので、気を付けましょう。 例えば、月末退職予定の社員が有給休暇を取得するため、残りの出勤日が5日しかないケースを考えます。会社は、すべての業務を従来どおり引き継ぐことにこだわらず、取引先への連絡が必要な案件と、期限の近い請求業務を先に確認します。そのうえで、後任が自分で確認できる資料の場所や、未処理の仕事を一覧にします。 引継ぎの方法も、長いマニュアルの作成だけではありません。短時間の打合せ、案件一覧への追記、担当者を交えた説明など、残りの日数に応じて選べます。本人に依頼する内容と期限を具体的に示し、会社側も受け手を決めておきましょう。 有給休暇を請求されている場合は、残日数と取得希望日を確認し、勤務予定を調整します。引継ぎが不十分という理由だけで、退職前の請求を一律に拒否できるわけではありません。休暇中の作業を当然の前提とせず、出勤日にできる内容を整理してください。 退職の手続きと最終給与を並行して整理します 退職日が決まったら、加入している社会保険・雇用保険の資格喪失手続き、離職票の要否、最終給与の計算などを確認します。健康保険・厚生年金保険に加入している場合は、原則として退職日の翌日が資格喪失日です。届出の期限や必要書類は、加入状況と個別の事情に応じて確かめましょう。 雇用保険については、原則として被保険者でなくなった日の翌日から10日以内に資格喪失届を提出します。離職票が必要かどうかは本人の希望などを確認し、必要な場合は離職証明書の準備も進めます。離職理由に認識の違いがある場合は、実際の経緯を記録し、手続きの際に確認してください。 最終給与は、勤務実績、欠勤や休暇の扱い、社会保険料などを確認したうえで計算します。貸与品の返却や引継ぎが終わっていないことを理由に、当然に給与の支払いを保留したり、損害額を一方的に差し引いたりすることはできません。通常の支払日や退職時の請求に応じた支払いについて、適用されるルールを確認しましょう。 また、パソコン、鍵、社員証などの返却方法を本人と調整し、社内アカウントの停止時期も決めます。顧客への案内や担当変更は、本人任せにせず、会社側で責任者を定めると進めやすくなります。 判断に迷う場合は、経緯と資料を整理して相談しましょう 本人の意思と退職日が明確で、勤務予定や手続きを双方で確認できる場合は、社内で対応を進められます。一方、退職日の認識が食い違う、有期契約の途中で退職を申し出られた、休暇と引継ぎの調整が難しい場合には、早めに相談することが有用です。 相談の際は、雇用契約書、就業規則、本人の申出内容と日時、勤務予定、有給休暇の残日数が分かる資料を用意します。すべての資料がそろわなくても、退職について何を言われ、会社がどう返答したかを整理すると、確認すべき点が見えやすくなります。 当事務所では、人事・労務全般の相談のほか、就業規則の作成・変更、社会保険・労働保険の届出代行、給与計算の代行を取り扱っています。突発的な退職への対応のみならず、退職手続きの流れや日常的な情報共有のあり方を見直すきっかけとして、ぜひ現在の運用についてお聞かせください。 豊島区の中小企業で社員から退職を申し出られたら、まず意思と日程を確認し、残りの勤務日に何を引き継ぐかを具体化しましょう。本人の権利と会社の業務の両方を踏まえ、手続きを一つずつ進めることが大切です。
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