士業コラム
有給休暇を年5日取らない社員には?中小企業の時季指定と期限前の対応

有給休暇を年5日取らない社員には?中小企業の時季指定と期限前の対応

「有給休暇を取るよう伝えているのに、休まない社員がいる」「取得期限が近いのに、まだ2日しか休んでいない」。少人数で仕事を回す会社では、本人の希望を待つうちに、年5日の取得が難しくなることがあります。

対象となる従業員には、会社が年5日の年次有給休暇を実際に取得させる必要があります。「本人が希望しなかった」という説明だけで済ませず、期限と不足日数を確かめ、業務の調整と取得日の指定を進めることが大切です。この記事では、在職中の従業員の取得が進まない場合を中心に、会社の対応を解説します。

最初に、誰の取得期限がいつなのかを確かめます

年5日の取得を確保する義務は、法定の年次有給休暇が年10日以上付与される従業員が対象です。会社の規模を問わず適用され、条件を満たすパートや、労働基準法上の管理監督者も含まれます。「正社員だけ」「管理職以外」といった区分だけで管理しないようにしましょう。

原則として、年次有給休暇を付与した日である「基準日」から1年以内に、5日を取得させます。例えば、2026年4月1日が基準日であれば、通常は2027年3月31日までが確認する期間です。会社の決算月や給与計算の締日と一致するとは限りません。

入社日ごとに付与している会社では、従業員ごとに期限が異なります。全員の状況を年末にまとめて確認するだけでは、その前に期限が来る人を見落とすおそれがあります。まず、氏名、基準日、取得期限、取得済み日数を一覧にしてみましょう。

一方、入社時の前倒し付与や、全社員の基準日をそろえる制度では、管理期間が重なり、特別な計算が必要になる場合があります。付与日を変更した年は、通常の1年間の管理をそのまま当てはめず、制度と記録を確認してください。

残日数と、年5日に数える取得日数を分けて確認します

有給休暇の残高が分かっていても、それだけでは年5日の取得状況は分かりません。前年からの繰越しや今年の付与、時効による消滅が残高に影響するためです。取得日を管理期間に当てはめ、実際に休んだ日数を確認します。

本人が申し出て取得した年休と、労使協定に基づく計画的付与で取得した年休は、年5日に数えます。既に5日以上取得している人に、この義務を理由として会社がさらに取得日を指定する必要はなく、指定することもできません。

半日単位の年休は、1回につき0.5日として数えます。一方、時間単位の年休は、取得時間を合計して1日分になっても、年5日の取得日数には算入できません。年休残高の計算と、取得義務の達成確認では、集計方法が異なる点に注意が必要です。

また、もともとの休日は年休の取得日にはなりません。夏季休暇や慶弔休暇なども、法定年休とは別の会社独自の特別休暇であれば、通常、年5日には数えません。名称だけで判断せず、就業規則上の位置付けと、実際の勤怠区分を確かめましょう。

例えば、1日単位の年休を3日、半日年休を2回取得していれば、算入できる日数は4日です。これに時間単位年休を8時間取得していても、年5日の取得確保のためには、なお1日分が必要です。時間休を管理するシステムでは、この二つを区別して表示できるかも確認してください。

不足分は、本人の意見を聴いて取得日を指定します

取得が進んでいない場合は、まず、休みたい時期と休めない理由を本人に確認します。「担当業務を任せる人がいない」「申請すると上司に嫌な顔をされる」といった事情があれば、単に取得を促すだけでは進みません。業務分担や職場の運用も見直す必要があります。

本人からの申請などで5日に達しないときは、不足分について、会社が取得日を指定する「時季指定」を行います。その際は、あらかじめ本人の意見を聴き、できる限り希望に沿うよう努めなければなりません。会社の都合だけで日程を通知して終わりにしないことが大切です。

希望を確認した日、候補日、指定した日を記録し、本人と上司、勤怠担当者に共有します。年5日を取得させるための会社による時季指定は、本人が請求した取得日を別の日へ変更する「時季変更権」とは異なる仕組みです。どちらの対応を行っているか、説明をそろえましょう。

会社が時季指定を行う場合は、対象者や指定方法などを就業規則に定める必要があります。規定が見当たらない、古い申請書しかないという場合は、実際の運用と併せて確認してください。当事務所では、有給休暇の管理方法に関する相談と、就業規則の作成・変更を取り扱っています。既存の規定で対応できるか迷う段階から、相談事項を整理していただけます。

取得予定を決めたら、実際に休めるよう業務を調整します

時季指定をしただけでは、取得義務を果たしたことになりません。指定日に本人が出勤し、会社が仕事をさせれば、その日を年休取得済みとして扱うことはできません。管理簿に日付を入れることと、実際に休ませることを結び付ける必要があります。

例えば、従業員12人の会社で、ある社員の取得期限まで2か月あり、取得済み日数が2日だったとします。会社は残り3日について本人の希望を確認し、月末の請求業務を避けた日程を検討します。

そのうえで、請求処理の手順を別の担当者に共有し、休暇中の問い合わせ窓口を上司へ変更します。本人に「休みの日もメールだけ確認して」と頼むと、年休中にも業務が発生するため、連絡先と仕事の受け手を先に決めることが大切です。

指定後に、本人が別の日の年休を取得したり、予定日に勤務が必要になったりした場合は、取得済み日数と今後の指定日を改めて確認します。変更の必要があるときは本人の意見を聴いて調整し、期限内の取得が不足しないよう、勤務表と管理簿を更新しましょう。

本人が「休みたくない」と言う場合も、その理由を聞き、制度を説明して、休める業務体制を検討します。本人の一筆をもらって取得義務を免れることはできません。話合いをしても取得につながらないときは、期限の直前まで待たず、具体的なやり取りを添えて相談してください。

取得が不足している対象者の確認をしていると、例年、おおよそきちんと取得している人、取得できていない人の傾向がわかるようになります。傾向がつかめれば、期限間際よりも前に対象者に声掛けが可能になりますので、きちんと確認しましょう。

期限を過ぎた不足は、記録を変えずに対応を相談します

既に取得期限を過ぎている場合、翌年に余分に休ませても、過去の期間の不足がさかのぼって解消するわけではありません。実際には働いた日を後から年休に書き換えることも避けてください。

まず、対象者、管理期間、実際の取得日数、不足した経緯を整理します。取得記録の反映漏れなのか、日数の数え方を誤ったのか、実際に休めなかったのかで、確認すべき内容が異なります。休職や育児休業などがある場合も、期間と勤務の実態を伝え、個別に扱いを確認しましょう。

同時に、今後の取得予定を立て、同じことを繰り返さない管理へ改めます。例えば、毎月の勤怠確認の際に、期限まで3か月以内で取得が5日に届いていない人を抽出する方法があります。この3か月は法律上の一律の期限ではなく、会社の管理上の目安です。繁忙期が長い会社では、さらに早い確認をしましょう。これも対象者の傾向をつかめば解消されやすいです。

年次有給休暇管理簿には、従業員ごとの取得時季、日数、基準日を記録します。現在の取扱いでは、該当する期間中と、その期間の満了後3年間の保存が必要です。勤務表や給与計算の記録と照合できるよう、変更前後の経緯も残しておきましょう。

期限と不足日数が分かる資料をそろえて相談しましょう

対象者と管理期間が明確で、本人の希望を踏まえて取得日を決め、業務も調整できる場合は、社内で対応を進められます。一方、期限が迫っている、時間休を年5日に含めていた、本人が指定日に出勤してしまう、前倒し付与で期限が分からない場合は、早めの確認が必要です。

相談時には、年次有給休暇管理簿、就業規則、入社日と付与日の分かる資料、勤務表、勤怠記録、本人との連絡履歴を用意します。「有給休暇が取れていない」という説明に加え、誰の期限がいつで、何日不足しているかを示すと、対応を具体化しやすくなります。

当事務所は、労務相談のみの契約にも対応しています。給与計算を自社で続けながら、取得日の指定や規程の運用について相談することも可能です。給与・賞与計算の代行も取り扱っているため、休暇の記録と給与処理の連携に課題がある場合は、ご希望の依頼範囲をお伝えください。

豊島区の中小企業で年休の取得管理に悩む経営者の方は、まず、従業員ごとの期限と不足日数を確認してみましょう。本人への声掛けに加えて、休む日と仕事を引き受ける人まで決めることが、無理なく取得を進めるための具体的な一歩になります。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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