士業コラム
役員貸付金が増えたらどうする?会社と社長のお金を整理する確認ポイント

役員貸付金が増えたらどうする?会社と社長のお金を整理する確認ポイント

「決算書を見ると、社長への貸付金が年々増えている」「会社の口座から生活費を出していたが、どう整理すればよいのか」。会社と経営者のお金が混在すると、帳簿上の残高と、本人が認識している借入額が食い違うことがあります。

役員貸付金を整理するときは、残高を消す方法から考えるのではなく、何に使ったお金なのかを確かめることが出発点です。中小企業の経営者に向けて、取引の確認、利息の扱い、返済を進める際の注意点を解説します。

役員貸付金は、会社が役員に貸しているお金です

役員貸付金とは、会社が社長などの役員に貸し付けているお金です。会社の決算書では、返済を受ける権利として資産に計上されます。反対に、社長が個人のお金を会社へ貸した場合は、会社にとって「役員借入金」という負債になります。誰が誰に貸しているのかを、最初に確認しましょう。

社長が株式をすべて持っている会社でも、会社と個人の財産は別です。会社の口座から個人の生活費を出したからといって、その支出が会社の経費になるわけではありません。会社のカードで私的な買い物をした場合も、事業の支払いと分けて処理する必要があります。

ただし、役員貸付金として記帳されている金額が、すべて実際の貸付けとは限りません。会社の仕事に使った支出について資料が届かず、処理が保留されたものや、経費精算の行き違いが含まれている可能性もあります。科目名だけで判断せず、取引の内容と証拠資料を照合することが大切です。

残高を整理する前に、お金の使い道を確認します

まず、役員貸付金の総勘定元帳を確認します。総勘定元帳は、勘定科目ごとに取引の内容や金額、残高の動きを記録した帳簿です。前期から繰り越した金額と、今期に増えた金額、返済として減った金額を分けると、確認すべき取引が見えてきます。

例えば、会社口座から引き出した30万円について、20万円は個人の生活費、10万円は会社の備品購入だったとします。この場合、30万円を一括して扱うのではなく、それぞれの使い道を確認します。備品購入分も、領収書等があれば何でも当期の経費になるということではなく、購入時期や物品の内容に応じた処理が必要です。

上記のような支出が毎月ある場合には、手取りで20万円の役員報酬を支給する必要があることを示しています。もし「役員借入金」が多額にあるときには、役員報酬が仮に0円であっても、役員借入金の返済として会社から個人にお金を引き出すことができます。

出金の記録に、領収書、カード明細、振込先の情報などを対応させます。会社の支出なら、何の業務で使ったかも説明できるようにしましょう。「会社のために使ったはず」という記憶だけでは、適切な処理を判断しにくくなります。

法人税では、カード明細しかない場合でも支払先、支払内容が明確であれば、損金(経費)になります。その一方、消費税で仕入税額控除をするには、領収書等に記載のあるインボイス登録番号の確認が必要です。必ず領収書等もセットで保管ください。

過年度から残っている金額は、当時の帳簿や申告への影響も確認します。資料が見つかったからといって、過去の支出をまとめて今期の経費に振り替えられるとは限りません。いつの取引なのか、既にどのように申告しているのかを税理士に伝えてください。

会計処理をするにあたり、支出不明な支払いを「役員貸付金」で処理され、そのまま残ってしまうことがあります。税理士事務所としっかり連携を取りつつ、会社側でも経費の計上漏れがないかを試算表から大まかに確認することも大切です。

もし過去の大きな経費の支出が「役員貸付金」で処理され、経費が計上漏れになっていた場合には、「更正の請求」という方法で税金を還付してもらうことができます。更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。

当事務所では、日々の会計・税務の疑問にお応えし、帳簿から会社の業績や改善点を一緒に検討しています。役員貸付金についても、残高の数字だけでなく、その内訳と増えた経緯を共有することが、確認すべき点を整理する手がかりになります。

無利息のままにせず、貸付条件と税務を確認します

実際に会社が社長へお金を貸している場合は、貸付額、貸付日、利率、返済期限、返済方法を確認します。契約書等の記録と、実際の送金・返済の動きが一致しているかも重要です。書面を用意しただけで、その取引が税務上問題なく扱われるわけではありません。

会社が役員へ無利息や低い利息で貸し付けると、原則として、税務上計算される利息と実際に支払う利息との差額が、役員への給与として課税される問題があります。元本を後で返す予定であっても、利息の確認は別に必要です。

国税庁の案内では、会社が外部から借りた資金を貸し付けた場合は、その借入金の利率を用います。それ以外については貸付年に応じた利率が示され、令和8年中の貸付けは年1.3%とされています。すべての残高に、毎年その年の利率を一律に当てはめるという意味ではありません。

一方、合理的と認められる平均調達金利等を基にした貸付けや、一定の要件を満たす災害・病気の際の貸付けなど、給与として課税しなくてもよい扱いもあります。単に「少額だから大丈夫」とせず、適用できる条件を確認しましょう。

利息について給与課税が生じる場合は、源泉所得税への対応に加え、会社側で役員給与を損金に算入できるかも検討が必要です。損金とは法人税の計算で差し引ける費用等で、帳簿上の費用と必ずしも一致しません。個人側と会社側の扱いを分けて確かめることが大切です。

返済は、会社と個人の資金の両方を見て計画します

実際の貸付残高が確認できたら、社長個人の収入と生活費、既存の支払いを踏まえ、返済可能な金額と時期を考えます。返済のために会社から新たな借入れを繰り返す計画では、残高の改善につながりません。

例えば、説明用の架空例として、貸付残高が240万円あり、社長個人が毎月5万円を元本返済に充てられるとします。新たな貸付けがなければ、元本の返済には48か月かかります。利息の支払いは別に見込み、途中で収入や支出が変わった際の見直しも考えておきます。

返済額を決めた後は、個人口座から会社口座への振込みなど、履歴を確認できる方法で管理します。元本返済と利息の支払いを区別し、帳簿の残高とも照合しましょう。年に一度だけでなく、月ごとに残高を確認すると、新たな私的支出にも気づきやすくなります。

「役員報酬を増やして返せばよい」という方法にも注意が必要です。報酬の増額には、法人税上の損金算入要件があり、個人の所得税や社会保険料にも影響します。会社から出すお金が増えるため、会社の資金繰りも含めて検討しなければなりません。

また、会社が返済を免除すれば、単なる帳簿整理では済みません。免除による利益が役員給与に当たり、会社側でも損金算入が問題になる場合があります。実際の返済や根拠の確認なしに、残高を経費へ振り替えたり、消したりする処理は避けてください。

残高が増える仕組みを見直し、早めに相談しましょう

再発を防ぐには、会社用と個人用の口座・カードを分けることが基本です。会社の現金を引き出した場合は、使途の記録と精算の期限を決めます。業務上の立替えも、金額や内容をその都度整理すると、未精算のまま残ることを減らせます。

社内で取引の内容を確認でき、精算や返済の記録も整っているなら、経理担当者が通常の処理を進め、判断が必要な部分を税理士に確認する方法もあります。一方、数年分の残高がある、資料がない、利息を計算していない、返済の見通しが立たない場合は、決算直前まで待たず相談することが望まれます。

相談時は、直近の決算書、役員貸付金の元帳、会社と個人の関連する入出金記録、貸付契約書、返済履歴などを用意します。すべてそろわなくても、「いつから増えているか」「何に使ったか」「資料がないのはどの取引か」を分けて伝えると、次の確認を進めやすくなります。

当事務所は、中小企業の税務申告、会計代行、資金繰りの相談を取り扱っています。会社の帳簿と今後の支払予定を共有いただくことで、税務処理と資金面の課題を併せて考えられます。相談は予約制で無料とご案内していますので、まずは現在の状況をお聞かせください。依頼する業務の範囲や費用は、相談時に確認しましょう。

役員貸付金の整理では、取引の実態を確かめ、利息や税金を確認し、無理のない返済と日々の管理につなげる順序が大切です。会社と個人のお金の動きを説明できる状態に整えることから始めてみてください。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、とちの会計事務所までお問い合わせください。

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