士業コラム
中小企業に税理士の顧問契約は必要?決算だけの依頼との違いと判断基準

中小企業に税理士の顧問契約は必要?決算だけの依頼との違いと判断基準

「決算と申告は税理士に任せているけれど、普段の経営について相談する機会がない」。中小企業の経営者にとって、顧問契約を結ぶべきかは、毎月の費用と相談の必要性をどう考えるかという問題です。

判断のポイントは、会社の規模だけではありません。会計の数字をいつ把握できるか、取引を決める前に税務を確認できるか、資金の見通しを立てられるかも大切です。法人の経営者に向けて、決算だけの依頼との違いと、自社に合う契約を考える視点を解説します。

決算だけの依頼と顧問契約では相談する時期が変わります

決算・申告だけを依頼する場合は、主に事業年度が終わった後の帳簿や資料をもとに、決算書や申告書の作成を進めます。記帳の確認や修正をどこまで含むかは、依頼内容によって異なります。

これに対して顧問契約は、継続的に会社の状況を共有し、期中にも会計・税務の相談をするための契約です。決算を迎える前に疑問を解消したり、業績の変化を踏まえて対応を検討したりしやすくなります。

ただし、「顧問契約」という名称だけで、毎月の面談、記帳代行、資金繰り表の作成などがすべて含まれるわけではありません。相談できる内容、資料を確認する頻度、追加料金が必要な業務は、事務所や契約によって異なります。

まずは「申告書を作ってほしい」のか、「期中の判断についても相談したい」のかを整理しましょう。後者の必要性が高い会社では、顧問契約を検討する意味があります。

顧問契約を検討したい三つの状況

帳簿はあるのに今の業績が分からない

会計ソフトへの入力が済んでいても、売上や仕入れの計上漏れ、未処理の経費などがあれば、表示された利益だけでは判断しにくくなります。売上が増えている一方で、仕入価格や外注費が上がり、利益が伸びていないこともあります。

継続して帳簿を確認する際は、売上の増減だけでなく、売上から売上原価を差し引いた粗利益や、人件費・家賃などの負担にも目を向けます。前月や前年との違いを確認すると、値付けや経費の見直しを考える材料になります。

当事務所では、業績をお伝えしたうえで、利益を確保するための売上や借入れの状況などを一緒に検討しています。数字の意味を確認しながら、経営上の疑問を相談したい方に役立つ支援です。

利益は出ているのに預金が増えない

利益と預金残高は、同じようには動きません。売上を計上しても入金が翌月以降になる場合がありますし、借入金の元本返済は資金が出ていく一方、通常はそのまま費用になるものではありません。

例えば、説明用の例として、売上の入金前に仕入代金と給与の支払いが重なる会社を考えてみましょう。帳簿上は利益が出ていても、支払日に使える預金が不足する可能性があります。必要なのは、利益の確認に加え、入金日と支払日を並べて資金の動きを見ることです。

特に売上が急増している会社は、資金繰りに注意が必要です。何も対策をしないと決算時に納税額が一気に増えてしまい、資金繰りが苦しくなることがあります。事前の節税対策や資金繰りの確認が必要になります。

顧問契約を検討するときは、こうした資金繰りの相談をどこまで依頼したいかも伝えましょう。借入金の返済予定、税金の支払い、設備購入などを共有すると、何を確認すべきかが具体的になります。資金繰り表の作成や融資申込みの支援まで含むかは、別途確認が必要です。

取引や支払いを決める前に税務を確認したい

設備購入や役員給与の変更などは、実行した後では選べる対応が限られる場合があります。「決算のときに税理士へ伝えればよい」と考えず、予定が具体化した段階で相談することが大切です。

例えば役員給与には、法人税の計算上、損金に算入するための要件があります。毎月支払う役員給与の通常の改定では、原則として事業年度開始から3か月以内の改定であることなどが関係します。例外もありますが、3ヵ月を超えて金額変更すると損金算入できない部分が生じます。

「利益が出そうだから増額する」「一時的に資金が足りないから減額する」といった判断の前に、変更理由と時期を確認しましょう。継続的に税理士に相談できる関係があれば、会社の状況を共有したうえで、税務上デメリットのない経営判断につなげやすくなります。

顧問契約を生かすには資料を渡す流れも必要です

顧問契約を結んでも、資料が数か月分たまってから届く状態では、直近の業績を確認することが難しくなります。税理士へ何を任せるかと同時に、会社がいつ、どの資料を渡すかも決めましょう。

例えば、請求書、領収書、預金の取引明細、給与に関する資料などを、毎月いつまでにまとめるかを相談します。記帳を自社で行う場合には、入力が終わったことを伝える方法や、判断に迷う取引の質問方法も確認しておくと進めやすくなります。

また、今後の予定は帳簿だけでは分かりません。新たな取引先との契約、設備の更新、従業員の採用など、資金や税務に影響しそうな予定は、金額や実施時期が分かる範囲で伝えます。

面談や相談では、「数字の説明を受けて終わり」にせず、次に確認することを決めると実務につながります。例えば、売掛金の入金予定を社内で確認する、設備の見積書を共有する、といった行動です。税理士と会社の双方が必要な情報を持ち寄ることが、顧問契約を活用する基本になります。

契約前は月額料金と年間の依頼範囲を確認しましょう

顧問料を比較するときは、月額だけで判断せず、年間に必要な業務と費用を確認しましょう。月額の顧問料に加え、決算・申告、消費税の申告、年末調整、税務調査への立会いなどが別料金になる契約もあります。

見積りを依頼する際は、自社で行う業務と任せたい業務を分けて伝えます。記帳を任せたいのか、自社で入力した帳簿の確認を受けたいのかでも、必要な作業は変わります。資料の整理が遅れている場合は、その状況も最初に共有してください。

相談のしやすさも重要です。相談方法、面談の頻度、通常の連絡窓口を確認し、急ぎの判断が必要なときにどう連絡するかも相談しておきましょう。質問への回答だけでなく、数字の説明が自分に理解できるかという点も、継続して依頼するうえでの判断材料になります。

当事務所の費用案内でも、法人の顧問・会計の料金と、法人税・地方税、消費税の決算料を分けて掲載しています。実際の依頼では、必要な業務、適用条件、追加費用や実費の有無を確認し、年間の負担を把握して検討してください。

日々の疑問と経営の判断を相談できる関係を考えましょう

社内で記帳と業績管理ができており、期中の税務判断も必要に応じて確認できる会社では、決算・申告を中心とした依頼が選択肢になります。すべての中小企業に、同じ内容の顧問契約が必要なわけではありません。

一方、経営者が経理を兼務している、数字を見ても対応が分からない、資金の見通しに不安がある場合は、継続的な相談の必要性を検討してみてください。会社が小さいからまだ早いと決めるより、今困っていることから必要な支援を考える方が具体的です。

当事務所では、中小企業の税務申告や会計代行、資金繰りの相談を取り扱い、日々の会計・税務の質問にも、その都度、迅速に回答することを心がけています。経理の負担を相談したい方や、会社の数字を理解しながら経営を考えたい方は、現在の状況をお聞かせください。

初回の相談では、直近の決算書や申告書、現在の帳簿の作成状況に加え、「何に困っているか」「今後どのような予定があるか」を整理すると話を進めやすくなります。資料がすべてそろわなくても、まずは相談したい内容をまとめておくとよいでしょう。

顧問契約を選ぶ基準は、費用に見合う支援を自社の経営に生かせるかです。決算時だけで足りることと、期中から相談したいことを分け、必要な業務と相談の進め方を確認してみましょう。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、とちの会計事務所までお問い合わせください。

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