障害年金を申請しようとして昔の病院に問い合わせたところ、すでに廃院していた。あるいは、病院は残っていても古いカルテが見つからない。このような場合、「初診日を証明できなければ申請を諦めるしかないのだろうか」と不安になる方もいらっしゃいます。 障害年金の請求では初診日の確認が重要ですが、初診時の医療機関から証明書を受け取れない場合に、別の資料で確認する方法も設けられています。ただし、どの資料が有効かは初診時の年齢や加入制度、受診経過によって異なります。ここでは、病院の廃院などで初診日の証明が難しいときの確認順序と、相談前に整理しておきたい資料を説明します。 なぜ障害年金の申請で初診日が重要なのか 初診日は現在の病院に通い始めた日とは限らない 初診日とは、障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日です。同じ傷病で病院を変えている場合、原則として最初に受診した医療機関の日付が問題になります。現在の主治医にかかった日や、病名が確定した日が必ず初診日になるわけではありません。 例えば、現在は専門病院で治療を受けていても、その前に同じ症状で近所の診療所を受診していたなら、その診療所の受診歴を確認する必要があります。ただし、複数の傷病の関係や、いったん治癒したと評価できるかなどによって判断が変わることがあります。 初診日によって確認する受給要件が変わる 初診日は、障害基礎年金と障害厚生年金のどちらが対象になるか、保険料の納付要件を満たすかなどを判断する基準になります。障害の程度だけを確認しても、請求できる年金の種類は確定しません。 20歳前に初診日がある場合などには、一般的な保険料納付要件とは異なる取扱いがあります。初診日を急いで決めつけず、年金加入記録と受診歴を照らし合わせることが大切です。 初診時の病院が廃院していた場合に最初に確認すること 医療記録や証明書の引継ぎ先を調べる まず、初診時の病院が本当に廃院しているか、名称変更や移転ではないかを確認します。診療を引き継いだ医療機関がある場合、記録の保管状況を尋ねられる可能性があります。ただし、廃院後もカルテが必ず保存されているわけではありません。 初診時の病院名、所在地、受診したおおよその年月、診療科、当時の医師名などをメモしておくと、問い合わせ先を探す際に役立ちます。病院に連絡がつかない場合でも、後から経緯を説明できるよう、確認した日時や問い合わせ結果を記録しておきましょう。 次に受診した病院の記録を確認する 最初の病院の証明が得られないときは、2番目以降に受診した医療機関の記録を調べます。紹介状や診療録に、以前の病院名、受診時期、症状の経過が書かれている場合があります。 ただし、後の病院の記録に「以前から通院していた」とあるだけで、申立てた初診日が当然に認められるわけではありません。記録に何が記載されているか、いつ作成された資料かを確認する必要があります。 初診日の証明書を取得できないときの代替資料 「受診状況等証明書が添付できない申立書」を検討する 通常、初診日の確認には初診時の医療機関が作成する「受診状況等証明書」などを用います。取得できないときは、その理由を説明する「受診状況等証明書が添付できない申立書」の提出を検討します。 この申立書だけで初診日が認定されるという意味ではありません。廃院や記録不存在の事情を整理し、初診日を裏付ける資料とあわせて提出することが重要です。必要書類は請求する方の事情に応じて確認してください。 当時の受診を示す資料を集める 参考になり得るものには、当時の診察券、領収書、お薬手帳、健康保険の給付記録、紹介状、医療機関の記録、障害者手帳申請時の診断書などがあります。手元に残っていない場合は、保険者や過去の医療機関に記録の有無を確認する方法も考えられます。 資料は「病気だったこと」だけでなく、「いつ、どの傷病で、どこを受診したか」を示せるかがポイントです。作成時期や記載内容によって証明力が異なるため、見つかった書類を自己判断で取捨選択せず、まず一覧にしておくとよいでしょう。 第三者による証明が使える場合もある 日本年金機構は、初診時の医療機関の証明を得ることが難しい場合について、第三者証明などを利用する方法を案内しています。ただし、20歳前に初診日がある場合と20歳以降の場合では取扱いが異なり、必要な証明の数や参考資料の条件も一律ではありません。 当時の受診状況を知る人がいるからといって、その証言だけで必ず認められるわけではありません。誰が、どのような事情を直接知っているかを整理し、該当する取扱いを年金事務所などで確認しましょう。 資料を集める際の進め方と注意点 受診歴を時系列で整理する 最初に、症状が現れた頃から現在までの受診歴を、覚えている範囲で年月順に並べます。病院名、診療科、転院の理由、紹介状の有無、入院歴などを書き出してください。家族が通院に付き添っていた場合は、記憶を照らし合わせると手掛かりが見つかることがあります。 例えば、最初の診療所は廃院していても、その後の総合病院に紹介状の記録が残っているかもしれません。この場合は、紹介元や過去の症状に関する記載を確認します。これは説明用の想定例であり、記録の内容によって結論は変わります。 初診日を推測で確定させない 「おそらくこの年だった」という記憶は調査の出発点になりますが、請求書類に根拠のない日付を確定事項として書くことは避けるべきです。別の資料と日付が食い違えば、追加確認が必要になる場合があります。 また、初診日が分からないまま現在の主治医に診断書を依頼すると、後で必要な診断書の時期や請求方法を再検討することもあります。受診歴、年金加入記録、請求方法を先に整理し、医師への依頼内容を確認すると無駄な手戻りを減らせます。 専門家に相談するときに準備したいもの 自分でできる最初の作業は、受診歴を書き出し、手元の診察券や医療関係書類を探すことです。年金事務所でも制度や必要書類について相談できます。一方、複数の病院を転院している、古い記録がほとんどない、20歳前の受診が関係するなどの場合は、資料の組合せや申立て方を慎重に検討する必要があります。 相談時には、受診した病院の一覧、受診時期のメモ、保管している医療資料、年金加入状況が分かる情報、廃院や記録不存在について問い合わせた結果などを用意すると、確認事項を整理しやすくなります。病歴・就労状況等申立書や診断書についても、初診日との整合性を意識することが大切です。 初診時の病院が廃院していても、それだけで障害年金の申請が不可能になるわけではありません。ただし、代替資料を提出すれば必ず初診日が認められるというものでもありません。まずは確認できる事実と残っている資料を整理し、どの証明方法が適切かを検討しましょう。社会保険労務士事務所ベルベットへの相談を検討する際も、これまでの受診経過をまとめておくことが第一歩になります。