士業コラム
記事一覧
-

運送業許可を取りたい人へ。行政書士・社労士・税理士・司法書士、誰に何を頼む?
トラック運送業(一般貨物自動車運送事業)の許可について調べていると、行政書士のほかに、社労士、税理士、司法書士の名前も出てきます。誰に何を頼むのか、どこから手をつけるのかが分からないまま、物件探しやトラック選びを先に進めてしまう方もいます。 運送業の許可では、車庫、資金、役員の試験、ドライバーの社会保険まで見られます。この記事では、許可の要件と申請の流れを押さえたうえで、4つの士業がそれぞれ何を受け持つのかを表で整理しました。順番を間違えて許可が遅れる例も載せています。 これから会社をつくって運送業を始める方、白ナンバーで運んでいて緑ナンバーに切り替えたい方は、物件の契約や車両の購入の前に読んでください。 運送業許可を取るまでに関わる士業は4つ 運送業を始めるには、運輸支局への許可申請のほかに、会社の登記、社会保険の加入、開業後の税務申告が必要です。手続きごとに担当の士業が決まっていて、法律で「その資格がないとできない」とされている手続きもあります。 運送業の開業で各士業に頼むこと 士業 運送業の開業で頼むこと 行政書士 一般貨物の許可申請、事業計画・資金計画の作成、運輸開始までの届出 社会保険労務士 社会保険・労働保険の加入手続き、36協定届、就業規則 税理士 開業後の会計・決算・税務申告 司法書士 会社の設立登記、目的・役員・本店の変更登記 ※事故の示談や取引先との争いになったときは、弁護士に相談します。 行政書士は許可申請の担当 緑ナンバーのトラックで他人の荷物を運び、運賃をもらう事業には、貨物自動車運送事業法の許可が要ります。申請書と添付書類を作って運輸支局に出すのが、行政書士の仕事です。 許可の主な要件 一般貨物自動車運送事業の主な許可要件 項目 基準の内容 車両 営業所ごとに5台以上(けん引車と被けん引車は合わせて1台) 営業所 使う権利があり、都市計画法・農地法・建築基準法などに違反していない 車庫 原則として営業所に併設し、計画する車両がすべて入る 休憩・睡眠施設 ドライバーが休める施設を用意する 運行管理体制 運行管理者と整備管理者を選任する 資金 事業開始に必要な資金の100%以上の自己資金を、申請日から許可まで持ち続ける 法令試験 常勤の役員が試験に合格する 引用元:東北運輸局 公示「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可申請、事業計画変更認可申請等の処理方針について」、中国運輸局「一般貨物運送事業 新規許可申請における所要資金及び自己資金の注意点について」 ※細かい取り扱いは、運輸局ごとに異なる部分があります。 申請から運輸開始までの流れ(関東運輸局の場合) ①営業所のある都県の運輸支局に申請書を出す ②役員が法令試験を受ける(奇数月に実施、30問中8割の正解で合格、1回の申請で2回まで) ③書類の審査を受ける(不備があれば補正する) ④許可が出たら登録免許税12万円を納める ⑤運行管理者・整備管理者を選任し、車両を緑ナンバーで登録する ⑥運輸開始届と運賃料金設定届を出す(運輸開始は許可から1年以内) 引用元:関東運輸局「一般貨物自動車運送事業の申請から許可までの流れ」https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000263002.pdf 申請してから許可が出るまでは、3〜5か月ほどかかるのが一般的です。法令試験に1回落ちると、そのぶんさらに延びます。2回とも不合格だと、申請は却下か取下げになり、出し直しです。 行政書士に頼んで最初に決めるのは、書類の中身より準備の順番です。車庫の候補地が基準に合うか、資金がいくら必要か、役員が何月の試験を受けるかを決めないと、申請日も運輸開始日も決まりません。 社会保険労務士は人を雇う手続きの担当 ドライバーを雇うなら、社会保険(健康保険・厚生年金保険)と労働保険(労災保険・雇用保険)に入ります。法人の場合、健康保険と厚生年金保険は、社長1人の会社でも加入が必要です。運送業の許可でも社会保険等への加入は要件になっていて、運輸開始の前に加入しているかを報告します。 この加入手続きを会社の代わりにすることや、労働者名簿・賃金台帳などの帳簿を作ることは、社会保険労務士法で社労士しかできない業務です。行政書士が代わりに出すことはできません。 運送業では、ドライバーに残業をしてもらうための36協定届や、拘束時間のルールに合わせた勤務表づくりも必要になります。2024年4月からは、トラックドライバーの時間外労働に年960時間の上限がかかっています。運輸開始の日が見えた時点で社労士に連絡しておけば、採用と保険の手続きが間に合います。 税理士はお金と税金の担当 許可の申請では、車両費、人件費、燃料費、保険料などを積み上げて「所要資金」を出し、それ以上の預金があることを残高証明で示します。残高証明は、申請のときと許可の前の2回出します。 申請してから許可が出るまでの間に、開業準備で預金が減って所要資金を下回ると、許可は出ません。 所要資金の計算は申請書類の一部なので、行政書士が作ります。一方で、開業後の会計、決算、税務申告は税理士の担当で、税務書類の作成や申告の代理は税理士しかできません。融資で資金をそろえるなら、返済の計画も含めて、早めに税理士と話しておいてください。 司法書士は会社の登記の担当 これから会社をつくる場合、法務局への設立登記は司法書士に頼みます。注意したいのは、定款の「目的」です。目的に貨物自動車運送事業が入っていないと、許可の申請の前に目的を変える登記が要り、そのぶん日数と費用がかかります。 許可を取ったあとも、役員や本店の所在地が変われば登記が必要です。運送業ではこのとき運輸支局への届出も要るので、司法書士と行政書士の両方の手続きになります。 順番を間違えて許可が遅れる4つの例 許可の要件を知らないまま準備を進めると、あとからやり直しになることがあります。起きやすいのは次の4つです。 先に進めてしまいやすいことと、その前に確かめること 先にやったこと 起きること その前に確かめること 車庫・営業所の物件を契約 市街化調整区域や農地で、基準に合わず使えない 都市計画、農地、前面道路の幅 会社を設立 目的に運送事業がなく、変更の登記が要る 定款の目的の書き方 トラックを購入 預金が減り、自己資金の基準を下回る 所要資金の額と購入の時期 ドライバーの採用を決定 試験や審査が延び、入社を待ってもらうことになる 試験の月から逆算した運輸開始の時期 4つとも、許可の要件を先に確かめていれば防げます。車庫と営業所は、契約したあとで使えないと分かっても、解約に違約金がかかることがあります。 相談の順番は、許可から逆算する 4つの士業のうち、開業の日程を決めるのは許可です。車庫、資金、役員の試験、ドライバーの採用の時期は、どれも許可の要件と審査期間から逆算します。最初に運送業の許可を扱う行政書士に相談しておけば、社労士・税理士・司法書士にいつ頼めばいいかも決まります。 行政書士を選ぶときは、次の3つを聞いてみてください。 ①運送業の許可を専門、または主な業務にしているか ②営業所や車庫の候補地を、契約の前に見てくれるか ③社会保険や登記など、ほかの士業の手続きが要る時期も教えてくれるか 当事務所は、運送業の許可と法令対応を専門にしている行政書士事務所です。現場で28年(うち運送業15年)働いてきた経験と、運行管理者(貨物)の資格をもとに、許可を取ったあとの点呼や運行管理まで考えて準備を組み立てます。新規許可のご依頼には、許可後1年間のLINE・メールでのご相談がついています。 車庫や営業所の候補が見つかったら、契約の前に、住所と図面を公式LINEで送ってください。基準に合いそうかどうかを無料でお返事します。公式LINEは、事務所のホームページから登録できます。LINEを使っていない方は、メール(info@aobato-office.com)で送っていただいてもかまいません。神奈川・東京を中心に、全国からオンラインでご相談を受けています。
- 許認可・届出
-

社員から育児の時短勤務を求められたら?会社が確認したい制度と対応
育児休業から復帰する社員に「子どもが小さいので、しばらくは短い時間で働きたい」と相談されたとき、会社はどこまで希望に応じる必要があるのでしょうか。人員に余裕のない中小企業では、勤務時間を短くすると仕事が回らない、給与をどう計算すればよいか分からない、といった悩みが生じます。 育児の短時間勤務は、単なる会社の配慮ではなく、法律上の制度です。一方で、対象者や例外、働き方の決め方には確認すべき点があります。ここでは、社員から申し出があった際に会社が確認する順序と、実務上の注意点を整理します。 まず確認したい育児短時間勤務制度の基本 3歳未満の子を養育する社員が基本的な対象 育児・介護休業法では、事業主は原則として3歳に満たない子を養育する労働者について、1日の所定労働時間を原則6時間とする措置を含む短時間勤務制度を設ける必要があります。社員から申し出があって初めて制度を考えるのではなく、あらかじめ利用条件や申請方法を整えておくことが大切です。 ただし、日々雇用される労働者、もともとの1日の所定労働時間が6時間以下の労働者、制度適用期間中に育児休業をしている労働者などは対象の整理が異なります。正社員だけでなく、有期雇用の社員やパートについても、雇用形態の名称だけで判断しないでください。 労使協定によって対象外とできる場合 適切な労使協定がある場合には、継続雇用期間が1年未満の労働者、週の所定労働日数が2日以下の労働者、業務の性質等から短時間勤務制度を講じることが困難と認められる業務に従事する労働者を対象外とできる場合があります。就業規則に一方的に「対象外」と書くだけでは足りません。 特に「忙しい部署だから」「代わりの人がいないから」という理由だけで、直ちに制度の適用を拒めるわけではありません。業務の性質と制度利用の可否を具体的に検討し、法律に沿った代替措置の要否も確認します。 申し出を受けたら会社が確認すること 子の年齢と希望する勤務時間を確かめる 最初に、子の生年月日、利用開始希望日、終了予定日、現在の所定労働時間、希望する始業・終業時刻を確認します。口頭だけで済ませず、申出書などで双方の認識を残しておくと、後の勤務表や給与計算の食い違いを防ぎやすくなります。 例えば通常勤務が9時から18時、休憩1時間の社員が、9時から16時、休憩1時間の勤務を希望するケースが考えられます。 3歳以降の希望は別の制度も確認する 子が3歳になると、3歳未満を対象とする法定の短時間勤務措置の枠組みとは異なります。2025年10月からは、3歳から小学校就学前の子を養育する労働者について、事業主が複数の柔軟な働き方の措置を用意し、労働者がその中から選択できる制度が施行されています。会社の措置の内容と本人の利用資格を別途確認してください。 3歳以降も会社独自に短時間勤務を認めている場合は、その規程も重要です。法定制度の終了だけを理由に、社内制度まで当然に終了すると決めつけないようにします。 給与・休憩・残業をどう扱うか 給与は規程に沿って整理し、不利益取扱いに注意する 短時間勤務によって実際に働かない時間に対応する賃金を支払わない取扱いは、賃金規程等に基づいて検討できます。ただし、制度を利用したこと自体を理由とする不利益な取扱いは禁止されています。基本給、固定手当、賞与、評価について、何が労働時間に連動するのかを個別に確認する必要があります。 例えば8時間勤務から6時間勤務に変わったからといって、すべての手当や賞与を機械的に4分の3にすることが妥当とは限りません。支給要件や算定方法を確認し、本人に変更内容を事前に説明してください。雇用保険の被保険者で一定の要件を満たす場合には、育児時短就業給付金の対象となる可能性もあります。 6時間勤務の休憩と残業の扱い 労働基準法上、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも60分の休憩が必要です。ちょうど6時間の実労働であれば法定休憩の付与義務はありませんが、会社が休憩を設けることはできます。実際の労働時間が延びると必要な休憩時間も変わるため、勤怠を確認しましょう。 また、育児中の労働者には、所定外労働の制限など、短時間勤務とは別の制度が関係する場合があります。「時短社員でも繁忙期には当然残業してもらう」と決める前に、本人の請求状況と適用要件を確認してください。 業務分担を見直すときの進め方 減る時間ではなく、残す仕事から整理する 勤務時間を短縮する場合、従来の仕事量をそのまま短い時間に押し込むと、休憩を取れない、持ち帰り仕事が増える、周囲の社員に負担が集中するといった問題が起こり得ます。まず業務を「本人が継続するもの」「時間帯を変更するもの」「他の社員に引き継ぐもの」に分けてみてください。 顧客対応の多い職場なら、本人が退勤する前に引継ぎ時間を確保し、夕方の問い合わせを誰が担当するか決めます。特定の同僚だけに負担が偏る場合は、担当のローテーションや業務手順の見直しも検討します。 本人と周囲の社員への説明を分ける 本人には、勤務時間、担当業務、給与の取扱い、制度終了時の確認方法を具体的に説明します。一方、周囲の社員には業務分担と連絡方法を共有すれば足りることもあります。家庭の事情や個人的な情報を、本人の了解なく必要以上に広めない配慮が必要です。 制度利用者を特別扱いしているという印象を避けるには、会社としての業務運営上のルールを明確にすることが有効です。育児以外の事情を抱える社員にも配慮しながら、仕事の配分を継続的に点検しましょう。 就業規則と運用を整え、必要に応じて相談する 社員からの申し出を機に、育児・介護休業規程、申請書式、賃金規程、勤怠管理の設定を確認してください。特に、制度の対象者、申請期限、短縮後の時間帯、給与の算定方法、制度終了時の取扱いが互いに矛盾していないかが重要です。 育児・介護休業については、法改正が多々ありますので、法改正に対応した規程になっているかも点検します。確認すると、かなり古い規程ということが多いですので、現状に対応できるように、まずは規程を整えることが必要です。 対応の順序としては、①本人の申出内容と子の年齢を確認する、②法定の対象要件と労使協定を確認する、③勤務時間と業務分担を協議する、④給与・勤怠の取扱いを書面で明確にする、⑤運用開始後に実態を見直す、という流れが考えられます。 制度の対象が明確で、既存規程も整っている場合は、会社内で手続きを進められるでしょう。一方、対象外の判断に迷う、賃金規程が不明確、業務の都合で希望どおりの運用が難しい、といった場合は、実施前に社会保険労務士へ相談することが有用です。 城田社会保険労務士事務所では、中小企業の労務相談や就業規則の作成・変更を取り扱っています。相談の際は、現在の育児・介護休業規程、賃金規程、対象社員の労働条件通知書、希望する勤務時間、業務分担案を用意すると、具体的な検討を進めやすくなります。
- 人事・労働管理
-

法定相続情報一覧図とは?複数の銀行や相続登記で使う方法と注意点
親が亡くなり、銀行3行の預金解約と実家の相続登記を進めたい。銀行ごとに戸籍一式を提出するよう案内され、「同じ書類を何度も集める必要があるのだろうか」と困ることがあります。 このようなときに検討したいのが、法務局の「法定相続情報証明制度」です。戸籍などから法定相続人の関係を一覧図にまとめ、登記官の認証を受けた写しを取得することで、複数の相続手続きに利用できます。ただし、一覧図だけですべての手続きが終わるわけではありません。使える場面と別途必要になる書類を確認しましょう。 法定相続情報一覧図で何ができるのか 戸籍の束に代えて相続関係を示せる 法定相続情報一覧図は、亡くなった方(被相続人)と法定相続人の関係を、戸籍の記載に基づいて図式化したものです。法務局に必要書類とともに申し出ると、登記官が内容を確認し、認証文の付いた一覧図の写しを交付します。 この写しは、相続登記、預貯金の払戻し、相続税の申告など、対応する手続きで戸籍の束の代わりとして利用できます。写しの交付手数料は無料です。ただし、戸籍謄本等を取得するための費用や、司法書士に依頼する場合の報酬は別にかかります。 相続財産の分け方まで証明するものではない 一覧図が示すのは、基本的に戸籍から確認できる法定相続関係です。誰が実家を取得するか、どの預金を誰に分けるかという遺産分割の合意を証明するものではありません。 そのため、遺言書や遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書などが別途必要になることがあります。また、相続放棄の事実は一覧図に記載されず、相続放棄をした人も、戸籍から確認できる法定相続人として記載されます。実際の手続きでは、相続放棄申述受理証明書などが別途必要になるため、提出先が求める書類を事前に確認してください。 複数の銀行や不動産の手続きでどう役立つか 銀行ごとに戸籍一式を提出する負担を減らせる 例えば、亡くなった父の預金が3行にあり、相続人は母と成人した子2人という架空のケースを考えます。銀行が法定相続情報一覧図の写しを受け付ける場合、認証済みの写しをそれぞれに提出することで、戸籍一式の提出を省略できることがあります。 戸籍一式は提出先から返却を受けて使い回せる場合もあるため、銀行ごとに取り直すことが必須というわけではありません。一覧図の写しを必要な通数取得すれば、戸籍の返却を待たずに複数の手続きを並行して進めやすくなります。 ただし、銀行ごとに相続届の様式、本人確認資料、遺産分割協議書などの要否は異なります。先に各行へ連絡し、一覧図を使えるか、写しの返却や原本確認の取扱い、必要な追加書類を確認すると、手戻りを減らせます。 相続登記にも利用できる 土地や建物の相続登記でも、一覧図の写しを相続関係の証明に利用できます。2024年4月からは、所定の要件の下で登記申請書に法定相続情報番号を記載し、一覧図の写しの添付を省略できる取扱いも始まっています。ただし、この番号を銀行などの手続きで代用することはできません。 不動産の登記事項証明書で現在の名義を確認し、遺言書や遺産分割協議書、住所関係の書類など、登記に必要な資料を別に整理しましょう。法定相続情報一覧図の取得だけで相続登記の義務を果たしたことにはなりません。 一覧図を取得するまでの進め方 まず戸籍と住所関係の資料をそろえる 最初に、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸除籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本・抄本などを集め、相続人を確定します。相続人の戸籍は、被相続人の死亡日以後に発行されたものが必要です。被相続人の住民票の除票も必要で、取得できない場合は戸籍の附票の写しを用意します。 これらも取得できない場合や、戸籍の廃棄などで相続関係を確認できない場合は、制度を利用できるかを含めて法務局に確認しましょう。申出人の氏名・住所を確認できる運転免許証の写しなどの公的書類も準備します。 戸籍の記載から前婚の子や、先に亡くなった子の代襲相続人が判明することもあります。思い込みで家系図を完成させず、取得した戸籍を順番に照合することが大切です。 一覧図を作成して管轄法務局に申し出る 法務局が公開する様式や記載例を参考に、被相続人と法定相続人の氏名、続柄、生年月日などを記載した一覧図を作成します。相続人の住所の記載は任意ですが、記載することで後続の登記手続きなどで住所証明書類の提出を省略できる場合があります。その場合は住所を証明する資料も準備します。 申出先は、被相続人の本籍地や最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産所在地を管轄する登記所から選べます。申出書に必要な写しの通数を記載し、書類一式を提出します。郵送による申出も可能ですが、返信用封筒などの条件を確認してください。 交付された写しを各手続きで使う 交付後は、各銀行や法務局の案内に従って利用します。必要な写しの枚数は、提出先の数や返却の取扱いに応じて考えましょう。 一覧図は、申出日の翌年から起算して5年間、法務局に保管され、その間は写しの再交付を受けられます。再交付を申し出られるのは当初の申出人で、申出先も当初の申出をした登記所です。他の相続人が手続きをする場合は、当初の申出人からの委任を受けるなど、代理の要件を確認してください。 申出前に確認したい注意点 相続人の死亡や相続放棄がある場合 被相続人が亡くなった後に、その相続人も亡くなった場合は、最初の相続と次の相続を区別して整理する必要があります。このような数次相続について一覧図を利用する場合は、1枚にまとめず、被相続人ごとに別々の一覧図を作成します。 相続放棄をした人についても、戸籍上の法定相続人であることと、実際に相続する権利があることは区別しなければなりません。 誰が銀行の書類に署名するのか、遺産分割協議に参加するのかは、一覧図だけで判断せず、死亡の順序や家庭裁判所の受理書類などを確認します。 提出先が一覧図を受け付けるか確認する 法定相続情報一覧図の写しは幅広く使えますが、すべての機関が同じ方法で取り扱うわけではありません。銀行や証券会社、年金関係の窓口などに、利用可否と必要書類を確認してください。 相続税申告の添付書類として利用するには、図形式で、子の続柄が実子か養子か分かるように記載されている必要があります。続柄を単に「子」としたものは使えないため、申告にも使う予定があれば、戸籍どおり「長男」「長女」「養子」などと記載しましょう。被相続人に養子がいる場合は、その養子の戸籍謄本・抄本も別途必要です。 一覧図の作成に時間をかけるより、急ぎの支払いなど別の対応を優先した方がよい場合もあります。提出先と期限を先に洗い出し、どの手続きを並行して進めるか決めることが重要です。 自分で進める場合と司法書士に相談する場合 相続人が明確で、戸籍がそろっており、提出先の案内を確認できる場合は、ご自身で一覧図を作成して申し出ることもできます。法務局の公式様式を使い、記載漏れや続柄の誤りがないか確認しましょう。 一方、古い戸籍の読み取りが難しい、相続人が多い、複数の銀行と不動産の手続きを並行して進めたい場合には、司法書士への相談が役立ちます。相談前には、亡くなった方の氏名と死亡日、家族関係のメモ、取得済みの戸籍、銀行名と不動産の所在地、遺言書の有無を分かる範囲で整理してください。 芦屋市のうちで法務事務所では、戸籍収集、法定相続情報の代理取得、相続登記、預貯金の相続手続きなどを取り扱っています。どの手続きをご自身で進め、どこから依頼するか迷っている方は、現在の資料と手続きの進み具合をもとに相談できます。相続人間で争いがある場合の交渉は弁護士、相続税の判断は税理士への相談も検討しましょう。 法定相続情報一覧図は、相続関係を一度整理して複数の提出先に示すための制度です。必要な戸籍を確認したうえで、各手続きに本当に役立つかを見極め、無理のない順序で進めていきましょう。
- 相続・家族
-

社員に退職を勧めたいときは?中小企業が確認したい退職勧奨の進め方
勤務態度や仕事の成果に課題があり、指導を続けても改善が見られない社員について、「退職を勧めてもよいのだろうか」と悩む経営者は少なくありません。人員配置の見直しや事業縮小を背景に、会社から退職を提案する場面もあります。 ただし、会社が「辞めてほしい」と伝える退職勧奨は、社員を一方的に辞めさせる解雇とは異なります。本人が断っているのに説得を続けるなど、進め方によっては退職強要と評価されるおそれがあります。ここでは、中小企業が退職勧奨を検討するときの事前確認、面談、合意後の手続きを整理します。 退職勧奨と解雇は何が違うのか 退職勧奨は本人の自由な判断が前提 退職勧奨とは、会社が社員に退職を勧め、合意による労働契約の終了を目指すことです。社員は提案を受け入れることも断ることもできます。退職勧奨を行っただけで雇用契約が終了するわけではありません。 一方、解雇は会社が一方的に労働契約を終了させる意思表示です。解雇には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。退職勧奨は解雇の要件を回避するための手段ではなく、あくまで本人の意思を尊重した話し合いです。 「退職届を書いて」と求める前に 退職の提案をした段階で、退職届の提出を当然のように求めたり、すでに退職が決まったかのように説明したりすることは避けましょう。面談では、会社としての考えと、最終的に応じるかどうかは本人が決められることを明確に区別します。 面談前に会社が整理しておきたいこと 退職を勧める理由を事実に基づいて確認する 勤務成績を理由にする場合は、評価表、業務上のミスの記録、これまでの指導内容、改善のために設けた機会などを確認します。単に「社風に合わない」「周囲から不満が出ている」という印象だけで話を進めると、本人との認識が大きく食い違うことがあります。 経営上の事情で人員削減を検討している場合は、事業状況、対象業務の変化、配置転換などの代替策を整理します。退職勧奨の相手を選ぶ際にも、差別的な基準や恣意的な選定になっていないか確認が必要です。 退職以外の選択肢を検討する 能力や適性に課題がある場合、業務分担の変更、教育、配置転換などで改善できないか検討します。本人の健康状態や家庭事情が関係している場合には、必要な配慮や利用可能な制度の確認が先になることもあります。退職以外の手段を検討した経緯を残しておくと、面談の目的を社内でも整理しやすくなります。 提案条件をあらかじめ決める 退職日、業務の引継ぎ、未消化の年次有給休暇、退職金規程の適用、会社が追加で提示する金銭の有無などを整理します。追加の金銭を提示することが常に必要というわけではありませんが、条件が曖昧なまま退職を勧めると後の争いにつながります。 退職勧奨の面談はどのように進めるか 面談では提案と理由を落ち着いて伝える 面談の冒頭で、会社が退職について相談したい理由を具体的に説明します。社員の人格を否定する言い方や、根拠のない非難は避け、事実と会社の判断を分けて伝えます。社員の反論や希望を聞く時間も確保してください。 たとえば、業務上の課題がある場合は、いつ、どのような問題が起こり、どのような指導を行ったのかを確認しながら説明します。その場で返事を求めず、条件を書面で示して持ち帰って検討してもらう方法も考えられます。 面談の回数や言動に注意する 退職を断った社員に対して、長時間の面談を繰り返したり、複数人で取り囲んだり、「応じなければ解雇する」と根拠なく迫ったりすることは避けなければなりません。本人の自由な意思決定を妨げるような働きかけは、違法な権利侵害となる場合があります。 面談記録には、日時、出席者、会社から伝えた内容、本人の発言、次回までの確認事項を客観的に残します。録音の扱いを含め、記録方法は事前に社内で方針を決め、個人情報の管理にも注意します。 社員に退職勧奨を拒否された場合の対応 社員が「辞めるつもりはありません」と明確に答えた場合、退職勧奨をしたという理由だけで雇用関係を終了させることはできません。まず拒否の意思を受け止め、同じ提案を執拗に繰り返さないことが重要です。 その後は、従来どおりの雇用を前提に、業務上の課題があれば具体的な指導や業務改善の手順を検討します。退職を断ったことへの報復として仕事を与えない、合理的な理由なく不利益な配置をするなどの対応は避けましょう。 解雇を別途検討する場合も、退職勧奨に応じなかったこと自体が解雇理由になるわけではありません。雇用形態、就業規則、指導経過、個別事情を踏まえ、解雇の有効性や手続きについて慎重な確認が必要です。 前述の通り、日本の実務において解雇が有効と認められるハードルは極めて高く、日常的に取れる手段ではありません。企業側の判断だけで簡単に実行できるものではなく、あくまで「極めて例外的な最終手段」であると捉えておく必要があります。 退職に合意した場合に確認する書類と手続き 合意内容は書面で明確にする 社員が十分に検討したうえで退職に応じる場合は、退職日、合意に至った経緯、金銭の支払い条件、貸与品の返却、引継ぎなどを双方で確認します。合意書の文言は、実際の合意内容と一致させる必要があります。包括的な権利放棄条項などを安易に盛り込まず、必要に応じて法律専門家にも確認しましょう。 離職票の退職理由を安易に自己都合としない 退職勧奨に応じた退職は、一般的な自己都合退職と同じ扱いになるとは限りません。雇用保険の離職理由は、会社が付けたい名称ではなく、退職に至った実態に基づいて確認されます。離職証明書には事実に沿って記載し、本人との認識に相違がある場合も事実を隠さず手続きを進めます。最終的な離職理由の判断はハローワークが行います。 また、最終給与、未払い賃金、社会保険・雇用保険の資格喪失手続き、必要な証明書の交付など、通常の退職事務も漏れなく確認してください。 判断に迷ったら面談前に専門家へ相談を 退職勧奨では、退職を提案すること自体よりも、理由の整理、伝え方、本人の意思の尊重、合意内容の記録が重要です。特に、指導経過が十分でない場合、社員が強く拒否している場合、病気や育児・介護などの事情がある場合は、面談を重ねる前に対応方針を見直すことをお勧めします。 相談時には、雇用契約書、就業規則、勤務評価・指導記録、面談記録、検討している退職条件を準備すると、論点を整理しやすくなります。城田社会保険労務士事務所では、中小企業の人事・労務全般の相談や就業規則の作成・変更を取り扱っています。退職勧奨を検討する段階で、会社の事情に応じた確認事項を整理することが大切です。
- 人事・労働管理
-

建設業許可の営業所技術者は現場に出られる?兼務の条件と注意点
建設業許可を取得している小規模な建設会社では、資格を持つ社員が限られており、「営業所の技術者に工事現場も任せたい」と考えることがあります。しかし、営業所技術者等は営業所での職務を担うことが原則です。現場の主任技術者や監理技術者との兼務が認められる場合はあるものの、どの工事でも自由に兼務できるわけではありません。ここでは、兼務の基本的な考え方、例外の確認事項、受注前に準備しておきたい資料を整理します。 営業所技術者等と現場技術者は役割が違います 営業所技術者等は営業所ごとに必要です 建設業許可では、許可を受ける業種について一定の資格または実務経験を持つ営業所技術者等を、営業所ごとに専任で置くことが求められます。一般建設業では「営業所技術者」、特定建設業では「特定営業所技術者」と呼びます。以前の資料では「専任技術者」という名称が使われていることもあります。営業所技術者等は、工事の見積りや契約締結に関する技術的な検討など、営業所の業務を支える役割です。 主任技術者・監理技術者は工事現場の施工を管理します 一方、主任技術者や監理技術者は、工事現場で施工の技術上の管理を担います。建設業者は原則として、請け負った建設工事の現場に主任技術者を配置し、一定の下請契約を締結する元請工事では監理技術者を配置します。現場によっては専任配置が必要です。営業所に配置する人員と、現場に配置する人員の要件を別々に確認することが出発点です。 営業所技術者等は原則として現場と兼務できません 専任を要しない現場にも条件があります 営業所技術者等は営業所に常勤し、専らその職務に従事することが基本です。ただし、専任を要しない現場については、当該営業所で請負契約を締結した工事であること、現場と営業所が近接し常時連絡できること、直接的かつ恒常的な雇用関係があることなど、所定の条件を満たせば兼務が認められる場合があります。単に「現場が近い」「電話がつながる」という事情だけで決めず、条件を一つずつ確認してください。 専任が必要な現場には別の特例があります 2024年12月13日からは、一定の条件を満たす場合、営業所技術者等が専任を要する工事現場の技術者を兼務する特例も設けられています。ただし、兼務できる現場数や工事の規模、営業所と現場との関係、情報通信技術の活用、連絡・施工管理体制など、詳細な要件の確認が必要です。専任を要しない現場の例外と同じ条件だと思い込まないことが重要です。 受注前に確認したい4つのポイント 1.対象工事に専任配置が必要か まず、工事の請負金額や工事の種類、元請・下請の立場、下請契約の内容を整理し、主任技術者または監理技術者の配置要件と専任義務を確認します。法令上の金額基準は改正されるため、過去の基準を使い続けないようにしてください。発注者との契約条件で追加の配置条件が定められていることもあります。 2.営業所と現場の距離・連絡体制は適切か 営業所の技術者が現場に出ている間も、営業所の職務を実質的に果たせることが必要です。営業所からの移動時間、連絡方法、営業所側の対応者、現場での施工管理方法を具体的に確認します。道内では移動距離や冬季の交通事情も業務運営に影響しますが、地理的な近さだけで法令上の要件を満たすとは判断できません。 3.兼務する本人の資格と雇用関係は適切か 兼務予定者が営業所技術者等として担当する許可業種と、現場で必要となる技術者資格・経験をそれぞれ満たすか確認します。直接的かつ恒常的な雇用関係など、該当する制度で求められる条件も確認してください。資格者証や実務経験を証明する資料、雇用関係を確認できる書類を整理すると判断しやすくなります。 4.他の現場との兼務や配置状況に問題はないか すでに別の工事現場を担当している場合、新たな兼務が認められるとは限りません。営業所の業務に加え、現場ごとの工期や施工管理の負担も確認します。現場技術者の兼務特例には別の制度もあるため、複数の特例を組み合わせてよいかを含め、適用関係を個別に確認する必要があります。 少人数の建設会社で想定される判断例 例えば、営業所技術者を務める社長が、同じ会社で新たに受注する工事の主任技術者も担当したいと考えたとします。これは説明のための架空の例です。まず、その工事が専任を要するかを確認します。専任を要しない工事であれば、当該営業所での契約締結、現場との近接性、連絡体制、雇用関係など、適用される要件を点検します。専任を要する工事なら、2024年12月からの特例の対象になるかを別途検討します。 いずれの場合も、社長が営業所技術者であるという事実だけで兼務が認められるわけではありません。また、代表者である場合には、通常の従業員とは異なる雇用関係の確認が必要になることがあります。自社の人員配置や契約内容に応じて、許可行政庁へ確認することが大切です。 兼務を検討するときの進め方と相談資料 受注を確定する前に配置計画を整理します 最初に工事の概要を一覧にし、工事名、請負金額、工期、施工場所、元請・下請の区分、配置予定者を書き出します。次に営業所技術者等の担当業種、資格、日常の勤務状況を確認します。そのうえで、専任義務の有無と適用できる兼務特例を調べ、必要な施工管理体制や書面の準備を進めます。兼務できない場合は、別の有資格者の配置や受注時期の調整も検討します。 余談ですが、一般的に兼務をすることが多い業種と多くはない業種がありますので、兼務が考えられる場合は事前に整理をしておくことも必要です。例えば、建築一式工事を請負う業者に営業所技術者として配置されている一級建築士の方が、大工を兼務するというのはほとんどありません。ですが、第一種電気工事士を取得されている方が現場に出て電気工事を担当するというのは、現実的に考えられるものです。そのような業者個々の事情を踏まえて計画的に上記の検討および人員の確保が必要です。 専門家に相談するときに用意したい資料 相談の際は、建設業許可通知書または許可内容が分かる資料、工事の見積書・契約案、工期と施工場所が分かる資料、技術者の資格証明書、雇用・常勤状況が分かる資料、現在の現場配置一覧などを準備すると確認が進みます。すべてを最初から揃える必要はありませんが、どの条件が未確認なのかを明らかにしておくと有効です。 行政書士加藤隆行事務所では、上富良野町を拠点に建設業許可の新規・更新申請、決算報告、経営事項審査などを取り扱っています。営業所技術者等の兼務を前提に受注を検討している場合は、工事の条件と現在の人員配置を整理したうえで、許可行政庁への確認事項を含めて相談することをお勧めします。
- 許認可・届出
-

建設業許可の変更届はいつ必要?商号・役員・営業所変更の期限と準備
建設業許可を取得した後、会社の商号を変えたり、役員が交代したり、事務所を移転したりすることがあります。「登記を変更したので建設業許可の手続きも終わった」と考えていませんか。商業登記と建設業許可の変更届は別の手続きです。届出を後回しにすると、許可の更新や事業体制の確認で問題が見つかることもあります。 ここでは、北海道知事許可を持つ建設業者を主な対象として、変更の種類による期限の違い、必要資料の集め方、営業所を移す際の注意点を整理します。 変更内容によって届出期限が異なる 商号・営業所所在地・役員等の変更は原則30日以内 商号や名称、営業所の名称・所在地、法人の役員等に変更があった場合は、原則として事実発生後30日以内に変更届を提出します。会社の登記事項を変更した場合、登記を済ませただけで建設業許可の変更届が不要になるわけではありません。登記事項証明書などの添付が必要になる場合もあるため、登記の予定と許可の届出を合わせて管理しましょう。 役員の変更には、新任・退任などがあります。誰がいつ就任または退任したか、登記の日付だけでなく変更の事実が生じた日を確認することが大切です。個人事業主と法人では必要書類も異なります。 許可要件に関わる変更には2週間以内のものがある 経営業務の管理体制を担う常勤役員等や、営業所技術者等の変更など、許可要件に関係する事項では、2週間以内の届出が必要となるものがあります。北海道の案内では、これらの事項について証明書類等を2週間以内に提出し、変更届出書(様式第22号の2)は30日以内とする扱いも示されています。書類ごとの期限を区別して確認してください。 特に、担当者が退職して許可要件を満たさなくなる場合は、届出期限だけの問題ではありません。後任者が要件を満たすか、継続して適切な体制を確保できるかを早急に確認する必要があります。 商号や役員が変わったときの確認事項 商号変更は登記と許可の情報をそろえる 会社名を変更する場合は、株主総会等で決定した内容、変更日、登記の完了予定日を確認します。そのうえで、建設業許可の変更届に必要な登記事項証明書等を準備します。取引先に提示する許可通知書や建設業の許可票についても、変更後の表示が適切か確認しましょう。 変更後の名称で契約書や請求書を発行し始める前に、社内の管理資料、金融機関への届出、公共工事の入札参加資格に関する手続きなど、別途確認すべき事項を一覧にしておくと漏れを防げます。これらは建設業許可の変更届とは別の手続きです。 役員変更では経営管理の要件も点検する 役員が交代した場合、役員等の一覧や所定の調書、登記事項証明書など、変更内容に応じた書類を確認します。新しい役員が就任したというだけで、その人が経営業務の管理体制を担えるとは限りません。 例えば、社長が退任し、別の役員が代表者になる想定例を考えます。代表者変更の届出と同時に、従来の常勤役員等が退任するなら、後任者の経営経験や常勤性などを別途確認する必要があります。代表者と経営管理を担う人が同一とは限らないため、役職名だけで判断しないことが重要です。 営業所を移転・新設するときの注意点 住所変更だけで済まない場合がある 営業所の所在地変更や新設では、住所や登記だけでなく、その場所が建設業の営業所として機能するかを確認します。工事の見積り、契約締結等の営業活動をどこで行うのか、電話・事務設備、使用権原などの資料を整理してください。北海道の手引きに沿って、写真や賃貸借契約書など必要な確認資料を確認します。 自宅の一部を営業所にする場合や、別の市町村へ移す場合も、建物の利用状況や営業実態が重要です。看板だけ設置して実際には営業していない場所を届け出ることは避けましょう。 営業所の配置で許可区分が変わることも 営業所を増やすときは、その所在地が同一都道府県内か、他の都道府県にも及ぶかを確認します。建設業を営む営業所を北海道以外にも設ける場合は、知事許可から国土交通大臣許可への許可換えが必要になる可能性があります。単純な住所変更の届出で済むと決めつけないでください。 また、新しい営業所で扱う許可業種と、配置する営業所技術者等の資格・経験も確認します。現在の営業所の担当者を形式上だけ別の営業所へ移すことはできません。勤務実態と担当業務を整理し、配置変更の前に要件を点検しましょう。 届出漏れを防ぐための進め方 変更日・届出対象・添付資料を一覧にする まず、変更が生じた日と内容を時系列で書き出します。商号、代表者、役員、資本金、営業所、技術者など、複数の事項が同時に変わることもあります。変更項目ごとに届出期限が異なるため、一括して「30日以内」と考えないことが大切です。 次に、最新の北海道の変更届案内と様式を確認し、変更届出書、登記事項証明書、役員関係書類、営業所の確認資料などを整理します。変更が重なる場合は、同じ資料を複数の項目で使えるか、提出先へ確認しておくと効率的です。 当事務所で扱った届出漏れの一例としては、家族で建設業を営んでおり息子様が代表取締役となり、代表職を退いているものの取締役として名前を残していた父親が亡くなった場合で、相続手続きや会社の登記簿の変更までは行いましたが、建設業許可の変更は忘れてしまっていた例がありました。この方は役員以外にも営業所技術者としても登録されており、さらに会社の持ち株の相続もあったので、こちらに関しても変更が必要な状況でした。特に創業者であった方の死亡は、税金問題なども含めて相続手続きが大掛かりになる傾向があり、そちらに注力してしまっていて建設業の変更まで気持ちが回らないこともあります。 専門家である私たちはお客様にそのような変化事項を確認した場合は、状況に見合った適切なアドバイスをいたしますのでご安心ください。特に相続手続きも同時に絡む変更の場合は遺産分割を終えてから建設業許可の変更をしないと二度手間になってしまう場合がありますので注意が必要です。 期限を過ぎたときは放置せず相談する 変更届を出し忘れていたと分かった場合、事実発生日を変えたり、過去に提出したように記載したりしてはいけません。実際の変更日、現在の許可状況、未提出の書類を整理し、許可行政庁に速やかに対応方法を確認しましょう。 届出が遅れた場合の取扱いは、変更内容や事情によって異なります。更新申請が近い場合は、未処理の変更届と更新手続きの関係も確認する必要があります。更新時期まで待てば自動的に解消するものではありません。 相談前にそろえたい資料と確認先 行政書士へ相談する際は、現在の許可通知書、直近の申請書控え、変更前後の会社情報、登記事項証明書、役員の就退任日が分かる資料、営業所の賃貸借契約書や写真など、手元にあるものを準備すると状況を整理しやすくなります。すべてを先に取得する必要はなく、変更内容に応じて必要書類を確認するのが合理的です。 社内で変更事項と期限を把握し、最新の手引きに沿って届出を進められる場合は、自社で対応することもできます。一方、役員の交代と経営管理体制の変更が重なる場合、営業所の移転・新設に伴い許可区分が変わる場合、過去の届出漏れが見つかった場合は、申請前に専門家へ相談すると整理しやすくなります。 行政書士加藤隆行事務所は、上富良野町を拠点に、建設業許可の新規・更新申請や決算報告、経営事項審査等を取り扱っています。変更届について相談する場合も、まず変更した内容と日付、現在の許可状況を伝え、必要な手続きと提出資料を確認してください。変更届そのものの受任範囲は事務所に確認が必要です。
- 許認可・届出
-

始業前の清掃や朝礼は労働時間?中小企業が確認したい勤怠管理と賃金の注意点
「始業は9時なのに、社員には8時45分から清掃をしてもらっている」「朝礼は始業前に済ませるのが当たり前になっている」 このような職場では、清掃や朝礼の時間を勤怠記録に含めるべきか迷うことがあります。制服への着替えや終業後の片付けも同じ問題です。 労働時間に当たるかどうかは、会社が「勤務時間外」と呼んでいるかではなく、実際に会社の指揮命令下にあったかによって判断します。この記事では、中小企業の経営者が確認したい作業の実態、勤怠記録の見直し方、賃金計算の注意点を解説します。 始業時刻より前でも労働時間になることがある 判断の基本は会社の指揮命令下にあるか 厚生労働省のガイドラインでは、労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間とされています。明確に「やってください」と命じていなくても、実態として会社の指示があったと評価される場合があります。 たとえば、開店前の清掃を全員に割り当て、参加しなければ上司から注意される職場では、始業前だからという理由だけで労働時間から除外することはできません。一方、社員が自分の都合で早く出社し、業務とは関係なく過ごしている時間は、通常は労働時間ではありません。 大切なのは、出社時刻と作業開始時刻を混同しないことです。早く来ているという事実だけで判断せず、何をしていたか、その作業が必要だったか、会社がどう関与していたかを確認します。 就業規則の記載だけでは決まらない 就業規則に「勤務時間は9時から18時」と記載されていても、8時45分から会社の指示で作業していれば、その時間が労働時間に当たる可能性があります。「朝礼は自主参加」「清掃は当番制」といった名称も決定的ではありません。 管理職が参加を求めていたか、不参加による不利益があったか、業務開始に欠かせない作業だったかなど、運用を含めて判断する必要があります。 清掃・朝礼・着替えで確認したい具体的な場面 開店準備や清掃が日課になっている場合 店舗や事務所で、始業前にレジの準備、機器の起動、床の清掃などを行っている場合は、作業内容と所要時間を整理してください。会社が担当者を指定し、業務上必要な作業として行わせているなら、労働時間に含める必要があります。 「社員が自主的に始めた」という説明であっても、上司が継続的に把握し、事実上必要な仕事として定着している場合には、黙示の指示が問題になります。実態を確認せず、すべて自主活動として処理するのは避けましょう。 朝礼や研修への参加を求めている場合 売上目標の共有、業務指示、安全確認などを行う朝礼が義務であれば、始業前の実施でも労働時間に当たります。会社が参加を義務付ける研修や教育訓練についても同様です。 自由参加の勉強会などは、参加しない自由が実際に保障されているかが重要です。出欠を評価に反映させたり、欠席者に不利益を与えたりしていないかも確認してください。 制服への着替えや終業後の片付けの場合 会社が指定した服装への着替えを事業場内で行うよう義務付け、その着替えが業務に必要な準備行為であれば、着替えの時間も労働時間となります。ただし、制服があるだけで、すべての着替え時間が自動的に労働時間になるわけではありません。着用義務、着替える場所の指定、業務との関係を確認します。 閉店後のレジ締め、機器の清掃、施錠確認なども、会社が行わせる業務であれば終業後の労働時間に該当します。始業前と終業後をまとめて点検すると、見落としを防げます。 勤怠記録と賃金計算をどう見直すか タイムカードの時刻と実作業を照合する 労働時間は、原則としてタイムカード、ICカード、パソコンの使用記録など客観的な記録を基礎に把握します。ただし、打刻前に作業をさせている場合は、打刻時刻だけでは実際の労働時間を把握できません。 まず、部署ごとに始業前・終業後の作業を洗い出し、作業指示、当番表、打刻記録、入退館記録などを照合します。従業員にも、実際に何時から何をしているかを確認してください。申告と記録に差があれば、理由を調べ、必要な補正を行います。 1日ごとの端数を一律に切り捨てない 「15分未満は残業にしない」「30分単位でしか申請できない」といった運用には注意が必要です。実際に働いた時間を1日ごとに一律に切り捨て、その分の賃金を支払わない扱いは認められません。 また、労働時間に該当することと、割増賃金が必要になることは別の問題です。所定労働時間を超えても、直ちに法定時間外労働になるとは限りません。原則として1日8時間・週40時間という法定労働時間や、就業規則の賃金規定を踏まえて計算します。業種・規模による法定労働時間の特例にも注意が必要です。 過去の運用に問題があれば対象期間を整理する 過去に打刻前の清掃を労働時間に含めていなかったことが判明した場合は、いつから、誰が、どの程度作業していたかを調べます。記録が不十分な場合も、当番表、業務日報、関係者への聞き取りなどから実態を整理します。 未払い賃金の有無や金額は、個別の労働時間と賃金条件を基に確認します。会社に都合のよい推定だけで計算したり、本人の申告を一律に否定したりすることは避けましょう。賃金請求権の消滅時効や保存義務の対象期間も確認が必要です。 想定例:毎朝15分の清掃を行う職場 従業員12人の小売店で、開店準備のため全員が始業時刻の15分前に集合し、清掃と商品陳列をしているとします。店長は当番を決め、遅れた社員には注意しています。しかし、タイムカードは清掃後の始業時刻に打刻する運用でした。 この場合、清掃や陳列は会社の指示に基づく業務と評価される可能性が高く、打刻前の15分も労働時間として扱う必要があります。会社はまず、実際の作業開始時刻と過去の実施状況を確認し、必要な賃金精算を検討します。 今後は、清掃を始業時刻以降に移すか、清掃開始から勤怠を記録する方法に改めることが考えられます。単に「清掃は任意」と掲示するだけでは、実際の参加義務が残っている限り問題の解決にはなりません。 再発を防ぐために会社が決めておきたいこと 作業開始から記録するルールを周知する 始業前に必要な作業があるなら、その開始時刻を勤務予定に組み込み、実際の労働時間を記録できるようにします。終業後の片付けも、完了してから打刻する運用を基本に検討してください。 残業の事前承認制を採用する場合でも、承認がないという理由だけで、実際に会社の指揮命令下で行われた労働時間を消すことはできません。無断残業を防ぐための指導と、実労働時間の把握・賃金支払いは分けて対応します。 管理職にも同じ基準を共有する 経営者がルールを変更しても、現場の店長や管理職が「始業前に準備を終えるのが当然」と指導していれば、運用は変わりません。朝礼、清掃、着替え、片付けについて、何を勤務時間内に行うかを明確にします。 特に、業務の準備を誰が指示するか、勤怠記録に誤りがあった場合に誰へ申し出るかを決めておくと、実態と記録のずれに早く気づけます。 判断に迷うときは作業実態と記録をそろえて相談する 始業前の作業が労働時間に当たるかは、作業の必要性や会社の関与、参加の自由などによって判断が変わります。まずは、就業規則、労働条件通知書、勤怠記録、当番表、朝礼の案内、作業手順書を集め、実際の運用と照らし合わせてください。 特に、打刻前の作業が長年続いている場合、複数の部署で運用が異なる場合、未払い賃金の精算が必要になりそうな場合は、専門家と確認することが有用です。 城田社会保険労務士事務所では、中小企業の労務管理や就業規則に関する相談を取り扱っています。東京都豊島区や周辺地域で勤怠管理の見直しを検討している経営者の方は、現在の作業実態と記録を整理したうえでご相談ください。法的紛争に発展している場合は、弁護士への相談も検討してください。
- 人事・労働管理
-

社員が業務指示に従わないときは?中小企業が確認したい指導と懲戒の進め方
「頼んだ仕事を何度も断る」「注意しても指示どおりに動かない」 社員の対応に困った経営者は、業務命令違反として処分できるのか悩むことがあります。しかし、指示に従わなかったという結果だけで懲戒を決めるのは危険です。指示自体の合理性、本人が従えない理由、これまでの説明や指導を分けて確認する必要があります。ここでは中小企業が実務で進めたい確認と対応を整理します。 最初に「どの指示に、どう従わなかったか」を整理する 指示の内容と伝え方を確認する まず、指示を出した日時、担当者、具体的な仕事内容、期限、本人の返答を記録します。「協調性がない」「反抗的だ」といった評価だけでは、何が問題だったかが曖昧になります。口頭の指示で行き違いが生じている場合は、業務の目的、優先順位、完了条件をメールなどで改めて示しましょう。 指示が雇用契約上の業務範囲に含まれるか、就業規則や職務分掌と整合するかも確認します。上司が出した指示なら何でも従う義務があるわけではありません。法令違反を伴う作業、安全配慮を欠く作業、業務上の必要性が乏しく不当な目的を持つ指示などは、指示自体の妥当性が問題になります。 従えない事情を本人から聞く 本人の説明を聞く前に「命令違反」と断定しないことが大切です。別の上司から矛盾する指示が出ていた、期限までに処理できない業務量だった、必要な研修を受けていなかった、健康上の制約があった、といった事情も考えられます。面談では事実と本人の認識を分けて確認し、必要なら担当業務や作業手順を見直します。 注意・指導は具体的な改善行動と期限を示す 人格ではなく業務上の行動を対象にする 注意する際は「昨日依頼した顧客への回答が未実施だった」のように事実を示し、どのような対応を求めるかを伝えます。「やる気がない」「社会人失格」などの人格評価や、周囲の前で長時間叱責する方法は避けましょう。指導の必要性があっても、態様によってはパワーハラスメントの問題が生じます。 改善を求める内容は、担当者への報告時刻、作業の優先順位、相談が必要な場合の連絡方法など、確認可能な行動に落とし込みます。達成できる期限を設け、会社側が必要な資料や教育を提供できているかも点検してください。 指導記録を残し、改善の機会を設ける 指導日、同席者、指摘した事実、本人の説明、合意した改善策、次回確認日を簡潔に記録します。本人に確認を求める場合も、署名しないことだけを新たな非違行為と決めつけないよう注意が必要です。面談後に要点をメールで送る方法もあります。 改善が見られない場合は、前回の指導と今回の行動を比較します。初回の軽微な行き違いと、明確な説明を受けた後も正当な理由なく重要な指示を繰り返し拒む場合では、評価が異なります。 懲戒処分を検討する前に確認すること 就業規則の根拠と処分の相当性 懲戒には、就業規則等に定められた根拠と適切な周知が重要です。労働契約法第15条は、懲戒が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合には権利濫用として無効になると定めています。規定に「業務命令違反」と書かれているだけで、直ちに重い処分が有効になるわけではありません。 指示の重要性、違反の回数や影響、本人の説明、過去の指導、同種事案との均衡を検討します。弁明の機会など就業規則に定めた手続きも確認してください。事実確認が不十分なまま処分を通知すると、後から説明が食い違う原因になります。 減給・出勤停止・解雇は特に慎重に 減給の制裁には労働基準法第91条の上限があります。1回の額は平均賃金の1日分の半額を超えず、総額は一賃金支払期の賃金総額の10分の1を超えられません。ただし、この上限内なら処分が必ず有効という意味ではありません。 出勤停止は規程の根拠や期間の相当性を確認し、懲戒解雇はさらに慎重な検討が必要です。解雇には労働契約法第16条による制限があり、解雇予告等の問題も別途生じます。「次に断ったら即解雇」と安易に告げず、処分を考える段階で専門家に確認しましょう。 想定例:仕事の依頼を繰り返し断る社員 従業員20人の会社で、営業社員が顧客への見積書作成を繰り返し断ったとします。社長は懲戒を考えましたが、確認すると、その社員には別の管理職から緊急案件も割り振られていました。優先順位が示されていなかったため、本人は先に緊急案件を処理していたのです。 この場合、まず指示系統と業務量を整理し、期限と優先順位を明示することが先決です。社員が言いづらい状況があるかもしれませんので、状況を聞きだすことも必要な場合があります。一方、整理後も本人が理由を説明せず、重要な指示を繰り返し拒否するなら、指導履歴と影響を記録し、就業規則に沿った対応を検討します。 再発防止と専門家への相談の進め方 指示系統と社内ルールを整える 複数の上司が同時に指示する職場では、優先順位を決める責任者を明確にしましょう。重要な業務指示は、担当者、期限、報告先を記録できる仕組みにすると、本人の誤解と会社側の説明不足の双方を減らせます。管理職にも、事実に基づく指導と面談記録の取り方を共有します。 相談前に用意したい資料 専門家に相談する際は、雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、業務指示のメール、面談記録、本人の説明、業務への影響が分かる資料をそろえると、判断の分かれ目を整理しやすくなります。ハラスメントの申告や健康上の事情がある場合は、その対応経過も区別してまとめてください。 城田社会保険労務士事務所では、中小企業の人事・労務相談や就業規則の作成・変更を取り扱っています。指導の進め方や規程の整備に迷う場合は、事実関係と記録を整理したうえで相談できます。懲戒の有効性をめぐる紛争や訴訟対応が必要な場合は、弁護士への相談も検討してください。
- 人事・労働管理
-

重機を積み替えたら特殊車両通行許可はどうなる?運搬前の確認事項
「先週は油圧ショベルを運んだトレーラーで、今度は別の重機を運びたい」、「運搬する機械が変わっても、以前取得した特殊車両通行許可を使えるのだろうか」。建設現場や重機運搬の仕事では、このような疑問が生じます。 結論から言えば、積荷が変わったという事実だけで、必ず新しい通行許可が必要になるというわけではありません。ただし、積み替え後の車両の重量や寸法、通行経路などが現在の許可の範囲に収まるかどうかを確認する必要があります。今回は、判断のポイントを解説します。 まず確認したいのは「積荷の名称」より運行時の車両状態 特殊車両通行許可は、道路法に基づく車両制限を超える車両が、指定された道路を一定の条件で通行するための制度です。一般的制限値である車両の幅2.5m、高さ3.8m、長さ12m、車両総重量20tなどを超えているかどうかで判断します。 積み替えで重量・高さ・幅が変わる 例えば、同じ低床トレーラーでも、積載する油圧ショベルの機種が変われば、積載後の車両総重量や高さ、左右への張り出し(=車両の幅)が変わります。車検証に記載された車両そのものの情報だけで積荷を載せた状態を十分に確認できるとは限りません。 運搬担当者は、積載物の重量だけでなく、車両と積荷を合わせた状態を把握してください。車両の構造、積載方法、積荷の位置によって軸重や隣接軸重なども変わる可能性があります。総重量が同じでも、道路への負担が同じとは限らない、と言えます。 許可と積載方法の適法性は別に確認する 道路法上の特殊車両通行許可を取得していても、それだけですべての積載方法が認められるわけではありません。積載物の大きさや積載方法が道路交通法上の制限を超える場合には、別途、制限外積載許可などの確認が必要になることがあります。重機の固定方法や安全な運搬方法も、運行計画とは別に検証しましょう。 現在の許可証と新しい運搬条件を照合する 許可を受けた車両と組合せを確認する 最初に、現在の許可証、車両諸元、経路図、通行条件が分かる書類を用意します。トラクタとトレーラーの組合せが変わる場合は、積荷の変更とは別に、許可対象の車両に含まれるかを確認しなければなりません。 複数の車両を保有している会社では、配車表に書かれた車両番号だけで判断せず、許可書類に記載された登録番号や車両の組合せを照合します。 重量・寸法・経路・通行条件を比較する 次に、積み替え後の運行条件を整理します。確認するのは、車両と積荷を合わせた高さ・幅・長さ・重量、必要な軸重等の情報、出発地と目的地、実際に通る道路です。 同じ工事現場へ向かう場合でも、搬入口が変われば最後の交差点や進入道路が変わることがあります。また、許可証に誘導車や通行時間帯などの条件が付されている場合は、新しい運搬計画でもそれらの条件が遵守できるか確認してください。 比較の結果、許可内容と実際の運行に差がある場合は、変更申請や新規申請の要否を検討します。許可の有効期間が残っているという理由だけで、そのまま出発しないことが重要です。 想定例で考える積み替え時の判断 比較的小さい重機へ変更する場合 例えば、ある現場に運んだ油圧ショベルを、同じトレーラーで別の小型機械に積み替えるとします。新しい機械の重量が軽くても、積載位置や機械の高さが異なる場合があります。 「軽くなるから問題ない」と決めつけず、許可対象の車両、許可された諸元、経路、通行条件を照合します。確認の結果、現在の許可の範囲で通行できる場合もありますが、積載状態を見ずに結論を出すことは避けるべきです。 より大型の重機へ変更する場合 別の例として、従来より重い重機を運ぶ依頼を受けた場合を考えます。積載後の総重量だけでなく、軸重や車両全体の高さなどが許可された条件を超える可能性があります。さらに、橋梁や交差点などの道路条件によっては、従来の経路が使えないこともあります。 この場合、まず機械の仕様書や実測値、車両諸元、運搬経路をそろえ、必要な申請と運行計画を検討します。許可が必要な運行については、必要な許可を得る前に出発することは避けてください。 運搬前に社内で進めたい確認手順 配車担当者と運転者で情報をそろえる 積み替えが決まったら、荷主から機械の型式、重量、外形寸法、積載時の姿勢などを確認します。運送会社側では使用するトラクタ・トレーラー、積載方法、出発地・目的地、希望日を把握します。機械のカタログ値と実際のアタッチメント装着状態が違う場合は、その差についても併せて把握しておきましょう。 運行の担当者が複数名いる場合は、配車担当者だけで判断を完結させず、申請担当者とそれぞれの運転者が同じ資料を確認できるようにします。許可証の有無だけを伝えるのではなく、対象車両、経路、通行条件まで共有することが大切です。 不明点があるときは出発前に確認する 許可内容との違いが見つかった場合は、道路管理者の案内や申請制度の取扱いを確認し、必要に応じて行政書士へ相談します。変更申請として扱える範囲と、改めて新規申請が必要になる範囲は、変更する内容によって異なります。 納期が迫っているときほど、積み替え後の状態が確認できないまま出発日を確定しないようにしましょう。申請や審査に時間がかかる場合に備え、代替車両や運搬日程を調整することも選択肢の一つです。 相談前に準備する資料と確認事項 相談時には、現在の許可証一式、車検証などの車両情報、トラクタとトレーラーの組合せ、新旧の積載物の仕様書、積載状態が分かる資料、予定経路、運行希望日をまとめておくと、確認が進めやすくなります。資料がすべてそろっていなくても、何が不足しているかを先に整理できます。 特に、重量や寸法が許可範囲内か判断できない場合、積載物の張り出しがある場合、トレーラーの組合せや搬入経路も変わる場合には、運行前に専門家へ確認することをお勧めします。 福岡県八女郡広川町の奥村行政書士事務所では、特殊車両通行許可申請を取り扱っています。重機の積み替えに伴って申請が必要か迷うときは、現在の許可内容と新しい運搬計画を整理したうえでご相談ください。
- 許認可・届出
-

採用内定を取り消したいときは?会社が確認したい判断基準と対応手順
「採用内定を出した後に大口の取引がなくなった」「予定していた部署の仕事が減り、新しい社員を迎える余裕がなくなった」。こうしたとき、会社の判断だけで内定を取り消してよいのでしょうか。 採用内定は、単なる採用予定の連絡ではなく、すでに労働契約が成立している場合があります。その場合の取消しは、解雇に準じた厳しい判断を受けます。この記事では、中小企業が最初に確認すべき書類、取消理由の検討、本人への説明と代替策について解説します。 採用内定はいつから労働契約になる? 内定通知と本人の承諾を確認する まず、求人票、採用面接時の説明、内定通知書、承諾書、メールのやり取りを時系列で確認してください。「内定」という名称だけで契約の成立が決まるわけではありません。採用条件が具体的に示され、会社の採用意思と応募者の承諾が認められる場合などは、入社前でも労働契約が成立している可能性があります。 例えば、入社日と給与を明示した内定通知書を送り、応募者が承諾書を返送したケースでは、単なる選考中の状態とは異なります。入社までに改めて契約を結ぶ予定があったかなど、個別の事情も確認が必要です。 内々定なら自由に取り消せるとは限らない 正式な内定より前の「内々定」は、労働契約が成立していない場合もあります。しかし、名称が内々定でも、通知内容や双方のやり取りによっては契約成立が認められることがあります。契約が成立していなくても、会社の説明によって応募者に強い期待を生じさせた場合には、信義則上の問題が生じる可能性があります。 したがって、「まだ入社していないから大丈夫」「内々定と書いてあるから撤回できる」といった判断は避けましょう。 会社都合の内定取消しが認められる条件 経営悪化だけで直ちに取り消せるわけではない 労働契約が成立している採用内定を取り消す場合、労働契約法第16条の解雇権濫用に関する考え方が問題になります。内定時に知ることができなかった事情か、取消しに客観的に合理的な理由があり社会通念上相当といえるか、といった点が重要です。 売上減少や取引先との契約終了が起きても、それだけで当然に取消しが有効になるわけではありません。人員削減の必要性、採用を維持するための努力、対象者の選び方、説明の経緯などを整理する必要があります。経営上の理由による取消しでは、整理解雇に準じた観点が重要になります。 採用を維持する方法を検討したか 取消しを伝える前に、採用時期の調整、配置先の見直し、業務量の再配分、経費削減などの代替策を検討してください。ただし、入社日の延期や賃金の引下げを会社が一方的に決められるわけではありません。すでに合意した条件を変更するなら、本人への説明と合意の有無を確認する必要があります。 検討した代替策について、実行できなかった理由も含めて記録を残しましょう。後から判断の経緯を説明する資料になります。 取消しを判断する前に整理したい資料 採用時の約束と現在の事情を分ける 採用時に何を約束したかと、その後に何が変わったかを分けて整理します。具体的には、求人票、内定通知書、承諾書、労働条件通知書、採用担当者のメール、採用計画、売上見込み、受注状況などです。 経営上の事情については、単に「業績が厳しい」と書くのではなく、いつ、どの取引や事業計画が変化し、予定していた採用枠にどのような影響が生じたかを説明できるようにします。数字を整理する場合も、個人情報や取引先の機密情報の取扱いには注意してください。 本人が入社に向けて進めた準備も把握する 応募者が前職を退職したか、転居や住居契約を進めたか、他社の選考を辞退したかなども確認事項です。これらの事情だけで取消しの有効・無効が決まるわけではありませんが、本人に生じる影響や今後の協議を考えるうえで重要です。 会社から安易に「損害は一切補償しない」と断言したり、本人の事情を確認せずに書類への署名を急がせたりする対応は避けてください。 内定取消しを伝える際の進め方と注意点 最初に社内で判断根拠を確認する 採用担当者だけで結論を出さず、経営者、人事責任者、必要に応じて専門家を交えて検討します。内定の法的性質、取消理由、代替策、説明担当者を整理したうえで、本人への連絡方法を決めます。判断が固まる前に「内定は無効です」と一方的に通知することは避けましょう。 説明は具体的に、記録を残して行う 本人に事情を説明する際は、会社側で生じた変化、検討した対応、現時点での方針を区別して伝えます。電話だけで済ませず、説明日時、参加者、質問、回答内容を記録し、必要に応じて書面でも整理してください。 本人が納得しない場合に、繰り返し辞退を迫ったり、自己都合の内定辞退として処理するよう求めたりすることは適切ではありません。合意による解決を検討する場合も、自由な意思に基づく判断を妨げない配慮が必要です。 ハローワーク等への手続きも個別に確認する 新規学校卒業予定者の採用内定取消しなどでは、職業安定機関への通知や学校等との連携が問題になる場合があります。対象者の属性や採用経路によって必要な対応が異なるため、一般の中途採用者と同じ手続きだと決めつけず、所管のハローワーク等に確認してください。 想定例で考える会社の対応 従業員20人の会社が、翌年4月入社予定の営業社員に内定を通知し、本人から承諾を得たとします。その後、主要取引先との契約が終了し、採用計画の見直しが必要になりました。 この場合、会社はまず、内定通知書と承諾書から契約の成立状況を確認します。次に、取引終了による業務量や収支への影響を資料で示し、他部署への配置や採用時期の調整が可能かを検討します。本人が前職の退職を決めているかなども把握したうえで、取消し以外の選択肢も含めて協議します。 取引先を失ったという事実だけで、取消しが有効になるわけではありません。 迷ったときは通知前に専門家へ相談する 採用内定の取消しは、会社の経営判断と労働契約上の権利が交わる問題です。内定通知の文面が曖昧な場合、本人がすでに退職や転居の準備を進めている場合、複数人の内定取消しを検討している場合は、本人に通知する前に専門家へ相談することが有用です。 相談前には、求人票、内定通知書、承諾書、メールの履歴、採用計画、経営状況を示す資料、検討した代替策を用意してください。まだ資料がそろわない場合も、確認済みの事実と未確認事項を分けておくと相談を進めやすくなります。 城田社会保険労務士事務所では、中小企業の労務管理に関する相談を取り扱っています。採用内定後の対応に迷っている経営者の方は、通知を急ぐ前に事実関係と契約内容を整理し、対応方針をご相談ください。すでに法的紛争になっている場合は、必要に応じて弁護士への相談も検討してください。
- 人事・労働管理