士業コラム
法定相続情報一覧図とは?複数の銀行や相続登記で使う方法と注意点

法定相続情報一覧図とは?複数の銀行や相続登記で使う方法と注意点

親が亡くなり、銀行3行の預金解約と実家の相続登記を進めたい。銀行ごとに戸籍一式を提出するよう案内され、「同じ書類を何度も集める必要があるのだろうか」と困ることがあります。

このようなときに検討したいのが、法務局の「法定相続情報証明制度」です。戸籍などから法定相続人の関係を一覧図にまとめ、登記官の認証を受けた写しを取得することで、複数の相続手続きに利用できます。ただし、一覧図だけですべての手続きが終わるわけではありません。使える場面と別途必要になる書類を確認しましょう。

法定相続情報一覧図で何ができるのか

戸籍の束に代えて相続関係を示せる

法定相続情報一覧図は、亡くなった方(被相続人)と法定相続人の関係を、戸籍の記載に基づいて図式化したものです。法務局に必要書類とともに申し出ると、登記官が内容を確認し、認証文の付いた一覧図の写しを交付します。

この写しは、相続登記、預貯金の払戻し、相続税の申告など、対応する手続きで戸籍の束の代わりとして利用できます。写しの交付手数料は無料です。ただし、戸籍謄本等を取得するための費用や、司法書士に依頼する場合の報酬は別にかかります。

相続財産の分け方まで証明するものではない

一覧図が示すのは、基本的に戸籍から確認できる法定相続関係です。誰が実家を取得するか、どの預金を誰に分けるかという遺産分割の合意を証明するものではありません。

そのため、遺言書や遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書などが別途必要になることがあります。また、相続放棄の事実は一覧図に記載されず、相続放棄をした人も、戸籍から確認できる法定相続人として記載されます。実際の手続きでは、相続放棄申述受理証明書などが別途必要になるため、提出先が求める書類を事前に確認してください。

複数の銀行や不動産の手続きでどう役立つか

銀行ごとに戸籍一式を提出する負担を減らせる

例えば、亡くなった父の預金が3行にあり、相続人は母と成人した子2人という架空のケースを考えます。銀行が法定相続情報一覧図の写しを受け付ける場合、認証済みの写しをそれぞれに提出することで、戸籍一式の提出を省略できることがあります。

戸籍一式は提出先から返却を受けて使い回せる場合もあるため、銀行ごとに取り直すことが必須というわけではありません。一覧図の写しを必要な通数取得すれば、戸籍の返却を待たずに複数の手続きを並行して進めやすくなります。

ただし、銀行ごとに相続届の様式、本人確認資料、遺産分割協議書などの要否は異なります。先に各行へ連絡し、一覧図を使えるか、写しの返却や原本確認の取扱い、必要な追加書類を確認すると、手戻りを減らせます。

相続登記にも利用できる

土地や建物の相続登記でも、一覧図の写しを相続関係の証明に利用できます。2024年4月からは、所定の要件の下で登記申請書に法定相続情報番号を記載し、一覧図の写しの添付を省略できる取扱いも始まっています。ただし、この番号を銀行などの手続きで代用することはできません。

不動産の登記事項証明書で現在の名義を確認し、遺言書や遺産分割協議書、住所関係の書類など、登記に必要な資料を別に整理しましょう。法定相続情報一覧図の取得だけで相続登記の義務を果たしたことにはなりません。

一覧図を取得するまでの進め方

まず戸籍と住所関係の資料をそろえる

最初に、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸除籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本・抄本などを集め、相続人を確定します。相続人の戸籍は、被相続人の死亡日以後に発行されたものが必要です。被相続人の住民票の除票も必要で、取得できない場合は戸籍の附票の写しを用意します。

これらも取得できない場合や、戸籍の廃棄などで相続関係を確認できない場合は、制度を利用できるかを含めて法務局に確認しましょう。申出人の氏名・住所を確認できる運転免許証の写しなどの公的書類も準備します。

戸籍の記載から前婚の子や、先に亡くなった子の代襲相続人が判明することもあります。思い込みで家系図を完成させず、取得した戸籍を順番に照合することが大切です。

一覧図を作成して管轄法務局に申し出る

法務局が公開する様式や記載例を参考に、被相続人と法定相続人の氏名、続柄、生年月日などを記載した一覧図を作成します。相続人の住所の記載は任意ですが、記載することで後続の登記手続きなどで住所証明書類の提出を省略できる場合があります。その場合は住所を証明する資料も準備します。

申出先は、被相続人の本籍地や最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産所在地を管轄する登記所から選べます。申出書に必要な写しの通数を記載し、書類一式を提出します。郵送による申出も可能ですが、返信用封筒などの条件を確認してください。

交付された写しを各手続きで使う

交付後は、各銀行や法務局の案内に従って利用します。必要な写しの枚数は、提出先の数や返却の取扱いに応じて考えましょう。

一覧図は、申出日の翌年から起算して5年間、法務局に保管され、その間は写しの再交付を受けられます。再交付を申し出られるのは当初の申出人で、申出先も当初の申出をした登記所です。他の相続人が手続きをする場合は、当初の申出人からの委任を受けるなど、代理の要件を確認してください。

申出前に確認したい注意点

相続人の死亡や相続放棄がある場合

被相続人が亡くなった後に、その相続人も亡くなった場合は、最初の相続と次の相続を区別して整理する必要があります。このような数次相続について一覧図を利用する場合は、1枚にまとめず、被相続人ごとに別々の一覧図を作成します。

相続放棄をした人についても、戸籍上の法定相続人であることと、実際に相続する権利があることは区別しなければなりません。

誰が銀行の書類に署名するのか、遺産分割協議に参加するのかは、一覧図だけで判断せず、死亡の順序や家庭裁判所の受理書類などを確認します。

提出先が一覧図を受け付けるか確認する

法定相続情報一覧図の写しは幅広く使えますが、すべての機関が同じ方法で取り扱うわけではありません。銀行や証券会社、年金関係の窓口などに、利用可否と必要書類を確認してください。

相続税申告の添付書類として利用するには、図形式で、子の続柄が実子か養子か分かるように記載されている必要があります。続柄を単に「子」としたものは使えないため、申告にも使う予定があれば、戸籍どおり「長男」「長女」「養子」などと記載しましょう。被相続人に養子がいる場合は、その養子の戸籍謄本・抄本も別途必要です。

一覧図の作成に時間をかけるより、急ぎの支払いなど別の対応を優先した方がよい場合もあります。提出先と期限を先に洗い出し、どの手続きを並行して進めるか決めることが重要です。

自分で進める場合と司法書士に相談する場合

相続人が明確で、戸籍がそろっており、提出先の案内を確認できる場合は、ご自身で一覧図を作成して申し出ることもできます。法務局の公式様式を使い、記載漏れや続柄の誤りがないか確認しましょう。

一方、古い戸籍の読み取りが難しい、相続人が多い、複数の銀行と不動産の手続きを並行して進めたい場合には、司法書士への相談が役立ちます。相談前には、亡くなった方の氏名と死亡日、家族関係のメモ、取得済みの戸籍、銀行名と不動産の所在地、遺言書の有無を分かる範囲で整理してください。

芦屋市のうちで法務事務所では、戸籍収集、法定相続情報の代理取得、相続登記、預貯金の相続手続きなどを取り扱っています。どの手続きをご自身で進め、どこから依頼するか迷っている方は、現在の資料と手続きの進み具合をもとに相談できます。相続人間で争いがある場合の交渉は弁護士、相続税の判断は税理士への相談も検討しましょう。

法定相続情報一覧図は、相続関係を一度整理して複数の提出先に示すための制度です。必要な戸籍を確認したうえで、各手続きに本当に役立つかを見極め、無理のない順序で進めていきましょう。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、うちで法務事務所までお問い合わせください。

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