士業コラム
亡くなった親の登記簿の住所が違う?相続登記で必要な確認と書類

亡くなった親の登記簿の住所が違う?相続登記で必要な確認と書類

親が亡くなり、自宅や土地の相続登記を進めようと登記事項証明書を取得したところ、所有者欄に記載された住所が親の最後の住所と違っていた。このような場合、「先に住所変更登記をしなければならないのか」「古い住所の書類が残っていないと名義変更できないのか」と戸惑うことがあります。

登記簿の住所が古いままでも、直ちに相続登記ができなくなるわけではありません。ただし、登記簿に記載された所有者と亡くなった親が同一人物であることを確認できる資料が重要です。ここでは、住所の違いが生じる理由、必要書類の調べ方、資料が見つからない場合の対応を説明します。

なぜ登記簿と亡くなった親の住所が違うのか

引っ越しても不動産の登記簿は自動更新されない

不動産の登記簿には、所有者の氏名と住所が記録されています。親が不動産を取得した後に転居していても、住所変更の登記をしていなければ、取得当時の住所がそのまま残っていることがあります。

住民票の住所を変更しただけで、不動産の登記簿が直ちに書き換わるわけではありません。現在は、検索用情報の申出などの条件を満たせば、法務局が本人の了解を得て住所等の変更登記を行う「スマート変更登記」もありますが、すべての不動産に一律・即時に反映される制度ではありません。

例えば、親が芦屋市内で自宅を購入した後、別の市へ転居し、その後亡くなったとします。登記簿には購入当時の芦屋市の住所が残り、死亡時の住民票には転居先の住所が記載されているという状況が考えられます。これは説明のための想定例です。

問題は「住所が違うこと」より同一人物と確認できるか

相続登記では、亡くなった人が登記簿上の所有者であることを示す必要があります。同姓同名の別人と区別するためにも、登記簿上の住所と戸籍などで確認できる人物とのつながりを示す資料が求められます。

亡くなった親から相続人へ名義を移す相続登記では、登記簿の住所が最後の住所と異なっていても、原則として、親の住所変更登記を先に行う必要はありません。住民票の除票や戸籍の附票などにより、登記簿上の所有者と亡くなった親が同一人物であることを確認して、相続登記を申請します。住所変更登記を省略できることと、同一人物であることの証明が不要になることは別です。

最初に確認したい3つの資料

登記事項証明書で所有者の記載を確かめる

まず、対象の土地と建物それぞれの登記事項証明書を確認します。所有者の氏名、住所、登記された時期を見てください。土地と建物で所有者の住所が異なる場合もあります。固定資産税の通知書だけで判断せず、登記記録そのものを確認することが大切です。

住所だけでなく、氏名の表記や持分も確認します。親の単独所有だと思っていた不動産が共有名義になっている場合は、相続登記の対象となる持分を整理する必要があります。

住民票の除票で最後の住所と前住所を調べる

亡くなった親の住民票の除票には、死亡時の住所や、記録されている範囲で前住所などが記載されます。登記簿上の住所が除票の記載と一致するか、住所の移動をたどれるかを確認します。取得する際は、登記簿上の所有者と戸籍上の人物を結び付けられるよう、本籍・筆頭者の記載を省略しないものが必要かも含めて、窓口や申請先に確認しましょう。

除票は、死亡した人の住民票を除いた記録です。以前の住所の記録が必ずすべて載っているわけではありません。何度も転居している場合は、除票だけで登記簿の住所までさかのぼれないことがあります。

戸籍の附票で住所の履歴をたどる

戸籍の附票は、その戸籍に在籍している間の住所の履歴を記録したものです。登記簿上の古い住所が載っていれば、現在把握している親の情報とのつながりを確認する資料になります。

ただし、転籍や改製によって記録が分かれていることがあります。必要に応じて除かれた戸籍の附票や改製原附票を調べます。古い記録は保存期間や廃棄状況により取得できない場合もあるため、役所で取得の可否を確認しましょう。

古い住所を証明する書類が取れないときの対応

取得できない理由を確認し、手元の資料を整理する

住民票の除票や戸籍の附票を請求しても、対象の記録が存在しない、または保存されていないと案内されることがあります。その場合は、単に「書類がない」で終わらせず、どの自治体に何を請求し、どのような回答を受けたかを整理してください。

登記済証(いわゆる権利証)や登記識別情報通知、固定資産税関係書類などが手元に残っていないかも確認します。特に、所有権に関する被相続人名義の登記済証などは、登記簿上の所有者と亡くなった方が同一人物であることを確認する資料として利用できる場合があります。ただし、固定資産税の通知書などがあれば必ず足りるわけではなく、資料の内容に応じた判断が必要です。権利証がないだけで相続登記が不可能になるわけでもありません。

代わりの資料は一律に決まらない

住所のつながりを公的書類だけで確認できない場合、どのような補足資料が必要かは事案ごとに異なります。登記済証なども用意できない場合は、相続人全員による同一人物である旨の上申書と印鑑証明書などを検討することがあります。ただし、上申書を出せば必ず登記できるというものではありません。氏名の一致状況、転居の経緯、対象不動産の登記内容などを踏まえ、管轄法務局に必要資料を確認します。

インターネット上で見つけた書類の一覧をそのまま当てはめたり、独自に作成した説明書だけで足りると判断したりするのは避けたいところです。資料が不足する段階で司法書士に相談すると、追加で取得すべきものと代替方法を整理しやすくなります。

相続登記を進める際の手順と注意点

住所の確認と相続関係の調査を並行して進める

住所の違いを調べている間も、相続人を確定するための戸籍収集や、不動産を誰が取得するかの確認は進められます。遺言書があるか、遺産分割協議が必要かによって、準備する書類は変わります。

相続登記は、原則として、自分のために相続が開始したことと、その相続で不動産の所有権を取得したことの両方を知った日から3年以内に申請する義務があります。2024年4月1日より前に相続による取得を知っていた不動産は、原則として2027年3月31日までの対応が必要です。また、遺産分割で不動産を取得した人には、分割成立日から3年以内にその内容に基づく登記を申請する義務があります。住所の資料が見つからないことを理由に、期限の確認まで後回しにしないようにしましょう。

相続人申告登記と正式な名義変更は別の手続き

期限内に遺産分割がまとまらないなどの場合、相続人申告登記という制度を利用できることがあります。これは一定の相続登記申請義務を履行するための簡易な申出制度であり、不動産を取得する人への正式な所有権移転登記ではありません。

相続人申告登記をしても、その後の遺産分割で不動産を取得した人は、原則として分割成立日から3年以内に、その内容に基づく登記を申請する必要があります。この遺産分割後の義務は、相続人申告登記では履行できません。また、相続人申告登記でも、亡くなった方が登記簿上の所有者であることの確認は必要です。「住所の資料がないから申告だけすればよい」とは考えず、利用できる制度と必要資料をあわせて確認しましょう。

司法書士に相談するときに準備しておきたいもの

相談時には、対象不動産の所在地・地番や家屋番号、登記事項証明書、亡くなった親の戸籍、住民票の除票、取得済みの戸籍の附票、権利証など、手元にある資料を持参すると状況を伝えやすくなります。すべてそろっていなくても、取得できなかった書類と自治体からの説明をメモしておくと役立ちます。

登記簿にある住所がいつの住所なのか分からない、転居が多く履歴を追えない、古い附票が廃棄されているといった場合は、申請前に専門家と確認する価値があります。一方、除票や附票で住所のつながりを明確に示せる場合は、必要書類を確認してご自身で申請することも選択肢です。

兵庫県芦屋市のうちで法務事務所では、相続登記や戸籍収集を含む相続手続きを取り扱っています。亡くなった方の登記上の住所が異なり、必要書類や手続きの進め方に迷う場合は、登記記録と手元の資料を整理したうえでご相談ください。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、うちで法務事務所までお問い合わせください。

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