亡くなった親の株式はどう相続する?証券会社の確認方法と手続き

親が亡くなった後、郵便物を整理していたら株主総会の案内や配当金の通知書が見つかった。「株式を持っていたようだが、どこの証券会社を使っていたのかわからない」と戸惑うことがあります。通帳と違い、株式は手元に証券が残っているとは限りません。
株式も相続財産です。証券会社などの取引先を確認し、相続人と取得する人を整理して、所定の移管手続きを進めます。この記事では、取引先の調べ方から必要書類、手続きで注意したい点まで説明します。
まずは株式の手掛かりを集める
郵便物と電子記録を確認する
最初に、亡くなった方の自宅にある証券会社の取引報告書、年間取引報告書、残高報告書、配当金計算書、株主総会招集通知などを確認します。証券会社の名前が記載されていれば、相続人であることを伝えて手続き窓口を尋ねます。ネット証券の場合は紙の郵便物が少ないため、本人が残した契約先のメモなども手掛かりになります。ただし、故人のログイン情報を使って勝手に取引することは避けましょう。
配当金の通知書に会社名があっても、その会社に直接問い合わせるだけでは証券口座が判明しないことがあります。また、株主名簿管理人から届いた書類と、実際に取引していた証券会社の書類は区別する必要があります。
証券会社がわからない場合の調査
上場株式等について取引先が見つからない場合、証券保管振替機構(ほふり)の「登録済加入者情報の開示請求」を検討できます。相続人が所定の書類を提出すると、故人の株式等に係る口座の開設先を調べられる制度です。申請方法や手数料は公式案内で確認してください。
ほふりの開示結果で確認できるのは、開示時点で対象となる株式等の口座が開設されている証券会社・信託銀行等であり、保有銘柄、株数、取引履歴は確認できません。開設先が判明したら、それぞれの証券会社等に残高や相続手続きについて問い合わせます。外国株式、国債・社債や、ほふりの取扱対象でない非上場株式などの口座は、この開示請求では調べられません。また、口座の開設先が判明しても、現在残高があるとは限らないため、この調査だけで全財産を確認できたと判断しないようにしましょう。
株式の種類によって問い合わせ先が変わる
証券会社の口座で管理されている株式
一般的な上場株式は証券会社の口座で管理されています。故人の口座が確認できたら、証券会社の相続担当窓口に死亡の事実を連絡し、必要書類と手続き方法を確認します。証券会社によって書式や必要な添付書類、相続人名義の口座の条件が異なります。
株式を引き継ぐ人に証券口座がない場合、新たな口座開設が必要になることがあります。故人と同じ証券会社に相続人名義の口座を用意する必要があるなど、各社の取扱いに応じた条件があります。故人のNISA口座で保有していた株式も、相続人のNISA口座には移せず、特定口座または一般口座で受け入れます。移管先として利用できる証券会社や口座の種類を先に確認しておくと、書類を揃えた後の手戻りを減らせます。
特別口座や非上場株式の場合
証券会社に口座が見つからなくても、株式がないとは限りません。株券電子化の際に証券会社へ預けられていなかった上場株式などは、信託銀行等の株主名簿管理人が扱う「特別口座」に記録されている場合があります。この場合は、株主名簿管理人に相続手続きと振替方法を確認します。特別口座では通常の市場売買はできないため、売却するには、相続手続きとあわせて相続人名義の証券口座へ振り替える準備が必要です。
一方、非上場会社の株式では、発行会社への連絡や株主名簿の確認が中心となることがあります。譲渡制限株式については、定款に定めがあると、相続によって取得した人に対して会社から売渡しを請求できる制度もあります。会社の定款や株式の内容によって確認事項が異なるため、上場株式と同じ手順で進められると決めつけないことが大切です。
相続する人と必要書類を整理する
遺言書と遺産分割の状況を確認する
株式を誰が取得するかは、遺言書の有無や内容、相続人間の遺産分割協議などによって決まります。相続人の一人が株式の存在を見つけたからといって、その人が当然にすべて取得できるわけではありません。
遺産分割協議を行う場合は、銘柄、数量、保管先を把握したうえで、誰が取得するのかを明確にします。証券口座が複数ある場合は、証券会社ごとに資産の一覧を作ると話し合いが進めやすくなります。相続人間で争いがあるときは、司法書士が一方の代理人として交渉することはできないため、弁護士への相談が適切な場合があります。
書類は取引先の案内に合わせる
一般に、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、相続人の戸籍、印鑑証明書、遺言書または遺産分割協議書、証券会社所定の相続届などが必要になることがあります。法定相続情報一覧図を利用できる場合もありますが、追加書類が不要になるとは限りません。
先に書類を大量に取り寄せるより、各証券会社の案内を確認し、必要な通数や有効期間の扱いを整理しましょう。複数の相続手続きを同時に進める場合は、戸籍の原本返却や一覧図の利用可否も確認すると効率的です。
株式を引き継ぐまでの手順
まず、故人の取引先を調べ、判明した証券会社等へ相続発生を連絡します。次に、死亡日時点の残高や保有銘柄を確認し、ほかの相続財産と合わせて財産目録を整理します。そのうえで遺言書または遺産分割協議の内容を踏まえて取得者を確定し、必要なら取得者名義の証券口座を準備します。最後に各社所定の書類を提出し、移管完了を確認します。
例えば、父が亡くなり、子ども2人が相続人となった架空のケースを考えます。自宅に株主総会の通知はあるものの証券会社名が見つからなければ、まず通知書などの差出人を確認し、必要に応じてほふりへの開示請求を検討します。証券会社が判明してから残高を確認し、株式をどちらが取得するか話し合います。株式の存在だけを先に把握しても、残高やほかの財産が不明なままでは分け方を判断しにくいためです。
相続手続きで見落としやすい注意点
株価の変動と税務は別に確認する
株式の価格は日々変動します。遺産分割の話し合いに用いる評価額と、相続税の計算に用いる評価方法が同じとは限りません。相続税の申告が必要かどうか、評価方法や期限に不明点がある場合は税理士に確認してください。相続後の売却には別の税務上の検討が必要になる場合もあります。
配当金や未受領金も確認する
株式の移管だけで手続きがすべて終わるとは限りません。死亡前後の配当金、未受領の配当金、証券口座内の預り金などがないか、証券会社や株主名簿管理人に確認しましょう。株式と現金では支払いや名義変更の窓口が分かれることがあります。
相続放棄を考えている場合は処分しない
故人に借金がある可能性があり、相続放棄を検討しているときは、株式を売却したり処分したりする前に相談してください。
相続財産の処分は、単純承認をしたものとみなされ、相続放棄ができなくなる原因になり得ます。相続放棄には原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月という熟慮期間があります。調査をしても期間内に判断できない場合は、期間内に家庭裁判所へ熟慮期間の伸長を申し立てることを検討します。証券会社への照会やほふりへの開示請求をしただけで、自動的に期間が延びるわけではありません。
手続きが複数にわたるときは専門家に相談を
証券会社が1社で相続人も少なく、必要書類が揃っている場合は、案内に従ってご自身で進めることもできます。一方、証券会社がわからない、株式以外に不動産や預金もある、相続人が多い、書類の取得が難しいといった場合は、手続き全体を整理する支援が役立ちます。
相談前には、株主総会の通知や配当金計算書、証券会社からの郵便物、故人の氏名・住所・死亡日がわかる資料、把握している相続人の情報を用意すると状況を伝えやすくなります。資料がすべて揃っていなくても、何が不明なのかを整理して相談することができます。
兵庫県芦屋市のうちで法務事務所では、相続登記や戸籍収集、預貯金の相続手続きに加え、有価証券の名義変更手続きについてもサポートを案内しています。株式の保管先がわからない場合や、複数の相続手続きをまとめて進めたい場合は、まず現在わかっている情報をもとに相談してみてください。
本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、うちで法務事務所までお問い合わせください。
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亡くなった親の遺言書を見つけたら?開封前の注意点と相続手続き
親が亡くなり、遺品を整理していたところ、引き出しから「遺言書」と書かれた封筒が見つかった。内容をすぐに確かめたい一方で、家族が勝手に開けてよいのか、どこに届ければよいのか分からないことがあります。 遺言書が見つかったときは、書かれた内容を読む前に、その書類の種類と保管状況を確認することが大切です。家庭裁判所の手続きが必要なものと、必要のないものがあり、対応を間違えると相続手続きが滞るおそれがあります。この記事では、発見直後の注意点から、不動産や預金の名義変更に進むまでの流れを説明します。 遺言書を見つけた直後に確認すること 封印のある遺言書はその場で開けない 検認が必要な遺言書に封印がある場合、相続人だけで開封してはいけません。民法では、封印のある遺言書は家庭裁判所で相続人などの立会いのもと開封することとされています。家族全員が集まっていても、家庭裁判所の手続きを省略してよいわけではありません。公正証書遺言など、検認が不要なものもあるため、種類が分からなければ封を開けずに確認しましょう。 すでに開けてしまった場合でも、遺言書が当然に無効になるわけではありません。書面を捨てたり、元の状態に見せかけて封をし直したりせず、発見した状況と開封した経緯を整理して、家庭裁判所や専門家に確認してください。 発見場所や状態を記録して保管する 遺言書の原本は、折り目や封筒も含めて発見時の状態を保つようにします。いつ、誰が、どこで見つけたのかをメモしておくと、その後の確認に役立ちます。複数の遺言書らしい書面が見つかったときは、古い日付だから不要だと自己判断して処分しないでください。 遺言書があると分かった段階で、特定の相続人だけが内容を決めつけて財産を動かすことも避けましょう。まず書類を安全に保管し、手続きの種類を見極めることが先決です。 遺言書の種類によって検認の要否が変わります 自宅で保管されていた自筆証書遺言 本人が自分で書いて保管していた自筆証書遺言は、原則として家庭裁判所の「検認」が必要です。封筒に入っていないものや、封印がないものも対象となります。検認は、相続人に遺言の存在と内容を知らせ、検認時点の書面の状態を明確にして、偽造・変造を防ぐための手続きです。遺言が有効か無効かを判断するものではありません。 遺言書の保管者や発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく検認を請求する必要があります。申立先は亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。必要な戸籍の範囲は相続関係によって変わるため、裁判所の案内を確認します。 公正証書遺言と法務局保管の自筆証書遺言 公証役場で作成された公正証書遺言には、家庭裁判所の検認は必要ありません。また、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用して保管された遺言書も、検認は不要です。法務局で保管されている場合は、相続人などが所定の手続きにより遺言書情報証明書を取得して内容を確認できます。 自宅で遺言書が見つからなくても、「遺言書はなかった」と決めつけるのは早計です。公正証書遺言の有無を公証役場で調べたり、法務局の保管制度で保管の有無を確認したりする方法があります。故人が生前に遺言書について話していた場合は、その手掛かりも整理しておきましょう。 検認を申し立てるときの流れと注意点 戸籍を集め、家庭裁判所に申し立てる 検認の申立てでは、申立書、遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍を含む)、相続人全員の戸籍などを用意します。必要書類は配偶者や子の有無、兄弟姉妹が相続人になるかといった事情で異なります。戸籍の収集に時間がかかる場合は、早めに必要範囲を確認してください。申立て前に入手できない戸籍等は、申立て後の追加提出でも差し支えないとされていますので、そろわない書類があれば申立先に確認しましょう。 裁判所の案内では、申立手数料は遺言書(封書の場合は封書)1通につき収入印紙800円で、別途連絡用の郵便料が必要です。検認が必要な遺言書をその後の相続手続きに使うため、検認後は検認済証明書の申請も行います。この証明書の申請には、遺言書1通につき150円分の収入印紙が必要です。手数料や提出書類は申立先の最新案内で確かめましょう。 検認には相続人全員の出席が必要なのか 家庭裁判所が検認期日を指定すると、相続人に通知されます。申立人以外の相続人が出席するかどうかは各人の判断に委ねられており、全員がそろわなくても検認は行われます。封印のある遺言書は、この手続きの中で開封されます。 ここで注意したいのは、検認が終わっても「遺言書の内容どおりに財産を移せること」が保証されるわけではない点です。形式や内容に疑問がある場合、別途検討が必要になります。遺言の有効性をめぐって相続人間に争いが生じている場合は、弁護士への相談が適切です。 遺言書を確認した後に進める相続手続き 誰が何を取得するのか、対象財産を確かめる 遺言書の内容が確認できたら、まず受け取る人、財産の種類、遺言執行者の指定の有無を整理します。遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために必要な行為を行う人です。指定されている場合は、その人が就任するか、どのような権限があるかを確認します。遺言執行者が指定されていない場合や、指定された人が亡くなっている場合などは、必要に応じて家庭裁判所に選任を申し立てる方法があります。 例えば「自宅を長女に相続させる」と書かれていても、登記上の所有者が故人なのか、土地と建物の両方が対象なのかを確認する必要があります。預金についても、遺言書に記載された金融機関名や口座情報と現在の状況を照合します。遺言書に書かれていない財産が見つかった場合は、その財産について別の対応が必要になることがあります。 相続登記や金融機関の手続きは別に行う 遺言書があっても、不動産の名義が自動的に変わるわけではありません。不動産を取得する人や遺言の記載内容に応じて、相続登記に必要な書類と申請方法を確認します。遺言書だけでなく、死亡を示す戸籍や取得者の住所を確認する書類などが必要になる場合があります。遺言により不動産を取得した相続人も、原則として、自分のために相続が開始したことと所有権の取得を知った日から3年以内に登記を申請する義務があります。2024年4月1日より前に相続による取得を知っていた不動産は、原則として2027年3月31日までの対応が必要です。検認を受けただけで登記義務を果たしたことにはなりません。 銀行口座についても、金融機関ごとの相続手続きが必要です。公正証書遺言なのか、検認済みの自筆証書遺言なのかによって提出資料が異なることがあります。遺言執行者がいる場合は、その権限を示す資料も確認されます。提出先の案内を先に取り寄せると、同じ書類を何度も集める負担を抑えやすくなります。 こんな場合は相続手続きを始める前に相談を 説明のための架空の例として、亡くなった母の机から封印された遺言書が見つかり、子ども2人のうち1人が実家を相続する予定だったとします。もう1人は内容を知らず、実家の登記も母名義のままです。この段階では、封を開けて内容を確認するのではなく、遺言書の保全と検認の要否を確認することから始めます。その後、遺言内容と登記情報を照合して必要な申請を考えます。 書類の保管、家族関係の整理、手元の戸籍や登記資料の確認に加え、検認の申立てもご自身で行えます。一方、遺言書の種類が分からない、相続人が多く戸籍を集めきれない、複数の遺言書がある、遺言の文言だけでは取得者や財産が特定できないといった場合は、早めに専門家へ相談すると整理しやすくなります。 相談の際には、遺言書の原本や封筒、死亡日が分かる資料、取得済みの戸籍、不動産の固定資産税通知書や登記事項証明書、通帳などを、手元にある範囲で用意してください。封印がある遺言書は、開封せずに取り扱いを確認してください。 兵庫県芦屋市のうちで法務事務所では、相続登記、戸籍収集、預貯金の相続手続きなどを取り扱っています。遺言書が見つかったものの、何から進めればよいか迷っている場合は、書類の状況と希望する手続きの範囲をお伝えください。遺言書の確認と、その後に必要な相続手続きを分けて整理することが大切です。
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相続した実家を売却したいときは?相続登記と売却準備の進め方
親が亡くなり、誰も住まなくなった実家を売却したい。しかし、不動産会社に相談したところ「まず相続登記が必要です」と言われ、何から始めればよいのか迷う方もいらっしゃいます。相続人が複数いる場合は、誰の名義にするか、売却代金をどう分けるかも考えなければなりません。 相続登記と売却は別の手続きですが、順序を間違えると契約や引渡しの予定に影響します。ここでは、相続した実家を売る場合に確認したい登記名義、相続人の合意、準備資料、進め方を説明します。 売却する前に相続登記が必要になる理由 亡くなった親の名義のままでは売却を完了できない 不動産の売買では、買主へ所有権を移転する登記が重要です。登記簿上の所有者が亡くなった親のままであれば、通常は相続によって所有権を取得した人への登記を行い、その後に買主への所有権移転登記を行います。相続登記をせずに売買の相談や査定を始めることはできますが、買主への引渡しまでに必要な登記を整える必要があります。 売却を急ぐ場合でも、登記手続きに必要な戸籍や合意書類の確認を省略することはできません。不動産会社と司法書士に早い段階で状況を伝え、売買契約と登記の予定を調整することが大切です。 相続人申告登記だけでは売却できない 相続人申告登記は、相続登記の基本的な申請義務を履行するための簡易な制度です。ただし、誰がその不動産の所有権を取得したかを示す登記ではありません。そのため、相続人申告登記を済ませていても、売却するには原則として相続登記が必要です。 2024年4月から相続登記は義務化されています。原則として、自分のために相続が開始したことと、その相続で不動産の所有権を取得したことの両方を知った日から3年以内に申請する必要があります。2024年4月1日より前に相続による取得を知っていた不動産は、原則として2027年3月31日までの対応が必要です。 また、遺産分割で不動産を取得した人には、分割成立日から3年以内にその内容に基づく登記を申請する義務があります。売却予定があることだけで期限が延びるわけではないため、売却時期にかかわらず確認しましょう。 最初に確認したい不動産と相続人の情報 登記事項証明書で名義と不動産の範囲を確認する まず土地と建物の登記事項証明書を取得し、所有者の氏名、共有者の有無、抵当権などの記載を確認します。固定資産税の納税通知書や課税明細書も手掛かりになりますが、記載されている土地と建物だけで相続対象のすべてを把握できるとは限りません。 たとえば実家の敷地とは別に私道の持分がある場合、売却に必要な不動産を見落とすおそれがあります。登記簿の地番・家屋番号と、普段使う住所は一致しないこともあるため、資料を突き合わせて確認してください。 遺言書の有無と相続人の範囲を整理する 遺言書があれば、その内容や方式によって登記の進め方が変わります。遺言書がある場合も、亡くなった方の死亡や、取得者が相続人であることなどを戸籍で確認する必要があります。遺産分割協議に基づく相続登記では、通常、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍などで相続人を確定させます。相続人が配偶者と子だけとは限らず、家族構成によっては親や兄弟姉妹が相続人になることもあります。 親の死亡後にその相続人も亡くなった場合は、数次相続として、さらにその方の相続関係を確認する必要があります。一方、親より先に子が亡くなっていた場合は、その子の子(親から見た孫)が代襲相続することがあります。誰が手続きに参加するかは死亡の順序などで変わるため、まず死亡日と親族関係を整理しましょう。遠方に住む相続人がいると、署名や書類のやり取りにも時間がかかるため、早めに連絡先を整理しておくとよいでしょう。 誰の名義にして売却するかを決める 1人が取得して売却する方法 遺産分割協議で、相続人のうち1人が実家を取得し、その人が売却する方法があります。これとは別に、実家を売却して代金を相続人間で分ける「換価分割」のため、手続きの便宜上一人の名義にする場合もあります。同じ単独名義でも合意の内容は異なるため、売却代金をほかの相続人へ渡す約束がある場合は、その法的な位置付けや税務上の取扱いを慎重に検討する必要があります。 単に「売ったお金をみんなで分ける」という口約束だけで進めず、誰が不動産を取得するか、費用を誰が負担するか、売却代金をどう扱うかを事前に整理しましょう。税金については税理士への確認が有用です。 複数人の共有名義にして売却する方法 相続人が共有で取得し、共有者全員で売却する方法も考えられます。ただし、不動産全体を売却するには原則として共有者全員の同意が必要です。共有者が多いほど、価格や引渡し時期の調整、必要書類の収集が複雑になることがあります。 どちらが適切かは、相続人の希望、売却の見通し、税務などによって異なります。登記だけを先に済ませるのではなく、売却の方針も含めて決めることが重要です。 売却までの具体的な進め方 先に相続関係を確認し、登記の準備を進める 一般的には、次の順序で進めます。 ①登記事項証明書や固定資産税関係資料で不動産を特定する ②遺言書の有無を調べ、戸籍などで相続人を確認する ③相続人間で取得者と売却方針を話し合う ④必要に応じて遺産分割協議書を作成し、相続登記を申請する ⑤不動産会社と売却条件を調整し、売買契約・引渡しに進む 査定や不動産会社への相談は、相続登記の準備と並行して進められます。ただし、買主との契約日や決済日を決める前に、登記に必要な書類がそろう見込みを確認しておくと安心です。 売却前に抵当権や建物の状況も確認する 親が住宅ローンを完済していても、抵当権の登記が残っていることがあります。抵当権が残っている場合は、金融機関の書類を確認し、必要に応じて抹消登記を進めます。また、未登記の増築部分や建物の登記内容と現況の相違があれば、売却前に別の対応が必要になることもあります。 登記だけでなく、境界、残置物、建物の管理状況についても不動産会社などと確認しましょう。相続による所有権移転や抵当権抹消などの権利に関する登記は司法書士、測量や増築に伴う建物表題部変更登記などは土地家屋調査士が扱います。税務は税理士、売買仲介は不動産会社など、必要に応じて専門家と連携することになります。 急いで売却したい場合に注意すること 買主が見つかってから相続人の不一致が判明することも 例えば、兄弟3人で実家を相続し、長男が売却の窓口になっているとします。査定を受けて購入希望者が現れても、ほかの相続人が売却価格に納得していなければ、予定どおり進められない可能性があります。これは説明のための想定例ですが、売却の相談を始める段階で相続人全員の意向を確認する重要性が分かります。 遺産分割によって実家を単独取得した人は、原則として自らの判断で売却できます。ただし、換価分割のために便宜上その人の名義にした場合や、売却条件・代金配分について合意がある場合は、その合意に従って進める必要があります。登記名義だけで判断せず、遺産分割の合意内容と、その後の売却・代金配分を整合させることが大切です。 登記義務の期限と売却予定は分けて考える 相続登記の義務を履行する期限と、売却のために登記を完了させる時期は同じではありません。売却を数年先に予定していても、法定の申請期限が先に来る場合があります。また、期限が迫っているからといって相続人申告登記だけを行えば、売却準備まで終わるわけではありません。 相続人間で話し合いがまとまらない場合や、相続関係が複雑な場合は、登記義務への対応と売却の進め方を切り分けて検討してください。 相談時に用意したい資料と確認事項 相談の際は、手元にある範囲で、固定資産税の納税通知書、登記事項証明書、亡くなった方の戸籍、遺言書、相続人の連絡先、住宅ローン関係書類などを整理しておくと状況を伝えやすくなります。すべての書類がそろっていなくても、どの資料が不足しているかを確認するところから始められます。 相続人が少なく、必要書類も整っている場合には、ご自身で相続登記を申請することも可能です。一方、売却日程が決まっている、共有者が多い、過去の相続登記が未了であるといった場合は、早めに司法書士へ相談すると手続きの見通しを立てやすくなります。 芦屋市のうちで法務事務所では、相続登記や戸籍収集、登記に必要な遺産分割協議書の作成などを取り扱っています。実家の売却を考えているものの、登記名義や必要書類が分からない場合は、まず現在の登記状況と相続関係を整理し、売却に向けた手続きの順序を確認してみてください。相続人間で争いがある場合の代理交渉は、弁護士への相談が必要です。
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法定相続情報一覧図とは?複数の銀行や相続登記で使う方法と注意点
親が亡くなり、銀行3行の預金解約と実家の相続登記を進めたい。銀行ごとに戸籍一式を提出するよう案内され、「同じ書類を何度も集める必要があるのだろうか」と困ることがあります。 このようなときに検討したいのが、法務局の「法定相続情報証明制度」です。戸籍などから法定相続人の関係を一覧図にまとめ、登記官の認証を受けた写しを取得することで、複数の相続手続きに利用できます。ただし、一覧図だけですべての手続きが終わるわけではありません。使える場面と別途必要になる書類を確認しましょう。 法定相続情報一覧図で何ができるのか 戸籍の束に代えて相続関係を示せる 法定相続情報一覧図は、亡くなった方(被相続人)と法定相続人の関係を、戸籍の記載に基づいて図式化したものです。法務局に必要書類とともに申し出ると、登記官が内容を確認し、認証文の付いた一覧図の写しを交付します。 この写しは、相続登記、預貯金の払戻し、相続税の申告など、対応する手続きで戸籍の束の代わりとして利用できます。写しの交付手数料は無料です。ただし、戸籍謄本等を取得するための費用や、司法書士に依頼する場合の報酬は別にかかります。 相続財産の分け方まで証明するものではない 一覧図が示すのは、基本的に戸籍から確認できる法定相続関係です。誰が実家を取得するか、どの預金を誰に分けるかという遺産分割の合意を証明するものではありません。 そのため、遺言書や遺産分割協議書、相続人の印鑑証明書などが別途必要になることがあります。また、相続放棄の事実は一覧図に記載されず、相続放棄をした人も、戸籍から確認できる法定相続人として記載されます。実際の手続きでは、相続放棄申述受理証明書などが別途必要になるため、提出先が求める書類を事前に確認してください。 複数の銀行や不動産の手続きでどう役立つか 銀行ごとに戸籍一式を提出する負担を減らせる 例えば、亡くなった父の預金が3行にあり、相続人は母と成人した子2人という架空のケースを考えます。銀行が法定相続情報一覧図の写しを受け付ける場合、認証済みの写しをそれぞれに提出することで、戸籍一式の提出を省略できることがあります。 戸籍一式は提出先から返却を受けて使い回せる場合もあるため、銀行ごとに取り直すことが必須というわけではありません。一覧図の写しを必要な通数取得すれば、戸籍の返却を待たずに複数の手続きを並行して進めやすくなります。 ただし、銀行ごとに相続届の様式、本人確認資料、遺産分割協議書などの要否は異なります。先に各行へ連絡し、一覧図を使えるか、写しの返却や原本確認の取扱い、必要な追加書類を確認すると、手戻りを減らせます。 相続登記にも利用できる 土地や建物の相続登記でも、一覧図の写しを相続関係の証明に利用できます。2024年4月からは、所定の要件の下で登記申請書に法定相続情報番号を記載し、一覧図の写しの添付を省略できる取扱いも始まっています。ただし、この番号を銀行などの手続きで代用することはできません。 不動産の登記事項証明書で現在の名義を確認し、遺言書や遺産分割協議書、住所関係の書類など、登記に必要な資料を別に整理しましょう。法定相続情報一覧図の取得だけで相続登記の義務を果たしたことにはなりません。 一覧図を取得するまでの進め方 まず戸籍と住所関係の資料をそろえる 最初に、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸除籍謄本と、相続人全員の現在の戸籍謄本・抄本などを集め、相続人を確定します。相続人の戸籍は、被相続人の死亡日以後に発行されたものが必要です。被相続人の住民票の除票も必要で、取得できない場合は戸籍の附票の写しを用意します。 これらも取得できない場合や、戸籍の廃棄などで相続関係を確認できない場合は、制度を利用できるかを含めて法務局に確認しましょう。申出人の氏名・住所を確認できる運転免許証の写しなどの公的書類も準備します。 戸籍の記載から前婚の子や、先に亡くなった子の代襲相続人が判明することもあります。思い込みで家系図を完成させず、取得した戸籍を順番に照合することが大切です。 一覧図を作成して管轄法務局に申し出る 法務局が公開する様式や記載例を参考に、被相続人と法定相続人の氏名、続柄、生年月日などを記載した一覧図を作成します。相続人の住所の記載は任意ですが、記載することで後続の登記手続きなどで住所証明書類の提出を省略できる場合があります。その場合は住所を証明する資料も準備します。 申出先は、被相続人の本籍地や最後の住所地、申出人の住所地、被相続人名義の不動産所在地を管轄する登記所から選べます。申出書に必要な写しの通数を記載し、書類一式を提出します。郵送による申出も可能ですが、返信用封筒などの条件を確認してください。 交付された写しを各手続きで使う 交付後は、各銀行や法務局の案内に従って利用します。必要な写しの枚数は、提出先の数や返却の取扱いに応じて考えましょう。 一覧図は、申出日の翌年から起算して5年間、法務局に保管され、その間は写しの再交付を受けられます。再交付を申し出られるのは当初の申出人で、申出先も当初の申出をした登記所です。他の相続人が手続きをする場合は、当初の申出人からの委任を受けるなど、代理の要件を確認してください。 申出前に確認したい注意点 相続人の死亡や相続放棄がある場合 被相続人が亡くなった後に、その相続人も亡くなった場合は、最初の相続と次の相続を区別して整理する必要があります。このような数次相続について一覧図を利用する場合は、1枚にまとめず、被相続人ごとに別々の一覧図を作成します。 相続放棄をした人についても、戸籍上の法定相続人であることと、実際に相続する権利があることは区別しなければなりません。 誰が銀行の書類に署名するのか、遺産分割協議に参加するのかは、一覧図だけで判断せず、死亡の順序や家庭裁判所の受理書類などを確認します。 提出先が一覧図を受け付けるか確認する 法定相続情報一覧図の写しは幅広く使えますが、すべての機関が同じ方法で取り扱うわけではありません。銀行や証券会社、年金関係の窓口などに、利用可否と必要書類を確認してください。 相続税申告の添付書類として利用するには、図形式で、子の続柄が実子か養子か分かるように記載されている必要があります。続柄を単に「子」としたものは使えないため、申告にも使う予定があれば、戸籍どおり「長男」「長女」「養子」などと記載しましょう。被相続人に養子がいる場合は、その養子の戸籍謄本・抄本も別途必要です。 一覧図の作成に時間をかけるより、急ぎの支払いなど別の対応を優先した方がよい場合もあります。提出先と期限を先に洗い出し、どの手続きを並行して進めるか決めることが重要です。 自分で進める場合と司法書士に相談する場合 相続人が明確で、戸籍がそろっており、提出先の案内を確認できる場合は、ご自身で一覧図を作成して申し出ることもできます。法務局の公式様式を使い、記載漏れや続柄の誤りがないか確認しましょう。 一方、古い戸籍の読み取りが難しい、相続人が多い、複数の銀行と不動産の手続きを並行して進めたい場合には、司法書士への相談が役立ちます。相談前には、亡くなった方の氏名と死亡日、家族関係のメモ、取得済みの戸籍、銀行名と不動産の所在地、遺言書の有無を分かる範囲で整理してください。 芦屋市のうちで法務事務所では、戸籍収集、法定相続情報の代理取得、相続登記、預貯金の相続手続きなどを取り扱っています。どの手続きをご自身で進め、どこから依頼するか迷っている方は、現在の資料と手続きの進み具合をもとに相談できます。相続人間で争いがある場合の交渉は弁護士、相続税の判断は税理士への相談も検討しましょう。 法定相続情報一覧図は、相続関係を一度整理して複数の提出先に示すための制度です。必要な戸籍を確認したうえで、各手続きに本当に役立つかを見極め、無理のない順序で進めていきましょう。
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