士業コラム
相続した実家を売却したいときは?相続登記と売却準備の進め方

相続した実家を売却したいときは?相続登記と売却準備の進め方

親が亡くなり、誰も住まなくなった実家を売却したい。しかし、不動産会社に相談したところ「まず相続登記が必要です」と言われ、何から始めればよいのか迷う方もいらっしゃいます。相続人が複数いる場合は、誰の名義にするか、売却代金をどう分けるかも考えなければなりません。

相続登記と売却は別の手続きですが、順序を間違えると契約や引渡しの予定に影響します。ここでは、相続した実家を売る場合に確認したい登記名義、相続人の合意、準備資料、進め方を説明します。

売却する前に相続登記が必要になる理由

亡くなった親の名義のままでは売却を完了できない

不動産の売買では、買主へ所有権を移転する登記が重要です。登記簿上の所有者が亡くなった親のままであれば、通常は相続によって所有権を取得した人への登記を行い、その後に買主への所有権移転登記を行います。相続登記をせずに売買の相談や査定を始めることはできますが、買主への引渡しまでに必要な登記を整える必要があります。

売却を急ぐ場合でも、登記手続きに必要な戸籍や合意書類の確認を省略することはできません。不動産会社と司法書士に早い段階で状況を伝え、売買契約と登記の予定を調整することが大切です。

相続人申告登記だけでは売却できない

相続人申告登記は、相続登記の基本的な申請義務を履行するための簡易な制度です。ただし、誰がその不動産の所有権を取得したかを示す登記ではありません。そのため、相続人申告登記を済ませていても、売却するには原則として相続登記が必要です。

2024年4月から相続登記は義務化されています。原則として、自分のために相続が開始したことと、その相続で不動産の所有権を取得したことの両方を知った日から3年以内に申請する必要があります。2024年4月1日より前に相続による取得を知っていた不動産は、原則として2027年3月31日までの対応が必要です。

また、遺産分割で不動産を取得した人には、分割成立日から3年以内にその内容に基づく登記を申請する義務があります。売却予定があることだけで期限が延びるわけではないため、売却時期にかかわらず確認しましょう。

最初に確認したい不動産と相続人の情報

登記事項証明書で名義と不動産の範囲を確認する

まず土地と建物の登記事項証明書を取得し、所有者の氏名、共有者の有無、抵当権などの記載を確認します。固定資産税の納税通知書や課税明細書も手掛かりになりますが、記載されている土地と建物だけで相続対象のすべてを把握できるとは限りません。

たとえば実家の敷地とは別に私道の持分がある場合、売却に必要な不動産を見落とすおそれがあります。登記簿の地番・家屋番号と、普段使う住所は一致しないこともあるため、資料を突き合わせて確認してください。

遺言書の有無と相続人の範囲を整理する

遺言書があれば、その内容や方式によって登記の進め方が変わります。遺言書がある場合も、亡くなった方の死亡や、取得者が相続人であることなどを戸籍で確認する必要があります。遺産分割協議に基づく相続登記では、通常、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍などで相続人を確定させます。相続人が配偶者と子だけとは限らず、家族構成によっては親や兄弟姉妹が相続人になることもあります。

親の死亡後にその相続人も亡くなった場合は、数次相続として、さらにその方の相続関係を確認する必要があります。一方、親より先に子が亡くなっていた場合は、その子の子(親から見た孫)が代襲相続することがあります。誰が手続きに参加するかは死亡の順序などで変わるため、まず死亡日と親族関係を整理しましょう。遠方に住む相続人がいると、署名や書類のやり取りにも時間がかかるため、早めに連絡先を整理しておくとよいでしょう。

誰の名義にして売却するかを決める

1人が取得して売却する方法

遺産分割協議で、相続人のうち1人が実家を取得し、その人が売却する方法があります。これとは別に、実家を売却して代金を相続人間で分ける「換価分割」のため、手続きの便宜上一人の名義にする場合もあります。同じ単独名義でも合意の内容は異なるため、売却代金をほかの相続人へ渡す約束がある場合は、その法的な位置付けや税務上の取扱いを慎重に検討する必要があります。

単に「売ったお金をみんなで分ける」という口約束だけで進めず、誰が不動産を取得するか、費用を誰が負担するか、売却代金をどう扱うかを事前に整理しましょう。税金については税理士への確認が有用です。

複数人の共有名義にして売却する方法

相続人が共有で取得し、共有者全員で売却する方法も考えられます。ただし、不動産全体を売却するには原則として共有者全員の同意が必要です。共有者が多いほど、価格や引渡し時期の調整、必要書類の収集が複雑になることがあります。

どちらが適切かは、相続人の希望、売却の見通し、税務などによって異なります。登記だけを先に済ませるのではなく、売却の方針も含めて決めることが重要です。

売却までの具体的な進め方

先に相続関係を確認し、登記の準備を進める

一般的には、次の順序で進めます。

  • ①登記事項証明書や固定資産税関係資料で不動産を特定する
  • ②遺言書の有無を調べ、戸籍などで相続人を確認する
  • ③相続人間で取得者と売却方針を話し合う
  • ④必要に応じて遺産分割協議書を作成し、相続登記を申請する
  • ⑤不動産会社と売却条件を調整し、売買契約・引渡しに進む

査定や不動産会社への相談は、相続登記の準備と並行して進められます。ただし、買主との契約日や決済日を決める前に、登記に必要な書類がそろう見込みを確認しておくと安心です。

売却前に抵当権や建物の状況も確認する

親が住宅ローンを完済していても、抵当権の登記が残っていることがあります。抵当権が残っている場合は、金融機関の書類を確認し、必要に応じて抹消登記を進めます。また、未登記の増築部分や建物の登記内容と現況の相違があれば、売却前に別の対応が必要になることもあります。

登記だけでなく、境界、残置物、建物の管理状況についても不動産会社などと確認しましょう。相続による所有権移転や抵当権抹消などの権利に関する登記は司法書士、測量や増築に伴う建物表題部変更登記などは土地家屋調査士が扱います。税務は税理士、売買仲介は不動産会社など、必要に応じて専門家と連携することになります。

急いで売却したい場合に注意すること

買主が見つかってから相続人の不一致が判明することも

例えば、兄弟3人で実家を相続し、長男が売却の窓口になっているとします。査定を受けて購入希望者が現れても、ほかの相続人が売却価格に納得していなければ、予定どおり進められない可能性があります。これは説明のための想定例ですが、売却の相談を始める段階で相続人全員の意向を確認する重要性が分かります。

遺産分割によって実家を単独取得した人は、原則として自らの判断で売却できます。ただし、換価分割のために便宜上その人の名義にした場合や、売却条件・代金配分について合意がある場合は、その合意に従って進める必要があります。登記名義だけで判断せず、遺産分割の合意内容と、その後の売却・代金配分を整合させることが大切です。

登記義務の期限と売却予定は分けて考える

相続登記の義務を履行する期限と、売却のために登記を完了させる時期は同じではありません。売却を数年先に予定していても、法定の申請期限が先に来る場合があります。また、期限が迫っているからといって相続人申告登記だけを行えば、売却準備まで終わるわけではありません。

相続人間で話し合いがまとまらない場合や、相続関係が複雑な場合は、登記義務への対応と売却の進め方を切り分けて検討してください。

相談時に用意したい資料と確認事項

相談の際は、手元にある範囲で、固定資産税の納税通知書、登記事項証明書、亡くなった方の戸籍、遺言書、相続人の連絡先、住宅ローン関係書類などを整理しておくと状況を伝えやすくなります。すべての書類がそろっていなくても、どの資料が不足しているかを確認するところから始められます。

相続人が少なく、必要書類も整っている場合には、ご自身で相続登記を申請することも可能です。一方、売却日程が決まっている、共有者が多い、過去の相続登記が未了であるといった場合は、早めに司法書士へ相談すると手続きの見通しを立てやすくなります。

芦屋市のうちで法務事務所では、相続登記や戸籍収集、登記に必要な遺産分割協議書の作成などを取り扱っています。実家の売却を考えているものの、登記名義や必要書類が分からない場合は、まず現在の登記状況と相続関係を整理し、売却に向けた手続きの順序を確認してみてください。相続人間で争いがある場合の代理交渉は、弁護士への相談が必要です。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、うちで法務事務所までお問い合わせください。

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