士業コラム
社員から妊娠の報告を受けたら?会社が確認したい義務と初動対応

社員から妊娠の報告を受けたら?会社が確認したい義務と初動対応

社員から「妊娠しました」と報告を受けたとき、経営者や人事担当者は何から対応すればよいのでしょうか。本人の体調を気遣うことはもちろんですが、会社には制度の個別周知や意向確認、妊婦健診の時間確保、医師等の指導に応じた勤務上の措置など、具体的な義務があります。

一方で、妊娠したからといって、会社が一方的に仕事を減らしたり、休業を命じたりすることが適切とは限りません。この記事では、中小企業が報告直後に確認したい事項と、その後の労務管理の進め方を整理します。

妊娠の報告を受けた直後に確認すること

まず本人の希望と当面の勤務状況を聞く

報告を受けたら、本人が現在の仕事で負担に感じていること、通院予定、勤務時間や担当業務について相談したいことを確認します。妊娠週数や出産予定日などは、休業や手続きの見通しを立てるために必要な範囲で確認し、聞き取った情報を社内で広く共有しないよう注意します。

本人がまだ職場への公表を望んでいない場合は、誰に、いつ、どの範囲まで伝えるかを相談しましょう。業務の引継ぎが必要でも、健康情報の共有は必要最小限にとどめることが大切です。

妊娠の申出を理由に不利益な扱いをしない

妊娠を理由とする解雇その他の不利益な取扱いは禁止されています。本人の意思を確認せず、正社員からパートへの変更を求めたり、降格や退職を促したりすることは避けてください。安全配慮のために業務変更を検討するときも、必要性と本人の意向を分けて確認します。

育児休業制度の周知と意向確認を行う

会社から個別に制度を説明する

本人または配偶者の妊娠・出産等の申出があった場合、会社は育児休業制度等について個別に周知し、取得意向を確認する必要があります。女性社員からの報告だけでなく、男性社員が配偶者の妊娠を申し出た場合も対象です。

男性社員は職場の雰囲気や業務への影響を気にして申し出を躊躇することも少なくありません。制度を説明するのと同時に、早めの業務引き継ぎ体制の調整や、休業を控えさせるような発言(ハラスメント)の防止を徹底することが求められます。

周知事項には、育児休業・出生時育児休業に関する制度、申出先、育児休業給付、休業期間中の社会保険料の取扱いなどがあります。説明の内容と実施日を記録しておくと、担当者が替わった場合にも対応状況を確認できます。

仕事と育児の両立についても意向を聴く

2025年10月から、妊娠・出産等の申出時には、勤務時間帯、勤務地、両立支援制度の利用期間、業務量など仕事と育児の両立に関する意向を個別に聴取し、会社の状況に応じて配慮することも義務となっています。

制度を知らせるだけで終わらず、本人がどのような働き方を希望しているかを確認しましょう。ただし、希望をすべて実現する義務があるという意味ではありません。会社の業務体制と照らし合わせ、対応可能な内容や代替案を検討することが重要です。

妊婦健診や体調に応じた勤務調整を確認する

健診に必要な時間を確保する

会社は、妊娠中や出産後の女性社員が保健指導・健康診査を受けるために必要な時間を確保できるようにしなければなりません。会社が一方的に年次有給休暇を使わせることはできません。本人が自ら有給休暇を希望する場合は別ですが、健診時間の確保と有給休暇の取得は区別してください。

健診時間を有給とするか無給とするかは、法令上、一律に有給とされているわけではありません。就業規則や賃金規程の定めを確認し、本人にも取扱いを説明しましょう。

医師等の指導があれば必要な措置を検討する

つわり、通勤時の混雑、長時間の立ち仕事などについて、医師や助産師から指導があった場合、会社はその内容に応じて勤務時間の変更、休憩の延長、作業の軽減、休業など必要な措置を講じます。

指導内容の確認には「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」が役立ちます。カードの提出がないことだけを理由に相談を打ち切らず、本人から状況を聞き、必要に応じて医師等の指導内容を確認しましょう。会社が独自に症状の重さを判断することは避けます。

残業や深夜勤務の扱いも確認する

妊産婦から請求があった場合には、法定の時間外労働、休日労働、深夜業をさせてはならないなどの保護があります。また、妊娠中の女性が請求した場合は、他の軽易な業務への転換も検討する必要があります。通常のシフトや人員配置を前提に判断せず、本人の請求内容を確認してください。

中小企業が対応を進める具体的な順序

本人との面談内容を整理する

例えば、少人数の店舗で立ち仕事を担当する社員から妊娠の報告を受けたとします。会社は直ちに勤務日数を減らすのではなく、まず本人の希望と医師等の指導の有無を確認します。そのうえで、座ってできる業務への一部変更や休憩の取り方など、現場で実施できる方法を検討します。

面談では、当面の業務、健診への通院、制度説明、社内共有の範囲を分けて記録すると、必要な対応が抜けにくくなります。記録は人事労務の担当者など、業務上必要な人に限定して管理します。

規程と現場の運用を照合する

就業規則、育児・介護休業規程、賃金規程に、妊婦健診、母性健康管理措置、産前産後休業、育児休業の取扱いがどのように定められているか確認します。規程に記載がなくても法令上の措置義務がなくなるわけではありません。

規程と実際の運用が違う場合は、現場の担当者だけで判断せず、会社として取扱いを整理します。特に勤務時間を短縮した場合の賃金、休業中の取扱い、代替要員の配置は、事前に説明しておくことが望まれます。

判断に迷ったときの相談と準備資料

妊娠の報告後の基本的な聞き取りや制度案内は、会社の担当者でも進められます。一方、医師等の指導と現場の人員配置が両立しない場合、勤務変更に伴う賃金の扱いが不明確な場合、規程が古く改正法に対応できていない場合は、社会保険労務士に相談することが有用です。

相談時には、就業規則・育児介護休業規程、勤務シフト、担当業務の内容、本人の申出内容、医師等の指導が分かる資料を、必要な範囲で整理しておくと検討が進めやすくなります。本人の健康情報を外部に共有する際も、取扱いには十分注意してください。

城田社会保険労務士事務所では、中小企業の人事・労務相談や就業規則の作成・変更を取り扱っています。妊娠の報告を受けた後の対応を個別の勤務実態に即して整理したい場合は、相談を検討してみてください。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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