士業コラム
社員に休日の研修参加を命じられる?労働時間と賃金の判断ポイント

社員に休日の研修参加を命じられる?労働時間と賃金の判断ポイント

社員の知識や技能を高めるため、休日に研修を実施したいと考える会社は少なくありません。しかし、社員から「休日なのに参加しなければならないのですか」「参加するなら残業代は出ますか」と質問されることもあります。

会社が研修と呼んでいても、参加の義務があるか、賃金の支払いが必要かは、その実態によって判断されます。中小企業の経営者が確認したい点を整理します。

研修が労働時間に当たるかは参加の実態で判断する

名称よりも会社の指揮命令が重要

労働時間に当たるかどうかは、会社の指揮命令下に置かれているかという観点から客観的に判断します。休日に開催したから労働時間にならないわけではなく、「自主研修」と名付ければ賃金が不要になるわけでもありません。

会社から参加を明示的に指示された研修は、原則として労働時間に当たります。また、明示的な指示がなくても、研修内容と業務との関連性が強く、参加しないことによって業務に具体的な支障が生じる場合や、欠席による不利益な取扱いがある場合などは、実質的に参加を強制されていると判断され、労働時間に当たる可能性があります。

自由参加でも実質的な強制がないか

募集案内に「任意参加」と書いてあっても、欠席者が人事評価で不利益を受ける、上司が繰り返し参加を要求する、参加しないと担当業務を続けられないといった事情があれば、実質的に参加を義務付けていると評価される可能性があります。反対に、社員が自由に選び、参加しなくても不利益がなく、会社の指示から離れて学習する場合は、労働時間に当たらないことがあります。

休日の種類と研修時間を確認する

法定休日と所定休日を区別する

休日には、労働基準法上の法定休日と、会社が独自に定める所定休日があります。法定休日に労働させる場合は、原則として36協定の締結・届出などの前提を確認し、法定休日労働に対する35%以上の割増賃金が必要です。一方、所定休日の研修は、それだけで35%の割増対象になるとは限りません。週40時間などの法定労働時間を超えるか、就業規則や賃金規程に別の定めがあるかを確認します。

準備・移動・終了後の作業も整理する

研修そのものだけでなく、会社から指示された会場設営、受付、資料準備、終了後の報告書作成なども、指揮命令下で行うなら労働時間に含まれ得ます。自宅から研修会場への通常の移動は原則として通勤と同様に扱われますが、移動中に業務を命じているなど特別な事情がある場合は別途検討が必要です。実際の開始・終了時刻と休憩時間を記録しましょう。

研修を命じる前に会社が確認したい手順

参加義務の根拠と目的を明確にする

まず、雇用契約書や就業規則の研修・業務命令に関する規定を確認します。業務との関連性、研修の必要性、対象者の選定理由も整理してください。規定があるからどのような研修でも無制限に命じられるわけではありません。休日に実施する必要性や社員の事情への配慮も重要です。

労働時間と賃金を事前に説明する

次に、研修への参加が実質的に義務付けられているかを確認し、労働時間に該当する場合は、勤務する休日が法定休日か所定休日かを確認します。そのうえで、研修時間の把握方法や勤怠の記録方法を決めます。

36協定の対象となる時間外・休日労働については、協定の有無だけでなく、限度時間や特別条項の適用条件も確認します。研修時間に対する賃金、割増賃金、交通費の取扱いを案内し、参加者ごとに記録を残します。

休日を振り替える場合は事前に手続きする

研修日に出勤して別の日を休みにする場合、適法な振替休日と、休日労働の後に休ませる代休は区別されます。事前に休日を振り替えるための就業規則上の根拠や具体的な指定など、必要な条件を満たさなければ、後日休みを与えただけでは休日割増賃金の支払い義務が消えるとは限りません。研修の案内と同時に、休日の扱いを明確にしておくことが大切です。

参加を断る社員への対応で避けたいこと

社員が参加を断ったときは、直ちに業務命令違反と決め付けず、研修の必要性、命令の合理性、参加義務の周知状況、育児・介護など個別の事情を確認します。任意参加として案内した研修について、欠席を理由に一方的な減点や懲戒を行うことは、実質的な強制の問題を生じさせます。参加を求めるのであれば、勤務としての扱いを明確にした上で、代替日や別の受講方法も検討してください。

例えば、日曜日に新しい業務システムの操作研修を行い、対象社員全員に出席を指示する場合を考えます。これは「勉強会」という名称でも労働時間に当たる可能性が高い場面です。日曜日が法定休日なのかを確認し、必要な36協定と割増賃金、勤怠記録を整える必要があります。一方、会社が外部講座を紹介するだけで、受講は完全に自由であり欠席しても不利益がない場合は、結論が異なり得ます。

なお、研修の開催場所が社外であっても、参加を会社が義務付ける場合には、労働時間の判断は変わりません。オンライン研修でも同様です。動画を各自の都合のよい時間に視聴させる場合は、視聴を必須とするか、視聴時間を会社が把握できるか、勤務時間内に受講する機会を設けているかを確認してください。自宅での受講を求めるなら、受講時間の申告方法や、途中で業務以外の用事をした場合の取扱いも決めておくと、後日の認識違いを減らせます。

判断に迷うときは規程と運用を合わせて見直す

休日研修の問題は、当日の給与計算だけでなく、就業規則の服務規律、労働時間管理、36協定、評価制度の運用に関係します。会社が「任意」と考えていても、現場の上司が参加を強く求めている場合には、案内文と実態のずれが生じます。まず研修案内、参加対象者、欠席時の扱い、勤怠記録、休日の指定、賃金規程をそろえ、矛盾がないか確認しましょう。

城田社会保険労務士事務所では、中小企業の労務管理や就業規則作成を取り扱っています。休日研修を新たに導入するときや、すでに実施した研修の賃金・参加義務について社員から疑問が出ているときは、社内規程と実際の運用を整理した上で、社会保険労務士に相談することが考えられます。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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