士業コラム
社員が勤務中に居眠りを繰り返したら?会社の指導と処分の注意点

社員が勤務中に居眠りを繰り返したら?会社の指導と処分の注意点

「会議中に何度も眠ってしまう社員がいる」「注意した翌日には改善するのに、しばらくすると再び居眠りをする」。こうした状況が続くと、経営者は仕事への意欲が足りないのではないかと感じるかもしれません。一方で、睡眠不足や体調不良、長時間労働などが背景にある可能性もあります。

勤務中の居眠りは、業務への支障や安全上の問題につながり得ます。しかし、居眠りを見つけたという理由だけで、直ちに減給や解雇を決めることは適切ではありません。この記事では、中小企業が事実確認から指導、勤務環境の点検、必要に応じた処分の検討まで、どの順番で対応すればよいかを説明します。

まず居眠りの事実と業務への影響を確認する

印象ではなく具体的な状況を記録する

最初に確認したいのは、いつ、どこで、どの程度の居眠りがあったかという事実です。「いつも眠そう」「やる気がない」といった評価だけでは、本人に改善を求める際の根拠が曖昧になります。

例えば、会議中に数分間目を閉じて反応がなかったのか、作業中に意識が途切れて機械の操作を誤りかけたのかでは、業務上の影響が異なります。確認した日時、目撃者、業務への支障、声を掛けた際の反応などを、推測と分けて記録します。本人の説明も併せて残しておくと、後の判断に役立ちます。

危険を伴う業務では安全確保を優先する

運転、機械操作、高所作業など、眠気によって事故につながる仕事では、その場の安全確保が優先です。作業を一時中断させ、状態を確認し、必要に応じて別の業務に切り替えるなどの措置を検討します。

ただし、一時的な安全措置と、懲戒としての出勤停止や賃金の取扱いは別の問題です。業務から外した時間の賃金をどう扱うかは、休業に至った事情や会社の責任などによって判断が変わります。安全のために作業を止めたからといって、当然に無給にできるわけではありません。

本人への聞き取りでは原因を決めつけない

生活習慣だけでなく勤務状況も確認する

居眠りの理由を聞く際には、本人を責める質問から始めるより、勤務中に眠気が生じる頻度や時間帯、最近の体調、勤務負担を確認する方が建設的です。前日の睡眠不足が理由の場合もあれば、連日の残業や不規則なシフトが関係している場合もあります。

会社側では、直近の出退勤記録、時間外労働、休憩の取得状況、深夜勤務の有無などを確認してください。本人の自己申告だけでなく、勤怠データと照らし合わせることが重要です。仕事量やシフトに偏りがある場合には、本人への注意だけでは再発防止につながりません。

健康上の事情が疑われる場合

強い眠気が続く背景に、治療中の病気や服薬の影響などがあることも考えられます。会社が病名を推測したり、本人に診断を迫ったりするのではなく、仕事を安全に続けるうえで必要な情報を確認します。

本人が健康上の事情を申し出た場合には、産業医等の意見聴取や受診の勧奨、勤務上の配慮を検討します。健康情報は必要な範囲に限って扱い、関係のない社員に広めないよう注意が必要です。病気が疑われるからといって、直ちに就業禁止や配置転換ができるわけでもありません。業務の危険性や本人の状態を踏まえた個別の判断が必要です。

指導は具体的な改善行動を示して進める

最初の注意は事実と期待する行動を伝える

指導では「社会人として失格だ」などの人格評価を避け、確認した行動と業務への影響を伝えます。そのうえで、眠気を感じたときは早めに上司へ申告すること、体調に問題があれば相談すること、勤務中の安全を確保することなど、具体的な行動を確認します。

想定例として、午後の定例会議で居眠りが複数回見られた社員には、会議への参加状況を事実として伝え、本人の説明を聞きます。会議時間や休憩の取り方にも改善の余地がないか検討し、一定期間後に状況を振り返る日を決めます。初回から始末書を求めることが常に必要とは限りません。

繰り返す場合は指導経過を残す

注意しても改善しない場合は、口頭注意の日時と内容、本人の説明、会社が提示した改善策、その後の状況を整理します。必要に応じて書面で注意し、何をいつまでに改善してほしいのかを明確にします。

記録は、処分のために不利な情報を集めるものではありません。会社がどのような支援や勤務調整を行ったか、本人がどう応じたかも残すことで、公平な判断につながります。指導内容を本人に確認してもらい、認識の食い違いを早めに解消することも有用です。

減給や懲戒処分を検討する際の注意点

居眠りした時間を機械的に給与から引かない

勤務中に居眠りをしていた場合でも、その時間に相当する賃金を当然に控除できるわけではありません。賃金を控除する場合には、給与体系や賃金の計算方法、就業規則、労働契約上の定めなどを確認する必要があります。

特に、月給制の社員について、居眠りしていた時間を一方的に算出し、給与から差し引くことは慎重に判断しなければなりません。賃金の取扱いと、懲戒処分としての減給は区別して考えることが重要です。

また、労務を提供していない時間に対応する賃金の計算と、制裁としての減給は区別する必要があります。懲戒減給には労働基準法第91条の制限があり、就業規則上の根拠や処分の相当性も問題になります。罰金のような金額を独自に決めて控除する運用は危険です。

懲戒や解雇は規定と事情を総合して判断する

懲戒処分を検討する場合には、就業規則の懲戒事由に該当するか、規定が周知されているか、過去の指導や改善機会があったか、業務への影響はどの程度かを確認します。処分には客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。

特に解雇は、居眠りが繰り返されたという事実だけで当然に認められるものではありません。健康上の事情や会社側の労働時間管理、配置や業務の見直しの可能性も含めて慎重に検討します。対応を急いで退職届の提出を迫ることも避けましょう。

再発を防ぐために会社の管理方法も見直す

居眠りが特定の社員だけでなく複数人に見られる場合、長時間労働や休憩不足、勤務時間帯の設計に問題がないかを点検する必要があります。勤務実態に合わないシフトや、休憩を取りにくい職場環境を放置したまま個人の責任だけを追及しても、改善は難しいでしょう。

一方、勤務環境に特段の問題がなく、本人に改善を求めても同じ行為が続く場合には、指導の段階を進めることを検討します。重要なのは、健康面への配慮と職場の規律を対立するものとして扱わず、双方を確認したうえで判断することです。

相談の際には、就業規則、雇用契約書、勤怠記録、居眠りの発生状況、本人への指導記録、業務への影響を整理しておくと、論点を把握しやすくなります。城田社会保険労務士事務所では、中小企業の人事・労務全般の相談や就業規則の作成・変更を取り扱っています。指導方法や処分の可否に迷う場合には、事実関係を整理した段階で相談することが考えられます。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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