士業コラム
契約社員の更新上限を途中から設けられる?会社の説明義務と注意点

契約社員の更新上限を途中から設けられる?会社の説明義務と注意点

契約社員の雇用契約を何度か更新してきたものの、今後は「更新はあと2回まで」「通算契約期間は3年まで」といった上限を設けたい。こうした場合、会社が新たな条件を契約書に記載するだけでよいのでしょうか。

有期労働契約の更新上限を途中から新設・短縮するときは、労働者への事前説明が必要です。ただし、説明すれば必ず変更できるという意味ではありません。これまでの契約内容や更新の経緯によっては、雇止めの有効性も問題になります。中小企業の経営者が確認したい順序を整理します。

更新上限とは何か、最初に確認する

更新回数と通算契約期間の上限

更新上限とは、有期労働契約を更新できる回数や、契約を継続できる通算期間の上限です。例えば「更新は最大3回」「通算契約期間は4年を超えない」といった定めが該当します。契約期間そのものと、更新を続けられる限度は別の事項です。

2024年4月以降、有期労働契約の締結時と更新時には、更新上限の有無と内容を明示する必要があります。上限がない場合にも、その有無が分かるように示します。過去の労働条件通知書に記載がなかったからといって、当然に自由な変更ができるわけではありません。

更新上限と雇止めは別の問題

更新上限を設定することと、契約期間満了時に更新しないことは分けて考えます。上限を設けた後であっても、実際の雇止めが労働契約法19条に照らして認められるかは、更新の実態や労働者の合理的期待などを踏まえて判断されます。上限を書面に記載したことだけで、雇止めが常に有効になるわけではありません。

途中から上限を設ける前に調べたいこと

これまでの契約書と説明内容

最初に、採用時から現在までの雇用契約書、労働条件通知書、更新時の案内を時系列で確認します。「更新する場合がある」「更新上限なし」などの記載がないか、口頭で長期雇用を期待させる説明をしていなかったかも確認が必要です。

例えば、毎年ほぼ自動的に更新し、上司が「今後も長く働いてほしい」と繰り返し伝えていた場合と、業務終了までの期間を明確に伝えて採用した場合とでは、従業員の受け止め方も法的評価も異なり得ます。

更新実績と業務の継続性

更新回数、勤続期間、担当業務、更新時の面談の有無を確認します。恒常的な業務を担当し、更新手続きが形式的になっている場合には、更新への期待が形成されている可能性があります。会社の都合だけで一律に上限を設定する前に、対象者ごとの事情を整理してください。

就業規則と無期転換の状況

就業規則や有期契約社員向けの規程に更新基準・上限の定めがあるかを確認します。また、同一の使用者との有期労働契約が通算5年を超える場合に生じる無期転換申込権についても、契約期間や空白期間などを踏まえて確認が必要です。更新上限の設定によって、すでに発生した申込権が消えるわけではありません。

新設・短縮するときの説明と手順

理由を事前に説明する

有期労働契約の最初の締結後に更新上限を新設したり、従来の上限を短縮したりする場合、会社はその理由を労働者にあらかじめ説明しなければなりません。これは更新上限の明示とは別に求められる対応です。

例えば事業の縮小、特定業務の終了予定、人員配置方針の変更など、実際に存在する事情を整理して説明します。「会社の方針だから」とだけ伝えるのでは、従業員が変更の必要性を理解しにくく、後日の認識違いにもつながります。説明内容と実施日を記録しておくことが有用です。

説明後に契約条件を確認する

従業員から質問や異議が出た場合は、直ちに署名を求めるのではなく、従前の合意内容や変更の影響を確認します。労働条件の変更には合意の有無や就業規則との関係が問題となるため、説明義務を果たしたことと変更の法的有効性を混同しないことが重要です。

次回の更新契約書には、更新上限の有無・内容に加え、更新判断の基準など必要な労働条件を明示します。社内の書式を統一する場合も、個別の従業員に従来と異なる条件が適用される点を見落とさないようにします。

具体例で考える変更時の注意点

例えば、ある会社では、1年契約の事務職社員を4回更新してきました。これまで更新上限を定めていませんでしたが、組織再編を予定し、次回更新から「更新はあと1回まで」とすることを検討しています。

この場合、まず過去の契約書と更新面談の記録を確認し、組織再編の具体的な予定や対象業務への影響を整理します。そのうえで上限を新設する理由を更新前に説明し、従業員の意向を確認します。単に新しい契約書を渡して署名を得るだけでは、これまでの更新期待や雇止めの問題を十分に検討したことにはなりません。

また、通算契約期間が5年を超えるか、無期転換申込権がすでに発生していないかを確認します。対象者が複数いる場合は、勤続期間や従前の説明内容に違いがないかも調べる必要があります。

更新上限を設ける前に専門家へ相談したい場面

更新回数が少なく、採用時から終了時期や更新条件を明確に伝えている場合には、社内で資料を整理し、必要な説明と書面整備を進められることもあります。一方、長期間更新を繰り返している、更新上限なしと明示していた、従業員が変更に反対している、無期転換申込権が関係する場合には、個別の検討が特に重要です。

相談前には、過去から現在までの雇用契約書・労働条件通知書、就業規則、更新履歴、面談記録、上限を設けたい理由をまとめた資料を用意すると、論点を整理しやすくなります。

城田社会保険労務士事務所では、中小企業の人事・労務全般に関する相談や就業規則の作成・変更を取り扱っています。更新上限の新設を検討している段階で、契約の経緯や説明方法を確認したい場合は、労務相談を活用することも一つの方法です。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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