士業コラム
確定した勤務シフトを会社都合で変更できる?同意と賃金の注意点

確定した勤務シフトを会社都合で変更できる?同意と賃金の注意点

飲食店や小売店などで、いったん勤務シフトを確定したものの、予約のキャンセルや売上の減少、人員配置の見直しによって、勤務日や勤務時間を変更したくなることがあります。「来週の出勤を1日減らしたい」「午後の勤務を午前に移してほしい」と考えたとき、会社は決定済みのシフトを自由に変更できるのでしょうか。

シフト制で働くパート・アルバイトでも、確定した勤務日や時間は重要な労働条件です。変更の進め方を誤ると、従業員との認識の食い違いや賃金の問題につながります。ここでは、会社が確認すべき契約内容、同意の取り方、勤務を取り消す場合の賃金、今後の運用方法を整理します。

確定したシフトは会社だけで変更できる?

確定前の調整と確定後の変更は分けて考える

シフト制とは、採用時点で個々の勤務日や勤務時間をすべて確定せず、一定期間ごとに勤務表などで具体的な労働日・時間を決める働き方です。希望を集めて調整している段階と、従業員へ確定した勤務表を通知した後とでは、会社が取るべき対応が異なります。

厚生労働省の留意事項では、いったん確定したシフトの勤務日や勤務時間を変更することは、基本的に労働条件の変更に当たると整理されています。労働契約法第8条の考え方を踏まえ、原則として会社と従業員の双方が合意したうえで変更する必要があります。シフトを作成する権限が会社にあるからといって、確定後も一方的に取り消せるわけではありません。

契約で決まっている勤務条件を先に確認する

まず労働条件通知書、雇用契約書、就業規則、確定したシフト表を見比べます。「週3日勤務」「月に一定時間以上」などの約束があるか、勤務する曜日や時間帯が固定されているか、シフトの確定時期や変更手続きが定められているかを確認してください。固定勤務の契約であれば、単にシフト制という名称で扱うことはできません。

変更を認める規定がある場合でも、その文言だけであらゆる変更が許されるとは限りません。変更理由、従業員への影響、これまでの運用などを踏まえ、個別に判断する必要があります。

従業員に変更をお願いするときの進め方

変更の理由と具体的な条件を伝える

会社の都合で変更したいときは、まず変更前後の勤務日、始業・終業時刻、休憩時間を明示します。そのうえで、予約減少や業務量の変化など、変更が必要な事情を具体的に説明します。「人が余ったので休んでください」という一方的な連絡だけでは、合意の有無が曖昧になりやすくなります。

代替の勤務日を提案できる場合には、その候補も示しましょう。ただし、別の日に働いてもらえば、元の勤務日を取り消すことに伴う問題が当然に解消するわけではありません。勤務日数や収入、家庭の予定への影響を確認することが大切です。

返答を確認し、変更内容を記録する

従業員が変更に応じる場合は、口頭だけで終わらせず、メールや勤怠管理システムなどに変更前後の内容と合意した日時を残すとよいでしょう。既読になったことや、反対の連絡がなかったことだけをもって、直ちに同意があったと扱うのは避けます。

同意が得られない場合は、当初のシフトに沿った勤務を基本に検討し、業務上の対応策を探ります。残業や休日労働の命令とは別の問題であり、勤務日を入れ替えることと、法令・契約に基づく時間外労働の命令を混同しないようにします。

シフトを減らした場合の賃金と休業手当

会社都合の休業に当たるかを確認する

確定した勤務日に会社が仕事を与えず休ませる場合、労働基準法第26条の休業手当が問題になります。同条では、使用者の責めに帰すべき事由による休業について、休業期間中、平均賃金の60%以上の手当を支払う必要があると定めています。単に売上が落ちた、予約が減ったという事情だけで、支払義務がなくなるとは限りません。

一方で、災害など会社の責任とはいえない事情がある場合や、そもそも勤務が確定していなかった場合などは、前提が異なります。休業手当が必要かどうかは、休業の原因、契約、シフトの確定状況を確認して判断します。

休業手当だけで賃金の問題が終わるとは限らない

労働基準法上の休業手当と、民法上の賃金請求の問題は同じではありません。会社側の事情によって労務の提供を受けられなくなった場合、個別事情によっては休業手当を超える賃金請求が問題になることもあります。「60%を払えば必ず足りる」とは考えず、変更への合意内容や休業理由を整理してください。

また、確定した勤務を短時間に変更する場合は、実際に働いた時間の賃金だけで足りるか、休業部分について別途支払いが必要かを確認します。給与計算担当者には、変更前後のシフトとその理由が分かる資料を共有しておくことが重要です。

具体例で考える:予約が減った日のシフト削減

小規模な飲食店が翌週金曜日の夕方にパート従業員を5時間勤務させるシフトを確定していました。しかし団体予約が取り消され、店長は勤務を3時間に短縮したいと考えました。

この場合、まず確定した5時間勤務が労働条件となっていることを前提に、短縮の必要性と代替案を本人に説明します。従業員が同意した場合でも、合意の内容や賃金の取扱いを確認して記録します。同意しない場合に、店長が勤務表だけを書き換える対応は避けるべきです。

さらに、会社の都合で勤務を短縮するのであれば、勤務できなくなった部分の賃金・休業手当について検討が必要です。具体的な支払額は、賃金制度、平均賃金、短縮した時間、休業の原因などによって異なるため、機械的に「減った2時間分の60%」と計算することはできません。

同じ問題を繰り返さないためのシフト管理

確定日と変更手続きを明確にする

シフト変更のトラブルを防ぐには、希望提出日、シフト確定日、通知方法、変更申出の期限、緊急時の連絡方法を明確にすることが有効です。従業員から変更を希望する場合と、会社から変更を依頼する場合の両方を想定しておきます。

勤務日数や時間数が毎月大きく変動する場合は、契約時に想定する勤務日数・時間数の目安や、設定する上限・下限についても検討します。ただし、ルールを作っただけで、確定済みシフトを会社が無制限に変更できるようになるわけではありません。

管理者と給与担当者の認識をそろえる

現場の店長が勤務表を変更しても、給与担当者が変更理由を知らなければ、休業手当の検討が漏れるおそれがあります。変更を依頼した人、本人の回答、勤務実績、賃金処理を一連の記録として残し、管理者間で共有できるようにしましょう。

とくに複数店舗や複数の管理者がいる会社では、変更を誰が承認するのかを決めておくと、現場判断による一方的なシフト削減を防ぎやすくなります。

判断に迷ったら労務管理の専門家に相談を

従業員が変更を拒否している、勤務時間を減らす対応が繰り返されている、休業手当の計算に迷うといった場合は、契約内容と実際の運用をまとめて確認することが大切です。相談の際には、雇用契約書、労働条件通知書、就業規則、変更前後のシフト表、本人とのやり取り、給与明細などを用意すると状況を整理しやすくなります。

城田社会保険労務士事務所では、中小企業の労務管理や就業規則作成などを取り扱っています。確定したシフトの変更をめぐる判断だけでなく、今後のシフト作成・変更ルールを整備したい場合にも、労務管理の観点から相談を検討するとよいでしょう。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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