士業コラム
親の介護で休みたいと言われたら?中小企業の介護休暇と初動の確認点

親の介護で休みたいと言われたら?中小企業の介護休暇と初動の確認点

「社員から、親の通院に付き添うため休みたいと言われた」「入社したばかりのパートにも介護休暇は必要だろうか」 少人数の会社では、休暇の制度と仕事の調整を同時に考えなければならない場面があります。

まずは、必要な休みの日時と事情を確認し、介護休暇の対象になるかを整理します。介護を理由とする相談を、年次有給休暇や退職の話だけで終わらせないことが大切です。この記事では、中小企業が相談を受けたときの初動と、制度を運用する際の確認点を解説します。

介護休暇と介護休業を分けて確認します

介護休暇は、要介護状態にある対象家族の介護や世話のために、短い時間や日単位で取得できる休暇です。通院への付き添い、介護サービスを利用するための手続きなどにも使えます。本人が一日中、直接介護する場合だけの制度ではありません。

一方、介護休業は、対象家族一人につき通算93日まで、3回を上限として分割して取得できる制度です。まとまった期間を使って介護サービスの手配や家族との役割分担など、仕事と介護を続けるための体制を整える場面でも活用されます。介護休暇とは取得の条件や手続きが異なるため、名称を取り違えないようにしましょう。

最初の相談では、「来週の通院で数時間休みたい」のか、「退院後の生活を整えるため、しばらく休みたい」のかを確認します。本人も必要な期間を見通せないことがあるため、その場で今後の働き方をすべて決める必要はありません。まず直近の希望を整理し、次に状況を確認する日を決めると話を進めやすくなります。

対象となる家族と状態を確認します

対象家族は、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母です。配偶者には事実婚も含まれます。離れて暮らす親であることだけを理由に、対象外と判断しないようにしてください。

法律上の要介護状態とは、負傷、病気、身体上または精神上の障害によって、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。介護保険の要介護認定と、育児・介護休業法における判断は同じものではありません。「認定がまだないので使えない」と即答せず、厚生労働省の判断基準に照らして確認します。

また、「2週間以上」という条件は、介護休暇を連続して2週間取らなければならないという意味ではありません。対象家族の状態に関する条件と、本人が希望する休暇の長さを分けて考えましょう。

確認する情報は、家族との関係、介護や世話の必要性、希望する日時など、制度の判断に必要な範囲にとどめます。家庭の事情や家族の病歴を、上司や同僚へ必要以上に広めない配慮も必要です。

入社直後やパートでも対象になる場合があります

介護休暇は、正社員だけの制度ではありません。日々雇用される人を除き、パートや有期契約の社員も対象になります。ただし、週の所定労働日数が2日以下の人については、適法な労使協定を結んでいる場合に対象から除外できます。短時間勤務という呼び方だけで判断せず、契約上の勤務日数と協定を確認してください。

2025年4月1日からは、継続雇用6か月未満の人を労使協定で介護休暇の対象外とする仕組みが廃止されました。古い育児・介護休業規程に「入社6か月未満は対象外」と残っていても、そのまま適用することはできません。

例えば、週4日勤務で入社2か月のパートから、要介護状態にある母親の通院に付き添うための申出があったとします。会社は「まだ半年働いていない」という理由だけで介護休暇を断ることはできません。ほかの対象要件や残日数を確認して対応します。

介護休業では別の対象要件や労使協定による除外があるため、介護休暇の確認結果を、そのまま介護休業にも当てはめないことが大切です。

日数と時間を確認し、急な申出にも対応します

介護休暇の日数は、対象家族が一人なら1年度に5日まで、二人以上なら10日までです。二人以上の場合に「一人につき5日ずつ」と個別に割り当てる制度ではありません。会社が年度を別に定めていなければ、4月1日から翌年3月31日までを一年度として管理します。

取得は1日単位または時間単位が基本です。ただし、時間単位での取得が困難と認められる業務について、労使協定で時間単位の取得対象から除外している場合があります。この場合でも、1日単位の取得まで一律に除外されるわけではありません。

申出は口頭でも可能です。急な付き添いが必要になったときに、「所定の用紙を前日までに出していない」という理由だけで受け付けない運用は避けましょう。誰が受け付け、何を確認し、後でどのように記録するかを決めておくと、急な連絡でも対応しやすくなります。

介護休暇は親戚同士で介護を分担しているときなど、今日は手続きに付き添うので数時間、買い物の補助で数時間というような使い方ができます。

受付時には、対象家族、取得する日や時間帯、その年度の取得済み日数・時間を確認します。勤怠システムに介護休暇の区分がない場合は、担当者が単に欠勤として登録してしまわないよう、給与担当者との連絡方法も整えてください。

給与の扱いと年次有給休暇を説明します

介護休暇を有給とするか無給とするかは、会社の規定によります。法律上の休暇であることと、その時間の賃金が必ず支払われることは別です。就業規則や賃金規程を確認し、本人が休んだ後に初めて無給と知ることがないよう説明しましょう。

無給とする場合も、控除する対象賃金や時間の計算は自社の規定に沿って確認します。休暇を取ったことへの罰として、休んだ時間を超える額を差し引くような処理はしないでください。

介護休暇は年次有給休暇とは別の制度です。「有給休暇が残っているから、先に全部使ってほしい」と、介護休暇の利用をその消化の後に限定することはできません。本人が年次有給休暇を希望する場合は、その申請として扱いを確認します。会社が本人の意思を確認せず、休暇の種類を変更しないようにしましょう。

また、介護休業給付金は介護休業についての給付です。短時間の介護休暇を取れば同じ給付が受けられると案内しないよう、会社が支払う給与と雇用保険の給付を分けて説明する必要があります。

制度の個別案内と仕事の調整を進めます

2025年4月1日以降、対象家族の介護に直面した旨の申出を受けた会社には、介護休業や介護両立支援制度等の個別周知と、利用意向の確認が義務付けられています。中小企業も対象です。休暇の可否を答えるだけでなく、利用できる制度、申出先、介護休業給付金について案内します。

面談や書面交付など、法令に沿った方法で行い、電子メール等を使う場合は本人の希望などの要件も確認します。案内した資料、実施日、本人の希望を記録しておくと、その後の対応を引き継ぎやすくなります。「忙しい時期なので利用しないでほしい」と取得を控えさせるような確認は認められません。

業務の調整では、休む時間に必要な対応を具体的に洗い出します。例えば、午前中に通院へ付き添う社員の電話当番を別の人へ替え、午後に本人が確認すべき連絡をまとめておく方法が考えられます。家族の詳しい病状まで共有せず、勤務予定と引継ぎに必要な情報を伝えましょう。

元気な高齢者と同居していても、転んだりして急に介護が必要になる場合があります。どなたも対象となる可能性がありますので、お互い様という気持ちをもって対応しましょう。

今回の申出への対応とあわせて、育児・介護休業規程、労使協定、勤怠の登録方法、給与計算の扱いを点検します。制度の対象か判断できない、規程が改正前のまま、本人の希望と勤務体制の調整が難しい場合は、回答を固める前に相談するとよいでしょう。

当事務所では、人事・労務全般の相談や就業規則の作成・変更を取り扱い、労務相談のみの契約にも対応しています。東京都豊島区で社員から介護の相談を受けた経営者の方は、現在の規程、勤務日数、希望する休み方を整理してご相談ください。介護休業や介護休暇についてのミニセミナー開催も可能です。個別の申出への対応と、今後も運用できる社内ルールを一緒に確認していきましょう。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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