親の介護で休みたいと言われたら?中小企業の介護休暇と初動の確認点

「社員から、親の通院に付き添うため休みたいと言われた」「入社したばかりのパートにも介護休暇は必要だろうか」 少人数の会社では、休暇の制度と仕事の調整を同時に考えなければならない場面があります。
まずは、必要な休みの日時と事情を確認し、介護休暇の対象になるかを整理します。介護を理由とする相談を、年次有給休暇や退職の話だけで終わらせないことが大切です。この記事では、中小企業が相談を受けたときの初動と、制度を運用する際の確認点を解説します。
介護休暇と介護休業を分けて確認します
介護休暇は、要介護状態にある対象家族の介護や世話のために、短い時間や日単位で取得できる休暇です。通院への付き添い、介護サービスを利用するための手続きなどにも使えます。本人が一日中、直接介護する場合だけの制度ではありません。
一方、介護休業は、対象家族一人につき通算93日まで、3回を上限として分割して取得できる制度です。まとまった期間を使って介護サービスの手配や家族との役割分担など、仕事と介護を続けるための体制を整える場面でも活用されます。介護休暇とは取得の条件や手続きが異なるため、名称を取り違えないようにしましょう。
最初の相談では、「来週の通院で数時間休みたい」のか、「退院後の生活を整えるため、しばらく休みたい」のかを確認します。本人も必要な期間を見通せないことがあるため、その場で今後の働き方をすべて決める必要はありません。まず直近の希望を整理し、次に状況を確認する日を決めると話を進めやすくなります。
対象となる家族と状態を確認します
対象家族は、配偶者、父母、子、祖父母、兄弟姉妹、孫、配偶者の父母です。配偶者には事実婚も含まれます。離れて暮らす親であることだけを理由に、対象外と判断しないようにしてください。
法律上の要介護状態とは、負傷、病気、身体上または精神上の障害によって、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態をいいます。介護保険の要介護認定と、育児・介護休業法における判断は同じものではありません。「認定がまだないので使えない」と即答せず、厚生労働省の判断基準に照らして確認します。
また、「2週間以上」という条件は、介護休暇を連続して2週間取らなければならないという意味ではありません。対象家族の状態に関する条件と、本人が希望する休暇の長さを分けて考えましょう。
確認する情報は、家族との関係、介護や世話の必要性、希望する日時など、制度の判断に必要な範囲にとどめます。家庭の事情や家族の病歴を、上司や同僚へ必要以上に広めない配慮も必要です。
入社直後やパートでも対象になる場合があります
介護休暇は、正社員だけの制度ではありません。日々雇用される人を除き、パートや有期契約の社員も対象になります。ただし、週の所定労働日数が2日以下の人については、適法な労使協定を結んでいる場合に対象から除外できます。短時間勤務という呼び方だけで判断せず、契約上の勤務日数と協定を確認してください。
2025年4月1日からは、継続雇用6か月未満の人を労使協定で介護休暇の対象外とする仕組みが廃止されました。古い育児・介護休業規程に「入社6か月未満は対象外」と残っていても、そのまま適用することはできません。
例えば、週4日勤務で入社2か月のパートから、要介護状態にある母親の通院に付き添うための申出があったとします。会社は「まだ半年働いていない」という理由だけで介護休暇を断ることはできません。ほかの対象要件や残日数を確認して対応します。
介護休業では別の対象要件や労使協定による除外があるため、介護休暇の確認結果を、そのまま介護休業にも当てはめないことが大切です。
日数と時間を確認し、急な申出にも対応します
介護休暇の日数は、対象家族が一人なら1年度に5日まで、二人以上なら10日までです。二人以上の場合に「一人につき5日ずつ」と個別に割り当てる制度ではありません。会社が年度を別に定めていなければ、4月1日から翌年3月31日までを一年度として管理します。
取得は1日単位または時間単位が基本です。ただし、時間単位での取得が困難と認められる業務について、労使協定で時間単位の取得対象から除外している場合があります。この場合でも、1日単位の取得まで一律に除外されるわけではありません。
申出は口頭でも可能です。急な付き添いが必要になったときに、「所定の用紙を前日までに出していない」という理由だけで受け付けない運用は避けましょう。誰が受け付け、何を確認し、後でどのように記録するかを決めておくと、急な連絡でも対応しやすくなります。
介護休暇は親戚同士で介護を分担しているときなど、今日は手続きに付き添うので数時間、買い物の補助で数時間というような使い方ができます。
受付時には、対象家族、取得する日や時間帯、その年度の取得済み日数・時間を確認します。勤怠システムに介護休暇の区分がない場合は、担当者が単に欠勤として登録してしまわないよう、給与担当者との連絡方法も整えてください。
給与の扱いと年次有給休暇を説明します
介護休暇を有給とするか無給とするかは、会社の規定によります。法律上の休暇であることと、その時間の賃金が必ず支払われることは別です。就業規則や賃金規程を確認し、本人が休んだ後に初めて無給と知ることがないよう説明しましょう。
無給とする場合も、控除する対象賃金や時間の計算は自社の規定に沿って確認します。休暇を取ったことへの罰として、休んだ時間を超える額を差し引くような処理はしないでください。
介護休暇は年次有給休暇とは別の制度です。「有給休暇が残っているから、先に全部使ってほしい」と、介護休暇の利用をその消化の後に限定することはできません。本人が年次有給休暇を希望する場合は、その申請として扱いを確認します。会社が本人の意思を確認せず、休暇の種類を変更しないようにしましょう。
また、介護休業給付金は介護休業についての給付です。短時間の介護休暇を取れば同じ給付が受けられると案内しないよう、会社が支払う給与と雇用保険の給付を分けて説明する必要があります。
制度の個別案内と仕事の調整を進めます
2025年4月1日以降、対象家族の介護に直面した旨の申出を受けた会社には、介護休業や介護両立支援制度等の個別周知と、利用意向の確認が義務付けられています。中小企業も対象です。休暇の可否を答えるだけでなく、利用できる制度、申出先、介護休業給付金について案内します。
面談や書面交付など、法令に沿った方法で行い、電子メール等を使う場合は本人の希望などの要件も確認します。案内した資料、実施日、本人の希望を記録しておくと、その後の対応を引き継ぎやすくなります。「忙しい時期なので利用しないでほしい」と取得を控えさせるような確認は認められません。
業務の調整では、休む時間に必要な対応を具体的に洗い出します。例えば、午前中に通院へ付き添う社員の電話当番を別の人へ替え、午後に本人が確認すべき連絡をまとめておく方法が考えられます。家族の詳しい病状まで共有せず、勤務予定と引継ぎに必要な情報を伝えましょう。
元気な高齢者と同居していても、転んだりして急に介護が必要になる場合があります。どなたも対象となる可能性がありますので、お互い様という気持ちをもって対応しましょう。
今回の申出への対応とあわせて、育児・介護休業規程、労使協定、勤怠の登録方法、給与計算の扱いを点検します。制度の対象か判断できない、規程が改正前のまま、本人の希望と勤務体制の調整が難しい場合は、回答を固める前に相談するとよいでしょう。
当事務所では、人事・労務全般の相談や就業規則の作成・変更を取り扱い、労務相談のみの契約にも対応しています。東京都豊島区で社員から介護の相談を受けた経営者の方は、現在の規程、勤務日数、希望する休み方を整理してご相談ください。介護休業や介護休暇についてのミニセミナー開催も可能です。個別の申出への対応と、今後も運用できる社内ルールを一緒に確認していきましょう。
本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。
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退職証明書を求められたときの中小企業の対応と記載事項
「退職した社員から、転職先へ出す証明書を急いでほしいと言われた」「離職票は渡したのに、別の書類も必要なのだろうか」 退職者から連絡を受け、何を書いて、いつまでに渡すべきか迷うことがあります。 退職証明書は、本人から請求があった場合に、会社が遅滞なく交付する必要のある書類です。大切なのは、本人が求める項目を確かめ、会社の記録に基づいて作成することです。この記事では、中小企業が請求を受けてから交付するまでの確認事項を解説します。 退職証明書と離職票の違いを確認します 労働基準法第22条は、退職の場合に、労働者が一定の事項について証明書を請求したときは、使用者が遅滞なく交付しなければならないと定めています。自己都合退職であっても対象です。正社員に限らず、パートや有期契約の従業員からの請求にも対応が必要です。 離職票は、雇用保険の基本手当などの手続きに用いられる書類です。一方、退職証明書は、会社が使用期間や退職の事由などを証明するものです。離職票を渡していても、それだけで退職証明書の交付義務を果たしたことにはなりません。 また、健康保険の資格喪失証明書とも役割が異なります。「退職の書類がほしい」という連絡だけでは、本人が必要とするものが分からないこともあります。書類の名称や、証明してほしい内容を確認し、別の書類を作ってしまわないようにしましょう。 提出先の指定様式があれば、確認のために送ってもらうと実務を進めやすくなります。ただし、用途は本人に委ねられるものであり、提出先や使い道を説明しないことだけを理由に、法定の証明書の交付を断る扱いは避けてください。 最初に本人が請求する項目を確かめます 法律が定める証明事項は、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金、退職の事由です。退職の事由が解雇の場合には、その理由も含まれます。会社は、このうち本人が請求した事項を証明し、請求していない事項は記載してはいけません。 例えば、本人が「在籍していた期間と担当業務だけを証明してほしい」と求めた場合、会社のひな形に退職理由の欄があっても、当然に自己都合退職などと書き加えるものではありません。ひな形の全欄を埋めることより、請求された範囲に合わせることを優先します。 受付時には、本人の氏名、請求日、希望する証明事項、希望する受取方法、送付先を確認します。電話で受けた場合も、担当者が内容を記録し、項目を読み合わせるなどして認識をそろえるとよいでしょう。社内様式の提出だけにこだわり、受付や交付が長引かないようにします。 転職先から渡された様式に、勤務評価や病歴などの欄がある場合も、求められるままに記載してよいとは限りません。法定の証明事項と追加の情報を分け、記載の必要性や本人の意思、個人情報の取扱いを確認してください。会社の主観的な人物評価を付け足すことは避けましょう。 雇用契約書や人事記録と照合して作成します 請求事項が分かったら、雇用契約書、労働条件通知書、従業員名簿、人事異動の記録、賃金台帳、退職届などを確認します。記憶だけで作成せず、どの資料で確認したかを残しておくと、後日の問い合わせにも対応しやすくなります。 使用期間を証明するときは、入社日と退職日を確認します。最終出勤日の後に年次有給休暇を取得して退職した場合、最終出勤日と退職日は一致しません。休職していた期間も、出勤していなかったという理由だけで雇用関係がなかった期間として扱わないようにします。 業務の種類や地位については、担当していた仕事と役職を記録で確かめます。途中で部署や仕事が変わっている場合、本人がどの期間の何を証明してほしいのかを確認します。退職時の役職だけで足りるのか、在職中の経歴が必要なのかによって、記載の仕方を整理します。 賃金の証明を求められた場合も、月額の基本給なのか、手当を含む支給額なのか、どの時点や期間の金額なのかを明確にします。金額だけを書くと、会社と提出先で意味が食い違うおそれがあります。請求の範囲を確かめたうえで、対象期間と内容が分かる形にしましょう。 指定様式がない場合は、会社で書式を用意できます。証明対象の氏名、請求された事項、証明日、会社名などを整理し、発行前に担当者や経営者がきちんと確認し、日付や氏名の誤り等がないようにします。 貸与品の返却や給与の精算と切り離して交付します 退職者がパソコンを返していない、引継ぎに不満が残っているといった事情があっても、退職証明書を交渉の材料にしないことが大切です。「返却を確認するまで発行しない」「精算に同意したら渡す」といった条件は付けず、証明書の交付と未解決の問題への対応を分けます。 法律上の交付時期は「遅滞なく」です。一律に何日以内という数字が定められているわけではありませんが、社内の決裁日や給与締め日まで当然に待たせてよいという意味ではありません。請求を受けたら担当者と確認事項を決め、必要な作業を速やかに進めます。 資料の確認に時間がかかる場合は、何を確認しているか、いつ連絡できるかを本人へ伝えます。交付見込みを知らせたことだけで義務が済むわけではないため、担当者が不在でも代わりの人が処理できるようにしておくとよいでしょう。 郵送する場合は、過去の住所をそのまま使わず、現在の送付先を確かめます。本人以外から請求や受取の希望があったときは、本人の意思や代理権を確認し、不要な情報が第三者に渡らないようにします。交付した証明書の控えと、交付日・方法も残してください。 退職理由の認識が違うときは事実関係を整理します 注意が必要なのは、会社は自己都合退職と考えているものの、本人は退職勧奨を受けたと説明している場合などです。退職届の表題だけで結論を出さず、退職に至る面談や会社からの働きかけ、合意の内容を確認します。 本人の希望する表現を、事実確認なしにそのまま証明することはできません。一方、争いがあることだけを理由に、証明書の交付を止め続けることも適切ではありません。請求内容と会社が把握する事実を整理し、見解が食い違う点については早めに専門家へ相談しましょう。 解雇理由の記載を求められた場合は、単に「就業規則による」と書くだけでは、理由が伝わらないことがあります。該当する規定と具体的な事実を確認する必要があります。解雇予告後から退職日までの間にも、解雇理由の証明を求められた場合の別の規定があるため、退職後の証明と混同しないようにします。 証明書は、退職者に対する不満を書き込むための書類ではありません。再就職を妨げる目的で、第三者と示し合わせた記号を入れることなども禁止されています。事実を正確に、請求された範囲で証明するという目的に立ち返って確認してください。 相談前には請求内容と確認資料をそろえます 例えば、従業員15人の会社で、退職者から「使用期間と業務の種類だけを証明してほしい」と連絡があったとします。会社には離職票を交付した記録があり、貸与した鍵はまだ返っていません。 この場合、まず請求された二つの項目を確認し、入社日・退職日と担当業務を人事記録で照合します。退職理由などは加えず、鍵の返却依頼は別に進めて、証明書を遅滞なく交付します。退職手続き全体が終わるのを待たずに処理できるよう、社内で役割を決めておきましょう。 相談するときは、本人から届いたメールや指定様式、会社の証明書ひな形、雇用契約書、退職届などを用意します。どの項目について判断に迷っているのかを示すと、記載内容や社内の現在の運用を具体的にどのように変更したらよいか等を検討できます。資料が不足している場合も、確認できた事項と不明な事項を分けておくことが役立ちます。 東京都豊島区の城田社会保険労務士事務所では、人事・労務全般の相談や就業規則の作成・変更を取り扱い、労務相談のみの契約にも対応しています。退職者への書類の出し方や、担当者ごとに異なる退職手続きの整理に迷う経営者の方は、現在の請求内容と会社の対応状況をご相談ください。
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社員からパワハラの相談を受けたときの中小企業の初動と事実確認の進め方
「社員から、上司の言動がつらいと相談された」「相手は長年会社を支えてきた管理職なので、どう話を聞けばよいか分からない」 人事担当者がいない中小企業では、経営者自身が最初の相談を受けることがあります。 まず必要なのは、その場でパワハラかどうかを決めることよりも、相談者の安全と健康に配慮し、事実を確かめる手順を整えることです。この記事では、社内の上司や同僚によるパワーハラスメントの相談を想定し、会社が最初に行う対応を解説します。 相談を受けた段階で結論を出さずに話を聴きます 職場のパワーハラスメントは、優越的な関係を背景とし、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動によって、就業環境が害されるという三つの要素を満たすものです。適正な業務指示や指導は該当しませんが、「仕事でミスをした社員への注意だから問題ない」と一律に判断することもできません。 また、優越的な関係は役職だけでは決まりません。経験や専門知識を持つ同僚に逆らいにくい場合なども含まれます。「上司からではないのでパワハラではない」と受付を断らないようにしましょう。 パワハラ防止措置は中小企業にも義務付けられています。相談窓口では、該当するか微妙な場合や、発生のおそれがある場合も広く対応する必要があります。相談者に証拠をすべてそろえさせてから受け付ける、といった運用は避けてください。 面談は、周囲に話が聞こえない場所で行います。まずは勇気を出して相談してくれた心情を受け止め、これまでの大変だったことに寄り添う気持ちで対応しましょう。 「あの上司に限ってそんなことはない」「あなたにも原因があるのでは」と遮らず、まず本人の説明を聴きます。一方で、相談を受けた直後に相手を加害者と決めつけ、処分を約束することも適切ではありません。 最初に心身の状態と当面の勤務を確認します 話を聴くときは、現在も同じ言動が続いているか、出勤や業務に支障があるか、相手と接することへの不安があるかを確認します。暴力の危険や強い体調不良がある場合は、調査の結論を待たず、安全の確保や医療機関への相談などを優先します。 必要に応じて、指示を受ける担当者や座席、勤務場所などを一時的に調整する方法が考えられます。ただし、相談者だけを当然に異動させたり、本人が望まない休業や賃金の減少を伴う扱いを即決してはいけません。本人の意向と実施できる方法を確認しましょう。 当面の調整は、懲戒処分とは別に整理します。誰の勤務をどう変えるか、期間はいつまでか、賃金への影響はないかを検討し、必要な範囲で説明します。自宅待機や休業を命じる場合も、名称だけで無給にできるとは限りません。 相談を理由とする解雇などの不利益な取扱いは禁止されています。調査への協力者も保護の対象です。相談後にシフトを減らす、評価を下げるなどの対応が生じないよう、経営者から関係する管理職へ必要な注意を伝えます。 出来事と本人の希望を分けて記録します 相談内容は、いつ、どこで、誰から、どのような言動があったかを具体的に確認します。「毎日怒鳴られる」という説明であれば、思い出せる日の出来事や発言、頻度、その場にいた人を、本人の負担に配慮しながら聴き取ります。 メールや業務用チャット、本人が作成したメモなどがある場合は、内容を確認し、適切な方法で保存します。資料の一部分だけで判断せず、前後のやり取りや業務指示の内容も確認してください。録音がないことだけを理由に、事実確認を打ち切ることは避けましょう。 記録では、本人が述べたこと、資料で確認できたこと、担当者の受け止めを区別します。面談の終わりに内容を読み合わせるなどして、認識のずれを減らします。記録する目的や保管方法も説明しておくとよいでしょう。 あわせて、本人がどのような対応を望んでいるかを確認します。「相手にはまだ話さないでほしい」「同じ職場で働き続けたい」などの希望は、事実関係とは分けて残します。希望する処分をそのまま約束するのではなく、会社として確認する事項と、次に連絡する時期を伝えます。 関係者への確認は共有範囲を説明して進めます 相談者の了解を得たうえで、相談の対象となった相手や、必要な第三者から話を聴きます。誰に、何のために、どの内容を伝えるかを相談者に説明し、情報が広がることへの不安を確認してください。「誰にも一切知られない」と約束してから調査を始めると、説明が食い違うおそれがあります。 本人が調査を望まない場合も、その理由を聴き、安全への懸念と今後の進め方を相談します。放置するか、無断で調査するかの二択で考えず、匿名性への配慮や確認方法を検討します。重大な危険などがあり対応に迷う場合は、早い段階で専門家に相談しましょう。 相手への聴取りでは、具体的な言動とその経緯について説明する機会を設けます。相談者と相手を最初から同席させて話し合いを求めると、十分に話せなかったり、圧力がかかったりするおそれがあります。原則として個別に確認する進め方が考えられます。 双方の説明が異なるときは、一致している点と食い違う点を整理し、メールや同席者の説明などと照合します。役職の高い人の説明を優先したり、多数決で決めたりしないことが大切です。第三者への確認も必要な範囲に絞り、相談者の詮索や報復をしないことを伝えます。 少人数の会社の対応 例えば、従業員12人の会社で、営業担当者が「課長から皆の前で能力を否定され、出勤するのがつらい」と社長に相談したとします。社長は、課長が営業成績を上げてきたことを知っており、「厳しい指導ではないか」と感じています。 まず社長は、その印象をいったん置き、実際の発言や日時、仕事への影響を聴きます。本人の希望を確認し、当面の業務連絡を別の責任者が受ける方法などを検討します。そのうえで、本人に説明して了解を得ながら、課長への聴取りと必要な記録の確認を進めます。 課長が「売上目標を指導しただけ」と説明しても、それだけでは結論を出せません。目標や指導の必要性に加え、どのような言葉を、どの場所で、どれほど繰り返したかを確認します。業務上の注意が必要だったことと、人格を否定する言動が許されるかどうかは、別に検討します。 社長自身が相談対象だったり、相手と近い関係にあったりする場合には、社内だけで公正な確認を進められるかも課題になります。外部の専門家の関与が必要か、誰がどこまで担当するかを早めに整理してください。 対応後も状況を確認し必要な見直しを行います 事実が確認できた場合は、被害者への配慮と、行為者への適切な措置を検討します。懲戒処分を行う場合は、就業規則の根拠、事実の裏付け、本人の説明、処分の相当性や手続きを確認します。「パワハラと言われたから即解雇」といった判断は避けましょう。 事実が確認できなかった場合も、再発防止に向けた方針の周知などが必要です。「確認できない」ことを「相談が虚偽だった」と直ちに扱うことはできません。指導方法や業務分担に改善点があれば、具体的に見直します。対応後は、言動が続いていないか、孤立や報復が起きていないかを確認します。 相談時には、面談記録、関係するメール、就業規則、これまで会社が行った対応を整理します。外部へ渡す資料も、相談目的に必要な範囲と安全な受渡し方法を確認してください。記録が不足していても、分かっていることと未確認のことを分ければ、次の確認事項を相談できます。 東京都豊島区の城田社会保険労務士事務所では、人事・労務全般の相談や就業規則の作成・変更を取り扱い、労務相談のみの契約にも対応しています。相談を受けたものの、本人への説明や社内の対応手順に迷っている経営者の方は、現在の状況をお聞かせください。 ハラスメントとは何か?どうすればいいの?といった疑問におこたえするために、ミニセミナー開催も可能です。会社全体でハラスメントを認知するためにも、ぜひご相談ください。
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契約社員から無期転換を申し込まれたら 中小企業の確認事項と対応の進め方
「長く働いている契約社員から、無期雇用に変えてほしいと言われた」「正社員の採用枠がなくても、応じなければならないのだろうか」 有期契約を繰り返し更新してきた会社では、このような相談が生じます。 無期転換は、会社が採用試験などで正社員を選ぶ制度とは仕組みが異なります。東京都豊島区の中小企業経営者に向けて、申込みを受けたときの確認手順と、転換後の働き方を整理するポイントを解説します。 無期転換は会社の規模や社員の呼び名で決まりません 無期転換ルールは、同じ使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合に、本人の申込みによって、期間の定めのない労働契約へ転換する制度です。中小企業にも適用され、契約社員だけでなく、契約期間を定めて働くパートやアルバイトも対象になります。 まず確認したいのは、本人の呼び名ではなく、契約期間に定めがあるか、どの会社と契約しているか、契約を何回更新してきたかです。同じ会社の中で店舗や部署が変わっただけで、当然に通算期間がゼロに戻るとは考えないようにしましょう。 また、無期転換は自動的な正社員登用と同じではありません。主に変わるのは契約期間の定めです。会社の正社員登用制度が別にあっても、その選考に合格していないという理由だけで、法律上の無期転換の申込みを拒むことはできません。 過去の契約書を並べて申込権の発生時期を確認します 本人から申込みがあったら、初回から現在までの雇用契約書や労働条件通知書を集め、各契約の開始日と終了日、契約の空白期間を整理します。通算の対象は、2013年4月1日以降に開始した有期労働契約です。 「入社から丸5年が過ぎるまで申込みはできない」と覚えると、判定を誤る場合があります。例えば、3年契約を1回更新して通算6年となる場合は、原則として2回目の契約期間の初日から申込権が生じます。契約期間を通算して判定するため、実際に6年間勤務し終えることを待つ仕組みではありません。 1年契約を途切れなく更新する通常の例では、6年目の契約期間中に申し込めます。「5回目の契約」と「5回更新した後の契約」を混同しないよう、契約ごとに番号を付けると確認しやすくなります。 途中に契約していない期間がある場合は、一定の空白期間によって、その前の契約期間を通算しない取扱いがあります。直前の通算契約期間によって必要な空白期間が変わるため、一律に「半年空けばよい」と判断せず、契約履歴を基に確認しましょう。 定年後の継続雇用などには、認定を受けた事業主に関する特例もあります。ただし、年齢が高い、再雇用という名称であるといった事情だけで、当然に対象外になるわけではありません。特例を使っている会社は、認定内容と本人への適用を別途確認してください。 要件を満たす申込みを会社の承認待ちにしないようにします 無期転換申込権がある本人が、現在の有期契約が満了する日までに申し込むと、会社は承諾したものとみなされます。会社が承認通知を出すまで効力が生じないという制度ではありません。 実際に無期労働契約で働き始めるのは、申込み時の有期契約が満了する日の翌日です。仮に、2026年4月1日から2027年3月31日までの1年契約の初日に申込権が発生し、2026年10月に本人が申し込んだ場合、無期での勤務開始日は原則として2027年4月1日になります。 申込みを受けた担当者は、受領日、本人の意思、現在の契約満了日、無期での勤務開始日を記録します。口頭の申込みでも成立し得るため、「会社指定の用紙を出していないから申込みではない」と即断しないことが大切です。行き違いを防ぐため、本人と内容を確認し、申込書や受領通知などで記録を残す運用にするとよいでしょう。 上司が受けた相談を人事担当者へ伝えず、契約満了が近づいてから経営者が知ると、必要な準備が遅れます。相談の段階でも、誰に報告するかを決めておきましょう。要件に疑問がある場合は、本人に断る前に契約履歴を調べ、判断に迷う事項を専門家に確認します。 転換後の賃金や勤務時間を具体的に確認します 無期転換後の労働条件は、契約期間を除き、原則として直前の有期契約と同じです。ただし、就業規則などに別段の定めがある部分は、その内容を確認する必要があります。 例えば、週3日・1日6時間で働いていたパートが無期転換したからといって、当然に週5日・1日8時間の勤務になるわけではありません。本人が希望する「無期雇用」と、勤務時間や職務も変更する「正社員登用」を分けて説明すると、認識の違いを整理できます。 確認するのは、賃金、勤務時間、休日、仕事内容、勤務地、適用する就業規則などです。定年の定めについても、どの規則が適用されるかを明確にします。有期契約社員向けの規則しかない会社は、無期転換後にもそのまま適用できる内容か、期間満了に関する条項が残っていないかを点検しましょう。 転換を機に手当を減らしたり、本人が望まない勤務日数の増加を当然の条件にしたりすることは避けてください。労働条件を変更する場合は、変更内容と根拠、本人との合意、就業規則との関係などを別に検討します。無期転換への対応と、会社が希望する条件変更を一つの手続きにまとめないことが大切です。 申込みを待たずに必要な明示と更新管理を行います 2024年4月以降、無期転換申込権が発生する有期契約の更新時には、無期転換を申し込めることと、無期転換後の労働条件を明示する必要があります。初めて権利が発生したときだけでなく、申込みをしないまま有期契約を更新した場合も、その後の更新の都度、明示が必要です。 本人から質問がないことを理由に、この案内を省かないようにしましょう。契約更新の管理表には、満了日だけでなく、通算契約期間、申込権の発生時期、明示の実施日を設けると、必要な対応を確認しやすくなります。 また、有期契約の締結・更新時には、更新上限の有無と、上限がある場合の内容も明示します。最初の契約の後に上限を新設・短縮する場合は、その理由をあらかじめ説明する必要があります。ただし、説明をすれば、どのような上限設定や雇止めでも認められるわけではありません。 「無期転換を避けたいので次回で契約を終える」という判断には慎重な検討が必要です。反復更新の経緯や、本人に更新を期待する合理的な理由があるかによっては、雇止めが認められない場合があります。契約書の満了日だけで判断せず、これまでの説明や運用も確認しましょう。 契約履歴と転換後の規程をそろえて相談しましょう 無期転換への対応は、申込書を受け取るだけでは終わりません。申込権の有無と転換日を確認し、本人に適用する条件を明らかにして、勤務管理や書類にも反映させます。契約履歴が整理され、条件にも食い違いがなければ、社内で手続きを進められる場合もあります。 一方、古い契約書が見つからない、契約の空白期間がある、正社員と同じ条件になるのか本人と認識が異なる、更新終了も検討しているといった場合は、早めに相談するとよいでしょう。過去と現在の契約書、就業規則、更新時の説明記録、本人からの申込み内容を用意すると、確認が進めやすくなります。 東京都豊島区の城田社会保険労務士事務所では、人事・労務全般の相談や就業規則の作成・変更を取り扱い、労務相談のみの契約にも対応しています。手続きを社内で行っている会社も、本人へ回答する前に、契約履歴と現在の規程を基に対応を整理することができます。無期転換の申込みを受けた経営者の方は、現在の契約満了日と困っている点を具体的に伝えてご相談ください。
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