士業コラム
契約社員から無期転換を申し込まれたら 中小企業の確認事項と対応の進め方

契約社員から無期転換を申し込まれたら 中小企業の確認事項と対応の進め方

「長く働いている契約社員から、無期雇用に変えてほしいと言われた」「正社員の採用枠がなくても、応じなければならないのだろうか」 有期契約を繰り返し更新してきた会社では、このような相談が生じます。

無期転換は、会社が採用試験などで正社員を選ぶ制度とは仕組みが異なります。東京都豊島区の中小企業経営者に向けて、申込みを受けたときの確認手順と、転換後の働き方を整理するポイントを解説します。

無期転換は会社の規模や社員の呼び名で決まりません

無期転換ルールは、同じ使用者との間で有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合に、本人の申込みによって、期間の定めのない労働契約へ転換する制度です。中小企業にも適用され、契約社員だけでなく、契約期間を定めて働くパートやアルバイトも対象になります。

まず確認したいのは、本人の呼び名ではなく、契約期間に定めがあるか、どの会社と契約しているか、契約を何回更新してきたかです。同じ会社の中で店舗や部署が変わっただけで、当然に通算期間がゼロに戻るとは考えないようにしましょう。

また、無期転換は自動的な正社員登用と同じではありません。主に変わるのは契約期間の定めです。会社の正社員登用制度が別にあっても、その選考に合格していないという理由だけで、法律上の無期転換の申込みを拒むことはできません。

過去の契約書を並べて申込権の発生時期を確認します

本人から申込みがあったら、初回から現在までの雇用契約書や労働条件通知書を集め、各契約の開始日と終了日、契約の空白期間を整理します。通算の対象は、2013年4月1日以降に開始した有期労働契約です。

「入社から丸5年が過ぎるまで申込みはできない」と覚えると、判定を誤る場合があります。例えば、3年契約を1回更新して通算6年となる場合は、原則として2回目の契約期間の初日から申込権が生じます。契約期間を通算して判定するため、実際に6年間勤務し終えることを待つ仕組みではありません。

1年契約を途切れなく更新する通常の例では、6年目の契約期間中に申し込めます。「5回目の契約」と「5回更新した後の契約」を混同しないよう、契約ごとに番号を付けると確認しやすくなります。

途中に契約していない期間がある場合は、一定の空白期間によって、その前の契約期間を通算しない取扱いがあります。直前の通算契約期間によって必要な空白期間が変わるため、一律に「半年空けばよい」と判断せず、契約履歴を基に確認しましょう。

定年後の継続雇用などには、認定を受けた事業主に関する特例もあります。ただし、年齢が高い、再雇用という名称であるといった事情だけで、当然に対象外になるわけではありません。特例を使っている会社は、認定内容と本人への適用を別途確認してください。

要件を満たす申込みを会社の承認待ちにしないようにします

無期転換申込権がある本人が、現在の有期契約が満了する日までに申し込むと、会社は承諾したものとみなされます。会社が承認通知を出すまで効力が生じないという制度ではありません。

実際に無期労働契約で働き始めるのは、申込み時の有期契約が満了する日の翌日です。仮に、2026年4月1日から2027年3月31日までの1年契約の初日に申込権が発生し、2026年10月に本人が申し込んだ場合、無期での勤務開始日は原則として2027年4月1日になります。

申込みを受けた担当者は、受領日、本人の意思、現在の契約満了日、無期での勤務開始日を記録します。口頭の申込みでも成立し得るため、「会社指定の用紙を出していないから申込みではない」と即断しないことが大切です。行き違いを防ぐため、本人と内容を確認し、申込書や受領通知などで記録を残す運用にするとよいでしょう。

上司が受けた相談を人事担当者へ伝えず、契約満了が近づいてから経営者が知ると、必要な準備が遅れます。相談の段階でも、誰に報告するかを決めておきましょう。要件に疑問がある場合は、本人に断る前に契約履歴を調べ、判断に迷う事項を専門家に確認します。

転換後の賃金や勤務時間を具体的に確認します

無期転換後の労働条件は、契約期間を除き、原則として直前の有期契約と同じです。ただし、就業規則などに別段の定めがある部分は、その内容を確認する必要があります。

例えば、週3日・1日6時間で働いていたパートが無期転換したからといって、当然に週5日・1日8時間の勤務になるわけではありません。本人が希望する「無期雇用」と、勤務時間や職務も変更する「正社員登用」を分けて説明すると、認識の違いを整理できます。

確認するのは、賃金、勤務時間、休日、仕事内容、勤務地、適用する就業規則などです。定年の定めについても、どの規則が適用されるかを明確にします。有期契約社員向けの規則しかない会社は、無期転換後にもそのまま適用できる内容か、期間満了に関する条項が残っていないかを点検しましょう。

転換を機に手当を減らしたり、本人が望まない勤務日数の増加を当然の条件にしたりすることは避けてください。労働条件を変更する場合は、変更内容と根拠、本人との合意、就業規則との関係などを別に検討します。無期転換への対応と、会社が希望する条件変更を一つの手続きにまとめないことが大切です。

申込みを待たずに必要な明示と更新管理を行います

2024年4月以降、無期転換申込権が発生する有期契約の更新時には、無期転換を申し込めることと、無期転換後の労働条件を明示する必要があります。初めて権利が発生したときだけでなく、申込みをしないまま有期契約を更新した場合も、その後の更新の都度、明示が必要です。

本人から質問がないことを理由に、この案内を省かないようにしましょう。契約更新の管理表には、満了日だけでなく、通算契約期間、申込権の発生時期、明示の実施日を設けると、必要な対応を確認しやすくなります。

また、有期契約の締結・更新時には、更新上限の有無と、上限がある場合の内容も明示します。最初の契約の後に上限を新設・短縮する場合は、その理由をあらかじめ説明する必要があります。ただし、説明をすれば、どのような上限設定や雇止めでも認められるわけではありません。

「無期転換を避けたいので次回で契約を終える」という判断には慎重な検討が必要です。反復更新の経緯や、本人に更新を期待する合理的な理由があるかによっては、雇止めが認められない場合があります。契約書の満了日だけで判断せず、これまでの説明や運用も確認しましょう。

契約履歴と転換後の規程をそろえて相談しましょう

無期転換への対応は、申込書を受け取るだけでは終わりません。申込権の有無と転換日を確認し、本人に適用する条件を明らかにして、勤務管理や書類にも反映させます。契約履歴が整理され、条件にも食い違いがなければ、社内で手続きを進められる場合もあります。

一方、古い契約書が見つからない、契約の空白期間がある、正社員と同じ条件になるのか本人と認識が異なる、更新終了も検討しているといった場合は、早めに相談するとよいでしょう。過去と現在の契約書、就業規則、更新時の説明記録、本人からの申込み内容を用意すると、確認が進めやすくなります。

東京都豊島区の城田社会保険労務士事務所では、人事・労務全般の相談や就業規則の作成・変更を取り扱い、労務相談のみの契約にも対応しています。手続きを社内で行っている会社も、本人へ回答する前に、契約履歴と現在の規程を基に対応を整理することができます。無期転換の申込みを受けた経営者の方は、現在の契約満了日と困っている点を具体的に伝えてご相談ください。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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