士業コラム
社員からパワハラの相談を受けたときの中小企業の初動と事実確認の進め方

社員からパワハラの相談を受けたときの中小企業の初動と事実確認の進め方

「社員から、上司の言動がつらいと相談された」「相手は長年会社を支えてきた管理職なので、どう話を聞けばよいか分からない」 人事担当者がいない中小企業では、経営者自身が最初の相談を受けることがあります。

まず必要なのは、その場でパワハラかどうかを決めることよりも、相談者の安全と健康に配慮し、事実を確かめる手順を整えることです。この記事では、社内の上司や同僚によるパワーハラスメントの相談を想定し、会社が最初に行う対応を解説します。

相談を受けた段階で結論を出さずに話を聴きます

職場のパワーハラスメントは、優越的な関係を背景とし、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動によって、就業環境が害されるという三つの要素を満たすものです。適正な業務指示や指導は該当しませんが、「仕事でミスをした社員への注意だから問題ない」と一律に判断することもできません。

また、優越的な関係は役職だけでは決まりません。経験や専門知識を持つ同僚に逆らいにくい場合なども含まれます。「上司からではないのでパワハラではない」と受付を断らないようにしましょう。

パワハラ防止措置は中小企業にも義務付けられています。相談窓口では、該当するか微妙な場合や、発生のおそれがある場合も広く対応する必要があります。相談者に証拠をすべてそろえさせてから受け付ける、といった運用は避けてください。

面談は、周囲に話が聞こえない場所で行います。まずは勇気を出して相談してくれた心情を受け止め、これまでの大変だったことに寄り添う気持ちで対応しましょう。

「あの上司に限ってそんなことはない」「あなたにも原因があるのでは」と遮らず、まず本人の説明を聴きます。一方で、相談を受けた直後に相手を加害者と決めつけ、処分を約束することも適切ではありません。

最初に心身の状態と当面の勤務を確認します

話を聴くときは、現在も同じ言動が続いているか、出勤や業務に支障があるか、相手と接することへの不安があるかを確認します。暴力の危険や強い体調不良がある場合は、調査の結論を待たず、安全の確保や医療機関への相談などを優先します。

必要に応じて、指示を受ける担当者や座席、勤務場所などを一時的に調整する方法が考えられます。ただし、相談者だけを当然に異動させたり、本人が望まない休業や賃金の減少を伴う扱いを即決してはいけません。本人の意向と実施できる方法を確認しましょう。

当面の調整は、懲戒処分とは別に整理します。誰の勤務をどう変えるか、期間はいつまでか、賃金への影響はないかを検討し、必要な範囲で説明します。自宅待機や休業を命じる場合も、名称だけで無給にできるとは限りません。

相談を理由とする解雇などの不利益な取扱いは禁止されています。調査への協力者も保護の対象です。相談後にシフトを減らす、評価を下げるなどの対応が生じないよう、経営者から関係する管理職へ必要な注意を伝えます。

出来事と本人の希望を分けて記録します

相談内容は、いつ、どこで、誰から、どのような言動があったかを具体的に確認します。「毎日怒鳴られる」という説明であれば、思い出せる日の出来事や発言、頻度、その場にいた人を、本人の負担に配慮しながら聴き取ります。

メールや業務用チャット、本人が作成したメモなどがある場合は、内容を確認し、適切な方法で保存します。資料の一部分だけで判断せず、前後のやり取りや業務指示の内容も確認してください。録音がないことだけを理由に、事実確認を打ち切ることは避けましょう。

記録では、本人が述べたこと、資料で確認できたこと、担当者の受け止めを区別します。面談の終わりに内容を読み合わせるなどして、認識のずれを減らします。記録する目的や保管方法も説明しておくとよいでしょう。

あわせて、本人がどのような対応を望んでいるかを確認します。「相手にはまだ話さないでほしい」「同じ職場で働き続けたい」などの希望は、事実関係とは分けて残します。希望する処分をそのまま約束するのではなく、会社として確認する事項と、次に連絡する時期を伝えます。

関係者への確認は共有範囲を説明して進めます

相談者の了解を得たうえで、相談の対象となった相手や、必要な第三者から話を聴きます。誰に、何のために、どの内容を伝えるかを相談者に説明し、情報が広がることへの不安を確認してください。「誰にも一切知られない」と約束してから調査を始めると、説明が食い違うおそれがあります。

本人が調査を望まない場合も、その理由を聴き、安全への懸念と今後の進め方を相談します。放置するか、無断で調査するかの二択で考えず、匿名性への配慮や確認方法を検討します。重大な危険などがあり対応に迷う場合は、早い段階で専門家に相談しましょう。

相手への聴取りでは、具体的な言動とその経緯について説明する機会を設けます。相談者と相手を最初から同席させて話し合いを求めると、十分に話せなかったり、圧力がかかったりするおそれがあります。原則として個別に確認する進め方が考えられます。

双方の説明が異なるときは、一致している点と食い違う点を整理し、メールや同席者の説明などと照合します。役職の高い人の説明を優先したり、多数決で決めたりしないことが大切です。第三者への確認も必要な範囲に絞り、相談者の詮索や報復をしないことを伝えます。

少人数の会社の対応

例えば、従業員12人の会社で、営業担当者が「課長から皆の前で能力を否定され、出勤するのがつらい」と社長に相談したとします。社長は、課長が営業成績を上げてきたことを知っており、「厳しい指導ではないか」と感じています。

まず社長は、その印象をいったん置き、実際の発言や日時、仕事への影響を聴きます。本人の希望を確認し、当面の業務連絡を別の責任者が受ける方法などを検討します。そのうえで、本人に説明して了解を得ながら、課長への聴取りと必要な記録の確認を進めます。

課長が「売上目標を指導しただけ」と説明しても、それだけでは結論を出せません。目標や指導の必要性に加え、どのような言葉を、どの場所で、どれほど繰り返したかを確認します。業務上の注意が必要だったことと、人格を否定する言動が許されるかどうかは、別に検討します。

社長自身が相談対象だったり、相手と近い関係にあったりする場合には、社内だけで公正な確認を進められるかも課題になります。外部の専門家の関与が必要か、誰がどこまで担当するかを早めに整理してください。

対応後も状況を確認し必要な見直しを行います

事実が確認できた場合は、被害者への配慮と、行為者への適切な措置を検討します。懲戒処分を行う場合は、就業規則の根拠、事実の裏付け、本人の説明、処分の相当性や手続きを確認します。「パワハラと言われたから即解雇」といった判断は避けましょう。

事実が確認できなかった場合も、再発防止に向けた方針の周知などが必要です。「確認できない」ことを「相談が虚偽だった」と直ちに扱うことはできません。指導方法や業務分担に改善点があれば、具体的に見直します。対応後は、言動が続いていないか、孤立や報復が起きていないかを確認します。

相談時には、面談記録、関係するメール、就業規則、これまで会社が行った対応を整理します。外部へ渡す資料も、相談目的に必要な範囲と安全な受渡し方法を確認してください。記録が不足していても、分かっていることと未確認のことを分ければ、次の確認事項を相談できます。

東京都豊島区の城田社会保険労務士事務所では、人事・労務全般の相談や就業規則の作成・変更を取り扱い、労務相談のみの契約にも対応しています。相談を受けたものの、本人への説明や社内の対応手順に迷っている経営者の方は、現在の状況をお聞かせください。

ハラスメントとは何か?どうすればいいの?といった疑問におこたえするために、ミニセミナー開催も可能です。会社全体でハラスメントを認知するためにも、ぜひご相談ください。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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