士業コラム
傷病手当金の申請で会社がすることは?事業主の証明と給与確認

傷病手当金の申請で会社がすることは?事業主の証明と給与確認

「社員から傷病手当金の申請書を渡されたけれど、会社はどこを記入すればよいのだろう」「休んでいる間にも手当を支払ったが、申請できるのだろうか」初めて手続きを担当する経営者や労務担当者は、判断に迷うことがあります。

傷病手当金は健康保険の給付であり、会社が支給を決めるものではありません。一方、申請には勤務状況や賃金に関する事業主の証明が必要です。この記事では、主に協会けんぽに加入している社員を想定し、会社が確認したい申請書の準備と記入のポイントを解説します。

まず加入先と休業の状況を確認します

傷病手当金は、健康保険の被保険者が業務外の病気やけがの療養で仕事に就けず、一定の条件を満たした場合に支給される制度です。会社の休職制度を利用していることだけで、支給が自動的に決まるわけではありません。

まず、社員が加入する健康保険の保険者を確認しましょう。協会けんぽと健康保険組合では、申請書の様式や提出先、手続きの細部が異なる場合があります。加入先の案内を確認し、本人に申請書と必要な手続きを伝えます。

病気やけがが業務上または通勤によるものかどうかも重要です。その場合は労災保険の給付を確認することになります。原因がはっきりしないときは会社だけで決めつけず、事情を整理して相談しましょう。

支給の条件と待期期間を整理します

支給を受けるには、療養のため仕事に就けないことに加え、連続する3日間を含めて4日以上仕事に就けなかったことなどが必要です。最初の連続した3日間を「待期」といい、その後の仕事に就けなかった日が支給の対象になります。

待期には、療養のため仕事に就けなかった有給休暇の日や、土日・祝日などの公休日も含まれます。待期中に給与が支払われていても、それだけで待期が成立しなくなるわけではありません。一方、休んだ2日間の後に出勤した場合、その2日間だけでは連続3日間の待期は完成しません。

例えば、仮に月曜日から療養のため仕事に就けず、月曜から水曜まで連続して休んだ場合、その3日間が待期となり、木曜日以降の仕事に就けなかった日について支給の条件を確認します。実際の支給は、療養担当者の意見や仕事の内容、報酬の状況などを踏まえ、保険者が判断します。

申請書の事業主欄は記録に基づいて記入します

協会けんぽの申請書には、本人、事業主、療養担当者がそれぞれ記入する部分があります。会社は本人の申請期間を確認し、その期間を含む勤務状況や賃金の支払い状況などを、所定の欄に記入します。

勤怠記録、勤務予定表、休暇の申請内容、給与台帳を照らし合わせ、出勤した日、欠勤した日、有給休暇を取得した日などを整理しましょう。打刻だけでは実態が分からない場合は、本人や担当者に確認します。本人が申請する期間と会社の記入対象がずれていないかも大切です。

協会けんぽの記入案内では、申請期間の最終日より前に将来分を証明することはできません。実際の勤務や給与の状況が分かってから記入し、記入漏れや期間の食い違いがないかを確認します。医師等の証明欄を会社が代わって判断・記入することはせず、本人に必要な手続きを案内しましょう。

休業中に支払った給与や手当を確認します

休業中に給与の支払いがある場合、傷病手当金との調整が行われます。支払われた給与が傷病手当金の額より少ないときは、差額が支給される場合があります。給与が一部でも出ているからといって、会社が申請を諦める必要はありません。

協会けんぽの案内では、出勤していない日に対する報酬として、有給休暇の賃金や、出勤の有無にかかわらず支給する通勤手当・扶養手当・住宅手当などが例示されています。手当を支払った対象期間と金額を確認し、加入先の記入例に従って記載します。出勤した日に対する残業手当や一時的な見舞金などは取扱いが異なります。

例えば、仮に休業中の月も住宅手当が支給されていた場合、基本給がゼロであっても、手当の内容を確認せず「給与の支払いなし」と記入することは避けましょう。何が調整の対象になるか迷うときは、給与台帳と賃金規程を用意して保険者に確認します。

本人への案内と継続申請の準備を進めます

療養が長引く場合は、本人と連絡方法を相談し、書類の受け渡しや記入の進め方を決めておくと手続きが進めやすくなります。協会けんぽは、給与の支払い状況を証明する必要があることから、給与の締切日ごとに1か月単位で申請する方法を勧めています。加入先の案内と本人の事情を確認して進めましょう。

申請後、記入内容や給与の処理に誤りが分かった場合は、そのままにせず、加入先に訂正方法を確認します。休職中も健康保険・厚生年金の資格が続く間は、給与の支払いがなくても保険料が必要です。本人負担分の精算方法も別途整理し、分かりやすく伝えておきましょう。

同じ傷病についての支給期間は、支給開始日から通算して1年6か月です。会社の休職期間とは別の仕組みですので、給付の見通しと就業規則上の期限を混同せず、それぞれ確認することが大切です。

休職が長引き、傷病手当金の支給が終わるようでしたら、その後の働き方や、障害年金申請についても事前に説明するとよいでしょう。働き方によっては、障害年金を受給しながら勤務継続が可能な場合があります。

記入に迷うときは早めに相談しましょう

加入先の記入例と勤怠・給与の記録を確認できれば、会社で申請準備を進められる場合もあります。一方、給与の一部が支払われている、勤務記録と本人の申告が異なる、業務上の病気やけがの可能性があるといった場合は、事実関係を整理して早めに相談しましょう。

当事務所では、人事・労務全般の相談や社会保険に関する手続き、給与・賞与計算を取り扱い、労務相談のみの契約にも対応しています。勤怠記録、給与台帳、就業規則などを準備して相談することで、今回の申請とあわせて休業中の給与や今後の対応も整理しやすくなります。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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