中小企業に社労士の顧問契約は必要?労務管理を任せるタイミングと判断基準

「入退社の手続きは何とかできているけれど、これで合っているのか不安」「従業員から質問されるたび、社長が調べている」。中小企業の労務管理では、書類を作る時間だけでなく、判断に迷う時間も負担になります。
社労士との顧問契約を検討する目安は、従業員数だけではありません。相談が発生する頻度、社内で確認できる体制、今後の採用や働き方の変更も関係します。自社で続ける業務と専門家に任せる業務を整理し、継続的な支援が必要になるタイミングを考えてみましょう。
顧問契約の必要性は「作業量」と「判断の負担」で考えます
労務管理には、入退社に伴う保険手続きのように期限に沿って進める仕事と、雇用条件や従業員対応のように事情を確認して判断する仕事があります。手続きの件数が少なくても、毎回判断に迷っているなら、継続して相談できる相手を持つ意味があります。
例えば、採用する人の勤務時間を決める際には、業務の都合に加え、保険の加入要件や雇用契約の記載内容などを確認します。書類を提出する段階になって初めて検討するより、採用条件を提示する前から相談できる方が、説明のやり直しを減らしやすくなります。
顧問契約は、一定の範囲で継続的に相談や手続きを依頼する契約です。一方、スポット依頼は、特定の手続きや課題について個別に依頼する方法です。相談が年に数回で、社内でも必要な確認ができるなら、スポット依頼で対応できる場合もあります。
「小さい会社だから不要」「人を雇ったら必ず契約が必要」と一律に考えるのではなく、普段の管理を無理なく続けられているかを確認することが出発点です。
採用や契約更新が増えたときは、管理方法を見直しましょう
雇用条件を決める前に確認することが増えていませんか
正社員だけだった会社でパートを採用する、勤務日数の異なる人が増える、有期契約の更新が重なるといった変化があると、従来のひな型や担当者の記憶だけでは管理しにくくなります。
労働契約を結ぶ際は、賃金や労働時間などの労働条件を明示する必要があります。2024年4月からは、契約の締結時や有期契約の更新時に、就業場所・業務の変更の範囲も明示するルールとなっています。有期契約では更新上限の有無と内容など、追加で確認すべき事項もあります。2026年10月からはパートや契約社員の契約内容に、正社員との待遇の違いについて会社に説明を求めることができる事項を追加する必要があります。
以前から使っている書式だから問題ないとは限りません。実際に予定する働き方と、求人時の説明、契約書や労働条件通知書の内容が合っているかを確認しましょう。
例えば、説明用の仮の例として、従業員6人の会社が新たに短時間勤務のスタッフを採用するとします。採用後に「繁忙期には勤務時間を延ばしてもらいたい」と考えていたものの、その条件を十分に整理していなければ、本人への説明や保険の確認をやり直すことがあります。人数が少なくても、雇用条件が多様になる時期は相談を検討する目安です。
就業規則の義務と、顧問契約の必要性は分けて考えます
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・届出が必要です。人数は原則として会社全体ではなく事業場ごとに判断し、パート・アルバイトも含めて確認します。作成・変更時には労働者代表等の意見を聴き、届出後も従業員に周知する必要があります。
ただし、10人未満だから労務管理の確認が不要になるわけではありません。反対に、10人以上になったから必ず顧問契約を結ばなければならないわけでもありません。規則を整える単発の支援で足りるのか、その後の運用についても継続的に相談したいのかを考えます。
担当者がいる会社でも、相談先を持つ意味があります
社内の担当者が手続きを行えている場合でも、例外的な事案や制度変更まで一人で確認するのは負担になります。顧問契約は、担当者を置き換えるためだけのものではありません。社内に実務を残し、判断が必要な部分を専門家に相談する方法もあります。
当事務所では、手続き代行に加えて人事・労務全般の相談を取り扱い、労務相談のみの契約にも対応しています。社内で処理する仕組みができている会社は、「何を外注するか」だけでなく、「どの判断を相談したいか」を整理すると、必要な支援を絞り込みやすくなります。
例えば、担当者が採用から退職までの手順を把握していても、有期契約の更新条件を変える場合や、従業員から従来と異なる働き方を希望された場合には、確認する資料や説明の順序が変わります。その都度インターネットで調べるだけでは、自社の契約や規則との関係を見落とすことがあります。
また、担当者が休んだときに、提出状況や保管資料が分からなくなる状態も見直したいところです。専門家への依頼と併せて、社内の窓口、資料の保存先、報告の方法を決めることが大切です。外部に任せても、会社で起きた変更を伝える役割は残ります。
手続きを任せる場合も、社内での情報共有が欠かせません
顧問契約で手続きを依頼するときは、作業の引継ぎだけでなく、どの時点で何を知らせるかを決めましょう。入社日、退職日、勤務条件の変更などの情報が届かなければ、専門家も必要な手続きを判断できません。
当事務所の顧問契約の例では、入退社などの保険手続きに加え、年度ごとの届出や労務相談などを案内しています。毎年発生する仕事と日常の変更への対応を併せて検討することで、依頼する業務の全体像を整理できます。実際の受託範囲は個別の契約で確認となりますが、会社毎に柔軟な対応が可能です。
例えば、退職が決まったときに担当者が保険の届出だけを意識していると、最終勤務日、有給休暇の取得予定、貸与品の返却などの確認が別々になりがちです。誰が本人と確認し、誰が給与計算に伝え、誰が専門家へ連絡するかを整理すれば、同じ情報を何度も聞き直す負担を減らせます。
給与計算や就業規則の作成などを併せて依頼したい場合は、顧問契約に含まれると決めつけず、希望する業務として伝えましょう。労務相談、保険手続き、給与計算のうち、社内に残す仕事を明確にすることが、役割の行き違いを防ぎます。
顧問料は、社内に残る負担も含めて検討します
顧問契約の費用を考える際は、月額料金に加え、現在どの仕事に時間がかかっているかを振り返りましょう。手続きの入力だけでなく、制度の調査、書類の修正、従業員への説明にかかる時間も対象です。
直近1か月から数か月を振り返り、「発生した手続き」「判断に迷ったこと」「調べるために止まった仕事」を書き出すと、依頼したい内容が具体的になります。今後の採用予定や、担当者の退職・交代予定があれば、それも検討材料になります。
社内の体制が安定し、限られた課題だけを解決したいなら、まずスポット依頼を検討できます。一方、毎月のように雇用条件の確認が必要、経営者が調査や判断に追われる、担当者の交代後も管理を継続したいといった会社では、顧問契約が選択肢になります。
見積りを依頼する際は、従業員数だけでなく、雇用形態、入退社の頻度、社内の担当体制、相談したい課題を伝えます。料金に含む業務、追加業務の扱い、年間で必要な費用を確認し、自社が得たい支援と見合うかを判断しましょう。
日々の判断を抱え込む前に、必要な支援を整理しましょう
社労士との顧問契約を検討するタイミングは、手続きが処理できなくなったときだけではありません。採用条件を決める機会が増えたときや、社内で判断を確認する相手がいないと感じたときも、管理体制を見直す機会です。
当事務所は、中小企業やクリニックの労務管理を支援しています。相談のみの契約を含め、現在の社内体制と任せたい業務を踏まえてご相談いただけます。
まずは、現在の従業員構成、使用している雇用契約書や就業規則、最近判断に迷った出来事を整理してみてください。豊島区で顧問社労士への相談を検討している経営者の方も、「今は社内でできていること」と「今後も続けられるか不安なこと」を伝えると、必要な支援を具体的に考えやすくなります。
本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。
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無断欠勤の社員と連絡が取れないときは?中小企業の初動と退職判断の注意点
「出勤予定の社員が来ず、電話にも出ない」「何日待てば退職として扱えるのか」。突然の無断欠勤では、仕事の穴を埋めながら、本人への対応も考えなければなりません。 まず必要なのは、安否と欠勤理由の確認です。連絡がないことだけで、本人が辞めたと決めつけることは避けましょう。この記事では、期間の定めのない社員を中心に、連絡が取れないときの初動、給与の処理、退職や解雇を検討する前の確認事項を解説します。 最初は安否と連絡の行き違いを確認します 出勤時刻を過ぎても姿が見えない場合は、まず勤務予定、有給休暇の申請、直行や勤務変更の連絡がないかを確認します。上司には伝えていなくても、別の担当者が欠勤連絡を受けている可能性があります。社内で確認する前に「無断欠勤」と断定しないことが大切です。 本人の携帯電話や、通常使用しているメールなどで連絡を試みます。応答がない場合は、会社が把握している緊急連絡先への確認も検討します。家族等に伝える内容は、安否確認に必要な範囲にとどめ、勤務上の評価や処分の話まで不用意に広げないようにします。 事故や急病が疑われる事情があるときは、その切迫性に応じて警察や消防への相談を検討します。自宅を訪問する場合も、会社の社員だからといって無断で住居に入れるわけではありません。安否確認と、欠勤に対する指導は分けて進めましょう。 本人と連絡が取れたら、欠勤理由、現在の状況、連絡できなかった事情、今後連絡できる方法を確かめます。体調不良や職場での問題が背景にある場合は、直ちに出勤を迫るのではなく、必要な休暇・休職の手順や、職場の状況確認を検討します。 連絡の経過を残し、回答を求める内容を具体化します 会社からの連絡は、日時、担当者、方法、伝えた内容、本人の反応を記録します。「何度も電話した」という記憶だけでなく、発信履歴やメールの本文、郵便物の控えなどを残すと、次に必要な対応を判断しやすくなります。 連絡窓口をできるだけ統一することも有効です。社長と上司が別々に連絡し、一方は出勤を求め、もう一方は退職の話をしてしまうと、会社として何を求めているのかが曖昧になります。本人から連絡があった際に誰へ報告するかも決めておきましょう。 連絡がつかない状態が続く場合は、登録された住所への書面による連絡を検討します。書面には、会社が確認している欠勤日、欠勤理由や安否の回答を求めること、連絡先、回答期限などを記載します。期限は、郵便の到達に要する時間や判明している事情を踏まえて設定します。 「返事がなければ自動的に退職とする」といった結論を、規程や事情を確認せずに書くことは避けてください。出勤を求めることが適切かどうかも、健康状態などを踏まえて判断します。内容証明郵便を使えば、記載した処分が当然に有効になるわけでもありません。 郵便が返送された場合は、宛先不明、保管期間経過、受取拒否などの理由を確認し、封筒とともに保管します。送ったという事実と、相手に通知が届いたと評価できるかは別の問題です。雇用終了の通知まで検討する段階では、通知方法も含めて専門家に確認しましょう。 欠勤中の給与と業務の引継ぎは分けて対応します 欠勤して働いていない時間については、原則として賃金は発生しません。ただし、実際に控除できる範囲や計算方法は、雇用契約と賃金規程を確認します。月給という名称だけで全額支給や全額不支給を決めず、基本給と各手当の支給条件を分けて確かめましょう。 無断欠勤があっても、既に働いた分の給与まで支払わなくてよいわけではありません。貸与したパソコンが返却されない、取引先への対応で損害が出たといった事情があっても、その費用を会社の判断で給与から差し引くことは避けてください。欠勤分の不支給と、損害賠償の問題は別に扱う必要があります。 給与の締日が迫っているときは、確認済みの勤怠と、判断が未確定の部分を整理します。社会保険の資格喪失手続きも、無断欠勤が始まっただけで進めるものではありません。雇用終了の有無や日付を確認してから、必要な手続きを検討します。 業務面では、顧客対応、納期、入金・支払いなど、止められない仕事を洗い出し、代替担当を決めます。会社の情報やシステムへのアクセスは、社内規程と必要性に応じて管理しますが、本人の私物端末や個人アカウントを当然に調べてよいわけではありません。 当事務所は、人事・労務全般の相談に加え、給与計算や社会保険・労働保険の届出代行を取り扱っています。欠勤への対応と給与の締め処理が重なる場合も、判断が必要な点と、事務処理として進める点を整理して相談できます。依頼する範囲と費用は、個別に対応となります。 「2週間で退職・解雇できる」とは限りません 無断欠勤が続くと、「2週間たてば辞めたことにできる」と考えられることがあります。しかし、無断欠勤が2週間続けば自動的に労働契約が終了するという、一般的な法律のルールはありません。 厚生労働省は、解雇予告を省略するための認定基準の例として、正当な理由のない2週間以上の無断欠勤と、出勤の督促に応じない場合を挙げています。これは、2週間経過すれば必ず解雇できるという意味ではありません。解雇予告等の例外に関する判断と、解雇そのものが有効かどうかは区別する必要があります。 就業規則に、一定期間の無断欠勤や所在不明を自然退職の事由とする規定があっても、日数だけで機械的に処理することは避けましょう。規定の内容や周知状況、欠勤理由、連絡の経過などを確認し、その規定を適用できるかを検討します。規定があれば、あらゆる場合に有効になるわけではありません。 会社から解雇する場合は、客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。懲戒解雇なら、就業規則上の根拠や処分の重さ、本人の説明をきく機会、定められた手続きも確認します。有期契約の途中での解雇には、原則としてやむを得ない事由が必要となるため、同じようには扱えません。 また、解雇では、原則として30日前の予告か、予告に代わる平均賃金30日分以上の手当が必要です。予告と不足日数分の手当を組み合わせる方法もあります。労働者の責任を理由に予告と手当を省略する場合には、労働基準監督署長の除外認定が必要です。懲戒解雇という名称だけで省略できるものではありません。 退職処理の前に、事実と規程をそろえて相談しましょう 例えば、従業員15人の会社で、営業担当者が3日間出勤せず、携帯電話にも応答しないとします。上司は退職扱いを提案していますが、本人は前週に体調不良を訴えており、会社からは電話しかしていません。 この段階では、辞める意思があると決めつけず、安否と欠勤理由を確認する連絡を検討します。同時に、取引先への対応を代替担当へ振り分け、勤怠と連絡の経過を残します。後日、本人から入院していたと説明があれば、資料を確認し、欠勤や休職の扱いを改めて検討します。 短期間の行き違いで、本人と連絡がつき、規程に沿って処理できる場合は、社内で対応できることもあります。一方、連絡が取れないまま雇用を終了させたい、給与から損害額を引きたい、本人と説明が食い違っている場合は、通知や処理をする前に相談することが望まれます。 相談時は、雇用契約書、就業規則、賃金規程、勤怠記録、連絡履歴、郵便物の控えを用意します。「最後に出勤した日」「最後に連絡が取れた日」「会社が確認できていないこと」を分けてまとめると、検討すべき点が明確になります。 当事務所は、解雇等のトラブルを含む労務相談のみの契約にも対応し、就業規則の作成・変更も取り扱っています。給与計算や手続きを社内で行う会社も、従業員対応や規程の運用についてご相談可能です。紛争が生じている場合や通知の法的効力が問題になる場合には、事案に応じて弁護士への相談も検討しましょう。 無断欠勤への対応は、本人の安否確認から始め、連絡の記録、給与処理、雇用終了の判断を順に進めることが大切です。豊島区で労務管理に悩む経営者の方も、「いつ退職にできるか」という結論を急ぐ前に、いま確認すべき事実を整理してみてください。
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復職可能の診断書が出たら?中小企業が確認したい復職判断と受入れ準備
「休職中の社員から、来月から復職できるという診断書が届いた」「本人は戻りたいと言っているが、以前の仕事を任せてよいか迷っている」。こうした場面では、復職日を決める前に、医師の意見と職場の受入れ条件を整理することが大切です。 診断書は重要な判断材料ですが、それだけで従来どおりの勤務ができると決まるわけではありません。一方、会社が不安を感じるというだけで、復職を拒んでよいわけでもありません。この記事では、メンタルヘルス不調による私傷病休職からの復職を中心に、中小企業が確認すべき事項を解説します。 診断書の「復職可能」が何を前提にしているか確かめます 主治医は、診察で把握した状態などから復職について意見を示します。ただし、本人が職場で担当する作業や、繁忙期の負担まで詳しく知っているとは限りません。日常生活を送れる程度に回復したことと、職場で求められる仕事を継続できることには、違いがある場合があります。 例えば、診断書に「復職可能」とだけ記載されていても、通常の勤務時間で働けるのか、当面は残業を避ける必要があるのか、通院のための調整が必要なのかは分からないことがあります。記載が簡潔であることだけで診断書を判断せず、勤務上の条件を追加で確かめましょう。 まず本人に復職の希望時期と、医師から受けている説明を確認します。そのうえで、不明点を整理し、本人の同意を得て主治医との情報交換を検討します。産業医等の医学的な意見を踏まえ、会社が実際の業務や職場の状況と照合して、最終的な復職判断につなげます。 経営者や社労士が病状を診断したり、治療の要否を決めたりすることはできません。社労士への相談では、医学的な判断を求めるのではなく、医師に確認したい勤務条件や、就業規則上の手順を整理することをおこないます。 就業規則と仕事内容を並べて確認します 就業規則や休職規程、休職開始時の通知を用意し、復職の申請方法、必要書類、面談の手順、判断する担当者、休職期間の満了日を確認します。会社が以前に説明した内容と規程に違いがあるときは、その経緯も整理してください。 満了日が迫っている場合でも、診断書の提出日だけを見て結論を急がないことが大切です。復職の可否や期間満了時の扱いは、規程の文言に加え、実際の回復状況、労働契約の内容、配置や業務調整の可能性などを踏まえた検討が必要です。 仕事内容は、「事務職」「営業職」といった職種名だけでなく、具体的な作業に分けます。長時間の画面作業、電話の同時対応、厳しい締切、車の運転、一人で行う判断など、負担や安全に関係する事項を書き出しましょう。 主治医へ情報を伝える際も、通常の勤務時間や作業内容と、会社が調整できそうな事項を分けて示すと、勤務上の配慮について意見を得やすくなります。「完全に治ったことを証明してほしい」という抽象的な求め方では、実際の仕事との関係が明確になりません。 当事務所は、人事・労務全般の相談と就業規則の作成・変更を取り扱っています。規程に復職の手順がない、上司によって説明が異なるといった場合は、今回の対応と、今後の規程整備を分けて検討することができます。現在の休職者に不利益な条件を後から一方的に加えることにならないよう、変更の進め方も確認しましょう。 受入れ条件は業務・時間・賃金・見直し時期まで具体化します 復職を進める場合は、開始日だけでなく、当初の担当業務、勤務時間、残業や出張の扱い、相談窓口を文書にまとめます。「無理のない範囲で働く」と伝えるだけでは、本人と上司で想定する仕事量が違うままになることがあります。 勤務上の配慮は、医師の意見を踏まえ、必要性と会社が実施できる方法を検討します。短時間勤務を取り入れるなら、出退勤時刻、実施期間、賃金の計算方法、通常勤務へ戻す際の確認方法まで整理します。勤務時間を短くしたことだけで、従前の給与を自由に減らせるわけではありません。労働契約や賃金規程を確認し、必要な説明や合意の手続きを進めます。 また、「試し出勤」という名称を使えば無給にできるわけではありません。会社の指示で顧客対応や資料作成などを行わせる場合は、実態に応じて労働時間や賃金の扱いを判断する必要があります。正式な復職前の制度として実施するなら、目的、内容、期間、事故時の対応も事前に確認してください。 受入れを支える同僚の業務量も見直します。復職者の担当を減らした結果、特定の人だけに締切の厳しい仕事が集まるようでは、体制を維持しにくくなります。業務の優先順位や分担を会社として決め、現場任せにしないことが大切です。 健康情報は、仕事上の配慮に必要な範囲に絞って扱います。診断書の保管者や閲覧できる人を決め、病名や治療内容を職場全体へ当然に共有することは避けましょう。同僚に何を説明するかは、本人の意向を確認しながら、情報の内容と共有の範囲を整理します。 具体例で考える、受入れ準備と復職後の確認 例えば、従業員18人の会社で、受注入力を担当していた社員から復職の申出があったとします。主治医の意見には「当面は残業を避けること」とありますが、復職予定の月には大口取引先の締切が集中しています。。 このとき、会社が定時退社を認めても、以前と同じ件数を一人で処理するよう求めれば、実際の負担は軽くならないかもしれません。入力の件数だけでなく、締切の集中や急な修正への対応も含め、当初の仕事を検討します。 例えば、定型的な入力を中心にし、急ぎの修正は上司が受け付ける方法が考えられます。本人、上司、必要な医療関係者の意見を踏まえて実施内容を決め、一定期間後に、勤務状況と負担を確認する日を設けます。これは一例であり、全員に同じ業務制限や期間が適するわけではありません。 復職後の面談では、出勤できたかだけでなく、予定した配慮が実施されているか、業務が予定時間に収まっているか、本人が相談しにくい状態になっていないかを確認します。上司の観察と本人の説明を記録し、医師の意見も踏まえて、業務量や勤務条件を見直しましょう。 復職を認めるか迷ったら、回答前に相談しましょう 必要な情報が揃い、規程に沿って受入れ条件を決められる場合は、社内で対応できることもあります。すべての復職について、外部への依頼が必要というわけではありません。 一方、医師の意見と会社の想定する仕事が合わない、勤務時間や賃金の扱いで本人と認識が違う、休職期間満了を理由に雇用を終了しようとしている場合は、本人へ結論を伝える前に相談することが望まれます。雇用終了の有効性などをめぐって争いがある場合は、事案に応じて弁護士への相談も検討します。 相談時には、就業規則、雇用契約書、休職通知、診断書、本人とのやり取りを用意します。復職後に任せたい仕事と、調整できること・難しいことを書き添えると、会社がどこで迷っているかを伝えやすくなります。健康情報を外部に提供する際も、本人の同意など必要な取扱いを確認してください。 当事務所は、労務相談のみの契約にも対応しています。給与計算や保険手続きは社内で行いながら、従業員への説明や規程の運用について相談したい会社も、必要な支援の範囲を検討できます。契約に含まれる業務と費用は、依頼内容に応じて確認しましょう。 復職への対応では、診断書を受け取って終わりにせず、実際の仕事、勤務条件、復職後の確認方法まで整えることが重要です。豊島区で労務管理に悩む経営者の方も、復職を認めるかどうかだけを抱え込まず、判断に足りない情報と受入れ準備を整理するところから始めてみてください。
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試用期間中なら解雇できる?本採用を迷う中小企業が確認したい判断と対応
「入社から2か月たってもミスが続く」「試用期間が終わる前に、本採用を見送ると伝えてよいのか」。採用した従業員の働きぶりに不安があるとき、判断を急ぎたくなる経営者もいるでしょう。 しかし、試用期間は、会社が自由に雇用を終了できる期間ではありません。まず確認したいのは、採用時に何を求め、どのように指導し、本人がどう対応してきたかです。この記事では、期間の定めなく採用した従業員に試用期間を設けた場合を中心に、本採用を迷ったときの確認事項と相談の進め方を解説します。 試用期間中も労働契約は成立しています 一般的な試用期間では、入社時から労働契約が成立しています。適性を確かめるために、一定の条件の下で契約を終了する権利を会社が留保していると考えられます。そのため、「まだ正式な社員ではないので、期間が終われば契約も終わる」とは扱えません。 試用期間中の解雇や、期間満了時の本採用拒否には、試用の目的に照らした客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性が必要です。通常の解雇より判断の余地が広いとされますが、経営者の印象だけで自由に決められるという意味ではありません。 採用後に分かった勤務上の問題について、その内容や程度、採用時に期待した役割、指導の経過などを確認します。「社風に合わない」「覚えが悪い」といった評価は、何が起きたかを説明しなければ、判断の根拠が曖昧なままになります。 なお、「最初の3か月は有期契約」という場合は、試用期間付きの無期契約と同じではありません。契約期間の途中での解雇には、原則としてやむを得ない事由が必要です。満了時に更新しない場合にも別のルールが関わります。名称だけで決めず、契約書の記載と採用時の説明、実際の運用を確認しましょう。 最初に採用条件と問題の内容を照合します まず、雇用契約書や労働条件通知書、就業規則、求人票などを揃え、試用期間の開始日と終了日、担当業務、本採用の判断に関する定めを確認します。求人票で説明した仕事と、入社後に任せている仕事に違いがないかも見てください。 同じ「仕事が遅い」という問題でも、未経験者として育成する前提で採用した場合と、特定の業務を任せる即戦力として採用した場合では、確認すべき事情が異なります。会社が求める水準を本人に伝えていなかったり、必要な研修を受けさせていなかったりすれば、本人の能力だけを問題にすることは適切ではありません。 次に、問題が起きた日、担当した仕事、指示の内容、結果、業務への影響を整理します。納期の遅れであれば、当初の期限、途中の追加指示、業務量、本人からの相談の有無まで確認すると、原因を検討しやすくなります。 遅刻や欠勤についても、勤怠記録だけでなく、連絡の状況や本人が説明した事情を確認します。体調や職場環境に関する訴えがあるときは、単なる勤務態度の問題と決めつけず、必要な配慮や事実確認を別途検討してください。 当事務所では、解雇等のトラブルを含む人事・労務全般の相談を取り扱っています。「本採用を断れるか」だけでなく、判断に必要な資料が不足していないか、会社側の説明や運用に課題がないかという段階から、相談事項を整理いたします。 指導は改善してほしい行動と確認日を具体的にします 指導するときは、「もっとしっかりしてほしい」という抽象的な注意で終わらせず、どの仕事の、どの行動を改善してほしいかを伝えます。本人の説明も聞き、理解不足なのか、指示が曖昧なのか、業務量に無理があるのかを確かめましょう。 例えば、入力ミスが続く場合は、確認手順を一緒に見直し、提出前に照合する項目を示す方法があります。そのうえで、次にいつ状況を確認するか、誰が支援するかを決めます。仕事の性質や習得に必要な時間に応じ、改善の状況を確認できる進め方にすることが大切です。 面談後は、日時、伝えた内容、本人の説明、会社が行う支援、次回の確認予定を記録します。改善した点も残してください。不利な出来事だけを集めると、実際の変化や会社の指導状況を正しく把握できなくなります。 記録は、解雇するための材料を後から作るものではありません。本人と会社の認識をそろえ、勤務を続けられる可能性を検討するためのものです。過去にしていない注意をしたことにしたり、面談記録の日付をさかのぼらせたりしてはいけません。 例えば、従業員12人の会社で、未経験で採用した事務担当者に請求書の入力ミスが続いているとします。社長は能力不足を心配していますが、担当者ごとに入力方法が違い、確認者も決まっていませんでした。 この場合、まず入力方法と確認者を統一し、本人に手順を説明して、作業結果を確認することが考えられます。その後も問題が続くか、どの部分が改善したかを見ます。「ミスが何回あれば解雇できる」と回数だけで結論を出すことはできません。 試用期間の延長と解雇予告は分けて検討します 試用期間の終わりが近づくと、「判断できないので延長したい」と考えることもあるでしょう。ただし、延長を当然にできるとは限りません。就業規則や契約の根拠、延長の必要性、期間の相当性、本人への説明などを確認する必要があります。 延長する場合も、何を確かめるための期間なのか、評価する業務、会社が行う支援、判断時期を明らかにします。単に結論を先送りするために繰り返し延長する運用は避けましょう。本人の同意があれば、どのような延長でも問題がなくなるわけではありません。 解雇を検討する場合には、解雇理由の妥当性とは別に、解雇予告等の手続きを確認します。試用期間中の従業員でも、14日を超えて引き続き雇用した場合は、原則として30日前の予告か、予告に代わる平均賃金30日分以上の解雇予告手当が必要です。予告期間が30日に足りない場合は、不足日数分の手当を支払う方法もあります。 最初の14日以内に解雇予告の例外が適用される場合でも、合理的な理由が不要になるわけではありません。また、解雇予告手当を払えば、理由に問題のある解雇まで有効になるわけでもありません。手続きと解雇の有効性を混同しないことが重要です。 本採用を見送る旨を伝えてから、理由や手続きを整えようとすると、既に伝えた説明との食い違いが生じることがあります。終了日だけを先に決めず、判断理由と必要な手続きを、本人への通知前に確認しましょう。 本採用に迷ったら満了前に社労士へ相談しましょう 評価基準が明確で、指導後に改善が見られ、本採用する方向で問題なく進められる場合は、社内の手順で対応できることもあります。すべての試用期間について、外部への依頼が必要というわけではありません。 一方、本採用を見送りたい、延長の根拠が分からない、上司によって評価が違う、既に本人へ退職を求めたといった場合は、早めの相談が望まれます。満了直前まで待たず、どの時点で何を確認するかを検討する時間を確保しましょう。 相談時には、契約書、労働条件通知書、就業規則、求人票、勤怠記録、指導や面談の記録を用意してください。会社が困っていることに加え、本人の説明と改善状況も共有してください。資料が全部揃っていなくても、手元にあるものと未確認の事項を分ければ、相談の出発点になります。 当事務所は、労務相談のみの契約に対応し、就業規則の作成・変更も取り扱っています。手続きや給与計算を社内で行っている会社も、従業員への対応判断についてご相談可能です。継続的な相談や規程の見直しを依頼する場合にも、柔軟に対応可能ですので、ご相談ください。 既に解雇の有効性をめぐって争いが生じている場合などは、事案に応じて弁護士への相談も検討します。社労士に相談すれば、あらゆる紛争の交渉や訴訟まで任せられるというものではありません。 試用期間の対応で大切なのは、満了日に結論を出すことだけではなく、採用時の期待を具体化し、指導と評価を積み重ねることです。豊島区で労務管理に悩む経営者の方も、本採用を見送ると伝える前に、契約と事実関係を整理し、適切な対応をご相談ください。
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