士業コラム
中小企業に社労士の顧問契約は必要?労務管理を任せるタイミングと判断基準

中小企業に社労士の顧問契約は必要?労務管理を任せるタイミングと判断基準

「入退社の手続きは何とかできているけれど、これで合っているのか不安」「従業員から質問されるたび、社長が調べている」。中小企業の労務管理では、書類を作る時間だけでなく、判断に迷う時間も負担になります。

社労士との顧問契約を検討する目安は、従業員数だけではありません。相談が発生する頻度、社内で確認できる体制、今後の採用や働き方の変更も関係します。自社で続ける業務と専門家に任せる業務を整理し、継続的な支援が必要になるタイミングを考えてみましょう。

顧問契約の必要性は「作業量」と「判断の負担」で考えます

労務管理には、入退社に伴う保険手続きのように期限に沿って進める仕事と、雇用条件や従業員対応のように事情を確認して判断する仕事があります。手続きの件数が少なくても、毎回判断に迷っているなら、継続して相談できる相手を持つ意味があります。

例えば、採用する人の勤務時間を決める際には、業務の都合に加え、保険の加入要件や雇用契約の記載内容などを確認します。書類を提出する段階になって初めて検討するより、採用条件を提示する前から相談できる方が、説明のやり直しを減らしやすくなります。

顧問契約は、一定の範囲で継続的に相談や手続きを依頼する契約です。一方、スポット依頼は、特定の手続きや課題について個別に依頼する方法です。相談が年に数回で、社内でも必要な確認ができるなら、スポット依頼で対応できる場合もあります。

「小さい会社だから不要」「人を雇ったら必ず契約が必要」と一律に考えるのではなく、普段の管理を無理なく続けられているかを確認することが出発点です。

採用や契約更新が増えたときは、管理方法を見直しましょう

雇用条件を決める前に確認することが増えていませんか

正社員だけだった会社でパートを採用する、勤務日数の異なる人が増える、有期契約の更新が重なるといった変化があると、従来のひな型や担当者の記憶だけでは管理しにくくなります。

労働契約を結ぶ際は、賃金や労働時間などの労働条件を明示する必要があります。2024年4月からは、契約の締結時や有期契約の更新時に、就業場所・業務の変更の範囲も明示するルールとなっています。有期契約では更新上限の有無と内容など、追加で確認すべき事項もあります。2026年10月からはパートや契約社員の契約内容に、正社員との待遇の違いについて会社に説明を求めることができる事項を追加する必要があります。

以前から使っている書式だから問題ないとは限りません。実際に予定する働き方と、求人時の説明、契約書や労働条件通知書の内容が合っているかを確認しましょう。

例えば、説明用の仮の例として、従業員6人の会社が新たに短時間勤務のスタッフを採用するとします。採用後に「繁忙期には勤務時間を延ばしてもらいたい」と考えていたものの、その条件を十分に整理していなければ、本人への説明や保険の確認をやり直すことがあります。人数が少なくても、雇用条件が多様になる時期は相談を検討する目安です。

就業規則の義務と、顧問契約の必要性は分けて考えます

常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・届出が必要です。人数は原則として会社全体ではなく事業場ごとに判断し、パート・アルバイトも含めて確認します。作成・変更時には労働者代表等の意見を聴き、届出後も従業員に周知する必要があります。

ただし、10人未満だから労務管理の確認が不要になるわけではありません。反対に、10人以上になったから必ず顧問契約を結ばなければならないわけでもありません。規則を整える単発の支援で足りるのか、その後の運用についても継続的に相談したいのかを考えます。

担当者がいる会社でも、相談先を持つ意味があります

社内の担当者が手続きを行えている場合でも、例外的な事案や制度変更まで一人で確認するのは負担になります。顧問契約は、担当者を置き換えるためだけのものではありません。社内に実務を残し、判断が必要な部分を専門家に相談する方法もあります。

当事務所では、手続き代行に加えて人事・労務全般の相談を取り扱い、労務相談のみの契約にも対応しています。社内で処理する仕組みができている会社は、「何を外注するか」だけでなく、「どの判断を相談したいか」を整理すると、必要な支援を絞り込みやすくなります。

例えば、担当者が採用から退職までの手順を把握していても、有期契約の更新条件を変える場合や、従業員から従来と異なる働き方を希望された場合には、確認する資料や説明の順序が変わります。その都度インターネットで調べるだけでは、自社の契約や規則との関係を見落とすことがあります。

また、担当者が休んだときに、提出状況や保管資料が分からなくなる状態も見直したいところです。専門家への依頼と併せて、社内の窓口、資料の保存先、報告の方法を決めることが大切です。外部に任せても、会社で起きた変更を伝える役割は残ります。

手続きを任せる場合も、社内での情報共有が欠かせません

顧問契約で手続きを依頼するときは、作業の引継ぎだけでなく、どの時点で何を知らせるかを決めましょう。入社日、退職日、勤務条件の変更などの情報が届かなければ、専門家も必要な手続きを判断できません。

当事務所の顧問契約の例では、入退社などの保険手続きに加え、年度ごとの届出や労務相談などを案内しています。毎年発生する仕事と日常の変更への対応を併せて検討することで、依頼する業務の全体像を整理できます。実際の受託範囲は個別の契約で確認となりますが、会社毎に柔軟な対応が可能です。

例えば、退職が決まったときに担当者が保険の届出だけを意識していると、最終勤務日、有給休暇の取得予定、貸与品の返却などの確認が別々になりがちです。誰が本人と確認し、誰が給与計算に伝え、誰が専門家へ連絡するかを整理すれば、同じ情報を何度も聞き直す負担を減らせます。

給与計算や就業規則の作成などを併せて依頼したい場合は、顧問契約に含まれると決めつけず、希望する業務として伝えましょう。労務相談、保険手続き、給与計算のうち、社内に残す仕事を明確にすることが、役割の行き違いを防ぎます。

顧問料は、社内に残る負担も含めて検討します

顧問契約の費用を考える際は、月額料金に加え、現在どの仕事に時間がかかっているかを振り返りましょう。手続きの入力だけでなく、制度の調査、書類の修正、従業員への説明にかかる時間も対象です。

直近1か月から数か月を振り返り、「発生した手続き」「判断に迷ったこと」「調べるために止まった仕事」を書き出すと、依頼したい内容が具体的になります。今後の採用予定や、担当者の退職・交代予定があれば、それも検討材料になります。

社内の体制が安定し、限られた課題だけを解決したいなら、まずスポット依頼を検討できます。一方、毎月のように雇用条件の確認が必要、経営者が調査や判断に追われる、担当者の交代後も管理を継続したいといった会社では、顧問契約が選択肢になります。

見積りを依頼する際は、従業員数だけでなく、雇用形態、入退社の頻度、社内の担当体制、相談したい課題を伝えます。料金に含む業務、追加業務の扱い、年間で必要な費用を確認し、自社が得たい支援と見合うかを判断しましょう。

日々の判断を抱え込む前に、必要な支援を整理しましょう

社労士との顧問契約を検討するタイミングは、手続きが処理できなくなったときだけではありません。採用条件を決める機会が増えたときや、社内で判断を確認する相手がいないと感じたときも、管理体制を見直す機会です。

当事務所は、中小企業やクリニックの労務管理を支援しています。相談のみの契約を含め、現在の社内体制と任せたい業務を踏まえてご相談いただけます。

まずは、現在の従業員構成、使用している雇用契約書や就業規則、最近判断に迷った出来事を整理してみてください。豊島区で顧問社労士への相談を検討している経営者の方も、「今は社内でできていること」と「今後も続けられるか不安なこと」を伝えると、必要な支援を具体的に考えやすくなります。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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