試用期間中なら解雇できる?本採用を迷う中小企業が確認したい判断と対応

「入社から2か月たってもミスが続く」「試用期間が終わる前に、本採用を見送ると伝えてよいのか」。採用した従業員の働きぶりに不安があるとき、判断を急ぎたくなる経営者もいるでしょう。
しかし、試用期間は、会社が自由に雇用を終了できる期間ではありません。まず確認したいのは、採用時に何を求め、どのように指導し、本人がどう対応してきたかです。この記事では、期間の定めなく採用した従業員に試用期間を設けた場合を中心に、本採用を迷ったときの確認事項と相談の進め方を解説します。
試用期間中も労働契約は成立しています
一般的な試用期間では、入社時から労働契約が成立しています。適性を確かめるために、一定の条件の下で契約を終了する権利を会社が留保していると考えられます。そのため、「まだ正式な社員ではないので、期間が終われば契約も終わる」とは扱えません。
試用期間中の解雇や、期間満了時の本採用拒否には、試用の目的に照らした客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性が必要です。通常の解雇より判断の余地が広いとされますが、経営者の印象だけで自由に決められるという意味ではありません。
採用後に分かった勤務上の問題について、その内容や程度、採用時に期待した役割、指導の経過などを確認します。「社風に合わない」「覚えが悪い」といった評価は、何が起きたかを説明しなければ、判断の根拠が曖昧なままになります。
なお、「最初の3か月は有期契約」という場合は、試用期間付きの無期契約と同じではありません。契約期間の途中での解雇には、原則としてやむを得ない事由が必要です。満了時に更新しない場合にも別のルールが関わります。名称だけで決めず、契約書の記載と採用時の説明、実際の運用を確認しましょう。
最初に採用条件と問題の内容を照合します
まず、雇用契約書や労働条件通知書、就業規則、求人票などを揃え、試用期間の開始日と終了日、担当業務、本採用の判断に関する定めを確認します。求人票で説明した仕事と、入社後に任せている仕事に違いがないかも見てください。
同じ「仕事が遅い」という問題でも、未経験者として育成する前提で採用した場合と、特定の業務を任せる即戦力として採用した場合では、確認すべき事情が異なります。会社が求める水準を本人に伝えていなかったり、必要な研修を受けさせていなかったりすれば、本人の能力だけを問題にすることは適切ではありません。
次に、問題が起きた日、担当した仕事、指示の内容、結果、業務への影響を整理します。納期の遅れであれば、当初の期限、途中の追加指示、業務量、本人からの相談の有無まで確認すると、原因を検討しやすくなります。
遅刻や欠勤についても、勤怠記録だけでなく、連絡の状況や本人が説明した事情を確認します。体調や職場環境に関する訴えがあるときは、単なる勤務態度の問題と決めつけず、必要な配慮や事実確認を別途検討してください。
当事務所では、解雇等のトラブルを含む人事・労務全般の相談を取り扱っています。「本採用を断れるか」だけでなく、判断に必要な資料が不足していないか、会社側の説明や運用に課題がないかという段階から、相談事項を整理いたします。
指導は改善してほしい行動と確認日を具体的にします
指導するときは、「もっとしっかりしてほしい」という抽象的な注意で終わらせず、どの仕事の、どの行動を改善してほしいかを伝えます。本人の説明も聞き、理解不足なのか、指示が曖昧なのか、業務量に無理があるのかを確かめましょう。
例えば、入力ミスが続く場合は、確認手順を一緒に見直し、提出前に照合する項目を示す方法があります。そのうえで、次にいつ状況を確認するか、誰が支援するかを決めます。仕事の性質や習得に必要な時間に応じ、改善の状況を確認できる進め方にすることが大切です。
面談後は、日時、伝えた内容、本人の説明、会社が行う支援、次回の確認予定を記録します。改善した点も残してください。不利な出来事だけを集めると、実際の変化や会社の指導状況を正しく把握できなくなります。
記録は、解雇するための材料を後から作るものではありません。本人と会社の認識をそろえ、勤務を続けられる可能性を検討するためのものです。過去にしていない注意をしたことにしたり、面談記録の日付をさかのぼらせたりしてはいけません。
例えば、従業員12人の会社で、未経験で採用した事務担当者に請求書の入力ミスが続いているとします。社長は能力不足を心配していますが、担当者ごとに入力方法が違い、確認者も決まっていませんでした。
この場合、まず入力方法と確認者を統一し、本人に手順を説明して、作業結果を確認することが考えられます。その後も問題が続くか、どの部分が改善したかを見ます。「ミスが何回あれば解雇できる」と回数だけで結論を出すことはできません。
試用期間の延長と解雇予告は分けて検討します
試用期間の終わりが近づくと、「判断できないので延長したい」と考えることもあるでしょう。ただし、延長を当然にできるとは限りません。就業規則や契約の根拠、延長の必要性、期間の相当性、本人への説明などを確認する必要があります。
延長する場合も、何を確かめるための期間なのか、評価する業務、会社が行う支援、判断時期を明らかにします。単に結論を先送りするために繰り返し延長する運用は避けましょう。本人の同意があれば、どのような延長でも問題がなくなるわけではありません。
解雇を検討する場合には、解雇理由の妥当性とは別に、解雇予告等の手続きを確認します。試用期間中の従業員でも、14日を超えて引き続き雇用した場合は、原則として30日前の予告か、予告に代わる平均賃金30日分以上の解雇予告手当が必要です。予告期間が30日に足りない場合は、不足日数分の手当を支払う方法もあります。
最初の14日以内に解雇予告の例外が適用される場合でも、合理的な理由が不要になるわけではありません。また、解雇予告手当を払えば、理由に問題のある解雇まで有効になるわけでもありません。手続きと解雇の有効性を混同しないことが重要です。
本採用を見送る旨を伝えてから、理由や手続きを整えようとすると、既に伝えた説明との食い違いが生じることがあります。終了日だけを先に決めず、判断理由と必要な手続きを、本人への通知前に確認しましょう。
本採用に迷ったら満了前に社労士へ相談しましょう
評価基準が明確で、指導後に改善が見られ、本採用する方向で問題なく進められる場合は、社内の手順で対応できることもあります。すべての試用期間について、外部への依頼が必要というわけではありません。
一方、本採用を見送りたい、延長の根拠が分からない、上司によって評価が違う、既に本人へ退職を求めたといった場合は、早めの相談が望まれます。満了直前まで待たず、どの時点で何を確認するかを検討する時間を確保しましょう。
相談時には、契約書、労働条件通知書、就業規則、求人票、勤怠記録、指導や面談の記録を用意してください。会社が困っていることに加え、本人の説明と改善状況も共有してください。資料が全部揃っていなくても、手元にあるものと未確認の事項を分ければ、相談の出発点になります。
当事務所は、労務相談のみの契約に対応し、就業規則の作成・変更も取り扱っています。手続きや給与計算を社内で行っている会社も、従業員への対応判断についてご相談可能です。継続的な相談や規程の見直しを依頼する場合にも、柔軟に対応可能ですので、ご相談ください。
既に解雇の有効性をめぐって争いが生じている場合などは、事案に応じて弁護士への相談も検討します。社労士に相談すれば、あらゆる紛争の交渉や訴訟まで任せられるというものではありません。
試用期間の対応で大切なのは、満了日に結論を出すことだけではなく、採用時の期待を具体化し、指導と評価を積み重ねることです。豊島区で労務管理に悩む経営者の方も、本採用を見送ると伝える前に、契約と事実関係を整理し、適切な対応をご相談ください。
本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。
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許可していない残業にも残業代は必要?中小企業が確認したい判断基準と対応
「残業は事前申請制なのに、申請せずに仕事を続ける従業員がいる」「上司が許可していない時間まで残業代を払う必要があるのか」。中小企業の経営者にとって、残業の管理は、費用だけでなく職場のルールにも関わる悩みです。 ただし、申請や許可がないという理由だけで、残業代を一律に支払わない扱いにはできません。実際にどのような仕事をし、会社がどのように指示・管理していたかを確認する必要があります。無断残業が分かったときの確認手順と、繰り返さないための運用を解説します。 残業代の判断は、申請書の有無だけでは決まりません 労働時間に当たるかどうかは、会社の指揮命令下に置かれていたかによって判断します。明確に「残業してください」と命じた時間だけでなく、黙示の指示で仕事をしていた時間も含まれます。黙示の指示とは、言葉で明示していなくても、周囲の状況から業務を求めていたと評価されるものです。 例えば、終業間際に当日中の納品を指示し、定時までには処理できない仕事量を任せていた場合は、残業申請がなくても、会社の指示との関係を確認する必要があります。「残業は禁止」と伝えながら、実際には終わらない仕事をそのまま担当者に任せていないかも大切な点です。 一方、退勤後に私用で会社に残っていた時間が、そのまま労働時間になるわけではありません。会社にいた時間と仕事をしていた時間を区別し、本人と上司の説明や記録を照合します。「無断だからゼロ」「打刻が遅いから全部残業」のどちらかに、確認前から決めつけないようにしましょう。 また、申請ルールを守らなかったことへの指導と、実際の労働に対する賃金の支払いは、別に整理します。申請違反があったとしても、労働時間に当たると判断した時間の賃金を、罰として支払わない扱いは避けなければなりません。 無断残業が分かったら、記録と業務内容を照合します 最初に、対象となる日と時間帯を特定します。タイムカードや勤怠システムの記録に加え、残業申請、業務日報、パソコンの使用記録、業務上のメールなどを確認します。記録を後から定時に書き換えるのではなく、元の記録を残して、確認結果と修正理由が分かるように整理しましょう。 本人には、何をしていたのか、いつ誰から依頼されたのか、翌日に回せない事情があったのかを聞きます。上司にも、仕事を把握していたか、納期をどう伝えたか、帰宅や作業中止を具体的に指示したかを確認します。本人の申請漏れだけを調べると、業務配分の問題を見落とすおそれがあります。 特に注意したいのは、申請された残業時間と、入退館やパソコンの記録に大きな差がある場合です。記録の差には私用や休憩が含まれることもありますが、申請しにくい雰囲気のために仕事を少なく申告している可能性もあります。差の理由を確かめ、必要な補正につなげます。 「申請は月20時間まで」などと、実際に働いた時間の申告自体を制限する運用も見直しが必要です。会社が残業時間を抑える目標を設けることと、発生した労働時間を正しく記録することは、分けて考えてください。 当事務所では、残業手当の管理方法を含む人事・労務全般の相談を取り扱っています。本人と上司の説明が食い違う場合も、まずは確認できる資料と、まだ分からない点を分けておくと、相談すべき論点を具体化しやすくなります。 残業時間の確定後は、給与と36協定を確認します 労働時間を確認したら、自社の勤務制度に照らして賃金を計算します。会社の所定労働時間を超えた時間と、労働基準法の法定労働時間を超えた時間は、同じとは限りません。 例えば、通常の労働時間制で所定労働時間が1日7時間の従業員が8時間働いた場合、追加の1時間について賃金の確認は必要ですが、1日8時間を超えていないことだけを見れば、法定時間外の割増が直ちに発生するわけではありません。週の労働時間や就業規則・賃金規程の定めも確認します。 法定時間外労働には、原則として25%以上の割増賃金が必要です。月60時間を超える法定時間外労働の部分は、中小企業も50%以上となります。深夜労働や法定休日労働には別の割増のルールがあるため、時間数だけでなく、働いた日と時間帯も整理しましょう。 併せて、法定時間外労働などに必要な36協定の締結・届出と、その内容を確認します。36協定がないことや、協定の上限を超えていたことを理由に、実際の労働に対する残業代の支払いを免れることはできません。支払いの問題と、今後の働かせ方の是正を並行して検討します。 変形労働時間制やフレックスタイム制を採用している場合は、通常の労働時間制と同じ数え方で結論を出さないよう注意が必要です。固定残業代を支給している会社も、対象時間や金額、実際の割増賃金との差額を確認します。 事前申請制は、上司の判断と業務調整まで決めます 事前申請制は、残業の必要性を確かめ、仕事の割り振りや時間を管理するために役立ちます。ただし、「許可がなければ支払わない」と規則に書くだけでは、実際の運用は整いません。 申請には、行う仕事、残業が必要な理由、終了予定時刻を記載できるようにします。上司は、当日中に必要な仕事か、他の人に分担できるか、期限を調整できるかを判断します。許可しない場合は、残っている仕事をどうするかまで伝えることが重要です。 急な顧客対応などで事前申請が難しい場面についても、連絡先や事後報告の手順を決めておきましょう。承認者が不在だと申請できない仕組みや、申請しても返答がない状態は、現場でルールが形骸化する原因になります。 例えば、従業員15人の会社で、営業担当者が毎日1時間ほど残り、翌日の顧客向け資料を作っていたとします。社長は事前申請制だから残業ではないと考えていますが、上司は遅い時間に資料の修正を求めていました。 この場合は、申請漏れの指導に先立ち、修正指示の時刻や納期、実際の作業を確認します。そのうえで賃金の取り扱いを整理し、以後は修正依頼の締切を早める、翌日対応でよい仕事を明確にするなど、業務の進め方も見直します。本人に「早く帰るように」と伝えるだけでは、同じ状況が続く可能性があります。 判断に迷う場合は、従業員への回答前に相談しましょう 本人が作業内容を説明し、上司の指示や勤怠記録とも一致しているなど、会社で事実関係と計算方法を確認できる場合は、自社で対応を進めることも可能です。すべての無断残業について、外部への依頼が必要というわけではありません。 一方、上司が黙認していた可能性がある、申告時間と記録が大きく異なる、過去の複数月にわたる請求がある場合は、支払わない旨を回答する前に相談することが望まれます。既に紛争となっている場合は、内容に応じて弁護士への相談も検討します。 相談時は、就業規則と賃金規程、雇用契約書、勤怠記録、給与明細、残業申請のルール、業務指示が分かる資料を用意しましょう。会社が本人に伝えたことや、本人から、求められている回答の期限も共有すると、確認すべき点が分かります。 当事務所は、労務相談のみの契約にも対応し、就業規則の作成・変更や給与・賞与計算も取り扱っています。社内で給与計算を続けながら判断に迷う点を相談したい場合や、申請ルールと規程を併せて見直したい場合は、必要な支援の範囲をご相談ください。契約に含まれる業務と費用は、依頼内容に応じて柔軟に対応いたします。 許可していない残業への対応では、まず実際の働き方を確かめ、賃金の処理と申請ルールの改善を進めることが大切です。豊島区で労務管理に悩む経営者の方も、「本人が勝手に残っている」と結論づける前に、仕事の指示と記録を整理するところから始めてみてください。
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退職前の有給休暇は拒否できる?引継ぎが残るときの会社の対応と相談の進め方
「月末で退職したいので、残っている有給休暇を全部使いたい」。従業員からこう伝えられ、引継ぎが終わっていないのに休んでもらっては困る、と感じる経営者もいるでしょう。 退職前であっても、年次有給休暇を取得する権利はあります。会社が先に行いたいのは、申請を認めるかどうかの判断ではなく、残日数と勤務予定を確かめ、限られた出勤日で何を引き継ぐかを整理することです。 この記事では、従業員の退職日について争いがない場合を中心に、有給休暇の申請を受けた会社の確認事項と、引継ぎの進め方、社労士に相談したい場面を解説します。 退職前の有給休暇は、引継ぎを理由に一律に拒否できません 年次有給休暇は、原則として従業員が請求する時季に与えるものです。退職を申し出たことだけで、残っている有給休暇が使えなくなるわけではありません。 会社には、請求された時季に休暇を与えると事業の正常な運営を妨げる場合に、取得時季を変更する「時季変更権」があります。ただし、単に忙しい、代わりの人がいないという事情だけで、自由に変更できるものではありません。業務内容や休暇の長さ、代替要員を確保するための対応などを踏まえた判断が必要です。 特に退職前は、変更先となる勤務日が退職日までに残っているかが問題になります。退職日より後へ有給休暇を移すことはできません。そのため、退職日までの勤務日すべてに有給休暇が申請されている場合などは、時季変更で解決できないことがあります。 就業規則に引継ぎの義務があっても、それだけで「終わるまで有給休暇は認めない」と扱うことはできません。引継ぎについて協力を求めることと、有給休暇を取得できるかは分けて考えましょう。 最初に確認するのは、退職日・残日数・勤務予定です 申請を受けたら、退職の意思が伝えられた日、退職日、有給休暇の希望日、既に会社が説明した内容を記録します。退職日について認識が食い違っている場合は、その点を整理する必要があります。 次に、年次有給休暇管理簿や勤怠記録を基に、付与日、付与日数、取得済みの日数、繰越分、時効による消滅の有無を確認します。管理簿は、取得した時季、日数、基準日を従業員ごとに明らかにするものです。給与明細に残日数が表示されていても、直近の申請がまだ反映されていないことがあります。 残日数を確認したら、退職日までの勤務表に希望日を当てはめます。有給休暇は、もともと働く義務のある日に取得するものなので、会社の休日まで有給休暇の日数として数えないようにします。シフト勤務では、暦の日数と勤務日数を混同しやすいため、確定している勤務予定と照合しましょう。 また、「最終出勤日」と「退職日」は別です。有給休暇をまとめて取得する場合、最後に出勤した後も在籍が続くことがあります。給与計算や保険の届出を担当する人にも、二つの日付を区別して共有してください。 当事務所では、有給休暇の管理方法に関する相談に加え、給与計算や退職に伴う保険手続きを取り扱っています。休暇の日数だけでなく、退職までの給与処理や必要な届出も課題になっている場合は、併せて相談していただくと、必要な支援を整理しやすくなります。実際に依頼する業務の範囲は、個別に確認しましょう。 引継ぎは、出勤できる日と業務の優先順位から組み立てます 引継ぎを進めるときは、「全部終わらせてほしい」という伝え方から一歩進め、業務を具体的に書き出します。進行中の案件、直近の期限、取引先への連絡、資料の保存場所、社内システムの権限などを整理しましょう。 そのうえで、退職する本人から説明を受けなければ分からない事項と、資料があれば後任者や上司が対応できる事項を分けます。残っている出勤日には、本人にしか分からない案件の経緯や、直近の期限がある仕事を優先すると、限られた時間を使いやすくなります。 引継ぎを受ける人と、内容を確認する上司も決めておきます。本人が資料を作成しても、受け取る人が決まっていなければ、実際の業務に引き継がれません。後任者の採用が間に合わない場合は、いったん上司が受け取るなど、会社側の体制を整える必要があります。 例えば、業務の事情を説明し、本人に有給休暇の希望日の調整を相談することは考えられます。ただし、本人が応じることを前提にせず、合意できない場合の業務分担も検討してください。退職日の変更を相談する場合も、本人との合意が必要であり、会社が一方的に延長できるものではありません。 取得日の調整に合意した場合は、変更後の日付を記録し、勤務表と有給休暇管理簿に反映します。有給休暇として扱いながら、引継ぎのために出勤やオンライン会議への参加を当然に求める運用は避けましょう。実際に業務を行った場合には、勤怠と賃金の扱いを確認する必要があります。 仮の例で考える、残りの出勤日が少ない場合の対応 例えば、従業員8人の会社で、営業担当者の退職日までに所定労働日が15日あり、有給休暇が10日残っているとします。本人は最後の10勤務日に取得することを希望しています。これは、対応の考え方を説明するための架空の例となります。 まず、残日数と希望日が正しいかを確認すると、実際に出勤する予定は5日です。会社はその5日間を前提に、担当案件の一覧、見積りの進捗、直近の納期、顧客への連絡事項を整理します。上司が案件一覧を受け取り、別の担当者へ分担する日程も決めます。 一方、退職後に受注する可能性がある案件の細かな営業資料まで、すべて本人に作り直してもらおうとすると、5日では終わらないかもしれません。引継ぎの目的を「必要な情報を会社に残すこと」と捉え、既存資料で対応できる部分や、会社側で補える仕事を見直すことが大切です。 有給休暇の開始まで出勤日がほとんど残っていない場合は、同じ計画を当てはめられません。本人と調整できる余地を確認するとともに、会社で把握している情報から業務を引き継ぐ方法を検討します。申請を断る結論を先に出さず、日程、資料、業務への影響を基に相談を進めましょう。 回答に迷うときは、本人への説明前に社労士へ相談しましょう 残日数と日程が明確で、本人の希望どおり取得でき、引継ぎも進められるなら、社内の手順に沿って対応できる場合があります。すべての退職で専門家への依頼が必要というわけではありません。 一方、会社と本人で残日数の認識が違う、申請日を欠勤扱いにしようとしている、時季変更ができるか分からないといった場合は、回答する前に社労士へ相談すると、確認する順序を整理できます。既に一律に拒否した場合も、そのやり取りを含めて伝えてください。 相談時には、雇用契約書、就業規則、有給休暇管理簿、勤務表、本人からの申請や会社の返信を用意します。引継ぎが必要な案件と期限、受け取る人の予定も分かる範囲でまとめると、「引継ぎが大変」という説明より、検討すべき事情が明確になります。 当事務所は、中小企業の労務管理を支援し、人事・労務全般の相談や就業規則の作成・変更を取り扱っています。労務相談のみの契約も可能です。手続きや給与計算は社内で続けたいものの、従業員への対応判断を確認したい会社も、必要な支援から検討できます。 退職前の有給休暇への対応では、従業員の権利を踏まえながら、会社側で業務を引き継ぐ準備を進めることが大切です。豊島区で労務管理の相談先を探している経営者の方も、まずは資料を整理し、判断に迷っている点を具体的にお伝えください。今回の対応を確認するとともに、日頃の有給休暇の管理や業務共有を見直す機会にしましょう。
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社労士の顧問契約はどこまで任せられる?中小企業が契約前に確認したい業務範囲
「社労士と顧問契約を結べば、給与計算も任せられるのだろうか」「相談だけお願いして、手続きは社内で続けてもよいのだろうか」。顧問契約を検討するときは、料金とともに、依頼できる仕事の範囲が気になるものです。 社労士の顧問契約は、どの事務所でも同じ内容というわけではありません。同じ事務所でも、相談を中心にするか、保険手続きや給与計算まで依頼するかで、契約内容が変わります。中小企業が必要な支援を選べるよう、任せる仕事と社内に残す仕事の整理方法を解説します。 顧問契約の業務は、相談・手続き・給与計算に分けて考えます 最初に、今困っていることが「判断」なのか「書類の作成・提出」なのか「毎月の計算」なのかを整理しましょう。これらは互いに関係しますが、依頼する業務としては分けて確認する必要があります。 労務相談は、残業の取り扱いや有給休暇の管理などについて、法令と自社の規則、実際の状況を踏まえて対応を検討するものです。保険手続きは、入退社や報酬の変更などに伴う届出の作成・提出を指します。給与計算では、勤怠や賃金の情報を基に支給額・控除額などを計算します。 例えば、従業員が退職するときには、保険の資格喪失の手続きだけでなく、残っている有給休暇、最終月の給与、会社から本人への説明なども問題になります。保険手続きを依頼しただけで、そのすべてが委託先の担当になるとは限りません。 当事務所では、人事・労務全般の相談に加え、社会保険・労働保険の届出、給与・賞与計算、就業規則の作成・変更などを取り扱っています。ただし、取り扱っている業務のすべてが、一つの顧問契約に含まれるという意味ではありません。必要な支援を伝え、契約に含める範囲を確認することが大切です。 相談のみの契約と、手続きも任せる契約の違い 社内で処理できる会社は、判断の支援を検討します 担当者が保険の手続きを行えていても、従業員から初めての相談を受けたときや、勤務条件を変更するときに、判断に迷うことがあります。この場合、社内の作業を残しながら、労務相談を継続して依頼する方法が考えられます。 当事務所は、労務相談のみの契約にも対応しています。担当者が調べた内容について、自社の就業規則との関係や、追加で確認すべき事情を相談したい会社にとって、検討しやすい選択肢です。 相談する際は「この対応でよいですか」という質問だけでなく、本人の希望、会社がこれまで説明した内容、関連する契約書や規則も共有しましょう。一般的な制度説明と、個別の事情を踏まえた検討では、必要な情報が異なります。従業員への説明を誰が行うかも、社内で決めておきます。 手続きを任せる場合は、年間の届出も確認します 保険手続きまで依頼する場合は、日常の入退社だけでなく、年に一度の業務も含めて確認しましょう。社会保険の算定基礎届や労働保険の年度更新などは、通常月とは別に資料の整理が必要になります。 当事務所のホームページでは、これらの定期的な届出を含む顧問契約例を案内しています。依頼したい届出を一つずつ挙げ、月額に含まれるか、別途の費用が必要かを見積り時に確認してください。会社の新規加入手続きなども、日常の届出と同じ扱いとは限りません。 給与計算を依頼する前に、勤怠の確認範囲を決めましょう 給与計算を外部に任せるときは、「勤怠データを渡す」という説明だけでは不十分です。打刻漏れの確認、休暇の区分、残業時間の集計まで、どちらが何を行うかを具体的に決めます。 例えば、終業後の打刻が遅い日があっても、その時間がすべて仕事だったのか、私用で残っていたのかは、数字だけでは分かりません。反対に、打刻前に会社の指示で準備作業をしていれば、その時間も労働時間として扱う必要があります。記録と実際の働き方を確認する役割は、計算を委託しても必要です。 厚生労働省のガイドラインでは、労働時間は使用者の指揮命令下に置かれている時間とされ、始業・終業時刻は原則として使用者の現認や客観的な記録を基に確認・記録することが示されています。勤怠システムを導入しただけで、実態を確かめる作業が不要になるわけではありません。 当事務所の料金案内も、給与計算について勤怠の集計の有無を区別しています。依頼時には、現在の記録方法と集計方法を伝え、どの状態のデータを渡す契約にするかを確認しましょう。料金表の数字だけを比較するより、自社で残る作業を把握しやすくなります。 また、給与の締日と支払日だけでなく、資料を渡す期限、会社が計算結果を確認する日、修正の連絡方法も決めます。昇給や手当の変更を、いつ誰が伝えるかも重要です。振込操作や給与明細の配布、配布の方法(Web明細や紙ベース)など、計算の後に発生する仕事も確認しておきましょう。 仮の例で考える、社内と社労士の役割分担 例えば、従業員12人の会社で、総務担当者が保険手続きと給与計算を行っているとします。手続きは続けられるものの、残業の取り扱いについて経営者と担当者の判断が分かれ、給与確定前の確認に時間がかかっている場面を考えてみましょう。これは説明のための架空の例です。 この会社で先に整理したいのは、計算を外注するかどうかよりも、何を労働時間として記録し、誰が確認するかという運用です。就業規則や賃金規程、雇用契約書、勤怠記録を基に、実際の働き方とのずれを確認します。 社内で計算を続けられるのであれば、労務相談を依頼し、判断に迷う点を整理する方法があります。一方、計算の負担も大きいなら、給与計算の委託も併せて検討できます。必要な支援は、同じ従業員数の会社でも異なります。 さらに、規則そのものの変更が必要になった場合は、日常の相談とは別の業務になるかを確認します。「相談したら規則の改訂まで済む」と思い込まず、課題の確認、変更案の作成、従業員への説明など、必要な作業を整理してから依頼を決めましょう。 見積りでは、月額に含む業務と追加業務を確認します 顧問料を比較するときは、従業員数だけで同じ条件だと考えないことが大切です。雇用形態や入退社の頻度、給与体系、会社側で準備できる資料によって、依頼内容は変わります。 当事務所では、会社ごとの状況と受託業務の内容などを踏まえて、最終的な顧問料を見積もりいたします。相談を中心にしたいのか、手続きの作業を減らしたいのか、給与計算も見直したいのかを分けて伝えると、希望する契約内容を具体化しやすくなります。 契約前には、相談できる事項、手続きの対象、給与計算の有無、就業規則の作成・変更や助成金申請の扱いを確認しましょう。連絡手段、窓口となる人、急ぎの相談の取り扱いも、双方で合意しておきたい点です。対応時間や回答までの期間を推測せず、事前に確認が必要となります。 また、初期の資料整理、賞与の計算、契約前の期間に関する修正などを依頼したい場合は、その希望も伝えます。月額以外の費用が発生する条件と、年間で想定する業務を把握すれば、契約後の行き違いを減らせます。 任せたい仕事を整理して、必要な契約を選びましょう 社労士との顧問契約を検討する際は、仕事をすべて外部に移すことを前提にする必要はありません。社内で続けられる仕事と、専門家に確認したい判断、継続して任せたい作業を整理することが出発点です。 特定の手続きだけに困っているなら、スポット依頼で対応できる場合もあります。一方、毎月のように労務上の判断が必要になる会社では、継続して事情を共有できる相談先を持つことが役立ちます。自社で対応できる範囲を踏まえ、必要な部分から検討しましょう。 豊島区で顧問社労士を検討している経営者の方も、まずは、現在の担当業務と困っている場面を簡単に書き出してみてください。当事務所では、労務相談のみの契約を含めたご相談を受け付けています。契約の名称や月額だけで決めず、会社と社労士の双方が担当する仕事を具体的に確認しておきましょう。
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