士業コラム
復職可能の診断書が出たら?中小企業が確認したい復職判断と受入れ準備

復職可能の診断書が出たら?中小企業が確認したい復職判断と受入れ準備

「休職中の社員から、来月から復職できるという診断書が届いた」「本人は戻りたいと言っているが、以前の仕事を任せてよいか迷っている」。こうした場面では、復職日を決める前に、医師の意見と職場の受入れ条件を整理することが大切です。

診断書は重要な判断材料ですが、それだけで従来どおりの勤務ができると決まるわけではありません。一方、会社が不安を感じるというだけで、復職を拒んでよいわけでもありません。この記事では、メンタルヘルス不調による私傷病休職からの復職を中心に、中小企業が確認すべき事項を解説します。

診断書の「復職可能」が何を前提にしているか確かめます

主治医は、診察で把握した状態などから復職について意見を示します。ただし、本人が職場で担当する作業や、繁忙期の負担まで詳しく知っているとは限りません。日常生活を送れる程度に回復したことと、職場で求められる仕事を継続できることには、違いがある場合があります。

例えば、診断書に「復職可能」とだけ記載されていても、通常の勤務時間で働けるのか、当面は残業を避ける必要があるのか、通院のための調整が必要なのかは分からないことがあります。記載が簡潔であることだけで診断書を判断せず、勤務上の条件を追加で確かめましょう。

まず本人に復職の希望時期と、医師から受けている説明を確認します。そのうえで、不明点を整理し、本人の同意を得て主治医との情報交換を検討します。産業医等の医学的な意見を踏まえ、会社が実際の業務や職場の状況と照合して、最終的な復職判断につなげます。

経営者や社労士が病状を診断したり、治療の要否を決めたりすることはできません。社労士への相談では、医学的な判断を求めるのではなく、医師に確認したい勤務条件や、就業規則上の手順を整理することをおこないます。

就業規則と仕事内容を並べて確認します

就業規則や休職規程、休職開始時の通知を用意し、復職の申請方法、必要書類、面談の手順、判断する担当者、休職期間の満了日を確認します。会社が以前に説明した内容と規程に違いがあるときは、その経緯も整理してください。

満了日が迫っている場合でも、診断書の提出日だけを見て結論を急がないことが大切です。復職の可否や期間満了時の扱いは、規程の文言に加え、実際の回復状況、労働契約の内容、配置や業務調整の可能性などを踏まえた検討が必要です。

仕事内容は、「事務職」「営業職」といった職種名だけでなく、具体的な作業に分けます。長時間の画面作業、電話の同時対応、厳しい締切、車の運転、一人で行う判断など、負担や安全に関係する事項を書き出しましょう。

主治医へ情報を伝える際も、通常の勤務時間や作業内容と、会社が調整できそうな事項を分けて示すと、勤務上の配慮について意見を得やすくなります。「完全に治ったことを証明してほしい」という抽象的な求め方では、実際の仕事との関係が明確になりません。

当事務所は、人事・労務全般の相談と就業規則の作成・変更を取り扱っています。規程に復職の手順がない、上司によって説明が異なるといった場合は、今回の対応と、今後の規程整備を分けて検討することができます。現在の休職者に不利益な条件を後から一方的に加えることにならないよう、変更の進め方も確認しましょう。

受入れ条件は業務・時間・賃金・見直し時期まで具体化します

復職を進める場合は、開始日だけでなく、当初の担当業務、勤務時間、残業や出張の扱い、相談窓口を文書にまとめます。「無理のない範囲で働く」と伝えるだけでは、本人と上司で想定する仕事量が違うままになることがあります。

勤務上の配慮は、医師の意見を踏まえ、必要性と会社が実施できる方法を検討します。短時間勤務を取り入れるなら、出退勤時刻、実施期間、賃金の計算方法、通常勤務へ戻す際の確認方法まで整理します。勤務時間を短くしたことだけで、従前の給与を自由に減らせるわけではありません。労働契約や賃金規程を確認し、必要な説明や合意の手続きを進めます。

また、「試し出勤」という名称を使えば無給にできるわけではありません。会社の指示で顧客対応や資料作成などを行わせる場合は、実態に応じて労働時間や賃金の扱いを判断する必要があります。正式な復職前の制度として実施するなら、目的、内容、期間、事故時の対応も事前に確認してください。

受入れを支える同僚の業務量も見直します。復職者の担当を減らした結果、特定の人だけに締切の厳しい仕事が集まるようでは、体制を維持しにくくなります。業務の優先順位や分担を会社として決め、現場任せにしないことが大切です。

健康情報は、仕事上の配慮に必要な範囲に絞って扱います。診断書の保管者や閲覧できる人を決め、病名や治療内容を職場全体へ当然に共有することは避けましょう。同僚に何を説明するかは、本人の意向を確認しながら、情報の内容と共有の範囲を整理します。

具体例で考える、受入れ準備と復職後の確認

例えば、従業員18人の会社で、受注入力を担当していた社員から復職の申出があったとします。主治医の意見には「当面は残業を避けること」とありますが、復職予定の月には大口取引先の締切が集中しています。。

このとき、会社が定時退社を認めても、以前と同じ件数を一人で処理するよう求めれば、実際の負担は軽くならないかもしれません。入力の件数だけでなく、締切の集中や急な修正への対応も含め、当初の仕事を検討します。

例えば、定型的な入力を中心にし、急ぎの修正は上司が受け付ける方法が考えられます。本人、上司、必要な医療関係者の意見を踏まえて実施内容を決め、一定期間後に、勤務状況と負担を確認する日を設けます。これは一例であり、全員に同じ業務制限や期間が適するわけではありません。

復職後の面談では、出勤できたかだけでなく、予定した配慮が実施されているか、業務が予定時間に収まっているか、本人が相談しにくい状態になっていないかを確認します。上司の観察と本人の説明を記録し、医師の意見も踏まえて、業務量や勤務条件を見直しましょう。

復職を認めるか迷ったら、回答前に相談しましょう

必要な情報が揃い、規程に沿って受入れ条件を決められる場合は、社内で対応できることもあります。すべての復職について、外部への依頼が必要というわけではありません。

一方、医師の意見と会社の想定する仕事が合わない、勤務時間や賃金の扱いで本人と認識が違う、休職期間満了を理由に雇用を終了しようとしている場合は、本人へ結論を伝える前に相談することが望まれます。雇用終了の有効性などをめぐって争いがある場合は、事案に応じて弁護士への相談も検討します。

相談時には、就業規則、雇用契約書、休職通知、診断書、本人とのやり取りを用意します。復職後に任せたい仕事と、調整できること・難しいことを書き添えると、会社がどこで迷っているかを伝えやすくなります。健康情報を外部に提供する際も、本人の同意など必要な取扱いを確認してください。

当事務所は、労務相談のみの契約にも対応しています。給与計算や保険手続きは社内で行いながら、従業員への説明や規程の運用について相談したい会社も、必要な支援の範囲を検討できます。契約に含まれる業務と費用は、依頼内容に応じて確認しましょう。

復職への対応では、診断書を受け取って終わりにせず、実際の仕事、勤務条件、復職後の確認方法まで整えることが重要です。豊島区で労務管理に悩む経営者の方も、復職を認めるかどうかだけを抱え込まず、判断に足りない情報と受入れ準備を整理するところから始めてみてください。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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