士業コラム
不動産を子どもに生前贈与するには?名義変更の流れと事前に確認したいこと

不動産を子どもに生前贈与するには?名義変更の流れと事前に確認したいこと

「自宅を、元気なうちに子どもの名義にしておきたい」「将来の相続でもめないよう、渡す相手を決めておきたい」。こうした理由から、不動産の生前贈与を考える方がいます。

ただ、不動産の名義変更は、書類に名前を書き換えるだけの手続きではありません。財産の所有者が変わるため、税金に加え、贈与後の住まいや他の家族との関係も確認する必要があります。

この記事では、親から子どもへ不動産を生前贈与する場合を中心に、検討段階で整理したいこと、契約と登記の流れ、司法書士に相談するメリットを解説します。

生前贈与は「今、所有者を変える」ための選択肢

生前贈与とは、生きている間に自分の財産を無償で相手に渡すことです。贈与する側の「渡します」という意思と、受け取る側の「受け取ります」という意思が合って成立します。親が一方的に決めただけでは足りません。

不動産の場合は、贈与契約の内容を明確にするとともに、法務局で所有権移転登記を行い、登記上の名義を変更します。契約書を作ることと、登記を申請することは、関連しますが別の手続きです。合意だけで手続きを止めていると、第三者に所有権の取得を主張できない場合があるため、登記まで進めることが大切です。

最初に整理したいのは、「今すぐ子どもの財産にしたい」のか、「自分が亡くなった後に、その子どもに引き継いでほしい」のかという点です。後者であれば、遺言によって希望を示す方法も検討できます。生前贈与を選ぶ前に、財産を渡す時期と目的をはっきりさせましょう。

当事務所では、遺言書の作成を含む終活のご相談を受け付けています。名義変更を前提に話を進めるのではなく、まず、ご本人がどのような暮らしや財産の引継ぎを望んでいるかを整理することが大切です。

契約前に確認したい不動産と家族の事情

誰の名義で、どこまで贈与できるか

まず、登記事項証明書などで現在の所有者と持分を確認します。親の家だと思っていても、登記上は亡くなった祖父母の名義のままということがあります。その場合、子どもへの贈与登記に先立ち、相続関係を整理して必要な登記を行うことになります。

父母の共有であれば、父が単独で母の持分まで贈与することはできません。また、土地と建物の名義が違う場合や、自宅の敷地に複数の土地がある場合もあります。「家を全部渡す」という言葉だけで済ませず、対象となる土地・建物と持分を特定してください。私道や共有の道路部分など、敷地と併せて確認すべき不動産がないかも調べましょう。

住宅ローンが残っている場合は、契約を結ぶ前に、名義変更に金融機関の承諾が必要かなど、借入契約の内容を確認しましょう。名義を変えただけで借入金の返済義務が子どもへ移ったり、抵当権が消えたりするわけではありません。子どもが返済を引き受ける条件で贈与する場合は、金融機関との手続きに加え、負担付贈与として通常の贈与と異なる課税関係になることがあるため、税理士にも事前に確認します。

贈与後も親が住む場合の取り決め

自宅を子どもに贈与した後も親が暮らし続けるのであれば、住み続ける条件を話し合っておきましょう。固定資産税や修繕費を誰が負担するか、将来、売却や施設入居が必要になったときにどうするかも検討事項です。家賃を払うのか、無償で使用するのかなど、住まいの利用条件は、家族間でも書面で明確にしておくと安心です。

所有者が変わると、親が自分の判断だけで売却して老後の資金に充てることはできなくなります。「子どもだから分かってくれる」と考えるだけでなく、住まいと生活費を確保できる計画かを確認する必要があります。

ほかに子どもがいる場合は、その人たちに残る財産とのバランスも見ておきたいところです。生前贈与をしても、将来の遺留分や特別受益の問題がなくなるわけではありません。遺留分は一定の相続人に保障される最低限の取り分、特別受益は一部の相続人が受けた一定の贈与などを相続分の計算で考慮する仕組みです。どの贈与が対象になるかは、個別に確認します。

生前贈与による名義変更の流れと必要書類

贈与内容を決め、契約の内容を残す

対象の不動産、贈与する持分、所有権を移す時期などを決め、贈与契約書を作成します。契約書は、当事者の合意を明確にし、後から内容を確認するための資料になります。不動産は、普段使っている住所だけでなく、登記簿上の所在・地番・家屋番号などにより正確に特定します。登記のためにも、贈与の事実や日付を証明する情報を整える必要があります。契約日や所有権移転日は実際の合意内容に合わせ、税負担を調整するためだけに過去の日付を記載しないようにしましょう。

契約に当たっては、贈与する側・受け取る側の双方が内容を理解し、合意していることが前提です。ご家族が代わりに話を進めていても、本人の意思確認を省くことはできません。判断能力に不安があるときは、署名や押印を急がず、契約が可能な状態か、別の支援が必要かを相談してください。

書類をそろえ、法務局へ登記を申請する

一般的には、贈与する側の登記済証または登記識別情報、印鑑証明書、受け取る側の住所を証する情報、贈与を証明する情報などを準備します。不動産の評価額を確認する資料や、司法書士へ依頼する場合の委任状なども必要になります。贈与する側の印鑑証明書は、原則として登記申請時に作成後3か月以内のものを用意します。運転免許証やマイナンバーカードなど、双方の本人確認書類も確認します。

ただし、必要書類は一律ではありません。贈与する側の登記上の住所・氏名と現在のものが違う場合は、原則として所有権移転登記に先立ち、住所・氏名変更登記と、それを証明する書類が必要です。権利証や登記識別情報を紛失しても再発行はされませんが、司法書士による本人確認情報の提供など、別の方法で登記を進められる場合があります。手元の書類を確認してから、取得する書類と手続きの順序を決めましょう。

贈与による所有権移転登記は、原則として、贈与する側と受け取る側が共同で申請します。登記が完了したら、内容が合意どおりかを確認し、新しい登記識別情報などを大切に保管します。登記を終えても、贈与税の申告などが必要であれば別途対応しなければなりません。贈与税の申告・納税は、原則として贈与を受けた人が、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに行います。特例の適用で納税額がなくなる場合も、申告や届出が必要になることがあるため、登記とは別に期限を管理しましょう。

税金は贈与税だけでなく、手続き全体で確認する

不動産の生前贈与では、受け取る側の贈与税に加え、登記の際の登録免許税や、不動産取得税を確認します。司法書士へ依頼する場合は、その報酬も含めて費用を把握しておきましょう。相続による所有権移転登記の登録免許税は原則0.4%で、不動産取得税も相続による取得には原則かかりません。生前贈与と相続では税金の扱いが異なるため、同じ不動産でも負担を比較しておくことが大切です。

暦年課税の贈与税には年間110万円の基礎控除がありますが、これは受け取る人がその年に受けた贈与の合計について判断します。不動産を少しずつ贈与する場合も、他の贈与と合わせた確認が必要です。また、贈与税がかからなくても、登記などの費用がかからないとは限りません。

贈与による土地・建物の所有権移転登記の登録免許税は、原則として固定資産課税台帳の価格を基に計算し、税率は2%です。例えば、その価格が土地・建物を合わせて1,000万円で、全部を贈与する場合、登録免許税は原則20万円となります。これは贈与税や不動産取得税、専門家の報酬を含まない金額です。

贈与税の財産評価と、登録免許税の計算に使う価格は、同じとは限りません。「固定資産税の通知書にある金額だけで、すべての税金を計算できる」と考えないことが大切です。また、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度は、要件を満たす住宅購入などのための金銭の贈与が対象であり、自宅の土地・建物そのものを贈与する場合には使えません。

相続時精算課税などの制度を利用する場合も、適用条件や届出、将来の相続税への影響を含めて検討します。制度名だけで節税になると判断することは避けましょう。

当事務所では、必要に応じて税理士をご紹介できます。不動産の権利関係と登記は司法書士に、税額や課税方法の選択は税理士に確認し、契約を結ぶ前に全体の見通しを立てると進めやすくなります。

「自宅を長男に渡したい」場合も、目的から考える

例えば、母が同居する長男に自宅を渡したいと考え、別居する長女もいるケースを想定します。母は「今のうちに名義を変えれば安心」と考えていても、まず確認したいのは、すぐに長男の所有にする必要があるかという点です。

母が今後も住み続け、将来は自宅を売って介護費用に充てる可能性があるなら、その選択肢を残せるかを検討します。自宅以外の財産が少なければ、長女との関係や遺留分への配慮も欠かせません。

一方、今すぐ所有権を移す具体的な理由があり、贈与後の生活と税負担にも見通しが立つなら、生前贈与を進める選択肢があります。死後に引き継いでほしいという希望であれば、遺言と比較して考えられます。どの方法が合うかは、家族構成、財産、渡す時期によって変わります。

生前贈与の相談は、名義変更を決める前でもできます

不動産の生前贈与は、ご本人が必要書類をそろえて登記を申請することも可能です。ただし、古い名義が残っている、共有になっている、ローンがある、他の相続人への影響が気になる場合などは、契約前に司法書士へ相談すると、確認すべき点と手続きの順序を整理できます。

相談時には、登記事項証明書や固定資産税の納税通知書、権利証など、手元にある資料を用意すると話が進めやすくなります。すべてそろっていなくても、誰の不動産を誰へ渡したいか、今後誰が住むか、ほかにどのような財産や家族がいるかを整理しておくとよいでしょう。

当事務所では、難しい法律用語も分かりやすく説明することを心がけ、ご事情に応じた終活のご相談を受け付けています。芦屋市で不動産の生前贈与をお考えの方は、「贈与と相続のどちらが自分の希望に合うか分からない」という段階からご相談ください。

名義変更を済ませることだけを目標にせず、財産を渡した後の暮らしと、将来の引継ぎまで見通して準備を進めましょう。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、うちで法務事務所までお問い合わせください。

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