士業コラム
退職した社員が会社のパソコンを返さないときは?返却依頼と給与精算の注意点

退職した社員が会社のパソコンを返さないときは?返却依頼と給与精算の注意点

退職した社員から、貸与していたノートパソコンや社員証が返ってこない。連絡しても返事がなく、社内の情報が残っているかもしれない。このようなとき、会社は返却を求める一方で、給与から代金を差し引いてよいのか迷うことがあります。

大切なのは、貸与品の回収、情報管理、給与の支払いを別々の問題として整理することです。返却の遅れを理由に一方的な給与控除をせず、貸与記録と連絡経過を確認しながら対応しましょう。

まず確認したい貸与品と返却の約束

会社の物か、本人の私物かを整理する

最初に、返却を求める物品を一覧にします。パソコン、携帯電話、社員証、事務所の鍵、制服、業務用カードなどを挙げ、管理番号や貸与日、付属品の有無を確認してください。会社が購入した物でも、本人に譲渡したものや私物との区別が曖昧なものは、所有関係を確かめる必要があります。

貸与台帳、受領書、雇用契約書、就業規則、退職時の案内があれば照合します。「返すはずだった」という担当者の記憶だけでは、後から争いになった際に説明が難しくなります。

退職日と返却方法を確かめる

返却期限が明示されていたか、郵送を認めていたか、退職日に出社できない事情があったかも確認します。病気や遠方への転居などで持参が難しい場合、追跡可能な配送方法を提案すると回収につながることがあります。

退職手続きの案内を送っていなかったなら、まず返却対象と送り先、希望期限、担当窓口を分かりやすく通知しましょう。高価な機器の場合は、梱包方法や配送中の事故への対応も決めておくと安心です。

本人への連絡は記録が残る方法で進める

返却依頼は具体的に伝える

最初の連絡では、未返却の物品名、返却先、連絡先、希望する返却日を記載します。メールだけで反応がない場合は、事前に届け出られた住所への書面送付などを検討します。電話で話せた場合も、合意した返却方法を後からメール等で確認すると行き違いを防げます。

「返さなければ犯罪として通報する」などと、事実関係を確認しないまま強い表現で迫ることは避けてください。返却を忘れているのか、物品が見つからないのか、会社との間に別の争いがあるのかによって、適切な次の対応は変わります。

連絡が取れない場合は経過を整理する

連絡日、使用した連絡手段、送付先、返信の有無を時系列で残します。郵送物が戻ってきた場合は、その状況も記録してください。本人と連絡が取れないからといって、家族や転職先に詳細な事情を広く伝えることは、個人情報やプライバシーの問題を生じさせるおそれがあります。

返却請求が長期化したり、会社に大きな損害が生じていたりする場合は、法的な請求方法について弁護士に相談することも選択肢です。社会保険労務士への相談では、退職時の社内手続きや規程の整備など、労務管理上の論点を整理できます。

パソコンが返らないときは情報管理を優先する

アカウントとアクセス権を点検する

会社のパソコンに顧客情報や社内資料が保存されている場合、現物の返却を待つだけでは不十分です。業務用メール、クラウドストレージ、社内システム、VPNなどについて、退職に伴う利用停止や権限変更が適切に行われたかを確認してください。

遠隔ロックや端末管理機能を使う場合は、会社の管理権限と契約内容を確認し、必要な業務データの保全も考慮します。私物端末まで無断で操作したり、本人の私的なデータを広く取得したりしないよう注意が必要です。

情報漏えいの疑いは別途対応する

端末が未返却というだけで、情報が漏えいしたと断定することはできません。一方、退職後に不審なログインがある、顧客データが大量に持ち出された形跡があるなどの場合は、アクセスログや端末の管理記録を保全し、情報管理の担当者と対応を検討します。

個人情報の漏えい等が疑われるときは、報告や本人通知が必要となる場合もあるため、対象情報と被害の可能性を早期に確認しましょう。

未返却の代金を給与から差し引いてよいか

給与と貸与品の返却は分けて扱う

労働基準法第24条には賃金の全額払いの原則があります。会社のパソコンが返却されないことを理由に、最終給与から購入代金や見積額を一方的に差し引くことは、原則として認められません。返却が済むまで給与の支払い自体を止める対応も避けるべきです。

例外的な控除や相殺には厳格な条件があります。本人が署名した書面があるというだけで、当然に有効になるわけではありません。賃金支払日を守りつつ、返却請求や損害の問題は別に検討してください。

紛失や破損があっても全額請求とは限らない

本人が「なくした」「壊した」と説明した場合は、発生した経緯、使用年数、物品の状態、会社の管理方法などを確認します。会社が新品の購入価格をそのまま請求できると決めつけないことが大切です。

労働基準法第16条は、労働契約の不履行について違約金や損害賠償額をあらかじめ定めることを禁止しています。実際の損害について請求を検討する場合も、責任の有無や範囲を個別に判断する必要があります。金額に争いがあるときは法律の専門家に確認してください。

次の退職トラブルを防ぐ貸与品管理

貸与時と返却時の記録をそろえる

今後の運用では、貸与時に物品名、管理番号、付属品、受領日、返却方法を記録します。退職時には担当者が一覧を照合し、返却済みの物と未返却の物を区別します。端末だけでなく充電器や入館カードなど、小さな物品も対象にすると確認漏れを減らせます。

返却期限や郵送方法を事前に案内し、退職日に持参できない人にも対応できる手順を設けておきましょう。返却確認と、業務アカウントの停止確認は別々にチェックすることが重要です。

相談するときに用意したい資料

貸与台帳、受領書、就業規則、退職届、返却依頼のメールや書面、給与明細などがあれば、状況を整理しやすくなります。情報管理上の懸念がある場合は、利用権限やアクセス停止の状況もまとめてください。

城田社会保険労務士事務所では、中小企業の人事・労務相談や就業規則の作成・変更を取り扱っています。退職時の貸与品管理や給与精算の運用に迷う場合は、現在の規程と事実関係を整理して相談するとよいでしょう。返還請求や損害賠償をめぐる法的紛争については、必要に応じて弁護士への相談も検討してください。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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