士業コラム
社員が勤務中にスマホを使っていたら?会社が確認したい注意と対応の進め方

社員が勤務中にスマホを使っていたら?会社が確認したい注意と対応の進め方

「接客中なのに社員がスマートフォンを見ている」「何度注意しても、仕事の合間にSNSを確認している」。こうした状況に困っている経営者もいるでしょう。勤務中の私用スマートフォンは、業務への集中や安全、顧客対応に影響することがあります。一方で、画面を見ていたという事実だけで、直ちに厳しい処分を決めるのは適切ではありません。

会社が最初に行いたいのは、どの場面で何が起きたのかを確認し、必要なルールと指導方法を整理することです。使用を制限できる範囲、注意しても改善しない場合の対応、就業規則を見直す際のポイントを説明します。

勤務中のスマホ使用は一律に禁止できる?

業務への支障と使用目的を分けて考える

従業員は労働契約に基づき、勤務時間中は職務に従事することが基本です。会社は業務上必要かつ合理的な範囲で、勤務中の私用スマートフォンの使用についてルールを定め、指導できます。ただし、スマートフォンを手にしただけで、すべての行為が問題になるわけではありません。

例えば、接客中に動画を見続ける場合と、家族からの緊急連絡を短時間確認する場合では事情が異なります。業務用アプリの確認や会社から指示された連絡も、私用とは区別する必要があります。まず、使用日時、場所、目的、長さ、業務への影響を把握してください。

休憩時間と勤務時間を混同しない

労働基準法上の休憩時間は、原則として労働者が自由に利用できる時間です。勤務時間中の私用を制限するルールを、そのまま休憩時間にも適用できるとは限りません。機密情報の保護や撮影禁止、安全確保など、職場固有の合理的な制約が必要になる場面はありますが、休憩中の私的な連絡まで無条件に禁止する運用は慎重に考えるべきです。

また、実際には仕事の指示を受けながら待機している時間を、単に「休憩」と呼んでいないかも確認しましょう。スマホ使用の問題を整理する際には、勤務時間と休憩時間の管理そのものも重要です。

注意する前に確認したい3つのこと

いつ、どのように使っていたのか

「いつもスマホを見ている」という印象だけで注意すると、本人との認識が食い違いやすくなります。日時、担当業務、使用の様子、周囲への影響を具体的に記録してください。接客の中断、作業の遅れ、安全確認の不足などがあれば、その事実も分けて残します。

ただし、本人の私物端末を無断で開いて閲覧履歴やメッセージを調べることは避けてください。会社が確認できる業務上の事実と、従業員の私生活に関する情報は区別する必要があります。

会社のルールは伝わっているか

就業規則、服務規律、情報セキュリティ規程などに、勤務中の私用端末の扱いが書かれているか確認します。「業務に専念すること」という一般的な規定だけでは、現場で許される使用と禁止される使用の境界が曖昧な場合があります。

例えば、顧客対応中の私用操作は禁止し、緊急連絡は上司に申し出て確認できるようにするなど、業務に合わせて具体化すると運用しやすくなります。社員によって扱いが違う状態も見直しましょう。

本人に事情を聞いたか

使用理由を聞かずに叱責するのではなく、まず事実を示して説明を求めます。育児や介護に関する緊急連絡、健康上の事情、会社からの業務連絡など、配慮や確認が必要な事情が分かることもあります。

事情があっても無制限に使用を認めるという意味ではありません。必要な連絡手段を確保しながら、仕事への影響を抑える方法を一緒に考えることが重要です。

注意しても改善しない社員にはどう対応する?

最初の指導は行動を具体的に伝える

「スマホばかり見ないで」という抽象的な注意よりも、「接客中は私用端末を操作しない」「緊急連絡が必要なときは責任者に声をかける」といった行動基準を示しましょう。会社が求める理由と、代わりに取れる連絡方法も説明します。

指導後は、本人の説明、伝えたルール、改善を確認する日を記録します。必要に応じて、管理職にも同じ基準を共有してください。ある社員だけが注意され、他の社員は黙認される運用では納得を得にくくなります。

繰り返す場合も処分を急がない

注意後も同じ行為が続く場合は、指導内容が明確だったか、本人に改善の機会があったか、実際にどのような支障が生じたかを整理します。口頭注意、面談、書面での指導など、状況に応じた段階的な対応を検討してください。

懲戒処分には、就業規則上の根拠に加え、行為の性質や態様などに照らして客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が必要です。スマホを数回見たことだけで、当然に減給や出勤停止が認められるわけではありません。減給制裁には労働基準法上の限度もあります。

懲戒解雇を含む重い処分を考える場合は、事実確認と規程の適用を慎重に行い、通知前に専門家へ相談することをおすすめします。就業規則を確認しながら、段階的に処分をおこなう必要があります。

就業規則と現場の運用を整える

禁止する行為と例外を明確にする

私用スマートフォンのルールは、業務の種類に応じて決めることが大切です。例えば、運転や機械操作中の使用、顧客情報の無断撮影、接客中の私的なSNS閲覧などは、危険性や情報管理上の問題を具体的に説明できます。

一方、勤務場所への持ち込みそのものを禁止する場合は、保管場所、緊急時の連絡方法、業務上の必要性なども検討します。ルールを厳しくするだけでなく、実行可能な運用になっているか確かめてください。

新しいルールを周知し、管理職の対応をそろえる

就業規則を変更する場合は、必要な手続きと周知を確認します。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則の作成・変更について労働基準監督署への届出等が必要です。また、労働条件の不利益変更に当たる場合には、労働契約法上の問題も生じ得ます。

現場では、ルールの説明、緊急連絡の取扱い、違反を見つけた際の報告先を統一します。管理職自身が私用操作を常態化させている場合は、まず管理職の行動も含めて見直しましょう。

具体例で考える対応の順序

例えば、従業員15人の小売店で、販売担当者が売場で頻繁に私用メッセージを確認しているとします。店長が一度注意しましたが、本人は「家族から連絡が来るので確認したい」と説明しました。

この場合、最初に接客への影響と使用頻度を確認し、緊急連絡が必要な事情を聞きます。そのうえで、売場での私用操作は控え、緊急時は店長に申し出てバックヤードで確認するなどの方法を検討します。本人にルールを伝え、一定期間後に改善状況を確かめます。

それでも無断使用が続く場合は、記録を踏まえて追加指導を行います。最初から「次に見たら解雇」と告げるのではなく、行為の程度、会社の指導、業務への影響を総合して判断することが大切です。

判断に迷ったら資料を整理して相談する

勤務中の私用スマートフォンについては、使用状況が明確で、ルールを伝えれば改善する場合、会社内で対応できることもあります。一方、注意しても繰り返す、管理職によって判断が異なる、懲戒処分を検討している、端末の持ち込み禁止や就業規則の変更を考えている場合は、労務管理の専門家に相談すると整理しやすくなります。

相談前には、就業規則や服務規律、注意した日時と内容、本人の説明、勤務状況、業務への影響をまとめてください。スマートフォンの私的な中身を集める必要はありません。問題となる業務上の行動を中心に記録することが重要です。

城田社会保険労務士事務所では、中小企業の人事・労務全般の相談と、就業規則の作成・変更を取り扱っています。東京都豊島区周辺で、社員への注意方法や社内ルールの整備に迷っている経営者の方は、事実関係と現在の規程を整理したうえで相談をご検討ください。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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