士業コラム
健康診断で要再検査の社員がいたら?会社が進める受診勧奨と就業上の対応

健康診断で要再検査の社員がいたら?会社が進める受診勧奨と就業上の対応

「健康診断で要再検査になった社員がいるけれど、受診するよう伝えれば十分だろうか」「本人は元気だと言っているので、そのまま働いてもらってよいのだろうか」 健康診断の結果が届いた後、会社としてどこまで対応すべきか迷うことがあります。

大切なのは、本人に再検査を勧めることと、会社が医師の意見を聴いて働き方を検討することを分けて進めることです。再検査の結果を待っている間も、会社の対応をすべて止めてよいとは限りません。この記事では、一般的な定期健康診断の後に、中小企業が確認したい手順を解説します。

「要再検査」の通知を本人任せで終わらせないようにします

健康診断の「要再検査」「要精密検査」は、詳しい検査などで状態を確かめる必要があるという判定です。それだけで病名が確定したり、直ちに仕事ができないと決まったりするわけではありません。一方、自覚症状がないという理由だけで、会社が問題ないと判断することも避けましょう。

まず、会社が実施した健康診断の結果を把握し、労働者本人へ結果を通知します。そのうえで、異常所見がある方について、医師の意見を聴く対象や期限を整理します。結果の通知を健診機関に任せている場合も、誰に届いているか、会社側で必要な確認ができているかを点検してください。

一般的な定期健康診断後の再検査・精密検査は、一律に会社へ実施義務が課されているものではありません。ただし、有害業務に関する一部の特殊健康診断には別の定めがあります。ここでいう再検査と、労災保険の二次健康診断等給付も別の仕組みです。

会社に一律の再検査実施義務がないことは、結果を放置してよいという意味ではありません。受診を勧め、必要な情報を医師につなぎ、就業上の対応を検討することが重要です。

異常所見がある場合は、原則3か月以内に医師の意見を聴きます

定期健康診断で異常の所見があると診断された労働者について、事業者は、その健康を保持するために必要な措置に関する医師の意見を聴く必要があります。原則として、健康診断が行われた日から3か月以内に行い、聴取した意見を健康診断個人票へ記載します。「結果票が会社に届いてから3か月」と思い込まないようにしてください。

ここで確認するのは、現在の仕事を通常どおり続けてよいか、労働時間や仕事内容に制限が必要か、休業が必要かといった事項です。健診結果に「要再検査」と記載されているだけで、就業上の措置についての意見まで確認したことになるとは限りません。

医師へ相談するときは、健診結果に加え、実際の仕事内容、勤務時間、時間外労働、深夜勤務、身体への負担などを整理します。同じ検査値でも、デスクワークと重量物を扱う仕事では、確認すべき点が異なることがあります。医師から意見聴取に必要な業務情報を求められた場合は、速やかに提供します。

社員が再検査を予約していない場合も、何もせず期限を過ぎないようにしましょう。現在ある情報で意見聴取を進め、追加の検査結果が必要か、その間に注意すべき働き方があるかを医師に確認します。3か月は対応を待ってよい期間ではなく、緊急性がある場合には速やかな対応が必要です。

産業医の選任義務がない50人未満の事業場でも、異常所見者についての意見聴取が不要になるわけではありません。相談先に困る場合は、地域産業保健センターの支援も選択肢です。対象となる事業場、予約方法、利用できる支援の範囲を窓口で確認してください。

受診を勧める際は、行けない理由と次の確認日を整理します

本人には、再検査を勧める理由と、会社として健康に配慮した働き方を検討する必要があることを説明します。「早く病院に行ってください」と繰り返すだけでなく、仕事の都合で予約ができないのか、受診先が分からないのかなど、差し支えない範囲で事情を聞きましょう。

受診を予定している場合は、予約日や今後の確認時期を共有します。本人の同意が必要な情報は適切に同意を得るなど、収集できる範囲と利用目的を確認したうえで、医師の判断に必要な結果を提供してもらえるよう働きかけます。病歴や治療内容を、必要以上に会社へ提出させることは避けてください。

再検査の費用や受診時間中の賃金は、定期健康診断と当然に同じ扱いになるとは限りません。一般の再検査か法令上の実施義務がある検査か、会社がどのような指示を出すか、就業規則や従来の運用がどうなっているかを確認します。本人へ伝える前に取扱いを整理すると、説明の行き違いを減らせます。

受診しないことだけを理由に、直ちに懲戒処分をしたり、自宅待機を命じたりする対応は慎重に検討する必要があります。会社の指示の内容や根拠、本人の事情を整理し、医学的な判断と労務上の対応を混同しないようにしましょう。

仕事を優先にされている方々は、自身の健康については優先順位を下げる傾向にありますので、健康第一ということを伝えて、受診を促しましょう。

医師の意見を、具体的な勤務の調整につなげます

医師から就業制限などの意見が出たら、会社はその内容を十分に考慮し、本人の実情も踏まえて必要な措置を決めます。本人の意見を聴き、措置の目的や内容を説明したうえで、実際の勤務に反映させることが大切です。

例えば、時間外労働が続いている社員について、医師から「一定期間、時間外労働を制限する必要がある」との意見を受けた場合を考えます。会社は本人に残業を控えるよう伝えるだけでなく、担当業務の分担、締切、上司の指示方法も調整します。仕事量が変わらなければ、持ち帰り仕事などが生じる可能性もあるためです。

措置の開始日、対象となる業務、確認する担当者、見直し時期を明らかにしておくと、その後の管理がしやすくなります。勤務制限を解除する際も、「本人がもう大丈夫と言ったから」とだけ判断せず、医師の意見などを確認しましょう。

休業や勤務時間の短縮が必要になった場合の賃金は、措置の理由、働くことができる範囲、契約や規則の内容などを踏まえた個別の検討が必要です。「医師の意見があるから無給」と機械的に処理しないようにします。

当事務所では、人事・労務全般の相談や就業規則の作成・変更を取り扱っています。医師の意見を踏まえて、社内でどのように勤務を調整し、本人へ説明するか迷う場合は、現行の規則と実際の働き方を照らし合わせて整理することが役立ちます。

健康情報の共有範囲を決め、対応の経過を残します

健康診断の結果は、慎重な取扱いが求められる情報です。会社が健康管理のために把握する場合でも、利用目的、取扱担当者、保管方法、共有する範囲を決めておきます。担当者以外の社員が自由に閲覧できる場所へ保存しないようにしましょう。

直属の上司へは、勤務の調整に必要な情報を必要な範囲で伝えます。例えば、残業の制限や避けるべき作業を共有すれば足りる場合に、検査値や詳しい病歴まで広く知らせる必要はありません。本人への説明や、情報の種類に応じた同意の要否も確認します。

また、結果の通知日、受診を勧めた日、医師から聴いた意見、本人との相談内容、実施した措置と見直しの経過を記録します。一般の定期健康診断に基づく健康診断個人票は、5年間の保存が必要です。個人票を保存することに加え、誰がいつ次の確認をするかも管理すると、対応の抜けを防ぎやすくなります。

医学的な判断と会社のルールを分けて相談しましょう

社内の手順が整っており、医師の意見を確認して必要な調整ができる場合は、会社で対応を進めることも可能です。一方、本人が受診しない、勤務制限と業務の両立が難しい、休業中の給与が分からないといった場合は、判断を固める前の相談が望まれます。

相談時には、就業規則、勤務予定、実際の労働時間、これまで本人へ説明した内容などを準備します。健康情報を含む資料を外部へ提供する際は、提供の必要性や範囲、本人の同意などの適切な手続きを確認してください。医学的な評価は医師へ、勤務や賃金、社内規程の運用は社会保険労務士へ確認すると、課題を整理しやすくなります。

当事務所は、中小企業やクリニックの労務管理を支援し、労務相談のみの契約にも対応しています。東京都豊島区で、健診後の勤務調整や社内の取扱いに迷っている経営者の方は、現在の対応と困っている点をお聞かせください。必要な医学的確認を踏まえ、会社として進める労務対応を整理しましょう。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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