士業コラム
クリニックの昼休みは労働時間になる?電話対応・診療延長で確認したいポイント

クリニックの昼休みは労働時間になる?電話対応・診療延長で確認したいポイント

「昼休みに受付スタッフが電話に出ている」「午前の診療が長引き、スタッフの休憩が短くなっている」。クリニックでは、こうした場面が起こることがあります。

勤務表では休憩時間としていても、スタッフが実際に業務を行っていたり、電話や患者対応のために待機していたりする場合、その時間を休憩として扱えないことがあります。

大切なのは、クリニックの休診時間と、スタッフが仕事から離れて休める時間を分けて考えることです。この記事では、昼休み中の電話対応や診療延長の事例を交えながら、院長が確認したい労働時間・休憩・勤怠管理のポイントを解説します。(本文中の事例は、対応のポイントを説明するための架空のケースです。)

クリニックの「昼休み」が、そのままスタッフの休憩時間になるとは限りません

判断の基準は、仕事から離れることが保障されているか

例えば、午後1時から3時までを休診時間としていても、その2時間がすべてスタッフの休憩時間になるとは限りません。

労働時間に当たるかどうかは、「昼休み」「休憩」という名称ではなく、実際に院長などの指揮命令下に置かれているかで判断します。電話や患者対応を求められている時間や、院長などの指示のもとで診療準備・片付けを行う時間は、労働時間として扱う必要があります。

一方、業務への対応を求められず、自由に過ごせる時間は、休憩時間として扱える場合があります。院内で食事をしているというだけで、労働時間になるわけではありません。

「院内にいるか」だけでなく、「仕事から離れて休める状態か」を確認することが重要です。

休憩は、実際の労働時間に応じて確保する

労働基準法では、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を、勤務の途中に与える必要があります。

診療の延長によって実際の労働時間が増えた場合は、必要な休憩時間も改めて確認しましょう。勤務表に休憩を記載しているだけでは、実際に休めていることの確認にはなりません。

昼休み中の電話対応は、通話した時間だけを数えればよい?

電話当番として待機する時間にも注意する

昼休み中に電話対応をした時間は、業務に当たります。さらに、「電話が鳴ったら必ず出る」という当番を任せている場合は、実際に電話が鳴らなかった時間も、労働から離れることが保障されていない待機時間として、労働時間に当たります。

「食事をしながら待っている」「電話は数件しかない」といった事情だけでは、休憩として扱えるとはいえません。

確認したいのは、電話対応の件数だけでなく、スタッフにどのような役割を求めているかです。

事例:
電話対応は5分でも、1時間の待機を求めていたクリニック

あるクリニックで、午後1時から2時までを受付スタッフの休憩時間とし、「電話が鳴ったら対応してください」と伝えていたとします。

その日の通話時間は合計5分でした。院長は「残りの55分は食事や休憩ができている」と考えていましたが、スタッフは1時間を通じて電話に対応する義務があり、自由に仕事から離れられない状態でした。

この場合は、通話した5分だけでなく、電話当番として待機していた1時間全体を労働時間として扱い、別に必要な休憩を確保する必要があります。

対策としては、電話当番と休憩を取るスタッフを分ける、休診中の電話を留守番電話に切り替えるなど、診療体制に合う方法を検討します。緊急の連絡を受ける必要がある場合は、その対応先もあわせて整理しましょう。

午前の診療が長引いたときは、実際の休憩開始時刻を確認する

診療終了後の片付けや記録も見落とさない

午前の診療が予定時刻を過ぎた場合、患者対応を続けているスタッフの休憩は、まだ始まっていません。

また、最後の患者さんが帰った後も、指示された器具の片付け、清掃、診療記録の入力などを行っている場合、その業務時間を確認する必要があります。午後の診療に向けて準備を始めた時刻にも注意しましょう。

「休診に入った時刻」ではなく、各スタッフが実際に業務を終えた時刻と、業務を再開した時刻を把握することが大切です。

事例:
勤務表では1時間、実際には40分しか休めなかったクリニック

午前の診療を午後1時まで、午後の業務開始を2時とし、その間の1時間を休憩としていたとします。

ところが、午前の診療が延長し、看護師が患者対応と片付けを終えたのは1時20分でした。午後の業務は予定どおり2時から始めたため、実際に休めたのは40分です。

この日は、1時間の休憩を自動で差し引くのではなく、実際に取れた40分を記録します。ほかに休憩を取っていなければ、1日の実労働時間が6時間を超え8時間以下の場合は少なくともあと5分、8時間を超える場合は少なくともあと20分の休憩を、勤務の途中に確保する必要があります。

診療延長が続く場合は、休憩が短くなる状態をそのままにせず、午後の業務開始時刻や交代体制、予約・受付の運用などを見直しましょう。

昼休み中に働いた時間は、給与計算にも反映する

労働時間の算入と、割増賃金の要否を分けて考える

休憩として差し引いていた時間が実際には労働時間であれば、勤怠記録を修正し、賃金計算に反映させる必要があります。

ただし、昼休み中に働いた時間が、すべて一律に割増賃金の対象になるわけではありません。所定労働時間を超えたか、法定労働時間を超えたか、採用している労働時間制度などを踏まえて判断します。

クリニックなどの保健衛生業では、常時使用する労働者が10人未満の事業場に、週44時間の特例が適用される場合があります。ただし、特例の適用があるからといって、雇用契約などで定めた勤務時間を超えて働いた分の賃金が不要になるわけではありません。なお、この特例は週の法定労働時間に関するもので、1日の法定労働時間は原則8時間です。自院に適用される法定労働時間と、契約上の勤務時間を分けて確認しましょう。

まず実際の労働時間を把握し、そのうえで追加の賃金や割増賃金の要否を確認することが重要です。

賃金を支払っても、休憩不足は解消しない

「昼休みに働いた分を支払えばよい」と考えるだけでは不十分です。

電話対応や診療延長によって必要な休憩を取れていなければ、賃金の支払いとは別に、勤務の途中で休憩を確保しなければなりません。厚生労働省も、昼当番で休憩時間が費やされた場合は、別途休憩を与える必要があると説明しています。

労働時間に対する賃金の支払いと、必要な休憩の確保は、両方に対応する必要があります。

院長が見直したい、昼休みの運用と勤怠管理

電話・患者対応の担当と、休憩時間を分ける

まず、昼休みに発生している業務を洗い出しましょう。

  • ・電話や患者さんへの対応
  • ・午前の診療後の清掃・片付け
  • ・診療記録の入力や事務処理
  • ・午後の診療準備
  • ・院内ミーティングや、参加を求める研修

そのうえで、どの業務を誰が担当し、いつ休憩を取るかを整理します。

クリニックが属する保健衛生業は、休憩を全員に一斉に与える原則の適用除外となるため、交代で休憩を取る運用も可能です。ただし、それぞれのスタッフに必要な長さの休憩を確保することは変わりません。

休憩に入るスタッフには電話対応などを求めず、担当者への引継ぎ方法を決めておくと、仕事から離れやすくなります。

休憩の自動控除を、実態に合わせて修正できるようにする

勤怠システムで「毎日1時間の休憩を自動控除する」と設定している場合は、実際の休憩との差を確認しましょう。

診療が延びた日や電話当番の日も同じ時間を差し引いていると、労働時間が記録に反映されないことがあります。休憩の開始・終了を記録する、変更があった日は修正申請するなど、実態を反映できる仕組みを整えることが必要です。

スタッフが申告していないからといって、予定どおり休めているとは限りません。院長や管理担当者も、診療の終了時刻や昼休み中の業務を確認しましょう。

少人数のクリニックほど、曖昧な役割を残さない

「電話に気づいた人が出る」「手が空いている人が準備する」という運用は、柔軟に見えても、特定のスタッフに負担が偏ることがあります。

例えば、受付の近くで食事をするスタッフだけが毎日電話に出ていれば、ほかのスタッフと同じ休憩時間を差し引くことに不満が生じるかもしれません。

誰が何を担当し、担当した時間をどう記録するかを明確にすることで、賃金計算の行き違いやスタッフ間の不公平感を防ぎやすくなります。

クリニックの昼休みを、実際に休める時間にするために

クリニックの昼休みが労働時間に当たるかは、休診時間の設定だけでは判断できません。電話当番として待機していないか、診療延長や準備で休憩が短くなっていないかを、スタッフごとに確認することが大切です。

見直しは、次の3点から始めましょう。

  • ①昼休み中に行っている業務と、対応を求めている範囲を確認する
  • ②実際に取れた休憩と労働時間を、勤怠記録・給与計算に反映する
  • ③必要な休憩を確保できるよう、担当や診療の運用を調整する

当事務所では、クリニックの労務管理について、診療体制やスタッフの勤務実態を踏まえたご相談を承っています。

豊島区や周辺地域で、「昼休みを一律に差し引いてよいか分からない」「電話当番の扱いや給与計算に不安がある」とお考えの院長は、ご相談ください。顧問契約を通じた継続的な相談も含め、クリニックの実情に合った労務管理を一緒に考えていきます。

本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
個別にご相談につきましては、城田社会保険労務士事務所までお問い合わせください。

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