従業員が休職するときの会社の対応は?手続き・休職中・復職時の注意点

「従業員から、しばらく仕事を休みたいと言われた」「診断書を受け取ったものの、何から対応すればよいか分からない」。従業員の休職は、どの会社でも起こり得る出来事です。
特に、人事・労務の専任担当者がいない中小企業では、経営者や直属の上司が対応することも少なくありません。本人を気遣う一方で、仕事の引継ぎや給与の扱い、復職の判断など、決めなければならないことが次々に出てきます。
大切なのは、従業員の療養への配慮と、会社として必要な確認・手続きを両立させることです。この記事では、病気やけがによる休職を中心に、会社の対応を事例とともに解説します。
(本文中の事例は、対応のポイントを説明するための架空のケースです。)
従業員から休職の申し出があったら、最初に確認すること
診断書と就業規則を確認する
従業員から休職の申し出があったときは、まず本人の話を落ち着いて聞き、体調によって仕事にどのような支障が出ているか、医師からどのような指示を受けているかを確認します。病気やけがの場合は、必要に応じて診断書の提出を求め、療養が必要な期間などを把握しましょう。
あわせて確認したいのが、会社の就業規則です。私傷病による休職制度は、法律で一律に設置が義務付けられている制度ではありません。対象者や休職期間、復職の手続きなどは、自社の規定を確認して対応する必要があります。
例えば、次の事項を確認します。
- ・休職の対象となる従業員と、休職に入る条件
- ・欠勤期間と休職期間の関係
- ・休職できる期間と、延長の可否
- ・休職中の給与の扱い
- ・復職の申請方法と判断の手順
- ・休職期間が満了した場合の扱い
診断書に記載された療養期間と、会社の制度上の休職期間は、分けて確認することが重要です。
【事例】
診断書の「1か月の療養」を、そのまま休職期間にした会社
従業員15人の会社で、営業担当者から「10月1日から1か月の療養を要する」と記載された診断書が提出されたとします。社長は「では、10月1日から1か月休職してください」と伝えましたが、就業規則では「私傷病による欠勤が30日を超え、引き続き療養が必要な場合に休職とする」と定めていました。
この場合、医師が示した療養開始日が、そのまま就業規則上の休職開始日になるとは限りません。扱いを整理しないまま療養が長引くと、休職期間をいつから数えるのかについて、本人と会社の認識が食い違うおそれがあります。
まずは療養のために休む必要性を受け止め、そのうえで就業規則に沿って、欠勤となる期間と休職の開始日を確認し、本人に説明しましょう。
休職開始時に会社が行う手続きと説明
決定した内容を文書で伝える
休職が決まったら、開始日・終了予定日、給与の扱い、連絡先、必要書類、復職の手続きなどを、通知書や案内文にまとめて本人に伝えます。
療養に入る際は、体調や今後の生活への不安から、一度に多くの説明を受けても整理しきれないことがあります。後から確認できる文書にまとめておくと、本人の不安を減らし、会社側も説明漏れを防げます。
引継ぎについても、療養が必要な従業員に無理をさせない配慮が必要です。本人に対応を求める前に、共有フォルダや業務記録などから会社側で確認できる情報を整理しましょう。
給与・社会保険料・傷病手当金を分けて説明する
休職中のお金については、「給与が出るか」だけでなく、本人が負担する費用や利用できる給付も含めて説明します。
私傷病休職中に給与を支給するかどうかは、就業規則や労働契約などの定めを確認します。
また、健康保険・厚生年金の資格が続いている場合、私傷病による休職では、原則として無給でも社会保険料の負担が続きます。給与から本人負担分を控除できない場合は、会社への振込みなど、支払い方法と期限をあらかじめ本人に説明しておきましょう。
業務外の病気やけがで働けず、給与が十分に支払われない場合には、健康保険の傷病手当金を受けられる可能性があります。連続する3日間の待期を含めて4日以上働けなかったことなどの要件があり、支給期間は支給開始日から通算1年6か月です。
傷病手当金を受けられる期間と、会社で休職できる期間は一致するとは限りません。傷病手当金の支給期間が通算1年6か月であっても、会社の休職期間が同じ長さになるわけではありません。
【事例】
無給の説明だけで、社会保険料の案内を忘れた会社
休職に入る従業員に「来月から給与は支給されません」と説明したものの、社会保険料の支払いについて案内していなかった会社がありました。
翌月、会社が本人負担分の振込みを求めると、従業員は「収入がなくなるのに、支払いが必要とは聞いていなかった」と戸惑いました。
こうした行き違いを防ぐには、休職開始時に「支給されるもの」「本人が支払うもの」「申請が必要なもの」を分けて説明すると分かりやすくなります。傷病手当金についても、申請から入金までの時間を考慮し、早めに手続きを案内しましょう。
休職中は、本人との連絡と社内の業務調整を行う
連絡窓口・方法・頻度をあらかじめ決める
休職中は、療養を妨げない範囲で、体調の経過や療養期間の見通しを確認します。
ただし、連絡の頻度に一律の正解はありません。本人の状態や医師の意見などを踏まえ、「誰が」「どの方法で」「いつ頃」連絡するかを決めておくと、双方の負担を減らせます。
例えば、総務担当者を窓口にし、本人が対応しやすいメールで定期的に状況を確認する方法が考えられます。療養期間の変更などがあった場合の連絡方法も、あわせて共有しておきましょう。
【事例】
複数の上司から連絡が届き、従業員の負担になった会社
メンタル不調で休職した従業員に対し、社長、直属の上司、総務担当者が、それぞれ心配して連絡していました。
一人ひとりは気遣いのつもりでも、本人には繰り返し状況を説明する負担が生じていました。また、上司からの「いつ戻れそうですか」という質問が、復職を急かされているように感じられることもありました。
このケースでは、連絡窓口を一人にまとめ、本人への確認事項を集約することで、重複した連絡を減らせます。確認した内容は、対応に必要な担当者に限って共有します。気遣いを本人の負担にしないためにも、連絡体制の整理が必要です。
周囲の従業員には、業務上必要な情報を共有する
休職者が出ると、周囲の従業員に業務が集中することがあります。担当業務を棚卸しし、分担の変更や優先順位の見直しを行いましょう。
その際、病名や治療内容を詳しく伝える必要があるとは限りません。本人の意向を確認し、業務調整に必要な情報と健康に関する情報を区別して、共有する相手や範囲を絞ることが大切です。
復職時は、診断書と実際の仕事内容を踏まえて判断する
「復職可能」という診断書に加え、業務上必要な配慮を確認する
従業員から復職の申し出があったときは、就業規則に沿って必要書類や面談の手続きを進めます。
特にメンタル不調の場合、主治医の「復職可能」という判断が、職場で必要とされる業務遂行能力の回復まで確認したものとは限りません。仕事内容や勤務条件を踏まえて、復職の可否や必要な配慮を検討することが重要です。
本人の同意を得て、主治医に業務内容を伝えたり、産業医等の意見を確認したりすることも検討します。会社だけで医学的な判断をせず、医療面の意見と職場の状況をすり合わせましょう。
正式な復職の前に、職場に通うことや職場環境に慣れることを目的とした「試し出勤」を取り入れる場合もあります。実施する際は、目的や期間、実施内容、賃金の有無、事故が起きた場合の対応などを事前に整理し、本人と共有しておきます。実際に業務を行わせる場合は、名称が「試し出勤」であっても、労働時間や賃金の扱いを適切に判断する必要があります。
【事例】
営業職への復職で、仕事内容の認識が食い違った会社
営業担当者から「復職可能」と書かれた診断書が提出されました。会社は、以前と同じように外回りや出張を任せる予定でしたが、本人は「当面は社内業務から始められると思っていた」と話しました。
診断書だけでは、長時間の移動や顧客対応が可能か、残業を避ける必要があるかなどが分からなかったのです。
このような場合は、「営業職に戻れるか」という大まかな確認ではなく、長時間の移動や顧客対応が可能か、勤務時間に制限が必要かなど、実際の仕事内容に沿って確認します。そのうえで、会社が実施できる配慮を検討し、復職後の担当業務と、その内容を見直す時期を本人と共有しておきます。
復職後も、負担を確認して対応を見直す
復職は、対応の終わりではありません。勤務を再開してから初めて分かる負担もあります。
必要に応じて業務量や残業、出張などを調整し、定期的に本人と状況を確認します。復職後に短時間勤務を取り入れる場合は、勤務時間や賃金、実施期間、通常勤務に戻す際の確認方法などを事前に整理しておきましょう。
周囲の従業員への業務配分もあわせて見直すことで、復職者と職場の双方が無理なく働ける体制を目指します。
休職期間が満了しても復職できない場合は、慎重に対応する
就業規則に「休職期間満了時に復職できない場合は退職とする」と書かれていても、期限が来たことだけで機械的に処理するのは避けましょう。
復職できる状態か、配置の変更などによって働ける可能性があるかについて、医師の意見や契約上の仕事内容、会社の状況などを踏まえた検討が必要です。厚生労働省も、復職の可否には慎重な判断を求めています。
また、長時間労働やハラスメントなど、仕事が原因となった可能性がある場合には、通常の私傷病休職と同じ前提で扱えないことがあります。
満了直前になって初めて対応を考えると、本人との話合いや必要な確認の時間が不足します。期限から逆算して、診断書の提出や面談の時期を設定し、判断に迷う場合は早めに専門家へ相談しましょう。
従業員の休職に備え、相談できる労務管理体制を整えましょう
従業員の休職では、就業規則に従うだけでなく、本人の状態や職場の事情に応じた対応が必要です。
事例で紹介したように、休職の開始日、社会保険料の支払い、療養中の連絡方法、復職後の仕事内容などについて、会社と本人の認識がずれることがあります。ルールを整え、決めた内容を分かりやすく説明し、記録に残すことが大切です。
当事務所では、就業規則の確認・見直し、休職時の通知書の作成、傷病手当金の申請、復職に向けた手続きの確認などを支援します。医療面の判断については医師と連携し、法的紛争への対応が必要な場合には弁護士との連携も検討します。
顧問契約では、休職の申し出があった段階から、休職中の対応、復職に向けた準備まで、経過に応じて継続的にご相談いただけます。経営者や担当者だけで判断を抱え込まず、必要な確認を進められる体制づくりをお手伝いします。
豊島区や周辺地域で、「初めて従業員の休職に対応する」「今の就業規則で対応できるか不安」とお考えの経営者・労務担当者の方は、当事務所へご相談ください。
本記事は、公開日時点の法令・制度および関連情報に基づいて作成しています。
法令改正等により内容が変更される場合があります。
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